伊坂幸太郎のレビュー一覧
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短いけれど示唆に富み、含蓄のある作品でした。
人間にとっての「物語」の存在の大きさが、朝井リョウさんの『インザメガチャーチ』にも通じるところがあり、興味深く読みました。
すぐ目の前にあるAIの脅威に対して、NIという知を対置するところが伊坂幸太郎さんらしい。それが人間の作り上げた世界への最期通告というのは、ある意味救いでもありAIの脅威からの逃げとも言えるのではないでしょうか。
とにかくもう眼前に危機が迫っていることを、これから作家さん達がどのように捉え、それを作品に落とし込んでいくのかは、ここ数年が勝負だと思っています。伊坂幸太郎さんはそれを鋭く描いているのだと思います。それでも、人間の知るところは、AIの発達には到底追いつけないのではないでしょうか。それを選んでしまった人間が何処に行くのか、決定的な場面を眼にする前に私はこの世とサヨナラしたいですね。 -
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◼︎総括
・気負わず手に取れ、引っかかりなく読み通せる短編集。
・主人公が死神という設定には捻りがある一方、各編の展開自体は平坦。感情を大きく揺さぶられる体験を求める方には不足が残る。
◼︎良かった点
1. 心理的負荷の低い可読性
・文章・構成ともに障害がなく、どこから読んでも負担にならない作り。
・短編形式であることも相まって、読書の入口としてのハードルが極めて低い。
2. 主人公の設定に独自性がある
・全編を貫く主人公の造形が通常の人物像から外れており、その視点が作品全体の統一感を担保している。
・設定そのものが各編を読み進める動機として機能している。
◼︎気になった点
1. 各編の起伏に乏しい
・主人公の設定を除けば、個々のストーリーはさらりと流れる構成。
2. 感情を揺さぶる場面の不在
・ダイナミックな展開や、緊迫感を伴うシーンは基本的に存在しない。
・読みやすさと引き換えに、体験としての振れ幅は小さい。
◼︎向いている読者
・隙間時間に負担なく読める短編集を求める人。
・展開の激しさよりも、統一された視点と雰囲気を味わいたい人。 -
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ネタバレ殺し屋シリーズ第二弾。伊坂氏の2010年の作品。
これまた驚く設定と展開、そして相変わらず秀逸な人物設定。今回も飛び切り面白いのですが、会話劇よりも人物造形が良かったと思います。とりわけトーマス好きの檸檬と文学好きの蜜柑。イイ感じでした。
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第一作では亡き妻の復讐を企てる鈴木が、いつの間にか多くの殺し屋に翻弄される話でありました。
今回も多くの殺し屋が出てきますが、主人公は殺し屋の七尾、通称「天道虫」。
伊坂氏のお得意の秀逸な人物造形ですが、今回のこの七尾は、とにかく運がない。運がないけどかなり優秀な殺し屋、という設定です。
あと、中学生「王子」がマジで嫌な奴。世の中の一般を理解しきって、それを見下して、利用して、楽しむ。本当に嫌な奴を描くものです。
檸檬と蜜柑が面白いのは良いとして、ややネタバレですが、最後に元殺し屋「木村」のピンチに両親がなんと駆けつけるのです。このあたりからのドライブ感・疾走感がたまらなく好きです。
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ということで、殺し屋シリーズの第二弾でした。
第三弾を先に読んでしまいましたが、第二弾も良かったです。あ、あと、第一作の主人公鈴木も友情出善していますよ!
