本書のタイトルは、この本の終章で瞳子さんが述べる、"Every cloud has a silver lining."(すべての雲は銀の裏地を持っている)という、英語のことわざから来ている。瞳子さんは「幸福とか不幸って、あくまで個人的な問題だ」といい、「私が幸せかどうかは、私だけが知っていればいいこと」だといいます。だからこそ、「まるで隠れ家みたいな時間を誰かと共有できる機会」を愛しく思うことができるとも。たぶん、自分自身が打ちひしがれるような重い雲の下にいても、けっして見ることはできないけれどもその雲の裏には銀の世界が広がっている、と思うことのできるような心の強さをもったひとが、自分にはうかがい知ることのできない幸福と不幸をもっている他者と時間を共有することができる、というのが、この作品のテーマだったのではないでしょうか。