村山由佳のレビュー一覧
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宿を整え、厨房を手伝い、動物の世話をする。訪れるのは不登校の少女や寂しい老人、夢を追う花屋の娘たち・・・人々との出会い、自然と格闘する日々が、少しずつ祐介を変えていく。一方、瞳子は夫の消息を追ってエジプトへ。もう一度、誰かを愛せる日は来るのだろうか──。
下巻まで通して読んで、心の琴線に触れるシーンがたくさんあった。
人は誰しも人に言えないものを抱えているけれど、だからこそ人生は美しいし、人の痛みがわかる人間になれるのだと、祐介や花綾、桜の姿を通して教えてもらったような気がする。
この物語に登場する人たち全員が、それぞれに成長していく姿に勇気と感動をもらった。素晴らしい小説だった。 -
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ネタバレ染織家・飛鳥とカメラマン一馬はベルリンの壁崩壊の前夜に出会い、お互いがお互いの存在を忘れられないまま、二人はアフリカで再会、激しい恋に落ちる。
ところが、飛鳥の同級生であり、感情的にも微妙な関係にある編集者の祥子と藤代の関係が明らかになり、さらに藤代の「子孫を残したい、飛鳥に自分の子供を産んで欲しい」という願望と飛鳥がそれに答えられないことにより、この恋は終幕へと近づいていく・・・という話。
恋愛に関してのストーリーは失礼だがまぁ、ありがちな話。出会った瞬間に「これは運命なんだ、運命の出会いなんだ」と思う恋愛はどこか嘘っぽいと思ってしまったりするので、そのあたりに関しては心ときめかせて読むほどではなく・・・。年と環境のせいかしら^^;
(大体、運命の恋って、出会って、育んで、自分も相手も得るものがあって、成長して初めてそう思えるもんじゃないのか?と思うのだが)
それでもなぜかつい、引き込まれて読んでしまうのですが・・・。
小説の魅力はストーリーもだけど、感情描写、風景描写などがどれだけ魅力があるかが問われるものだとあらためて思います。
というわけで、この小説の読みどころは、恋愛の行方よりも色彩感覚豊かな文章にあると思います。飛鳥がつくり出す織物と織物を作るために染めあげる糸による色彩のハーモニーが特に美しい。文章を読みすすめると、色がまぶたの裏に浮かんできます。
色にはいろんな美しい名前がついています。
自然の樹木や果実からとった名前もあれば、聞いただけでは何色かわからんような名前もありますけど(笑)
「色の名前」とか「色の手帖」を片手に読んでみると、視覚的にも楽しめる作品になるのでは。
また、サバンナの風景も、この作品のタイトル通り「野生の風」を感じさせる描写です。それらを堪能するのもこの作品の楽しみ方かもしれません。 -
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病院の待合室で読んでいて、涙がブワッと出てきたので、あわてて読むのを止めた本。
読む場所を選ばないとね・・・。
音響技師の青年、高瀬が主人公。
遠距離恋愛で、とっても大切なピナコがいるのに、女優にも惹かれていく。
でも、大切の度合いが違うんだよね。
メールを送り間違えてしまうところで、ベタなんだけど、ピナコに感情移入し、また高瀬に感情移入し、涙が出てきた。
電話で言葉を伝えるよりもメールの方がいいと思っていた高瀬が、職場の「おとな」達にも背中を押され、30秒抱きしめるために行動するところでは、主人公の変化がなんだか嬉しかった。
最後はハッピーエンドを予測させるさわやかな読後感。
この小説はパソコン通信の設定だが、携帯メールが当たり前の現在なら、どんな展開だったろう?!とかいろいろ考えてしまった。
私は、電話と手紙世代なので特に、今、恋愛世代だったら、きっと、全然違う人生を歩んでいたかも?!
