西村賢太のレビュー一覧

  • 人もいない春

    Posted by ブクログ

    相変わらずの貫多である。社会の最底辺を這いつくばる労働者の心理描写にはゾクゾクさせられる。酔っ払ってこのあと人を殺してしまうとか、恋人をボコボコに殴るのではとか身構えてしまうのだが、小心者の貫多のこと、そこまでの事件は起こらない。最後の秋恵との物語は貫多の振る舞いに嫌気がさすが、最後はうまくまとまった。ネズミの物語は唐突だが、これも面白かった。なぜこの順番に作品を並べたのか。

    0
    2022年05月13日
  • 人もいない春

    Posted by ブクログ

    「今日はここまで」と、本を閉じるたびに、満ち足りた気持ちになりました。
    小説を読む悦びを、西村賢太さんの作品は十二分に味わわせてくれます。
    でも、何故なんだろう、と考える。
    だって、物語らしい物語があるわけではありません。
    アルバイト先での人間関係、同棲相手とのいざこざ、挙句、レストランにいるネズミの話。
    おおよそ「どうでもいい」話が、西村さんの手にかかると、激烈に面白い。
    1つは、著者その人である主人公「北町貫多」のキャラクターにあるのは言を俟ちません。
    猜疑心と執着心が強く、妬み深くて小心と、人としての欠点がほぼ全てそろっている人物。
    と、ここまで書いていて、世間が「好ましい」とする人物像と真逆なことに気づきます。
    たとえば、会社が新入社員に求める人物像。
    明るく前向き、好奇心旺盛でコミュニケーション能力が高く、どんなことにも積極的に挑戦するチャレンジ精神旺盛な人物、といったあたりが一般的でしょうか。
    こうして文字にすると、随分と薄っぺらい、何というか内実など何もない感じがします。
    というか、ぼく自身が社会生活を送る中で、いつの間にかこういう「真っ当」とされる情報に取り囲まれて辟易しているという面もあるのでしょう。
    ぼくは、貫多に人間的な魅力を感じます。
    それから、西村さんの小説の面白さの秘密は、やはりその文章力にありましょう。
    古風な文体ですが、ぐいぐいと引き込んでいく力があり、やがて中毒になります。
    ぼくは、特に、貫多の心理描写が好き。
    卑怯で怠惰で打算的で自分勝手。
    でも、「分かる分かる」と膝を打ちながら読んでしまいます。
    それで、はたと、西村さんの掌の上で踊らされていることに気づくわけです。
    これは文章による芸ですね。
    次は「二度はゆけぬ町の地図」を読む予定。
    楽しみです。

    0
    2022年04月22日
  • 小銭をかぞえる

    Posted by ブクログ

    生きる生臭さが、漂っている。短絡的な思考回路に至り私小説を著した著者の生きざまにもっと触れてみたくなった。西村賢太さんはきっと人たらしです。

    0
    2022年02月06日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

    Posted by ブクログ

    びっくりするぐらい非モテダメ男の青春奮闘記

    「彼は見た目は野良犬ながらも 、その根は余りにも貴族気質にでき過ぎてしまっていた 。そしてまた 、見た目は若きお菰風ながらも 、その根は余りにも坊っちゃん気質にでき過ぎてしまっていた 。」という文から伺えるように、主人公はとにかくプライドが高くて、被害者意識の塊。バイト先の人間とか割とふらっとに見ているはずなのに、自分は馬鹿にされてる、疎まれてると思い込み暴虐な限りを尽くす。もう少し自己肯定感が高くて、他者に歩みよれば普通の関係性を築けるのにと思いながら読み進めていた。

    でも、こういう北町貫多的な卑屈性は自分の中にも心辺りあるなと思い、深淵を覗いてると思ったら、自分の深淵の部分を見つめ直していた。

    「確かに自分は 〈青春の落伍者 〉にはなりつつあるが 、しかしながら 、まだ 〈人生の落伍者 〉には至っていないのだ 。」という文がまた心に染みる。

    0
    2021年03月02日
  • 二度はゆけぬ町の地図

    Posted by ブクログ

    これまで読んだ西村賢太作品の中で、1番面白かった。留置所の話を始めとして動きが比較的多いからか、あっという間に読み終えました。

    0
    2020年10月10日
  • 二度はゆけぬ町の地図

    Posted by ブクログ

    この前に読んだ『人もいない春』の方が若干すき。

    『春は青いバスに乗って』がよかった。
    警察に捕まって拘留された話で、いままで読んだことない分野でおもしろい。
    『腋臭風呂』の「洗面器とタイルがぶつかりあう、聞き覚えのある音」っていうので、あのポンッて音が聞こえた気がして、銭湯行きたくなった。