そういえば本作、何とブラピ主演でハリウッド映画化もされたそう。伊坂作品は色々映画化されていますが、全く見ていません。これも機会があれば見たいですね。 -
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まず印象に残ったのは、五つの短編すべてに登場する陣内というトリッキーな人物。
陣内の言動はとにかく予測できない。どこまでが本人の計画で、どこからがミラクルなのか分からないが、なぜか最後には物事を丸く収めてしまう。
めちゃくちゃなことをしているように見えて、筋が通っている様な気もする。
その不思議な力というか天性の才能のようなものが面白くて、陣内が登場するたびに「今度は何をするんだろう」と楽しみになった。
物語そのものも、どこに向かっているのか、次に何が起こるのか、全く予想できなかった。伏線が多すぎて「あ、え? そういうこと?」となる瞬間が何度もあった。
さらに、物語の時間軸が前後しながら進むため、混乱したが、それぞれの短編が少しずつつながっていく感覚があり、その構成もこの作品の面白さの一つだと思う。
とはいえ、自分の中ではまだすべての伏線を拾いきれていない気がしているので、話を知った上でもう一度読み返してみたい。 -
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ネタバレ【ネタバレあり】伊坂幸太郎『グラスホッパー』レビュー|殺し屋たちが交錯する物語の結末と魅力を徹底解説
この記事には、伊坂幸太郎『グラスホッパー』の重大なネタバレが含まれています。
未読の方は、できれば本編を読んでからこの記事をご覧ください。
伊坂幸太郎さんの『グラスホッパー』を読みました。
一言で感想を言うなら、
「殺し屋の話なのに、どこかユーモラス。そして最後には人間の善悪について考えさせられる小説」
でした。
『グラスホッパー』には、一般的なミステリー小説のような「犯人は誰だ?」という謎解きだけではありません。
登場するのは、
* 妻を殺された元教師
* 自殺させ屋「鯨」
* ナイフ使い「蝉」
* 自動車事故に見せかけて人を殺す「押し屋」
という、かなり癖の強い人物たち。
それぞれが別々の目的で動いているのに、少しずつ物語が交差していきます。
そして面白いのが、
「一体この人たちは、どこでつながっているんだ?」
と思いながら読み進めているうちに、いつの間にか全員が同じ物語の中に集約されていくこと。
伊坂幸太郎作品らしい、軽妙な会話と独特の世界観も健在です。
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『グラスホッパー』はどんな小説?
『グラスホッパー』は伊坂幸太郎さんによる長編小説です。
物語の中心になるのは「鈴木」「鯨」「蝉」という3人。
主人公の鈴木は、もともと中学校教師でした。
しかし、ある事件をきっかけに教師を辞めることになります。
その事件とは、
最愛の妻を殺されたこと。
妻を殺した人物に復讐するため、鈴木は裏社会へと足を踏み入れていきます。
そこで出会うのが、さまざまな「殺し屋」たちです。
中でも重要なのが、
「押し屋」
と呼ばれる殺し屋。
彼は人を車道へ押し出し、自動車事故に見せかけて殺害するという特殊な方法を使います。
この押し屋を追う鈴木。
一方で、別の殺し屋である鯨と蝉も、それぞれの事情で動き始めます。
3人の視点を行き来しながら物語が進んでいくのが本作の特徴です。
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『グラスホッパー』のあらすじ
主人公の鈴木は、妻を交通事故で失います。
しかし、それは偶然の事故ではありませんでした。
妻を殺したのは、裏社会の人間である寺原の息子。
鈴木は復讐のため、寺原が経営する会社に入り込みます。
そこで寺原の息子に復讐しようとした瞬間――。
彼は「押し屋」と呼ばれる殺し屋によって車道へ押し出され、轢き殺されます。
目の前で起きた不可解な殺人。
鈴木は、その現場にいた「押し屋」を追いかけることになります。
一方、別の場所では「鯨」という殺し屋が仕事をしています。
鯨の能力は、
人間を自殺させること。
彼が近くにいるだけで、人間は自分自身の罪や恐怖に耐えられなくなり、自殺へと追い込まれてしまいます。
さらに「蝉」という若い殺し屋も登場します。
蝉はナイフを使った殺人を得意とし、非常に短気で攻撃的。
そんな3人の物語が少しずつ交差していきます。
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【ネタバレ】押し屋の正体は?
本作最大の謎の一つが、
「押し屋とは何者なのか?」
ということです。
鈴木は押し屋を追跡します。
そして最終的にたどり着くのが、
槿(あさがお)
という人物です。
槿は、一般的な「殺し屋」のイメージとは大きく異なります。
妻や子どもと暮らし、普通の家庭を持っているように見える人物。
しかし、実は彼こそが「押し屋」でした。
ここが本作の面白いところです。
殺し屋なのに、普通の家庭を持っている。
殺人を職業にしている人間が、家庭では父親として生活している。
そのギャップが非常に印象的です。
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槿は本当に「悪人」なのか?
