あらすじ
女にもてない「私」がようやく女とめぐりあい、相思相愛になった。しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は甘いどころか、どんどん緊張をはらんだものになっていく。金策に駆け回り、疎遠な友をたずね、断られれば激昂し…金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、ぬいぐるみを溺愛する女との関係を描く「焼却炉行き赤ん坊」を併録。爆笑を誘うほどに悲惨な、二つのよるべない魂の彷徨。新しい私小説がここから始まる。
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Posted by ブクログ
みみっちくてみっともないのだけど恥や外聞がないわけではなく、こだわるところは強くこだわる。彼女に借りたお金で、一人でステーキを食べようとする。すごく面白い。
Posted by ブクログ
10年ぶりにできた恋人との生活を書いた二篇。
傍から見ると健気で可愛い彼女なのだけれど、とことん酷い扱いをされる。
前半の「焼却炉行き赤ん坊」はタイトルはギョッとするものの、まだ惚気話にも解釈できて微笑ましい場面もいくらかあった。
でも後半の「小銭をかぞえる」は本当にどうしようもない話で、彼女側からしたら金を搾り取られているのと同じだった。
人間のクズと言っていいような主人公が、どこまでも独りよがりに周囲の人間と付き合っているさまが読める。
これが冷静に書かれた私小説であり、癖があるのにとても読みやすい文章で構成されていることが、二重に複雑な気持ちにさせる。
思い切り怒りをぶちまけたあと必ず不安気になるところなんか、その性質をよく表している。こんなに嫌なのに、この先この二人はどうなったのだろうと気になってしまう。