仲野徹のレビュー一覧
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下巻では、1970年以降から現在までの科学研究や遺伝子に関する医療その他の技術の進展が描かれる。
第四部は、人類遺伝学が語られる。
妊娠中絶の合法化と遺伝子解析技術の発展により、人間に対する新しい種類の遺伝的「介入」、つまり新しい形の「優生学」が登場する。ただ、疾病遺伝子を見つけるためには、まずは遺伝子のゲノム上の位置を突き止めなければならないが、1970年代当時にはその技術は欠けていた。様々な苦労を経て、ハンチントン病を引き起こす遺伝子、嚢胞性線維症の原因遺伝子が特定されるなどして、1990年代前半には、遺伝子の地図が作られ、遺伝子が単離され、解読され、合成され、クローニングされ、組み換えられ、細菌に導入され、ウイルスのゲノムに入れられ、薬をつくるのに使われるようになっていた(88頁)。
しかし、これらの「単一遺伝疾患」であればともかく、人間の病気のほとんどはヒトゲノムに広く散財する複数の遺伝子の相互作用を理解するのでなければならない。例えば、ガンであり統合失調症のように。そこでヒトゲノムの解読計画が開始され、これまた競争や反目がありつつも、2000年に全ヒトゲノムの”最初の”解読”の完了が発表された。
第五部からは、遺伝学の新しい展開について述べられる。それまで人類遺伝学は、自らを病理学、「人間に苦しみを引き起こすさまざまな疾患」に関連付けてきたが、遺伝学は新しい道具や方法で武装し、病理の岸から正常の岸に渡り、歴史、言語、記憶、文化、性的傾向、アイデンティティ、人種などを理解するための、新しい科学になることを目指すこととなった(160頁)。それにより遺伝学の分野は、複雑な科学的・道徳的な謎への対峙を強いられることになった、と著者は言う。
具体的なテーマとして、人種、知能、性的アイデンティティに関する生まれか、育ちか問題などが取り上げられ、論争の経緯や内容が詳しく解説されている。
その一つとして、エピジェネティクスが紹介されているのだが、ここは良く分からなかった。エピジェネティクスとは、本書に付された用語解説によると、DNAの塩基配列の変化によらない表現型の変化を研究する学問領域のことだそうで、DNAの化学的な変化(メチル化)や、DNA結合タンパク質(ヒストン)の修飾による染色体の構造変化によってもたらされるもので、そうした変化の中には子孫に受け継がれるものもあるとのこと。獲得形質の遺伝のことをついつい想像してしまったが、そういうものではない(らしい)。
最後の第六部では、遺伝子治療、遺伝子診断の現在、そしてその将来について論じられる。着床前診断と妊娠中絶。そして生殖細胞系列の遺伝子編集。新しい優生学の時代、正にポストヒューマンの時代の幕開けである。
ここまで進んでしまっているのかというのが正直な感想。科学の世界の問題と済ませられない、倫理や道徳、また人間観によっていろいろな意見があり得る問題だし、仮にある程度のコンセンサスができても、単純に規制すれば済むとも思われない。技術的に可能であれば、もっと優れたもの(=人間)を、という欲望が必ず出てくるだろうと思われる。他人任せにできる問題ではない、ともかく、考え続けるしかないのだろう。
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医療関係者ではないが人体の構造や仕組みに興味を持っていたので、病理学というタイトルに誘われて読んでみました。
人の体はウイルスなど異物の侵入や細胞の損傷に対しても、免疫や細胞の修復機能によって、体の中が常に一定の状態に保たれるようにできています。
病気になるということは、体が本来備えている修復機能ではカバーしきれないほどのダメージを受け続けることで、さまざまな不具合が細胞レベルで起きていると言えます。
病気は怖いもの、辛いもの、といった漠然とした考えから、なぜ病気になるのか、病気になると私たちの体の中でどのような現象が起きているのか、冷静に見つめることが大切なのでしょう。
本書が健康や自分自身の体について、より真剣に向き合うきっかけとなればよいかと思います。 -
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内田の依頼に応じた識者たちが人口減少の日本の撤退論を語る。
それぞれある意味好き勝手に持論を書いている。
これをここでまとめても意味はなかろう。
自分の思う「撤退論」を書くことにする。
識者の意見に影響を受けつつ。
人口減少は先進国共通の現象であり、これを避けることはできない。
異次元の少子化で児童手当増額などといいながら、
扶養控除を廃止したり、社会保険料を増やそうとする政府の愚には呆れる。
彼らにこそ撤退論が必要なのだ。
高度成長時代の、人口増加時代の仕組を変えようとせずに小手先だけの政策を行う。
前例に倣うことしかできない。
更に省益優先、OBの天下り先優先で国有財産を財団法人に抱え込む。
違う仕組みが必要なのだ。1年で50万人が減る国には。
それができないのは、今の仕組のままの方が都合がいい輩が政府、財界の多数派を
占めるから。何年か何十年かは持つかもしれないが、その多数派はどんどん減る。
そして皆が貧しくなる。このままの仕組みでは。それは見えている。
だって確実に人口は減るのだから。増やすには移民しかないのに、それは拒否するのだから。
絶望しかない。
撤退論、必要だ。 -
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以前、立ち止まって交通整理することが必要ではないか、+はわかりやすいけど-が評価されにくくて敬遠されるというようなブログを書いていたので非常に興味深い題材でした。
いろんな人が寄稿しているので中には読みにくいものがあったり、何を言ってるのか、何が言いたいのかがよくわからない人もいたけど、いろんな考え方があって面白く、中でも青木さんや想田監督、平川さんなどは近い考えで興味を持ちました。