『グラスホッパー』を読んでいて面白いのが、
「誰が善人で、誰が悪人なのか」が簡単には判断できない
ことです。
例えば鈴木。
妻を殺された被害者であり、復讐をしようとしている人物です。
普通に考えれば、読者は鈴木に感情移入します。
しかし、鈴木自身も裏社会に入り、人を殺そうとしています。
一方の槿は殺し屋。
当然、善人ではありません。
ところが、彼には家族がいて、家族を大切にしています。
「殺し屋」という一面だけを見れば悪人。
しかし家庭では普通の父親。
この矛盾が本作の面白さです。
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「鯨」という殺し屋が怖すぎる
個人的に『グラスホッパー』で最も印象に残ったキャラクターは、鯨です。
鯨の能力は、
人間を自殺へ追い込むこと。
ただし、直接手を下すわけではありません。
相手の心の中にある罪悪感や恐怖を刺激し、
「自分は生きていてはいけない」
と思わせる。
そして相手自身に死を選ばせる。
この設定が非常に怖い。
ナイフで人を殺す蝉よりも、むしろ鯨のほうが怖く感じます。
なぜなら、
人間の精神そのものを武器にしているから。
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「蝉」は物語にユーモアを与える存在
蝉は非常に攻撃的な殺し屋です。
ナイフを使って人を殺すことを仕事にしています。
しかし、意外と人間臭い。
特に鯨とは対照的なキャラクターとして描かれています。
鯨が静かで不気味なのに対して、蝉はよく喋り、感情的。
この二人の対比が非常に面白いです。
殺し屋同士の会話なのに、どこか漫才のように感じる場面もあります。
この、
「物騒なのに、なぜか笑ってしまう」
という伊坂幸太郎作品独特の空気感が、『グラスホッパー』の魅力だと思います。
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【ネタバレ】物語の結末
ここからラストについて詳しく書きます。
物語の終盤、鈴木は押し屋を追いながら、裏社会の人間たちと関わっていきます。
そして最終的には、鈴木自身も殺し屋たちの世界に巻き込まれていきます。
しかし、物語は単純な復讐劇では終わりません。
鈴木は妻を殺した男への復讐を目的に動いていました。
ところが、物語が進むにつれて、
「復讐することに何の意味があるのか」
という問題に直面します。
復讐を果たしたところで、妻が戻ってくるわけではない。
むしろ、自分自身が犯罪者の世界へ近づいていく。
そのことに鈴木自身が気づいていきます。
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『グラスホッパー』で印象的なテーマ
この作品のテーマとして強く感じるのが、
「人間は環境によってどこまで変わるのか」
ということです。
鈴木はもともと普通の教師でした。
それが妻を殺されたことで復讐を決意し、裏社会へ入っていきます。
つまり、
普通の人間だった鈴木が、殺し屋たちの世界へ入っていく。
この変化が物語の重要な部分です。
一方で、殺し屋たちも単純な「悪人」ではありません。
それぞれに価値観があり、人生があり、弱さがあります。
だからこそ、
「悪人だから悪い」
という単純な構図になっていません。
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『グラスホッパー』というタイトルの意味
タイトルの「グラスホッパー」は英語で、
grasshopper=バッタ
を意味します。
なぜ殺し屋の物語に「バッタ」というタイトルが付けられているのか。
ここも本作を読む上で面白いポイントです。
バッタは、自分の意思で自由に飛び跳ねているように見えます。
しかし実際には、周囲の環境に大きく影響される存在でもあります。
本作の登場人物たちも同じ。
自分の意思で行動しているように見えて、
* 過去
* 家族
* 復讐
* 裏社会
* 他人との出会い
によって行動を変化させていきます。
一人の人間が別の人間を動かし、その人間がさらに別の人間を動かす。
まるでバッタが飛び跳ねるように、物語が次々と別の人物へ移っていく。
そんな意味も感じられます。
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『グラスホッパー』の魅力は「3人の視点」
