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Posted by ブクログ
宿を整え、厨房を手伝い、動物の世話をする。訪れるのは不登校の少女や寂しい老人、夢を追う花屋の娘たち・・・人々との出会い、自然と格闘する日々が、少しずつ祐介を変えていく。一方、瞳子は夫の消息を追ってエジプトへ。もう一度、誰かを愛せる日は来るのだろうか──。
下巻まで通して読んで、心の琴線に触れるシーンがたくさんあった。
人は誰しも人に言えないものを抱えているけれど、だからこそ人生は美しいし、人の痛みがわかる人間になれるのだと、祐介や花綾、桜の姿を通して教えてもらったような気がする。
この物語に登場する人たち全員が、それぞれに成長していく姿に勇気と感動をもらった。素晴らしい小説だった。
Posted by ブクログ
上巻のゆったり展開していく感じと後半のスピード感は主人公の心の整理(安定感?)が出来てきたことで物事がスムーズに進んでいくからでしょうか?
失恋から環境を変えたくなる、という気持ちはよく分かるし、逃げ込んだ先にはちょっと後ろめたいような思いを抱えている前半部と少しずつ自主的に動いていく後半部までの心境の変化がすごく共感できる部分かなと思いました。当たり前のことかもしれないけど、主人公の、年相応の大学生のメンタリティをリアルに感じれたような気がします。登場人物たちそれぞれの思いやら心情の変化やら、違和感なく読めたということで改めて筆者の凄さを感じました。
Posted by ブクログ
物語のテンポが悪いと感じたのですが、これがおそらく著者の狙いなのでしょう。よく気のまわるタカハシや元気な美里ちゃんに物語の展開を引っ張っていく役割を割り振っていたら、ずっと軽快な物語になっていたのでしょうが、じっさいにこの物語の展開をみちびいているのは瞳子さんです。ときにうっとうしいくらい祐介に弱みをさらし、ときに祐介の心にずかずか踏み込んでくる彼女を見ていると、他人に甘えることと、心の強さ、たくましさとは、別のことではないという気がしてきます。彼女のカウンター・パートに配置されているのが、他人に甘えることも甘えられることもできない、登校拒否になった桜ちゃんのお母さんの智津子さんでしょうか。そして、その智津子さんのこわばった心を溶かしたのが花綾ちゃんだったというところに、彼女の「強さ」が感じられます。
本書のタイトルは、この本の終章で瞳子さんが述べる、"Every cloud has a silver lining."(すべての雲は銀の裏地を持っている)という、英語のことわざから来ている。瞳子さんは「幸福とか不幸って、あくまで個人的な問題だ」といい、「私が幸せかどうかは、私だけが知っていればいいこと」だといいます。だからこそ、「まるで隠れ家みたいな時間を誰かと共有できる機会」を愛しく思うことができるとも。たぶん、自分自身が打ちひしがれるような重い雲の下にいても、けっして見ることはできないけれどもその雲の裏には銀の世界が広がっている、と思うことのできるような心の強さをもったひとが、自分にはうかがい知ることのできない幸福と不幸をもっている他者と時間を共有することができる、というのが、この作品のテーマだったのではないでしょうか。
ただ、それがかなり重いテーマであることは事実で、恋人を兄にうばわれたという不幸に陥っていた主人公が、そのことを受け止めるだけの心の余裕をもつようになったというストーリーのなかであつかうのは、ちょっと苦しいような気がします。それこそ「幸福とか不幸って、あくまで個人的な問題」なのかもしれませんが。
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小説・文芸
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