石田衣良のレビュー一覧
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「千川フォールアウト・マザー」は、シングル・マザーの女性が直面している問題をあつかったエピソードです。
また表題作の「非正規レジスタンス」も、ギリギリの条件で生きている非正規雇用労働者たちのすがたと、彼らから搾取をおこなっている派遣会社についての問題をあつかったものです。これだけでは、あまりにも「社会派」的な話になってしまうのですが、派遣労働者たちのサポートをおこなっている、萌枝というメイド服姿の女性キャラクターを脇役に配しているのは、テーマの生々しさを和らげようという意図なのでしょうか。そうだとしても、結末で彼女の正体が明かされる展開といい、若干ライトノベルふうのテイストを感じて、個人的に -
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「野獣とリユニオン」は、料理人をめざしていた兄が、少年による襲撃を受けて足を傷つけられ、夢をあきらめなければならなくなったことを受けて、妹が復讐をしたいとマコトに依頼を申し入れます。マコトは、犯人の少年の背景を知り、被害者の兄がみずからの決断で、前へ向かって進んでいくことを見とどけます。
「池袋フェニックス計画」は、池袋の風俗営業を一斉摘発するという計画が、副知事の肝いりで推進されます。マコトの果物屋も含む街の零細企業はそのあおりを受け、たがいに対立しながらも共存を図っていた裏社会の人びとも窮地に立たされます。そんななかでマコトは、ホスト・クラブ通いで借金がかさみ、風俗に足を突っ込んでしまっ -
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「スカウトマンズブルース」は、風俗店のスカウトを務めるタイチという少年と、彼にあこがれるしのぶという少女をめぐる事件をあつかっています。けっしてつまらないというわけではないのですが、いつものようにタカシとサルの協力を得ながら、ストリートで起こる事件をマコトが解決にみちびくという内容で、正直なところ既視感もおぼえはじめています。
「死に至る玩具」は、中国の過酷な労働環境のもとで働かされ死んでしまった姉をもつ、紅小桃という中国人の女性に、マコトが協力する話。
「反自殺クラブ」は、ネットを通じた集団自殺を止める活動をしているミズカたちの依頼を受けて、マコトが自殺サイトの管理人を追う話。著者があつ -
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IWGPシリーズの番外編で、本編でも登場するサルこと斉藤富士男が準主役を務める長編作品です。
映像ディレクターの小峰渉は、ギャンブルで首が回らなくなり、村瀬勝也という男たちと協力して、カジノ・バー「セブンライブス」の売上金をうばう計画にくわわることになります。ところが、仲間の一人である鈴木と名乗る男の裏切りにより、村瀬は命を落とし、小峰もカジノの元締めである氷高組に身柄を拘束されてしまいます。小峰は、氷高組のサルの協力を得て、一か月の猶予期間のあいだに鈴木という男のゆくえを突きとめ、金をとり返すことを約束します。
本編よりも闇社会に半歩ほど深く踏み込んだ内容といえそうですが、ハードボイルド -
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「東口ラーメンライン」は、Gボーイズのツインタワーが経営するラーメン店が、何者かによる嫌がらせの被害を受け、マコトが犯人をさがし出す話。
「ワルツフォーベビー」は、五年前に息子を殺した犯人について調べてほしいという父親の依頼をマコトが引き受ける話。息子の南条利洋は、かつて上野のチーム「アポロ」のリーダーを務めていましたが、マコトが話を聞きに行くと、当時の仲間たちはことばを濁します。その後、利洋の妻であった晴海とその関係者から、利洋が仲間たちに向けていた顔と、意外な事実が判明していくことになります。
「黒いフードの夜」は、ビルマ人の少年のサヤーの物語。彼の父親は、民主化運動にコミットしながら -
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「西一番街テイクアウト」は、街で熱を出して倒れてしまった桜田香緒という少女を、マコトが助けるところから物語がはじまります。香緒の母親のヒロコは、娘をそだてるために連れ出しパブで働いていますが、そこは中国系・韓国系の店の縄張りで、ヒロコは妨害を受けていました。マコトは、彼女たちの複雑な事情に立ち入ることなく、二人が安全に暮らすことのできることを願います。そんなマコトの願いを実現したのは、彼の母親を中心とする、地域の女性たちのネットワークでした。
「西口ミッドサマー狂乱」は、マコトがタカシにさそわれて、御厨ソウメイが主催するレイヴの会場に出かけて、会場で危険なドラッグを売っている「ウロボロス」と -
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表題作の「少年計数機」は、マコトが新宿西口公園で出会った、多田広樹という少年が誘拐されるという事件をえがいています。ヒロキの母親のシャロン吉村は芸能人、父親は新宿の風俗街をとりしきっている男で、誘拐犯はヒロキの兄の秀人という、人間関係が絡みあう厄介な事件にマコトが足を突っ込むことになるのですが、ヒロキに対するマコトの優しさが印象にのこっています。
「銀十字」は、ひったくり犯を見つけ出してほしいという、喜代治と鉄という二人の老人の依頼をマコトが引き受ける話です。口を開けばエロ話しかしない銀のキャラクターが強烈ですが、彼のおかげもあって、本巻のなかでは比較的コミカルな性格の強い一話となっています -
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池袋を舞台に、若者たちが引き起こすさまざまな事件にかかわるトラブル・シューターの役目を演じる真島誠という青年が主人公を務める連作短編シリーズです。
第一話「池袋ウエストゲートパーク」は、いつものように新宿西口公園にすることもなく集っていたマコトが、ヒカルとリカという二人の少女と出会います。その後、身体を売っていたリカが、客の男性に首を締められて殺害されたらしいことをマコトは知り、その犯人をさがし出そうとします。
そのほか、マコトの友人で「Gボーイズ」というチームのリーダーを務め、池袋の少年たちの「王様」である安藤崇や、やはりマコトのかつての同級生で、暴力団に入った「サル」こと斉藤富士男、引 -
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石田衣良さんの作品はLGBTQについて触れていたり、「性」を広く扱った作品が多く、中学生の頃に『sex』*という本を読んでからたびたび読む作家さんになった。
*『sex』はタイトルにあるように【性】をテーマに扱った短編集で、中学生の性事情からアブノーマルな性まで広く扱った作品です。興味があれば是非。
『reverse』単行本の出版は2007年。そのため、本作のネットで男女が出会うという設定は今っぽいのだけれど、ところどころ2000年代初期を彷彿とさせる表現がある。
例えば、冒頭のノートパソコンを立ち上げながら、朝食の準備をするというシーン。2022年現在はノートパソコンの立ち上げに10秒 -