この作品では、
鈴木・鯨・蝉
という3人の視点を行き来します。
これが非常に効果的です。
鈴木の章では、
「押し屋を追わなければ」
というサスペンス。
鯨の章では、
「この男は何を考えているのか?」
という心理描写。
蝉の章では、
「次に何をやらかすのか?」
というエンタメ性。
同じ世界で、それぞれ違った物語が進んでいく。
そして最終的に、それらが一本につながっていく。
この構成がとても伊坂幸太郎らしいです。
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『グラスホッパー』を読んだ感想
個人的には、
「殺し屋小説なのに、読後感が意外と軽い」
ところが面白かったです。
扱っているテーマはかなり重い。
殺人、復讐、自殺、裏社会。
普通ならかなり暗い小説になりそうです。
しかし、伊坂幸太郎さん独特の会話やユーモアがあることで、スイスイ読めます。
そして、登場人物たちの会話には独特のテンポがあります。
「こんな状況でそんなこと言う?」
と思わされるような場面もある。
それが逆に、この作品独特の魅力になっています。
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『グラスホッパー』は『殺し屋シリーズ』の原点
『グラスホッパー』は、後の伊坂幸太郎さんの「殺し屋シリーズ」につながっていく作品でもあります。
その後、
『マリアビートル』
『AX アックス』
へとシリーズが展開していきます。
特に『マリアビートル』では、『グラスホッパー』で登場した殺し屋たちの世界観がさらに広がります。
そのため、
「伊坂幸太郎の殺し屋シリーズを読みたい」
という人は、『グラスホッパー』から読むのがおすすめです。
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『グラスホッパー』の評価
個人的な評価は以下の通りです。
項目評価
ストーリー★★★★★
キャラクター★★★★★
世界観★★★★★
会話の面白さ★★★★★
サスペンス★★★★☆
ミステリー★★★★☆
読みやすさ★★★★★
独特の雰囲気★★★★★
おすすめ度★★★★★
特におすすめしたいのは、
キャラクターの魅力と、複数の物語が一つにつながっていく構成。
ここは伊坂幸太郎作品ならではだと思います。
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こんな人におすすめ
『グラスホッパー』は、こんな人におすすめです。
* 伊坂幸太郎作品が好き
* 『マリアビートル』を読んで面白かった
* 殺し屋が登場する小説が好き
* サスペンスが好き
* 独特な世界観の小説が読みたい
* 会話が面白い小説が好き
* 善悪が単純ではない物語が好き
* 複数の登場人物の物語がつながっていく作品が好き
逆に、純粋な本格ミステリーを期待すると、少し違うと感じるかもしれません。
『グラスホッパー』は「犯人当て」よりも、
人物・会話・世界観・物語の交差
を楽しむ小説だからです。
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まとめ|『グラスホッパー』は「殺し屋」を通して人間を描いた小説
『グラスホッパー』は、一見すると殺し屋たちが活躍するクライム・サスペンスです。
しかし、読み終えてみると、それだけではありません。
妻を殺された鈴木。
人を自殺へ追い込む鯨。
ナイフを武器にする蝉。
そして「押し屋」と呼ばれる槿。
一見すると、誰もが普通ではない人間です。
しかし、それぞれの行動を見ていると、
「本当に普通の人間と、彼らの間にどれほどの違いがあるのだろう?」
と考えさせられます。
人間は環境によって変わる。
復讐によって変わる。
他人との出会いによって変わる。
そして、自分ではコントロールしているつもりでも、誰かの行動によって人生を動かされてしまう。
そんな人間の不思議さを、殺し屋たちの世界を舞台に描いた作品だと思います。
個人的には、
「ストーリーそのもの」よりも「登場人物たちを眺めている時間が楽しい小説」
という印象でした。
そして『グラスホッパー』を気に入ったなら、そのまま『マリアビートル』『AX アックス』へ進むのがおすすめです。
特に『マリアビートル』は、殺し屋たちの世界観をさらにエンターテインメント寄りに楽しめる作品なので、『グラスホッパー』とはまた違った面白さがあります。