村山由佳のレビュー一覧
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宿を整え、厨房を手伝い、動物の世話をする。訪れるのは不登校の少女や寂しい老人、夢を追う花屋の娘たち・・・人々との出会い、自然と格闘する日々が、少しずつ祐介を変えていく。一方、瞳子は夫の消息を追ってエジプトへ。もう一度、誰かを愛せる日は来るのだろうか──。
下巻まで通して読んで、心の琴線に触れるシーンがたくさんあった。
人は誰しも人に言えないものを抱えているけれど、だからこそ人生は美しいし、人の痛みがわかる人間になれるのだと、祐介や花綾、桜の姿を通して教えてもらったような気がする。
この物語に登場する人たち全員が、それぞれに成長していく姿に勇気と感動をもらった。素晴らしい小説だった。 -
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ネタバレ染織家・飛鳥とカメラマン一馬はベルリンの壁崩壊の前夜に出会い、お互いがお互いの存在を忘れられないまま、二人はアフリカで再会、激しい恋に落ちる。
ところが、飛鳥の同級生であり、感情的にも微妙な関係にある編集者の祥子と藤代の関係が明らかになり、さらに藤代の「子孫を残したい、飛鳥に自分の子供を産んで欲しい」という願望と飛鳥がそれに答えられないことにより、この恋は終幕へと近づいていく・・・という話。
恋愛に関してのストーリーは失礼だがまぁ、ありがちな話。出会った瞬間に「これは運命なんだ、運命の出会いなんだ」と思う恋愛はどこか嘘っぽいと思ってしまったりするので、そのあたりに関しては心ときめ -
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病院の待合室で読んでいて、涙がブワッと出てきたので、あわてて読むのを止めた本。
読む場所を選ばないとね・・・。
音響技師の青年、高瀬が主人公。
遠距離恋愛で、とっても大切なピナコがいるのに、女優にも惹かれていく。
でも、大切の度合いが違うんだよね。
メールを送り間違えてしまうところで、ベタなんだけど、ピナコに感情移入し、また高瀬に感情移入し、涙が出てきた。
電話で言葉を伝えるよりもメールの方がいいと思っていた高瀬が、職場の「おとな」達にも背中を押され、30秒抱きしめるために行動するところでは、主人公の変化がなんだか嬉しかった。
最後はハッピーエンドを予測させるさわやかな読 -
Posted by ブクログ
文学とは何なのか。
直木賞とはどんな文学賞なのか…
作家さん達がどれだけの思いで作品を創り上げているのか…
一度読んだだけでは読み切れていない感覚もある
けれど…
小説というものを文学に変えていくために、説明を加えるよりむしろ削ることで、余韻を残したり読者に想像させる
この作業を作家と編集者が信頼関係を頼りに行っているということ。
その絶妙な信頼関係が作品の出来を大きく左右させるということに、ただひたすら驚いてしまった。
そして、この作品にもなんだか思わせぶりで多くを語らないセリフや文章が散りばめられていて…読み解けないまま、何度も何度もページを行ったり来たり…
結局、NSFMさんのレビュ