仲野徹のレビュー一覧
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理論物理学、微生物学、幹細胞発生学、宇宙物理化学、生命流体力学、地質学・岩石学、火山学、古脊椎動物学、代数幾何学、ニュートリノ天文学など、様々な分野の19名の理系研究者が「偏愛論文」について語るアンソロジー。
自分は文系で、理系の学問についてはあまり縁がない中、いろんな研究分野のユニークな論文のエッセンスが知れてとても興味深かった。また、研究というものの面白さを改めて感じた。
中でも、川上和人「そういえば、最近ケンケンしてないな」、仲野徹「衝撃と痛恨の秘話 幹細胞の可塑性とは何だったのか」、西本昌司「スカスカ・グサグサの岩石」、小林快次「羽を生やした恐竜」、小林武彦「私の愛する論文たち 老化は突然やってくる!?」が面白く、印象に残った。
ぜひ文系の学問についても、同じような企画をしてほしいなと思った。 -
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勉強が足らず理解出来ないところもあったけれども、とても面白く、また魅力的な着眼点に満ちたアンソロジーだと思う。
博士たちが愛してやまない論文を紹介している。
実にシンプルである。
しかし、博士たちが愛しているだけあって、その多様さは目を見張るものがある。
博士たちは論文を愛している。博士いわく……
その論文は美しい。
その論文は執筆した科学者の野心と信念が詰まっている。
その論文はこの分野においてすばらしく重要だった。
その論文は卓越した面白い他にない着眼点でもって作成された。
その論文は結果的には誤謬であったが、この論文があったからこそ反証的に研究が進み発展した。
その論文はいまは亡き仲間が遺したもので今も活きている。
その論文は自分の根幹を成すものだ。
その論文は科学者である自分を産み出し、おそらくは未来にも自分のような科学者を産み出す。
その論文は自分を含めた多くの科学者たちを結びつけている。
その論文は大きな転換期に発表され、特異点として今後も残る。
博士たちが愛する論文は、門外漢である私には容易に理解出来るものではない。しかし、素晴らしい厚みと重みを持って人類の叡智を支えているのだと思った。 -
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今までありそうで(あったかもしれないが)見つけられていなかったテーマ。いろんな分野の先頭を走る研究者が各々愛する論文を語るという、極めて興味深く面白かった本。各々の研究テーマが違うのはもちろん、各々の研究者の感性や語り口がそれぞれ全く違っていたのも面白かった。一般向けに少し噛み砕いてくれている人もいれば、専門用語もりもりで愛が溢れている人もいた。どちらも素晴らしいと思う。いわゆるオタク文化にも通ずるところがあると感じた。専門家から見た「私見を含んだ」サイエンス的エッセイは非常に面白かった。
大学時代を振り返ると、論文を読むのは嫌いではなかったし、面白かったがやはりどこかタスクの一つになっていて心の底から楽しんで読めていなかったと思った。川上先生の章の基礎研究のあり方は非常に共感できた。面白いを追求し、誰かの心を踊らせるようなものを世に出せている時点で価値はあると思う。森林分野以外にも、他分野のインパクトのある論文を読んでみたい。ぜひ続編を出してほしい。さらに言えば年に一回でもいいから定期刊行してほしい。 -
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生物学に対する根源的な知的好奇心がこれでもかというほど満たされて震えるほど面白かった。
遺伝は、生命現象の神秘さと自らを形作る最小単位という身近さを併せ持っている。本書は、遺伝の解明の歴史書であるが、単なる科学史ではなく人類が自分の起源を語ろうとする壮大な物語である。遺伝の解明は科学の発展であるとともに、人間とは何かという自己の追求であり高揚感が抑えられなかった。
メンデルやダーウィンから始まり、ゴールトンやモーガンやワトソンやクリック、フランクリン、サンガーなどの科学的な偉業だけでなく、背景や野心、失敗、迷いなど人間的な面も余さず書かれていて良かった。
遺伝学の発展は、病気の解明や治療など多大な恩恵をもたらす一方で、優生思想の暴走や遺伝子操作など越えてはならない危うさを孕んでおり、遺伝子を探るのではなく使う段階に来たとき、恐怖も覚えた。
重要な転換点で思わず鳥肌が立つほど面白くて、下巻を楽しみにすると共に、「がん 4000年の歴史」も読みたいと思った。 -
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『遺伝子 親愛なる人類史』感想文
