伊坂幸太郎のレビュー一覧
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殺し屋シリーズ2作目。新幹線の車内で繰り広げられる殺し屋同士のお話。600ページ近くあるため、少しハードルの高さを感じたが、読み始めてからは面白くて全く気にならなかった。特に、最初は全く関係のなかった登場人物同士がそれぞれの思惑や事件によって交錯していくというグラスホッパーと同様の展開によって、物語が加速度的に面白くなっていった。
私は漫画を読むのも好きで、特にバトルものが大好きなので、殺し屋同士の戦いの場面は非常に興奮した。また、伊坂幸太郎さんの作品は、キャラクター同士の軽妙な話し方が凄く好きで、この作品内に登場する二人組の殺し屋の檸檬と蜜柑の会話は特にそれを感じることができ、一番好きなパートだった。
殺し屋シリーズ前作のグラスホッパーに登場した人物やそこで起きた事件についても作中で登場するので、続けて読むとより、おもしろいと思う。
この作品の王子というキャラクターがかなり不快に感じる人物で、そこの場面を読むのが結構しんどかったが全体的には疾走感の溢れるストーリーでした。新幹線に乗って旅行に行くとき、この作品を旅行のお供に持って行きたいなと思う作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ▪️動物園のエンジン
地面に横になったまま、夜の動物園で繰り広げられる男たちの会話を聞いていたのは永沢か、戻ってきたシンリンオオカミか、それとも…。
シンリンオオカミは開放感に満ちた檻の外の世界からなぜ戻ってきたのか。
『相棒』と、『あの時いなくなったシンリンオオカミ』は同じ『彼女』を意味しているのか。
あの夜の数日前まで、うるさかった『男たち』は夜の動物園でなにをしていたのか。
『あの夜』、なにがあったのか。
舞台はマンションやガソリンスタンドが近くにある郊外のさびれた動物園。
2年前にいなくなったシンリンオオカミの補充はなし。
放置された、既にいなくなったレッサーパンダの看板。
動物が脱走したのに破れたままのフェンス。
市が運営する動物園とはいえ、経営がジリ貧なら閉鎖の判断は容易。
永沢が自ら辞して尚、夜の動物園に来ていた理由は、本当に頭の調子がおかしくなったから?
市長殺害の『犯人たち』は、本当に永沢と無関係なのか。
いずれも、明確な答えはない。
10年前、すっかり変わってしまう前の3人の男たちの会話を『お気楽で平和だなぁ』と読んでいる内に、気付けば私もすっかり憶測ゲームにハマっている自分に気付く。
▪️サクリファイス
「ラッシュライフ」の黒澤が主人公として登場することで、自然に、異なる作品間の関連性を想像させられ、一気にページを繰る速度が上がる。
著者の作品は2冊目だが、この凝った構成は新鮮でおもしろい。
また、集落を守るため古くから風習として受け継がれる「こもり様」と、「集落を守るため」村長として自らの人生を捧げる陽一郎という、2つの『サクリファイス』。
悪評は無名に勝るとはこういうことか。
とは言え、本作にかぎらず、そもそも風習とは、他者が単純に評価できるものではないのだろう。
『不都合なことを別のことでカモフラージュする』。
そうせざるを得なかった事実を元に生まれ、受け継がれてきたものもあるだろうから。
評価軸に『正しいかどうかは別』なのだ。
そして、黒澤の言葉どおり『世代を跨いで伝達される慣習が存在しているのは、決してマイナスではない』と思う。
本作が書かれたのが2004年というのは驚きだが、『今の日本では、代々受け継がれていく思想はほとんどない。思想や常識ですら使い捨てで、知恵や知識を蓄積しようという意識が低い』という状況は、2026年のいま更に加速している。
使い捨ての時代だからこそ、古くから残る風習や歴史に新鮮さを覚え、改めて学ぶことがあるのも事実だ。
いまから22年前に書かれた本作からも。
たとえば作家が書く文章がもつ表現力。伝える力。
モノがあふれ、情報を手軽に入手できる現代において、『伝え方』の大事さを説く声は多い。
人間関係における『伝え方』と小説における『伝え方(表現力)』とは必ずしも直結するものではないが、著者の表現力の巧妙さ故に、『伝え方』の妙を想起させられる。
ひと言で言えば『夕暮れどき』。
それを『日が周囲の明るさを引きずって沈みはじめ、空全体が萎んでいく気配がある』とするだけで、読み手の中にその情景がゆっくりと浸透し、作品の中へ没入していく。
『光が閉ざされ、周囲の壁や自らの肌に、黒々とした闇が染みてくるのを、茫然と眺めていたのだろうか』
生贄として洞窟に入れられ、世間と遮断されていく情景や恐怖、喪失感という心の描写を、わずか一文43文字で読み手に伝えきる。
これらはほんの一例。
本作は、わずか72ページの短編なれど、内容だけでなく、そこかしこに散りばめられる文中表現の妙を味わうのも愉しい。
▪️フィッシュストーリー、ポテチ
現実は、そんなうまい話はないよね…
と思いつつ、いずれもハッピーエンドに爽快感を覚える自分もいる。
まさしくフィッシュストーリーというところか。 -
Posted by ブクログ
全体評価は星3だが、
本書が短編集であるためである。
後述の1つの例外を除き
どの短編も個人的に刺さらなかった。
最後の書き下ろし短編「ポテチ」だけは
感想が星4以上となり、
それだけ読むために1冊分の料金でも納得だし、
個人的にお気に入り伊坂長編にも匹敵する満足度で、
何なら伊坂初心者にこれをエントリー作として読ませたいレベルと感じるほど。
伊坂ワールドならではの
キャラクターの魅力、愛嬌、漫才、エモさ、天丼、秀逸な構成と展開が全部揃っていて、
常に何か読ませるものがあり、
牽引力が最後まで気持良くずっと面白い。
仮に趣味が近い友人へ勧めるならば
「『ポテチ』だけ読んでくれ。いいぞ」と言うのだろう。