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追悼 西村賢太 2022年2月に急逝した、最後の無頼派作家・西村賢太氏がライフワークとして書き継いだ日記文学「一私小説書きの日乗」。「日記がなぜこんなにも面白いのか」と、各界にファンの多かった作品の続編を、ついに文庫化。芥川賞受賞後の多忙の日々を虚飾なく綴った日記文学の白眉。 解説 玉袋筋太郎
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Posted by ブクログ
「夜、買淫。帰路、喜多方ラーメンの大盛り」の描写がやけに少ないと訝しんでいたが、どうやら掲載媒体の検閲があった模様。「夜、連続手淫。たまには良し」は笑った。
やっぱり西村賢太さんの作品は生々しく、悶々と生きている!って感じに仕上がっている。 これだけ暴飲暴食を続けていれば残念だけど短い人生だったのだろうと安易に想像出来てしまう。 それ程までに日常(日乗)を飾らずに生々しく書き綴った作品は他にないと思われる。 西村賢太ワールドが炸裂している。
日記文学を読むと無性に日記を付けたくなり、万年筆を握る。 これまで読んできたものを列挙すると… 永井荷風「断腸亭日乗」・古川ロッパ「昭和日記」・山田風太郎「戦中派不戦日記」・武田百合子「富士日記」・神坂次郎「元禄御畳奉行日記」・佐藤昭子「私の田中角栄日記」・筒井康隆「偽文士日碌」・田中康夫「ペログ...続きを読むリ日記」・坪内祐三「三茶日記」「昼夜日記」・板尾創路「板尾日記」・モンスターエンジン 西森伸一「声に出して笑っていただきたい」 そして突然、充電が切れたみたいに日記に背を向け書棚の一隅にある〈日記の墓場〉に葬られ、深い眠りにつく。 日記文学の多くは読まれることを前提に書かれている。ゆえに虚実が入り交じる。『実』をことさら大げさに、反対に寸止めにしたり、一方で『虚』の部分に書き手の本音が見え隠れし、人間臭さに出会うと、さながら屋根裏の散歩者になったような気分になりゾワゾワッとする。これが日記文学の醍醐味。そう、読み手にリテラシーが求められる。 本書は今年2月に急逝された西村賢太の日記シリーズの第2巻。2012年の一年間を収録。ちなみに日記は54歳で亡くなる直前まで記され、僕は連載の『本の雑誌』を開くと、真っ先にこの日記から読んだ。 この日記は一貫して定型で、覚書に近い。晩年の日記と比べ内面の吐露が多いのに驚く。例外は大ファンのビートたけしと飲んだ日はドキュメントタッチの長文で、興奮と熱狂と酔態ぶりが伝わって来る。 今作では芥川賞受賞作『苦役列車』の映画に対する執拗なまでの苦言と不満、遅々と進まない執筆の呻吟、編集者との衝突、自ら没後弟子と名乗った私小説作家 藤澤清造への敬慕ぶりを書いたその後には『久々に買淫』なんてこともあけすけに記述。生涯一私小説作家は日記においても性衝動を几帳面に記載せずにおられなかったね(苦笑) それと西村賢太の日記を語る上で避けて通れないのが鯨飲馬食・悪食の限りを尽くした『晩酌』。 例えば… 夜、食パン6枚をトーストにしてマーガリンをつけて一気喰い。深夜に弁当と焼鳥を肴にカルピスサワー1缶・宝焼酎2/3、締めにラ王の味噌ラーメン。 ある夜は、深夜行きつけの居酒屋でウーロンハイ6杯、帆立バター焼き、おでん5個、チーズ、締めに味噌ラーメン。帰途、すき家で牛皿4倍盛りをテイクアウト。 読むだけで胸焼けしそう爆食いに斗酒。そら痛風にもなります。高脂血症にもなります。痛風の激痛に襲われても宝焼酎を水道水で割りグビリ。 身体を痛めつけるような晩酌も著者にとっては作品を生む上での重要なルーティンだったんでしょう。 はたして14冊の作品を遺した西村賢太。私財を投じ執筆のかたわら毎夜編集に勤しむも念願の藤澤清造全集の完成を見ることはなく冥土へ旅立ったが、破滅型私小説家に相応しい終焉を用意されていたのかな…と思ってしまう。藤澤清造も芝公園で凍死という終焉を迎えただけに。あの世で師匠と宝焼酎を飲りながら、未完を詫びてたりして…。
いわゆる単なる日記のこのシリーズだが、ビートたけし氏との初対面を書いた十二月二十三日(日)だけでもファンにとっては読み応えのある一冊。とはいえあくまで"ファンにとっては"である。没後に書かれた玉袋筋太郎氏の解説もなんだか切ない。
日乗シリーズ第二作。文庫化に伴い再読。 本の雑誌6月号の特集を読むと、相当な方だったことがよく分かる。
日記シリーズ第2弾を、はじめて読んでみた。 なかなか面白い。 テレビに引っ張りだこになった時期なんだろう。 忙しい合間を縫って着実に執筆を続けているのは、さすが作家。 そして編集者に対して、怒る、怒る、怒る。 そして手打ちの飲み会も。 厄介で可愛げのある困った人だ。 思うところあって買淫を控えてお...続きを読むり、「苦役列車」映画を一緒に見に行った知人がスカートを履いているとか、嬉しいことあり、とか、恋人がいそうな雰囲気を邪推してしまう。 そして買淫がしたい、という箇所に、会えなくて寂しいという誌上当てつけを読んでしまうのは、深読みしすぎだろうか。 もはや文体芸の一部になっていると思ったのは、飲み食いの多さ。 締めにマルちゃんとか、そりゃ早死にするわ。 でも決して他人事ではなく、笑って肝が冷える。
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