西村賢太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「今日はここまで」と、本を閉じるたびに、満ち足りた気持ちになりました。
小説を読む悦びを、西村賢太さんの作品は十二分に味わわせてくれます。
でも、何故なんだろう、と考える。
だって、物語らしい物語があるわけではありません。
アルバイト先での人間関係、同棲相手とのいざこざ、挙句、レストランにいるネズミの話。
おおよそ「どうでもいい」話が、西村さんの手にかかると、激烈に面白い。
1つは、著者その人である主人公「北町貫多」のキャラクターにあるのは言を俟ちません。
猜疑心と執着心が強く、妬み深くて小心と、人としての欠点がほぼ全てそろっている人物。
と、ここまで書いていて、世間が「好ましい」とする人物像と真逆なことに気づきます。
たとえば、会社が新入社員に求める人物像。
明るく前向き、好奇心旺盛でコミュニケーション能力が高く、どんなことにも積極的に挑戦するチャレンジ精神旺盛な人物、といったあたりが一般的でしょうか。
こうして文字にすると、随分と薄っぺらい、何というか内実など何もない感じがします。
というか、ぼく自身が社会生活を送る中で、いつの間にかこういう「真っ当」とされる情報に取り囲まれて辟易しているという面もあるのでしょう。
ぼくは、貫多に人間的な魅力を感じます。
それから、西村さんの小説の面白さの秘密は、やはりその文章力にありましょう。
古風な文体ですが、ぐいぐいと引き込んでいく力があり、やがて中毒になります。
ぼくは、特に、貫多の心理描写が好き。
卑怯で怠惰で打算的で自分勝手。
でも、「分かる分かる」と膝を打ちながら読んでしまいます。
それで、はたと、西村さんの掌の上で踊らされていることに気づくわけです。
これは文章による芸ですね。
次は「二度はゆけぬ町の地図」を読む予定。
楽しみです。 -
Posted by ブクログ
びっくりするぐらい非モテダメ男の青春奮闘記
「彼は見た目は野良犬ながらも 、その根は余りにも貴族気質にでき過ぎてしまっていた 。そしてまた 、見た目は若きお菰風ながらも 、その根は余りにも坊っちゃん気質にでき過ぎてしまっていた 。」という文から伺えるように、主人公はとにかくプライドが高くて、被害者意識の塊。バイト先の人間とか割とふらっとに見ているはずなのに、自分は馬鹿にされてる、疎まれてると思い込み暴虐な限りを尽くす。もう少し自己肯定感が高くて、他者に歩みよれば普通の関係性を築けるのにと思いながら読み進めていた。
でも、こういう北町貫多的な卑屈性は自分の中にも心辺りあるなと思い、深淵を覗いてると思ったら、自分の深淵の部分を見つめ直していた。
「確かに自分は 〈青春の落伍者 〉にはなりつつあるが 、しかしながら 、まだ 〈人生の落伍者 〉には至っていないのだ 。」という文がまた心に染みる。 -
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再読。芥川賞を受賞した『苦役列車』よりこの『どうで死ぬ身の一踊り』のほうが文学性は高いように思う。美しく端正な日本語を操り純文学の香りを持ちながらも、内容はお下劣極まりない。東大卒のサラブレット作家には醸し出せない、余所行きの一張羅を誰よりも綺麗に着こなす下民といったところか。(すべて誉め言葉)
主人公寛多は、所謂無敵の人で、無職のくせに借金を重ね大酒飲みで恋人に暴力を振るう最低な人物だ。不快な設定なのに面白おかしく読めるのは寛多が徹底して屑で、そのくせ文章に品があり且つ藤澤清造への熱意は物凄く純粋だからであろう。
好き嫌いが相当別れる作家だが中毒性ある作家だ。 -
Posted by ブクログ
西村賢太の自伝小説。
読むのは3冊目くらい?
この魅力は独特で相変わらず面白い。
普通では体験できない最低最悪な人生模様を、
垣間見れるから、まぁ他人事で面白いんだろう。
日雇いの人足仕事で口に糊する日々、
少したまった金は酒と女に使いきる。
どうもうまく行かない人間関係
周囲の好意を裏切り続けるだらしなさ。
酒に酔っては喧嘩して、時には警察のお世話になり、
または転がり込んだ家の家賃が払えず大家と揉める
中卒で社会に飛び出して底辺を這いずり回る主人公の人生。普通は絶対関わりたくない人間だけど、何というかホントはうまくやりたいのに、うまくできない主人公の気持ちもちょっと解ってしまう。
このシリーズは定期的に読んでいきたい。 -
Posted by ブクログ
クリスマスイブの華やかな店内。見渡せばほとんどが若いカップル。その只中、四人掛けのテーブルに揃いの作業着姿の男が6人。女に一切縁がなくテーブルには一様にミックスグリルとライスの大盛り。皆一様に押し黙り、ただひらすらに箸やフォークをカチャカチャ動かしている。その座のそれぞれが虚しさと寂寥を漂わせている。短気さえ起こしていなければこんな場所にいなくてもよかった。加えて意想外な方向からワリカンと知らされる。自分で払うのなら吉野家で良かった。悔恨の波が次から次へと押し寄せる。
普段はえらく大人しく小心者が、何かを契機にスイッチが入ってしまうと、人が変わり暴言が暴力に発展し破滅へとまっしぐらに落ちてゆく。水戸黄門ばりのワンパターンだが、物語は初から終わりまで引き締まっており一寸の隙もない。終始唸らされながら読まされた。二度読み三度読みしてよい傑作。凄すぎる。