あらすじ
女にもてない「私」がようやく女とめぐりあい、相思相愛になった。しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は甘いどころか、どんどん緊張をはらんだものになっていく。金策に駆け回り、疎遠な友をたずね、断られれば激昂し…金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、ぬいぐるみを溺愛する女との関係を描く「焼却炉行き赤ん坊」を併録。爆笑を誘うほどに悲惨な、二つのよるべない魂の彷徨。新しい私小説がここから始まる。
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近くにいたら絶対ぶっ飛ばしてるけど、なぜか面白くて一気読みした。
あえて難しすぎる表現をつかうところにプライドの高さと捻くれ加減が垣間みえて、ある種かわいらしいと感じてしまった。
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小説でこんな笑ったの初めてだわw圧倒的語彙力とレトリックで女に罵詈雑言を浴びせ畳み掛ける様はまさに鬼畜、色々好きな場面はあったがぬいぐるみを引きちぎる場面は痛快極まりない。女性には勧められないが男性にはなんとしても勧めたい本であった。
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西村賢太の破天荒さにびっくりしました。その中でも昔の文学っぽい文章の書き方によって、なぜか奥かしさが感じられて最後まで嫌にならず読めました。破天荒過ぎてエンターテイメント的な部分もあります。
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西村賢太さんの小説ってなんでこんなに面白いんでしょう
ド屑を主人公とした私小説、読んでいてヒリヒリしてくるようなやりとり、なのにどこかユーモラスな滑稽さも感じてしまいます
たぶんこれは、主人公を屑として描き、それに対して弁明めいた描写が一切ないからという、そのバランス感覚が上手いんじゃないかなぁなんて思うのです
主人公の内面描写をしっかりと書き、とことんまで自己中心的な思考回路で悪いのはあくまで相手、そんな考え方が徹底されています
でも、主人公の一人称視点という点から見れば自己弁護に徹底しているのだけど、他者が絡んだ時にその屑っぷりを容認するような甘い文章は一切出てこないんですよね
本人の考え方としてはこうだけど、他者から見れば最低な男、と、こういったポイントを第三者的な視点ではきちんと理解して冷静に描いている、そんなところに真顔で演じるコメディのような滑稽さが産まれるのではないかなぁと思うのです
あとは、メディアに出演されていた時のチャーミングなご本人像とか、ちょっとした行動・考え方にどこかあるあるめいた共感を覚えてしまったりとか、私小説とはいえ多少は露悪的に描いているんだろうなとか、なんかもろもろそういった要素とかもあったりはするのだろうけど
……『小銭をかぞえる』の感想というより西村賢太作品の感想文になってしまった(笑
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激烈におもしろかった。
女に頭を下げてお父さんから50万借りれることになった直後に実は本当に必要なのは30万で、これはビフテキが食えるぞとなるあたりは笑っちゃう。
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『苦役列車』が面白かったのでこちらも。「焼却炉行き赤ん坊」のスピード感がたまらない。爆笑に次ぐ爆笑。文章のグルーヴがとんでもないことになっている。そして読後にはわずかな寂寥感が取り残される。なんなんだコレは。他の文庫も全部揃えたくなった。
「心の底から反省して、二度とこんな陋劣な真似はしませんから、今度だけは許してよ」
こんな情けない男は見たことがない。
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いやーおもしろい。隠さずにすべてを晒すことができるのが私小説の良さなのか。
クソみたいな人間に辟易するがなにか愛らしい。
「こんな人間にはなりたくない」「こんな部分が自分にもあるのかも」「自分も角度を変えるとクソなんじゃないか」
よくわからんが、いろんな感情に揺さぶられる。
しかしどんな想いも包み込む文学の懐の深さに何か安心もする。
この人の作品をもっと読みたい。
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みみっちくてみっともないのだけど恥や外聞がないわけではなく、こだわるところは強くこだわる。彼女に借りたお金で、一人でステーキを食べようとする。すごく面白い。