障害とは、健常とは、健全とは?頭が悪い、コミュ障、ノンデリ、自我の喪失、倫理観の欠落などと障害の差は?ふだん考えていたことが青木さんによって明文化されていました。
常日頃、「誰が」という点に注目が置かれ、その中身に対しては二の次三の次だと感じることがあったが、政党名の威力がわかる調査結果はわかっていたとしてもやはり衝撃だった。
私はよく岩田さんに共感することがあるんだけど、冷淡な人だと思われがちだというのを見て、自分も「冷めてるね」って言われたことを思い出した。笑
ここでもうんざりするどころか、そうだよね~って思いながら読んでいましたよ…。
アジカンのゴッチまで寄稿している幅広さにびっくり。
みんながすべきことを人に求めるんじゃなくて、1人1人がわからないなりに自分にできることを考えるのが大事だと思います。
先に目指す方向性があって、そのために何をするかって話であるので、ゴッチの考え方にもとても共感しました。
終わり方や書き方の形式も独特で面白かったw -
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平成元年は1989年、「ベルリンの壁」の撤去が始まった年であり、その後の東西ドイツ統一、ソ連を含めた東側陣営の崩壊、東西冷戦の終結へと向かっていく最初の年であった。また、この年の12月29日には、日経平均株価が38,915円の最高値をつけ、バブル経済の絶頂を迎えている。この年が絶頂であったということは、平成の時代を通じて、日本の経済は停滞あるいは衰退を続けていったということだ。
平成が終わったのは、平成31年、2019年のことだ。昭和が終わり平成が始まったのは、昭和天皇のご崩御によったわけであるが、平成が終わり、令和が始まったのは、平成天皇・明仁天皇が自ら退位の意思を示されたからであった。
平成の30年間というのは、どういう時代だったのか、ということを、内田樹をはじめとする論客たち、白井聡・平田オリザ・鷲田清一・ブレイディみかこ、といった人たちが論じた文章を集めたものが本書である。
内田樹が最初に書いていますが、平成が始まる時にはソ連が崩壊する等とは全く考えていなかったし、その後、プーチンが登場して、再度、強権的な国家に逆戻りする等ということは思いもよらなかった。また、日本の経済の強さが、ここまであっけなく崩壊してしまうとは全く思っていなかったし、それが30年間も現在進行形で続くとは、全く考えていなかった。
読んでみての感想は、ことほどさように、未来を予測することは難しいということである。日本の未来に対しては、今のところ暗い予測しかないが、もしかしたら、それがはずれるかもしれない、という超ネガティブな期待を感じた。 -
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ネタバレエピジェネティクスについて著者が真面目に解説した本。
いつもは大阪弁丸出しの親しみやすい文章ですが、今回は学術的なトーンです。とても勉強になる。名前は知っているけど、ヒトに説明できるまでには至らない知識について得るには最適と思います。
エピジェネティクス
最大公約数的な定義として「エピジェネティックな特性とは、DNAの塩基配列の変化をともなわずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型である」
”受け継がれうる”なので、遺伝したり、しなかったりななんですね。そーかぁ。
DNAのメチル化についても、ある遺伝子のDNAが高度にメチル化されると、その遺伝子の発現が不活性化され、その遺伝子がコードするタンパク質が作られなくなる、
で、ヒストンがアセチル化をうけると遺伝子発現が活性化される、とざっくり覚えておけば良いという、ざっくり感が名著たる所以と思います。
他にもポストイットを結構貼付したのを見て、あー勉強になったな、と思えた本です。
おすすめ。 -
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病気の成り立ちと、治療薬の成り立ちについて、事細かにわかりやすく説明してくれている本。
ロビンス『Basic Pathology (基礎病理学)』の24章の章立てに基づき、そのうち8章ある総論の部分から、「細胞の損傷、適応、死」「血行動態の異常、血栓症、ショック」「腫瘍」」の3つの章についての楽しい説明です。この本には取り上げられていない「炎症と修復」「免疫異常による疾患」などもぜひ知りたいところですが。
細かい部分については「なぜそれがそうなるの?」とよくわからないところも結構ありましたが、概略について知るにはめちゃめちゃわかりやすかったです。
病気の仕組みがいかに解明されていき、薬がいかに開発されていったかについても書いてくれていて、やっぱ役に立ちそうなことばかり研究してるんじゃなくて、いわゆるマッドサイエンティスト的な人のマッドな探究心が、新しい発見には欠かせないんだなぁと読者が感心するように書かれています笑。実際おおいに感心して度肝抜かれましたし、医学の進歩のスピードがわたしの思っているよりとても速いこと、そしてそんな時代に生まれたラッキーさをしみじみ味わいました。
医者は信用できなくても医学は信用できる!
頭いい人はほんとに頭いいな〜。
常識にとらわれてるような人には新しい発見はでけへんのやなぁ(常識にとらわれていない人が発見した新しい事実は常識からかけ離れているが故にすぐに日の目を見るわけではないこともあるのだなぁ)。
読み物としても面白かったし、生き物の身体の仕組みの不可思議さに打たれております。エホバの証人さんなら「こんな素晴らしい仕組みは神にしかつくれない→故に神は実在するのです」とか言うところですね。ちなみにエホバの証人さんのことも出てきます。彼らのおかげで、それまでの医療では当然とされていた過剰な医療行為が判明したそうです。
とにかく面白いのでオススメ。
科学に対する信頼が増す本です。