村山由佳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読む前に勝手に歩太の想像をしていた。歩太が新しい恋をして、春妃を少しずつ過去にしていく話なのだと思っていた。想像だけで目を背けたい気持ちになっていた。
いい意味で裏切ってもらえた。
歩太の春妃への想いは、若気の至りでも、美化された思い出でもなく、人生の芯に残り続ける純愛だったのがこの天使の柩でも新たに証明された。
生まれてくるはずだった子供の年齢を数えながら生きていく描写があまりにも苦しかった。
喪失から立ち直る話ではなく、喪失を抱えたまま、それでも人は生きていけるのかを描いていた。
今回のキーパーソンである茉莉。彼女は単なる傷ついた少女ではない。ネグレクト、虐待、性的搾取、監禁に近い、あまりにも劣悪な環境。人としての尊厳を保たれず育った彼女と、春妃を喪った歩太。壊れた者同士がようやく安全な場所を見つけていくような関係性だった。お互いが傷を自分では癒せない傷を癒し合うのである。
読んでいる間ずっと苦しい。率直に過酷!苦痛!辛苦!という感想。胸が痛い。
漸く歩太は柩を閉じることができたのかな。春妃とお互いを、ある種解放し合うことができたのかな。年月を重ね、新たな出会いによって、前を向いて歩いていけるのかな。
私も歩太に思いを重ね、春妃のことを思い、喪失感がすごい。物語はこれで終わってしまうのか。とても寂しい。しかしながら、あの鮮烈な一目惚れからの激しい恋から、突然の喪失、そして再生まで描いてくれる作品は今まで見たことがなかったので、シリーズずっと楽しんで読めた。
歩太がロリコンじゃなくて心底安心した私がいる。疑ってすみませんでした。そういう作品も少なからずあるからね。 -
Posted by ブクログ
『天使の卵』の方が鮮烈で、痛みや美しさがむき出しだった分、個人的にはより強く心を掴まれたし好みだなと思った。
けれども、『天使の梯子』には、喪失のその後を描く目新しさ、静かな深みがあった。
この作品は、ただの恋愛小説ではなく、哲学チックだったのが印象的で、罪と赦しの物語だったと思う。
大切な人を失ったあと、自分のせいだ、いやあいつが悪いと責め続けてしまう。罪悪感は、いなくなった人への愛でもある一方で、生きている人間の時間を止めてもしまう。歩太や夏姫を見ていると、その苦しさが痛いほど伝わってきた。
だからこそ、この物語における救いは大きい。
誰かが劇的に救済してくれるわけではない。同じように傷を抱えた他者と出会い、一緒に食事をして、言葉を交わして、少しずつ、春妃の気持ちを理解し、生きてもいいのかもしれないと思えるようになる。
歩太と春妃、夏姫とフルチンの関係もなんか似た物同士だなと思った。
元教え子という危うさや、姉と同じ人を愛してしまう禁断性は確かにある。でもこの作品は、それを単なる背徳として描くのではなく、どうしても惹かれてしまう不完全な人間を描いているように感じたみんな正しく生きたいのに、感情だけは整理できない。その不器用さが、人間らしくて愛おしいよね。
登場人物が泣くたんびに私も貰い泣きした。なんて人間は愚かで痛くて脆いんだろう。
これから、天使の梯子を見るたびに、この作品を思い出すだろう。柩も、ヘブンリーブルーもすぐ読む!