本書『遺伝子 親愛なる人類史』は、遺伝子をテーマに、人類の過去・現在・未来を縦断的に見通す壮大な一冊でした。前半で語られるダーウィンやメンデルの話は、これまでどこかで聞いたことのある内容で、新鮮味には欠けましたが、遺伝子研究の原点を再確認するという意味では意義深いものでした。
その後に展開される優生学の話は、重く、心がざわつくような内容でした。人間が「よりよい子ども」を望むという欲求の先に、歴史的には数多くの悲劇があったことを改めて思い知らされます。特に、現代においてもその欲求は形を変えて存在し続けており、技術の進歩によってそれが実現可能になりつつあるという現実に、複雑な思いを抱きました。
最も興味をひかれたのは、現代のゲノム研究や新優生学に関する章でした。CRISPRなどの技術の登場によって、私たちは本当に人間を「設計」できる時代に差し掛かっているのだと実感します。しかし同時に、遺伝子だけで人間のすべてを説明することはできず、エピジェネティックな変化や環境、偶然といった要素が重なり合って、私たちの表現型が形作られているという指摘には深く納得しました。
本書は、現代から未来にかけての遺伝子をめぐる問題を、非常にわかりやすく、かつ客観的に解説してくれています。遺伝子レベルで何か「原因」が特定されると、それを排除したくなるという人間の本能的な欲求、そしてそれに応えようとする科学者や企業の動き。これらの衝動の危うさを、改めて強く認識させられました。
また、「生まれか育ちか」という古くからの問いに対しても、遺伝子がどのような重みを持つのかという点が、丁寧に描かれていました。たとえば、自分の子どもが遺伝子疾患を持つとわかったとき、何が本当の幸せなのか。遺伝子の段階で中絶することが「正しい」と思えてしまうのは、親のエゴなのか、それとも愛なのか——この本を通して、さまざまな視点から深く考えさせられました。
科学的な知識に裏打ちされながらも、倫理と人間の本質に迫る一冊。読後には、未来を生きる私たちが何を大切にしていくべきかを問われているような気持ちになります。非常に刺激的で、思索に富んだ読書体験でした。 -
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(2016/10/15)
中高生に、とあるが、我々大人が読んでも十分学べる内容。
物事の考え方を、平易なことばでみごとに説明してくれている。
小田嶋さんの成功者村上龍への食いつきは面白い。「会社員」という仕事がないと。
村上龍は成功しているから会社員をはずしていると。
確かに、13歳のハローワークに上がっている仕事で食っていける人はごくわずか。
みな「会社員」として何とか生きている。
白井さんの「意味」には際限はない、というのはなるほど。
本能的欲求は限度があるが、誰も持っていないものを持つ、という欲求には切りがない。
そこにはまったら最後だな。
戦争中における「国」とは、国民でなく国体だ、と書く山崎氏。
・・まあこれは先日読んだ伊藤氏の本で、掟を破られて黙っているのはおかしい、で反論されそうだが。
中年日本にアベノミクス成長戦略は怪我をする、という想田氏。
勝手に中年になってしまったのだ。少子化を進めて。
学べます。 -
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(2022/1/8)
2020年、まだコロナ第2波くらい、オリンピック延期、という段階で書かれたアンソロジー。
日本の知性が集結している。多くの方が参加している。
読み始めたとき、それぞれのお名前の横に簡単な肩書しか書かれておらず、
もう少し人物紹介すればいいのに、、、と思ったのだが、巻末にまとめて紹介されていた。
この本は中高生向きなので、それぞれの著者を知らない可能性が高く、人物紹介が長いとかえって予断を持って読み始めてしまうので、避けたのかな、と推察。
私は彼らの著作を結構読んでいるので、背景を知って読むとより立体的に読めた気がする。
一つ一つのコラムにコメントをするのは野暮なので辞めておくが、一番心を動かされたのは、雨宮処凛さんのコラム。
ペット連れの要生活保護者をどう支援するか。役所は「犬を処分してから来い」と言い放つ。
確かにその考えは自分の頭の中にもある。生きるか死ぬかの状態で支援を求めるのにペットなんて贅沢!と。
しかしその一方、モノではなく生きているペットを捨てる、殺すなどできるはずもないと、、、
我が家にも猫がいるが、極端に憶病なので、地震で避難所に行くことになったらどうなるのか?いやそもそも避難所が受け付けないか、、
話戻ってそうした人を支援する彼女たち。当然お金が必要。これをどう集めるか。
自分は寄付できるか?