    0
    2020年05月23日
  • 人もいない春

    Posted by ブクログ

    数か月前に芸人のサスペンダーズ古川さんのnoteで日雇い日記を読んでたことを思い出して、読みたくなった西村さんの私小説。
    貫太の不器用ですぐ怒ったりするだめなところ、そしてそれをすぐ後悔するところ、それでもうまくできないところ、自分じゃないけど自分みたいでちょっと苦しくなった。最後、秋恵、ありがとうってなる。

    0
    2020年05月21日
  • 二度はゆけぬ町の地図

    Posted by ブクログ

    中卒で社会に出て日雇い労働で生きる主人公が、酒を飲んだり女を買ったり暴力を振るって刑務所に入ったりする短編集。これは私小説なので作家の経験に基づいているのかなあと思うと、よくこんなふうに生きながら本を出したな、と思う。女を求める男の欲望と虚しさや、イキがる自分とそれを省みる自分とのギャップには、等身大の人の姿があって、作家の人生を覗き見た気持ちになった。

    0
    2020年04月19日
  • どうで死ぬ身の一踊り

    Posted by ブクログ

    再読。芥川賞を受賞した『苦役列車』よりこの『どうで死ぬ身の一踊り』のほうが文学性は高いように思う。美しく端正な日本語を操り純文学の香りを持ちながらも、内容はお下劣極まりない。東大卒のサラブレット作家には醸し出せない、余所行きの一張羅を誰よりも綺麗に着こなす下民といったところか。(すべて誉め言葉)

    主人公寛多は、所謂無敵の人で、無職のくせに借金を重ね大酒飲みで恋人に暴力を振るう最低な人物だ。不快な設定なのに面白おかしく読めるのは寛多が徹底して屑で、そのくせ文章に品があり且つ藤澤清造への熱意は物凄く純粋だからであろう。

    好き嫌いが相当別れる作家だが中毒性ある作家だ。

    0
    2020年03月09日
  • 掌篇歳時記 秋冬

    Posted by ブクログ

    短編小説。
    中には情景がぼんやりしたまま終幕になったものもあるが、大半は程よく心地良い作品。
    日本には暦のほかにこんなにも豊かな四季の表現があると温かさも得た。

    0
    2020年02月09日
  • 二度はゆけぬ町の地図

    Posted by ブクログ

    西村賢太の自伝小説。

    読むのは3冊目くらい?


    この魅力は独特で相変わらず面白い。


    普通では体験できない最低最悪な人生模様を、

    垣間見れるから、まぁ他人事で面白いんだろう。


    日雇いの人足仕事で口に糊する日々、

    少したまった金は酒と女に使いきる。


    どうもうまく行かない人間関係

    周囲の好意を裏切り続けるだらしなさ。


    酒に酔っては喧嘩して、時には警察のお世話になり、

    または転がり込んだ家の家賃が払えず大家と揉める


    中卒で社会に飛び出して底辺を這いずり回る主人公の人生。普通は絶対関わりたくない人間だけど、何というかホントはうまくやりたいのに、うまくできない主人公の気持ちもちょっと解ってしまう。


    このシリーズは定期的に読んでいきたい。

    0
    2020年01月27日
  • 羅針盤は壊れても

    Posted by ブクログ

    どうしようもないダメ男が主人公。
    ものすごくリアリティを
    もって書かれていて自分が体験しているような気分を
    味わえる。これぞ小説の醍醐味。

    0
    2019年12月21日
  • 夢魔去りぬ

    Posted by ブクログ

    相変わらず面白い。
    本作では主人公の理不尽な怒りがエスカレートして、頻繁にツバを吐いたりするのがすごい。
    狂ってるー。
    期待を裏切らないいつも通り感。
    鍋を買って喧嘩とかせせこましくて面白いし、魚の一件は秋江が逃げてしまうことの暗示のようでおもわせぶりでよきよき。
    主人公の他人を評する際の嫌な感じも楽しいし、せせこましい人間のくせに喧嘩の時の啖呵だけ立派なのも楽しいし、一切退屈しない。言葉への並々ならぬこだわりが、倦怠を拒絶する。読んでいるだけで快楽。

