西村賢太のレビュー一覧

  • 苦役列車(新潮文庫)

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    ただただ貫太が最低で気持ちがいい。私小説と言っても、今まで読んできた太宰治屋三島由紀夫やドストエフスキーは、どれも文学少年のどこか上品な絶望を書き綴ったものだった。

    それに対して西村賢太は上品の欠片もなく、ただただ下品。下品なのと裏腹に難しく古風な言葉使いが対照的でおもしろい。これも貫太の見栄っ張りで衒学的なところと合ってる気がする。開けっぴろげにしてくれてありがとうまたよもう

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    2025年09月18日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    正直自分は、これに共感することは無かったんだけれども、人間の鬱屈とした感情を包み隠さず、そして何故か活き活きと描かれていて、ページを捲る手が止まらなかった。

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    2025年09月16日
  • 夜更けの川に落葉は流れて

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    表題作「夜更けの川に落葉は流れて」が良かった。秋恵ものじゃなく若い頃付き合った佳穂という女性との交際話だったのは新鮮だった(ただ佳穂に対しても貫太は暴力をふるうという駄目さが出たのが)。佳穂と別れ、クリスマスイブで浮つく街の中を歩き芝公園内を歩き、何かを感じ取る貫太。ここの描写がとても良かった。
    「青痰麵」では50歳になった貫太が見れるのは珍しかった。TVに出るようになっても貫太は貫太だった。

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    2025年08月29日
  • 東京者がたり

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    西村賢太による東京各所に絡めた追憶エッセー。
    北町貫多ではなく、西村賢太の経験として北町貫多ものとダブるような話がされているのがなんとも面白い。
    というか、貫多ものを読んでからこちらを読まねば面白さは伝わりにくいだろう。

    普段は北町貫多を自身から突き放すような振る舞いが多い著者だが、今作では確かに自身の1バリエーションとして貫多を見ているのが感じられる。

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    2025年08月22日
  • 田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら 他

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    自身の心情について醜くも赤裸々に綴られているところが私小説の面白さの一端を垣間見ることができたように思う

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    2025年08月13日
  • 夢魔去りぬ

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    「人工降雨」
    秋恵もの。DVの謝罪からはじまり、一瞬のハネムーンののちにあっという間に貫太がイライラして暴力が飛ぶ。
    もはやDVの様式美と言えるテンポの良さと流れの完成度はコントや落語の域である。
    ここまでオーソドックスでストロングなDVを描く西村賢太はもはやDVの大家と言える。
    「下水に流した感傷」
    これも秋恵。結句、貫太の短絡と暴力の話ではあるのだが、今作の本筋でもある観賞魚を飼おうとして四苦八苦しているくだりがなかなか面白い。
    「夢魔去りぬ」
    西村賢太にとっては歯を食いしばりながらのマイルストーンであるのだろうなと感じられる作だが、エンタメ的な私小説としてはケレンみが薄い。
    後世の西村賢

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    2025年07月30日
  • 夜更けの川に落葉は流れて

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    「寿司乞食」
    念願の築地勤めのバイトをつかみ、場所柄の気風の良い歓待を受けて調子に乗りまくる北街貫太の話。
    いつも通りそんな理想環境もあっさりぶち壊すのだが、築地の人たちが良い人すぎて醜悪な破滅にはならないのがなんだか面白い。
    「夜更けの川に落葉は流れて」
    表題作。バイト先で出会った女性との甘い時間と貫太らしい身勝手さによるぶち壊し。
    今回は珍しく甘やかな時間もそれなりにあるので、年らしく青春している貫太への西村賢太の面映いような目線も感じる。
    しかし、ぶち壊しに行く顛末はひたすらに醜い自己完結でありさすが北街貫太といったところ。
    「青痰麺」
    病的な癇癪と奇行の話。作家となった今まで繋がる話で

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    2025年07月30日
  • 小銭をかぞえる

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    Twitter(X)で「焼却炉行き赤ん坊」を知り、読んだ。
    1人の男の思考回路をなぞるこの書き方、読みやすいし、読んだらいけない女性もいるんだろうな、など。

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    2025年05月17日
  • やまいだれの歌(新潮文庫)

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    なかなかに底辺の世界を描いているのだが、何故か貫多に親近感を覚えてしまう。酒癖が悪く全てを失う辺り、気が気でない。

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    2025年04月28日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    寛多もの。しかしその寛多が随分と若く、17才の頃の話だ。だからか、いつも通りに悪態をついたり過大な自尊心を持つ姿も、初々しさとも感じられ他の寛多ものより醜悪さが低い。

    とはいっても、結局は寛多であり、自分の可能性を癇癪と僻み根性で台無しにしているのはいつも通りなのだが。

    古書道楽はすでにやっているものの、まだ藤澤清造に出会っておらず、生々しい傷跡を見せるような寛多の衝動めいた感情も今作ならでは。

    西村賢太自身も17才の寛多に関しては、回想録というよりは出来の悪い子供を苦く眺めているような態度なのがなんだか面白い。

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    2025年02月22日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    女々しく且つだらしない貫多の行動と洞察、思考に共感する所がある。具体的には貫多の他責思考で嫉妬深く自分本位な性格なところや、坊主憎けりゃ袈裟まで憎しで嫌いになった友人とその彼女までもを卑劣な目に合わせたくなるその攻撃的な衝動と言動。