日ごろ人の役に立ちたい、などと言っていても、そこに目が向くか。
反省。
それに関連して、ベーシックインカムに注目するコラムもいくつか。
クソ面白くない仕事をAIに任せる。
イギリスをダメにした高福祉、働かなくても食えることに劣等感、感情を持たせるようにしたサッチャー。これは今の日本にもある。生活保護を受けづらくする。
しかし金はあって暇がある、という状態が様々な文化を生む側面もある。
オリザさんも別の切り口ではあるが、不要不急の芸術の必要性を訴える。
・・・もしAIが何でもやってくれて、富がうまく社会に分配されるようになれば、人々は金のためにあくせくするのではなく、本当に人の役に立つために、自分の好きなことをして働けるのではないかな。
なまじ労働が貨幣価値に代替されるから、怠ける人が出るのでは、、、
いくつかのコラムからそんなことを感じた。
あ、それと、「椎名林檎になるための方法を教えてくれるのはどこの学校か?」と真剣に聞く大学生がいたという話は衝撃的だった。増田聡さん。
正解が学校にある、と思っている日本の教育システムの膿のような話。
。。。しかし、こういう本があるということは、日本の知性が捨てたもんじゃないことの証でもある。希望はある。
こんなコロナ禍ではあるが、前を向いて生きていきましょう! -
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本書を一読することで、遺伝学の歴史は人類の叡智による燦然たる科学の歩みであるとともに、人類史上とてつもなく大きな惨禍を伴ったものであることを理解することができる。そして、この科学の歩みは、既に私たちの仕様書の解読を終え、近い未来にアップデートさえしようとするところまで手が届いてることも理解することができる。そこには、遺伝学という科学的な問題だけでなく、深遠な哲学的かつ倫理学的な問いが突きつけられている。もし、自分の仕様書が解読できるなら、私はそれを望むのだろうか。子供がいたとして、子供の仕様書を解読するだろうか。解読したとしてその結果を子供に伝えるだろうか・・・。本書は、単なる遺伝学の歴史の概説書ではない。遺伝性による精神疾患の家族を持つ、著者自身の家族史でもあり、具体的な物語性を伴って一般読書者にも訴えかける。プロローグの時点で既に感動している自分がいる。名著と思う。
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エピジェネティクスと云う言葉をはじめて知りました。
エピというのは、ギリシャ語で、後で、上に、という意味の接頭辞だそうです。
遺伝子の後で、上に、という意味だそうです。
遺伝子を本に例えると、ここの部分は大事だから読むようにとか、ここの部分はとばして、のように付箋の働きをする今年や、一部の文章をの上に不透明のテープを貼って伏せ字にするようなことらしいです。
遺伝子は同じなのに、食べ物などの影響で女王蜂になったり、働きバチになったりするのもエピジェネティクスの仕業ということです。
DNAの分子配列だけでは生命は決まらないということですが、生命って奥深いと思いました。