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同棲した女性が、ぬいぐるみ心酔し、徐々にそれが煩わしくなり主人公と口論、暴力へと発展し最終的には女性が大事にしていたぬいぐるみを引き裂き無残な結末を遂げる「焼却炉行き赤ん坊」と、自費出版の経費が必要となり、同棲した女性の父から金を借り、更には旧友からも金をせびる「小銭を数える」。両作とも無残な結末を迎えることになるが、女性への暴力、そして自分の描いている通りに行かず、苛立つ主人公の描写は素晴らしい。人間だれしも、暴力的な要素を持っているだろう。それを包み隠さず綴れる作者の敬意を表したい。
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西村賢太氏は数年に一冊くらいのペースで読む
それ以上はキツくてとても読めないから
読むのに体力が要る作家さんだと思う
これも相変わらず西村賢太氏だなぁ って本で特筆すべきことは挙げられないんだけど
氏の著作は麻薬的な何かがあるよね
死ぬまでに全著作を読んでみたいけど どうなるかなぁ
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Twitter(X)で「焼却炉行き赤ん坊」を知り、読んだ。
1人の男の思考回路をなぞるこの書き方、読みやすいし、読んだらいけない女性もいるんだろうな、など。
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相変わらずだが、とくに本作に収録の二作はいずれもダメなところが強すぎて共感がしづらい。なのにこの面白さはなんだろう。なんだか見ず知らずの人の口論に興味を持ってしまい、面白がって見る野次馬根性みたいなものを刺激されるのかもしれない。
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面白かった。でも何でこんな小説がこれほどまでに面白く感じられるのか、自分でも理由が能く分からない。
はっきり言って何にも善いことは書かれていない。自堕落で自己中心的な男が周囲の全ての他人様に迷惑をかけながら生活する様が延々綴られるのみ。
思い通りに行かないと直ぐに怒るし、時には手も出るようだ。真面目に労働に従事している様子は無く、性慾を制御出来ず、生活資金は女性に依存している。
形が大きいだけの丸っきり子供大人である。唯一志と呼べそうな活動は私淑する作家の全集を自費出版しようとしていることくらいか。
こんな正論を書いても仕方が無いが、志を持つのは結構なことではあるものの、それ以前に先ず人として最低限の自立した生活を確立すべきだと思う。方々に迷惑をかけ、他者の幸福を害い、誰も幸せにしない志とその活動に何の存在意義があろうか。
全編こんな調子であるにも拘らず全く退屈しない。頁を繰る手が止まらない。誰も幸せにならないのが最初から分かりきっているのに。本書所収の「焼却炉行き赤ん坊」なんてタイトルだけで不幸な結末が判明してしまっているではないか。女が縫い包みを子供同然に溺愛し始めた時点で、読まずとも大体どういう結末になるか想像が付くし、そんな不幸な結末を端から隠す気も無い。
こんな作品を面白がっている自分の性根がさもしいのではないかと空恐ろしくもなる。然し同様の感性を御持ちの向きは存外世間にはいらっしゃるようで、結構な人気と知名度だ。
善とか美からかけ離れた、寧ろ醜悪さだけを丹念に描写した小説を認めて良いのだろうか。文学としては如何に評価する可きなのか。保坂和志や又吉直樹ならば何う評するのだろうか。俗悪の一言で切って捨てて良いものか。それでも現に面白いのは何故なのか。抑これは芸術と呼べるのか。
少なくとも自分の中に波紋のように新たな問いが湧き起こったのは確かである。
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安定の貫太シリーズ。名前は出てこないですが、秋恵との蜜月の日々を描く本作。二短編は共に貫太の癇癪で破綻に走る事毎度の結末ですが、どうしてこうも西村処作は分かっていても面白い読後感を味わえるのでしょうか。
それは巻末に町田康氏が解説してるように、純文学定形の「苦悩する青年像」と全く異なる方法で物語が描かれ、それも見事な文章と描写を持って成されているからなのでしょう。町田氏の「酢を飲んだような悲しみと同時に愉快に感じる」読後感を西村さんの本作からも変わらず味わえるのです。
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いわば人間の屑とでもいうのだろうか。
働きもせず金を無心し、すぐ激昂し、女に手を挙げ、の繰り返し。それも私小説とは。。
現代の話をかようにまでも大正昭和の人が書いたような文体、計算ずくの内心描写を筆致に描き上げる力量は解説者をして天才と言わしめるだけのことがある。
早逝が惜しまれる。
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やっぱり西村賢太さんの作品は面白い!
