伊坂幸太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「仕事でつらいことがあり、捨て鉢になりそうな時は、君のことを考えます。君に恥じないような人間になりたい、そう思うと、きちんとしなくてはいけない、と背筋が伸びるのです。ずれを直し、軌道をもとに戻すような気持ちになります」
この本のこととは、まったく関わりのない私事なのだけれど、ぼくは上白石萌歌さんのことが大好きだ。
“長めの引用部分”は『ジャイロスコープ』という短編小説集に収められた最後の一編『後ろの声がうるさい』から。
ぼくは上白石萌歌さんに対して“恥ずかしくない自分でありたい”と願うことで、まっすぐに立っていられる気がしています。このぼくの思いと、まったく同じことが“長めの引用部分”に記されていた。
誰もが同じようなことを考えている証拠なのだろうか。それならそれでも、何の問題もないけれど。
偶然というか必然というか。
この本を手に入れたのは、2026年5月30日。
東京駅近くの大きな書店にて。
この日はadieuのライブの日。
adieu(アデュー)は上白石萌歌さんのアーティストネーム。仙台から上京して、横浜へ向かう途中でした。
この日どうしても文庫本、一冊持っていたくて購入した本。なぜ、そんな思いを抱いていたのか。きっと気まぐれだと思う。
この気まぐれが“偶然のような必然”の始まりだったなんて。
文庫本を、と思ったのは気まぐれだったけれど伊坂幸太郎を、『重力ピエロ』を、とは思ってた。読みたかったから。新幹線の車内で読めたら、と出がけに覗いた仙台駅ビルの書店に『重力ピエロ』が不在で。こちらの書店なら、と乗り継ぎまでの時間をやりくりして駆け込んでみたものの『重力ピエロ』こちらの書店にも、ありませんでした。
他の長編小説を手にするほどの気概はなく、なぜなら『重力ピエロ』を読みたかったので。入手機会が訪れるまで、と短編集である『ジャイロスコープ』を手にしました。
そんな、偶然のような必然のような成り行きで読み始めた。そろそろ読み終えるというところで、冒頭の“長めの引用部分”に出会した。ぼくの想い…萌歌さんへの想いと何かしら繋がっている気がして。それだけで何か、“特別”というか。そんな“特別”は身勝手なものには違いないけれど、ぼくにとっては、大切な思いだ。生涯触れ合うことのない、ぼくと彼女の人生のささやかな交差点のひとつとして、この短編集は、ぼくの記憶に刻まれた。
この短編集の、それぞれの物語の主人公たちの“不思議な”体験にも引けを取らないくらいの“偶然のような必然”を実感している。こんなことだって、じゅうぶんに不思議な出来事に違いない。
上白石萌歌さんに対して恥ずかしくない自分でいることで、ぼくは“まっすぐ”に生きていける。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ孫悟空が出てくるお話。「楽園の楽園」もそうだったけど、伊坂先生は西遊記のモチーフがお好き?引きこもりを悪魔祓いで救おうとする遠藤二郎のお話と、謎の孫悟空が語り部のシステム管理の五十嵐真のお話、の2つが交互に進み、途中で世界が繋がるエンタメ作品で、伊坂さんぽい。物語自体はそれほど好みではなかったけど、好きな名言もありました。雁子さんの「遠くから降ってくる大事な感覚(p.209)」は共感。思いって、直接その言葉(または歌や絵画)のまま伝わらなくていいよね。あと二郎君の母好き。「人を知るには三つの面があるわけ。①外から見える様子、②その人が説明してくれた内面の様子、そして、③心の中の景色そのもの」っていうの、意外と②③の違いって大事だよね。あと孟子孔子の漫才ききたい。笑
-
Posted by ブクログ
語り口もセリフもどこか非現実的で、物語というかアートな感覚にあふれている。
皆が皆、文学的で詩的で、芸術的で、おしゃれで・・・ストレートにいうならカッコつけている感じかな?
そのため、凡人なわたしは、共感できる部分が少ないので、物語に引き込まれることなく、読むのに時間がかかった。
世界観に入り込めないまま、読み終わった。
好きな人はすごく好きなんだろうとおもう。
文体の好みって恋みたいなものだと思う。
世界観が好き!ってなれたら、沼のようにハマって読めそうな文体だった。
20代の頃にオーデュボンを読んで、しっくり来なかったので伊坂幸太郎を避けてきたが、どの時代にもわたしの近くには、伊坂幸太郎が好きという人(特に男性)がいた。
40代になり再チャレンジするも、やはり通じ合えなかった。でもよい作品なのは間違いない。 -
Posted by ブクログ
2003年刊行。
伊坂幸太郎の3作目にあたる長篇。
主人公は二人の兄弟。
遺伝子調査を専門とする会社に勤務する兄・泉水と、街の壁に描かれた落書きを消す仕事をする弟・春。
春は母親がレイプされた時に出来た子供だった。家族も、春自身も自らの出生の経由故に苦しんできた。春は、性的なものを憎悪し、人一倍の正義感を持った青年へと成長した。
二人は、仙台の街で立て続けに発生する連続放火事件の現場近くに、決まって奇妙な英文の落書きが残されていることに気づく。
そして、春が発見した規則性を頼りに事件を調査し始める。
以上があらすじ。
「春が二階から落ちてきた」
冒頭のこの一文が有名な小説だが、今回初読。
率直に、伊坂幸太郎の小説にしてはあまり好みではなかった。
デビュー間もないことを差し引いても、ストーリーが単線的で、作者の良さがあまり出ていないと感じた。
伏線も分かりやすくて、繋がることへの意外性に乏しい気がする。
遺伝子、家族、死、罪と罰、悔恨と反省。
今作が取り扱うテーマが重く、それ故の読み応えはある。
一方、テーマにストーリーが殺されるというか、上手く噛み合っていない感じがする。
だが、魅力のあるキャラクターとユーモアの効いた言い回しは健在。
「このあいだ寺の前に書いてあったんだ。『まさか、楽するために生まれてきたんじゃあるまいな』って」