村山由佳のレビュー一覧
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読んだ後、本を大切にしたい、なるべく書って読みたい、と思った。
改めて、多くの人が一冊の本を作るために関わっていることも。
超売れっ子女性作家の賞への剥き出しの欲求、賞レースの選考方法や、出版業界の裏側を少し垣間見た一方、小説が時代を経て多様化する娯楽としても、エンタメのジャンルを超えて文学として、本当に必要なのか、必要とされているのかを考えさせられた。
人との距離も同じく。
ラストまで高まる、女性編集者の狂気に似た作家への思いと、救い。
と同時に、既存の作家やモデルだろうとされる作家もたくさん現れ、とても面白かった。
この作家、本当にいたらいいなぁ、とも。
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ネタバレ物語を通して歩太は一目惚れしてからずっと春妃のことが好きだ。たぶんその愛情に満たされている感覚が歩太にとっての幸せなんだなと思った。
春妃と一緒になりたいという気持ちはきっと若さゆえの勢いもあるように感じた。年齢差や親の理解、夏姫の姉である事実があっても前に進もうとする強さがあった。
それに対して、春妃は年齢差や夏姫のこともあってかどこか認めない空気感みたいなものが伝わってくる。きっと春妃は歩太よりもずっと大人で抱えているものが大きいから自分の心に素直になることに時間がかかるんじゃないかなと思った。
精神的に歩太は若すぎて、春妃は大人すぎるのかもしれない。そんな2人が徐々に歩み寄って大人に、純 -
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ネタバレ村山由佳さん初読
『出せば売れる、というだけではもう足りないのだった。身体じゅうの全細胞が、正当に評価される栄誉に飢えて餓えている。世間や書店のお墨付きは得た、あとは文壇から、同業者から、作家としての実力を認められたい。いや、認めさせたい。これ以上(天羽カイン)を軽んじることは許さない。夫にも、誰にもだ。』
直木賞が欲しい天羽カインの執念が凄い
その周りで何から何までやってくれる
編集者の千紘ちゃんが好きだった
でも、、、石田三成にした事を知って驚愕した
まさか千紘ちゃんだったとは、、、
「テセウスが歌う」を作りあげていく過程で千紘がしてしまう事に予想が付いてしまった
千紘ちゃんはどこか -
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はじめての、村山由佳さん。
SNSでオススメされていたのと、今年芥川賞・直木賞で選ばれなかった経緯もあり読んでみようと。
天羽カインの、自分の作品に対しての熱意はクリエイティブの仕事をやってる身として理解も共感もできる。手掛けた作品に思いがあって、世の中に出た瞬間は感想は気になる。ただかなりクセツヨで編集者もついていくのに必死だろうなと、編集者の気持ちを考えると胃が痛くなりそう(笑)
その編集者・千紘。千紘の『度を超える行動』は、ある種の自爆行為であり、カインのクリエイティブの仕事にどっぷり浸かりすぎたのは、余計な行動を起こした引き金だったと思う。
作家と編集者はもちろん二人三脚で物語を -
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阿部定。きっとこの名前を知る人は大勢いるのではないだろうか。もちろんその事件も同時に思い浮かべることだろう。
愛する人の男性器を切り取り持ち歩いていたところを捕まった阿部定。世の中では単なる好色女の猟奇殺人事件と認識されているだろうし、私自身、そういう認識でいた。
でも、この『二人キリ』を読んで、その認識が少し違ってきた。
著者の村山由佳さんはもちろんこの事件が起こった時にはまだ生まれているはずもなく、でも、吉弥に実際話を聞いたかのようにリアルに描かれていて、この小説がフィクションなのかノンフィクションなのか分からなくなるほどだった。
もちろん小説だから、大いに脚色はされてい -
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「直木賞受賞」に取り憑かれた売れっ子作家、天羽カイン。激し過ぎる気性にこちらの胃もキューっとなった。ただ気性は荒いだけでなく、貪欲により良い作品をつくろうとする気迫は凄い!それに寄り添う編集者も大変なお仕事だなと感じた。今の社会ならパワハラとなって追放される行為も作品のためと呑み下す。公私がよくわからない事にも付き合う。到底できそうにない。
そして、直木賞の方が芥川賞よりも親しみやすくて好きだけど、名前の由来は知らなかった。菊池寛についても名前だけは知っていたが、今の文学界の土台をつくったとも言える貢献をした人だったとは。本は好きだけど、意外と知らない文学界、編集の世界を覗けて興味深かった。