    0
    2019年12月11日
  • 掌篇歳時記 秋冬

    Posted by ブクログ

    12名の著名な作家の短編が72候の解説と一緒に読める、ある意味で贅沢な本だ.重松清の鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)は父親としての最後の旅行で息子の翔太を見つめる親心がうまく描写されている.筒井康隆の蒙霧升降(ふかききりまとう)は戦後の風物詩を散りばめた彼独特の文章でしっかり意見を述べているのが良い.堀江敏幸の熊蟄穴(くまあなにこもる)は菱山の取材活動のなかで村の古老たちとの奇妙な会話が面白かった.

    0
    2019年12月08日
  • 掌篇歳時記 秋冬

    Posted by ブクログ

    物語ではなく、読書そのものと、日本の繊細な四季の移ろいを味わう一冊。初めて読む作家さんもいて楽しかった。

    0
    2019年12月05日
  • 人もいない春

    Posted by ブクログ

    著者と同世代の人たちはバブルの真っ只中で青春を過ごしているはず。その世代における底辺の日常は実はいつの時代にもある。70年代の松本零士の「男おいどん」の世界も然り。人の生き方、生活は一様ではない。正解も理想もない。それぞれの世界でのやり方、生き方がある。

    0
    2019年05月08日
  • 夜更けの川に落葉は流れて

    Posted by ブクログ

    この人の小説を読むと非常に憂鬱な気分になる。読後の胸糞悪さは計り知れない。主人公貫多の病的な性格はまるでコント。あまりの不憫さに笑けてくるほど。まあいつものこと。
    でも何故か、不思議とこの作者の作品を読むのはこれで11作目。読後のあの胸糞悪さを求めて、作品にまた手を伸ばしている。そんな私はもはや西村賢太作品の中毒者なのかもしれない。

    0
    2018年12月06日
  • 人もいない春

    Posted by ブクログ

    苦役列車から流れて読んでみた。
    相変わらずの貫多の大冒険物語。

    バイト先でのトラブル、
    知り合った女性とのいざこざストーリーが、
    やはりおもしろい。
    最低な人間だけど、人間くさい貫多。
    友だちには絶対なりたくないタイプとおもいつつも、その飾り無いゲス語りに、妙に共感出来てしまうところもあり、ぐいぐい読み進めてしまう。

    物語後半のその貫多に出来た天使のような彼女の話も貫多とのコントラストがあいまって、妙に考えさせられる。

    途中のネズミ一家の話も秀逸。

    0
    2018年08月25日
  • 夢魔去りぬ

    Posted by ブクログ

    作者の作品を読んでいる時、北町貫多の怒りの頂点を少なからず期待しながら読んでいる。その怒りの後の感情の移り変わりにも興味がある。私自身も癇癪持ちで怒りの後のむなしさをよく理解できる。北町貫多が怒り殴った後は読んでいてもむなしくなる。少し落ち込むがこの作者の作品をまた読みたいと思い読んでいる。興味深い作家さんである。

    1
    2018年06月14日
  • 夜更けの川に落葉は流れて

    Posted by ブクログ

    クリスマスイブの華やかな店内。見渡せばほとんどが若いカップル。その只中、四人掛けのテーブルに揃いの作業着姿の男が6人。女に一切縁がなくテーブルには一様にミックスグリルとライスの大盛り。皆一様に押し黙り、ただひらすらに箸やフォークをカチャカチャ動かしている。その座のそれぞれが虚しさと寂寥を漂わせている。短気さえ起こしていなければこんな場所にいなくてもよかった。加えて意想外な方向からワリカンと知らされる。自分で払うのなら吉野家で良かった。悔恨の波が次から次へと押し寄せる。
    普段はえらく大人しく小心者が、何かを契機にスイッチが入ってしまうと、人が変わり暴言が暴力に発展し破滅へとまっしぐらに落ちてゆく。水戸黄門ばりのワンパターンだが、物語は初から終わりまで引き締まっており一寸の隙もない。終始唸らされながら読まされた。二度読み三度読みしてよい傑作。凄すぎる。

    0
    2018年03月21日