あらすじ
父親の性犯罪によって瓦解した家族。その出所が迫り復讐を恐れる母。消息不明の姉。17歳・無職の貫多は……。傑作「私小説」4篇。
性犯罪による父親の逮捕を機に瓦解した家族。出所後の復讐に怯える母親。家出し、消息不明の姉。罪なき罰を背負わされた北町貫多は17歳、無職。犯罪加害者家族が一度解体し、瓦礫の中から再出発を始めていたとき、入所から7年の歳月を経てその罪の張本人である父親が刑期を終えようとしていた。──表題作と“不”連作の私小説「病院裏に埋める」、〈芝公園六角堂跡シリーズ〉の一篇「四冊目の『根津権現裏』」、“変化球的私小説”である「崩折れるにはままだ早い」の全四篇を収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
西村賢太2冊目。べらぼうにおもしろい。
なんだろう、本人はいたって深刻なのにどうしようもなく滑稽なモノローグの味がとても好きだ。
「崩折れるにはまだ早い」はオッ、そういうのもあるのか…と思った。
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苦役列車は読んだはずだが、その内容はまったく頭に入っていないので状態で実質的に初めて読む西村賢太
使われている漢字と語彙が独特だが、抜群に読みやすい文章力
私小説なのでどの作品から読んでも問題ない点も評価
Posted by ブクログ
母克子のとの具体的なやりとりを初めて読めたと思う。その後実家を追い出され駅構内の飲食店でのアルバイトの話も初めてだった。そのほんの数ヶ月の出来事の中の、しかもほんの些細な題材を丁寧に面白く書かれていた。普通に楽しかった。同じ世代の17歳よりははるかに精神年齢が上になってしまうのは環境から仕方ないとはいえ、逆にまだ17歳。不安定な部分があって当たり前だと思うし普通に一人暮らしは無理だろう。まあでも克子と同居するのは無理だろう。
終わりの2章はとたんに中年になっている貫多。そんな大金をはたいてまで古書をそろえるのは自分の金銭感覚とかなり違っている。ホント人と比べない、「普通」がない、どこまでも自分を貫く彼なのだと思った。
また、他の方のレビューで勘付いたが、「崩折れるにはまだ早い」に感じていた違和感。あの章は、作者自身の思いではなく、藤原清造の目線で書かれたものということでいいんだろうか?
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『崩折れるにはまだ早い』はこれまでなかった趣向で新鮮味がある ほか三作も安定の北町貫多ではあるが、やや大人しい とはいえ、もはや彼の作品は何んでも面白い 一読み手としてそういうゾーンに入ってしまっているが、その理由、魅力が何んであるかはいまだに解らず、上手く説明がつかない
Posted by ブクログ
本の題名になっている「瓦礫の死」も面白かったが、僕としては西村賢太さんが師と仰いでいる藤澤清造氏の事を小説にした「四冊目の『根津権現裏』」や「崩折れるにはまだ早い」、そして西村賢太さん自身で書かれた「あとがき』が優作だとおもった。
今回もやはり西村賢太ワールドに引き込まれてしまった。
Posted by ブクログ
相も変わらず露悪的な短篇集。いい歳した高齢フリーターを蔑む若者といった視点は悪いなぁと思いつつ、大学時代の自分がバイト先で抱いた薄汚い気持ちそのものであり、自分が綺麗な人間ではないことをまざまざと感じさせてくれる。
自分を一般化するわけではないが、コンプライアンスだ何だとどんどん煩くなっている世の中で、人間の本当の姿を垣間見させてくれる短編なのかもしれないな·····と感じた。自分の矮小さを存分に味わうこともできずに、何ができるというのだろう。
同著者が芥川賞を取ったばかりに読んでいた頃には、そんな感想を抱くことはなかった。自分が変わったのか世の中が変わったのかは分からない。
最後の短編は、普段の私小説とはひと味違う変化球。この人が書くいつもと違う変化球小説を、もっと味わってみたかった。帯に書かれる追悼の文字と著者の笑顔の近影のせいで、梅雨明けなのに晩夏のような物悲しさに襲われた。ご冥福をお祈りします。
Posted by ブクログ
惜しい人を亡くして損失大だと思う、日本の純文学の世界。
相変わらず枯れた純文学調の文体の中に罵声を混ぜたり「アイテム」「ノーサンキュー」みたいなカタカナ言葉を入れて敢えて浮かせて笑いを取るのがうまいなーと思う。今を生きる現代人の感覚と文豪チックな明示大正昭和の感覚がないとあの面白さは出せないと思う。懐古調の文体に著者自身が溺れてしまうような作家もある中、現代に軸足を置きつつ過去の文体を力技で引き摺り出してくるような特異な筆致、これは著者の唯一無二の芸だと思う。
内容はお母さんをいじめる短編と男色家に狙われる短編はDVシリーズほどのインパクトがない。古本屋の風俗のエピソードはユーモアとペーソスが満量処方してという感じで最高。
Posted by ブクログ
「崩折れるにはまだ早い」が好きです。
書かれている内容は貫太のことなのかなと思いつつも、普段出てこないような単語(渠(かれ))や言葉遣い、そして性病持ちということからだんだん「これは貫太なのか・・・?」と変わっていく。終盤そういうことだったのか!となるのはすごかった。
「瓦礫の死角」「病院裏に埋める」は17歳の貫太のお話。「四冊目の『根津権現裏』」では2018年の貫太なのだがこの年齢を重ねた貫太ももっと読んでみたいなと思った。
読んでいない貫太作品まだまだあるので引き続き彼の人生を追いたいと思う。
Posted by ブクログ
3.8/5.0
自分の好きな文学には、その作家の実生活や主張が作品に介入しているものが多く、それでこそ文学の魅力だとも考えているが、作品のほぼ全てが自分自身の実体験である私小説という文学のジャンルのそのナルシシズムに少し距離を感じるというのが今の自分の正直な感想。でもこれは今後変わっていくかもしれない。
Posted by ブクログ
瓦礫の死角 50
家族は呪いにもなり得る。その家族が犯罪者であるならなおさら閉塞感の割増は確定する。どこで狂い始めたのか?
病院裏に埋める 40
瓦礫の死角からの続きみたいな。新しいアルバイト先で知り合った中年男性から言い寄られそうになるはなし。
四冊目の『根津権現裏』 55
歿後弟子としての思いが垣間見える。ただ、その思いに酔狂さや滑稽さもただよう。新川さんはいい人なんだとわかる。
崩折れるにはまだ早い 65
歿後弟子としての矜持が垣間見える。
Posted by ブクログ
2022年2月5日、西村賢太死去。享年54。
文庫派の不肖な読者だが、残された仕事を、今後も読み続けていきたい。
■瓦礫の死角
「魔太郎じみた性質」!
■病院裏に埋める
「坊ちゃん坊ちゃんした至極誠実で真面目そうな見た目」!
■四冊目の「根津権現裏」
落日堂新川さんの過去ワロタ。盟友なんだか被害者なんだか。
■崩折れるにはまだ早い
!!!!! 西村賢太を読んで久々に驚いたわ。
◆あとがき