「焼却炉行き赤ん坊」と「小銭をかぞえて」のに作品が収録されているが、どちらも甲乙付けられずに面白い作品である。
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ほんとにクズだ。クズ男の話だった。
しかもこれが私小説だって言うんだからこの作者なんなの?読んでて胸くそ悪くてどうしょうもなかったけどそれを最後まで一気に読ませる作者の文章力は流石としか言いようがない。
でもこのなんだか健気な女の人はなぜこんな男と一緒にいるんだろう。
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夫が「こんなのを買った」というのをちょいと横取り、あっという間に読んでしまった文庫本
この文庫、短い間に版も重ねて売れているらしい、この作家さん知らなかった
芥川賞を受賞した時にもヘンな言動で話題になったらしいが、それもスルーしていたらしい
ま、わたしの読書好きも偏っているから
それで
面白く読んだというか引き込まれたしまったわけはその文面の率直さにある
飾っていない傍若無人(風な)私小説である
私小説はつまらないもの(つまらなくても今は好きなのだが、 それだからこそ好きになったのだが)という概念をぶちこわしてくれる
私小説ってこういかなくっちゃ、という清さがある
表題作のほか「焼却炉行き赤ん坊」なんていう物騒なタイトルの作品もあわせて、作者(主人公)のハチャメチャな日常を描いているのだがどこか憎めないんだなー
こんな「ひでえ奴」身近にいたら即、わたしは近寄らない
だけどもしかし、 はたし「てわたしはこの人より立派な人格かぁ?」と
人間の根源的な「悪」の部分をさらりと抉り出してくれる文芸なのだ、文間に立ちのぼってくるものなんだけど
ネット社会はすぐに作者の映像(ユーチューブ)やウィキペディアで半端な情報を知ることになるが、 その印象がわたしにはどーだったか、こーだったか(笑)
露悪趣味とは一味違うその文章はやはり創作文芸であることよな~
作家は文章で勝負、と、わたしはえらく得心をしたのであった
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西村賢太の文章を読むと自分の中の嫌な部分に似たものを見せつけられて吐きそうになる。でも読むのを止められない。彼の怒りが爆発してしまうまでのプロセスが理解できてしまって辛い。ごめんって言ってくれたら、って部分が痛いほど理解できてしまって辛い。
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相変わらずの西村節。人が不快に思うこと、嫌がることをわかっていながら同居人に試していく底意地の悪さにドキドキしながら読むのがこの著者の小説の醍醐味か。
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大人になった貫太の恋人との同棲編。今までの不遇だった性欲への不満が解消された惚気話のようだがタイトルの『焼却炉行き』という不穏さがこの人の破滅性を示す。
子どもを産ませないよう予防線を張り代替えのぬいぐるみ及び女性に精神的肉体的経済的に虐待を働くとんでもない男であるが誰しもが持つ屑部分(幼児性)を曝け出しているところが共感を呼ぶのかもしれぬ。
現実の作者はどうだったか分からないけど私小説という事は日常を切り取っている訳でもし作者が逝去しなかった場合どのような展開を迎えていったか夢想してしまう。
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10年ぶりにできた恋人との生活を書いた二篇。
傍から見ると健気で可愛い彼女なのだけれど、とことん酷い扱いをされる。
前半の「焼却炉行き赤ん坊」はタイトルはギョッとするものの、まだ惚気話にも解釈できて微笑ましい場面もいくらかあった。
でも後半の「小銭をかぞえる」は本当にどうしようもない話で、彼女側からしたら金を搾り取られているのと同じだった。
人間のクズと言っていいような主人公が、どこまでも独りよがりに周囲の人間と付き合っているさまが読める。
これが冷静に書かれた私小説であり、癖があるのにとても読みやすい文章で構成されていることが、二重に複雑な気持ちにさせる。
思い切り怒りをぶちまけたあと必ず不安気になるところなんか、その性質をよく表している。こんなに嫌なのに、この先この二人はどうなったのだろうと気になってしまう。
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どう考えても主人公のオッサンが悪いのだが、屈折した性格と幼児性故に間違った選択ばかりしてしまう、まともに生きられない人間を上手く描いていると思う。少し分からなくもない自分もやはりダメ男の素因を持っているという事なのだろう。
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筆者の作品を数冊読んでいるが、相変わらず非道い内容だなぁと思うがおもしろい。包み隠さずすべてをさらけ出して書いてる作品だと感じました。
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感想
お金と愛情の両立。人格者でなければその両立は難しい。人格者であっても困難。お金に執心している者は愛情や信頼を失っていることに気がつかない。
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面白い。
完全な私小説。私小説というより現実を克明に記すという姿勢で書かれたという意味で、夏休みの宿題で書いた作文を小学生ばりの真面目さで描かれている。
ただし、内面の描写が鋭く、えげつないが、読んでる僕らも心当たりがあるだけに目を背けたくなる居心地の悪さが全くない。寧ろゲラゲラわろてまう。
たぶん、えげつなすぎるという隙与えているという作者の優しさがあるからやと思う。
面白い、そして女性にはけして薦めれない。
2022/05/31 再読
もう西村賢太のやり口は充分にわかっている。
だから二度目は気の抜けたコーラがパーティ感を一気に無くしてるように、ウキウキ感はない。
しかし、無様さの描き方はまだ充分に立派であり、健在である。
町田康の解説も今回は面白く読めた。
Posted by ブクログ
久しぶりに西村賢太作品を読んだ。読んでて辟易とするくらいのダメ人間なのに、何故かまた読んでしまった。。
周りを異様に気にするカッコつけの小心な男がここまで赤裸々な私小説を書く、という矛盾に満ちた感じが不思議です。
健気な彼女さんのモデルが現在どうされてるのか気になりました。
Posted by ブクログ
クズ男視点の生活の話。
やってることはめちゃくちゃなのにそのロジックは妙な筋が通っていて余計に胸糞。
朝の通勤時間に読むもんじゃなかった。それくらいリアル。