    それらは読者である自分にも見出せる共通点でもありつつも長らく蓋してきた醜悪な部分でもあり、ページをめくるごとに眼前に取り出して見せられ眺められているようだった。辱めを受けたかのような錯覚を受け、同時にその反応すら見られているような。そんな私小説の醍醐味を久しぶりに味わえた。

    視点を変えると、私はここまで自分を曝け出すことはできるだろうかと考える。恐らくできない

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    2025年02月23日
  • 東京者がたり

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    書かれた場所を地図で調べたくなり、実際に行って見てみたくなり、関連する小説を読み返したくなる。結局、西村賢太に興味があり、彼の文章のファンになってしまえば、もはや何でも面白いのだが、それにしても脚色はあるだろうが、昔のことをよくこれだけ覚えているものだと感心する。

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    2025年01月09日
  • 瓦礫の死角

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    母克子のとの具体的なやりとりを初めて読めたと思う。その後実家を追い出され駅構内の飲食店でのアルバイトの話も初めてだった。そのほんの数ヶ月の出来事の中の、しかもほんの些細な題材を丁寧に面白く書かれていた。普通に楽しかった。同じ世代の17歳よりははるかに精神年齢が上になってしまうのは環境から仕方ないとはいえ、逆にまだ17歳。不安定な部分があって当たり前だと思うし普通に一人暮らしは無理だろう。まあでも克子と同居するのは無理だろう。
    終わりの2章はとたんに中年になっている貫多。そんな大金をはたいてまで古書をそろえるのは自分の金銭感覚とかなり違っている。ホント人と比べない、「普通」がない、どこまでも自分

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    2025年01月02日
  • 随筆集 一私小説書きの独語

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    表題の『一私小説の独語』は私小説作品と重複した内容ともいえるが、北町貫多の話ではなく、西村賢太の話としてまた違った視点、文体で改めて読める面白さがある。それにしてもこの人の文章は内容に関わらず読んでいて楽しい。

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    2024年12月21日
  • 蝙蝠か燕か

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    2022年53歳、逝去。
    まだ若いが、著者らしいと言えば、著者らしい。

    藤澤清造に取り憑かれたように人生を捧げ、その一生を私小説のために生きた。ファン精神などと言えば、氏が墓場で憤怒するだろうか。氏のアイデンティティとして、藤澤清造は生活の一部となり、生き方の模範でもあり、そしてその破滅的な生き様は、どこまでも晴れはしない西村賢太の孤独な生涯における慰めであったに違いない。

    蝙蝠か燕か、何かの象徴を見たようなタイトル。想像されるのは日陰と日向の対比だが、氏の生き様にとって、それ自体はこだわるものでもない。拘泥するのは歿後弟子となった師匠のみ。飛び立つ黒い影。導かれたのも、その生き様だった。

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    2024年12月15日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    表紙、題字フォント、カバーからして陰鬱な印象を受けた。独特な文章だが、読み辛いとは思わないし、寧ろ引き込まれてしまう。
    妬み嫉みに塗れたその日暮らしの主人公がいて、それを俯瞰的(一般人に近い客観的)な視点で捉える作者がいて。子どもは親を選べない。11歳の時点で人生が決まったという単純かつ短い文の放つ哀しみが強烈で、貫多が合理的かつ器用に生きていくことの難しさを要所要所で突きつけられ、暗澹たる気持ちにさせられた。
    西村氏を一目見た時からなんだか纏っているものが尋常ではないと感じてはいたが…
    「落ちぶれて…」では何頁にもわたって、ギックリ腰で苦しむ様、それを1人で抱えながら孤独に生きていかなければ

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    2024年12月08日
  • 苦役列車(新潮文庫)

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    育った環境の不条理さや劣等感、恵まれた環境で育った周りの人間への怒り。この私小説では主人公の感情が痛いほど刺さる。
    西村先生の書く独特な文章も含め素晴らしい作品。

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    2024年12月06日
  • 蝙蝠か燕か

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    没後に単行本化されたこともあり、そういうつもりで読んでいると、文章が『芝公園六角堂跡』以前のような荒々しいものではなく、成熟を感じさせられるせいか、表題の『蝙蝠か燕か』を読んでいると、なんだかあの世から生涯を振り返っているように思えてくる。

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    2024年11月24日
  • 雨滴は続く

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    西村さんの名前を鶯谷のルポで知り読み始めた。
    私小説家が芥川賞を受賞するまでの物語。自分の才能に悩み、女に逃げ、卑怯な二股を掛ける。まあ酷い主人公なんだけど、そこが真理を抉っていて怖いもの見たさでついつい引き込まれていく。
    この本が絶筆となった由。残念

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    2024年11月24日
  • 蠕動で渉れ、汚泥の川を

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    ネタバレ

     こみ上げてくる恥辱感に、暫時顔を伏せて瞑目する貫多は、このときふと、自身の心に強固な支えとなるものの不備を感じた。
     こんな際に、その存在を思えば、その存在さえあれば、他のことはすべてがどうでもよい、と達観できるまでにのめり込み、すがりつける対象となる何かがあれば、どれだけ救われることだろう。

    このあとに貫多は田中英光や藤澤清造と出会っていくのだと思うと感慨深い。

    ただ、今回の作品は西村賢太の中でも最も笑った!
    ヒトを感情溢れるままにこき下ろす暴言には才能さえ感じる(笑)

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    2024年11月16日