で、どちらかというと、女優に年齢が近いので、そちらにも共感する所があるのですが、「旅人の木」の様に癒しを与えてくれる高瀬は、心のよりどころとして、必要だったんだろうな。
そこを浮気とか言われてしまうとつらいかも・・・。 -
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恋愛ってタイミングだなぁーーと思った。
なんか平野啓一郎のマチネの終わりに、のような世界観の崇高な小説だな、と最初は思ったけど
結構性描写が途中から出てきた。でも直接的な言葉は避けてて、巧みだった。
心が動いてしまう、真奈。「しまう」と表現した時点でそれはもう自分のコントロール下にないのだと思う
若くて、将来が見据えられる安定した職についた人には惹かれない、というのを書いた小説ではないと思うけど、にしてもやっぱり本当に怖い時に助けてくれたり、頻度の多寡に限らず相手を思う気持ちがぶっきらぼうであれ伝えることって尊いんだな、、ってなりました -
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ネタバレ「今、幸せですか」
「私が幸せかどうかは、私だけが知っていればいい」
「意地悪で言ってるんじゃないのよ。私なんて、たとえば結婚とか、安定した生活とか、人も羨む家庭とか、そういう基準で物を考える人から見たら、不幸な人間の部類に入れられちゃうのかもしれない。でもね、祐介くん。そういうふうな、他人から認めてもらいやすいものをまず目標に据えて、そこからみみっちく逆算して今を選んだり決めたりするのって、私、大嫌いなのよ。他人の基準を自分にあてはめてどうしようっていうの? ……あなたと私がこうなったことを、人が知ったら何て言うかは知らない。こういう関係をどう呼べばいいのかもわからない。ただ、はっきりしてることはね。こんなふうな、まるで隠れ家みたいな時間を誰かと共有できる機会は、生きてる間にそう何度もめぐってくるものじゃないし、たとえめぐってきたとしてもそんなに長くは続かないってことだけよ。だからこそ愛しいのよ。違う?」
変わりながら、変わらずにあるもの。
それは、ある時は源さんが泡立てるメレンゲの泡だったり、健太が畑の真ん中に作った雪だるまだったりした。あるいは、桜ちゃんが両手いっぱいにかかえた卵だったり、丸くなって眠る花綾ちゃんのうなじだったりした。
ブーケ。 そうだ、着いたらどこかで花を買おう、と僕は思った。豪華なものでなくていい、でも優しい色の花を。あの二人が作るそれのように、受け取った人を思わず微笑ませる花を
花はもらっても嬉しくなかった。処分に困るから。
でも、この本を読んで受け取った人を思わず微笑まさせてくれるのは花の魅力だと感じた。
透子さんの幸せの価値観を取り入れたい。知らない誰かが、世間が勝手に決めた尺度で私はどれだけあるから幸せだというのは本当の幸せじゃない。
また、だれかと深い関係を得ても長続きしない関係や、一時の関係を持ったとしても、生きてる限りそう起こるものでもない。だから愛おしい。は関係を客観視し溺れない。そういうことができるから愛おしいと思えるのだろうな。
人は常に変わる。でも、変わらないところもある。そこにその人の魅力があるんだろうな。私はどこだろう。 -
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これまで「シベリア抑留」という言葉を知っていても、あまり気に留めてもいなかった。そういえば、中学のとき、「自分はシベリアに抑留されていた」と言っていた先生もいたが、特段興味も持たなかった。今思うと、貴重な体験談を聞くことができたかもしれないのに、もったいない。
この小説を読んで、改めて、シベリア抑留が、重大な国際法違反だと思い知った(遅い!)
敗戦を迎え、日本に還されるべき五十数万もの人々が、極寒のシベリアへ送られ、夏服のまま、ひとかけらのパンと薄いスープだけで、重労働に駆り出され、それが何年も続いたのだ。
中には本書のような、女性の抑留者もいた。
それまで日本が大陸で極悪非道を働いていたかもしれないが、これとそれとは別だろう。
この小説は作者の村山由佳さんが、ご自身の父親の日記も参考に執筆したということだ。
小説という形になったおかげで、興味を持って読むことができてよかった。
細かいことだが、主人公の記者の、軽い言葉遣いが気になった(◯◯スか? というような)。重苦しい話をやわらげるため?