今野敏のレビュー一覧
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STシリーズ4作目。この作品以降「色」シリーズとなりSTメンバーの一人ひとりにスポットをあてた作品がつづくようです。1作目はタイトルの通り”青”山をメインにすえた物語。
とはいえSTのほかの4人の活躍も十分描かれており、思いのほか青山が前面に出ている感はなかったかなと感じました。やはりSTは5人の力が発揮・結集されてこそなのだなと思います。この点は前作「黒いモスクワ」で黒崎がSTを抜けるかもしれない、という話しが交わされた場面で百合根がいった「この5人だからこそのST」というセリフそのままかもしれません。
それにしても作品から感じる青山の風貌はどことなくスクープシリーズの布施を彷彿とさせま -
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STシリーズ3作目。なんとなく今までのものよりまとまりがあるというか、テンポもよいなと感じました。ちょうど300ページ程度ですし、舞台が海外へ移ったり、途中でSTの面々が合流してきたり、美作竹上流の話しが織り込まれていたりと、小気味よい場面転換があったおかげで前の2作にくらべ読みやすかった印象です。
そして今回は珍しく百合根が事件の真相を解明する役を担うという、これも前作からの流れとはちょっと毛色が違う展開で楽しめました。
3作目になり著者としてもだんだんとシリーズとしてのテンポや作風がより確立してきたのかしら、そんな風にも見えました。4作目からは色シリーズでST一人ひとりにスポットをあて -
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ネタバレ臨海署管内で同時に二つの殺人事件が発生、しかもうちのひとつの事件ではなんと交機隊の速水が容疑者に。もう片方の事件の捜査本部で捜査を進める安積も速水のことが気がかりで集中力を欠いてしまう。
漂流するクルーザーに死体、セレブパーティーでの毒殺と、一見無関係に見える事件であったが、安積達の捜査で関係者を洗ううちに二つの事件につながりがみえてきた。
この”別物”と思えた二つの事件にだんだんと関係性が見えてくるあたりが本作の読みどころでしょうか。そんなところにつながりがあったか、と思わせてくれる展開が面白いです。
身柄を解放された速水が安積と捜査一課の若手矢口とのコンビに付き合いつつ、矢口を教育し -
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ふたたび短編集。本作は5つのストーリーが掲載されています。後半3つは安積班シリーズとしてはちょっと異色といいますか、若干ファンタジーっぽい仕上がりになっていると思います。
「薔薇の色」は『神南署安積班』に収録されていた「刑事部屋の容疑者たち」にちょっと似た雰囲気のお話しでしたね。「月齢」はオオカミ男が登場しますし、「聖夜」も傷害事件の被害者があたかもキリストかのような展開になって…、とこれまでのシリーズでは見られなかった物語に仕立てられています。
「聖夜」のラストでは速水の粋な計らいで安積が家族のもとに駆けつける、ほのぼのとしたシーンで本作を締めくくり、事件が解決してスッキリという読後感で -
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今野敏『赤い密約』徳間文庫。
2007年刊行の格闘小説。
ストーリーは、臭いB級アクション映画のようなのだが、空手を駆使した格闘シーンには迫力がある。終盤のロシアからの暗殺者と仙堂辰雄の闘いはなかなかお目に掛かれない。兎に角、頭を空っぽにして楽しみたい作品だ。
ロシアのテレビ局に招かれた空手家の仙堂辰雄。そのテレビ局がエリツィン派に対抗する議会派とマフィアにより襲撃される。襲撃現場に居合わせ、テレビ局の記者から日本のテレビ局で放映して欲しいとビデオテープを託された仙堂はテレビ局からの脱出を試みる。
日本に戻り、テレビ局にビデオテープを持ち込んだ仙堂を暴力団が付け狙う。
本体価格640 -
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ネタバレバイオテロか、はたまたただのインフルエンザか !?
家族を残して家出同然の中年男が偶然介抱したアラブ系外国人が死に至り、この現場に駆け付けた臨海署の白バイ隊員と黒木も発症。中年男はお台場をさまよううち、若者グループと傷害沙汰を起こし逃走するも、自らも感染しているためかその足取りは重く、ついには身柄を取り押さえられる結果に。
アラブ系外国人が身元不明であったため、バイオテロ疑惑が浮上し公安が臨海署に乗り込み、さらに政府ではテロ対策本部が設置される事態に、と、本作は刑事事件が起きたわけではなく、国際テロの疑いがある事案を軸とした、これまでのシリーズとは異色の展開です。
個人的には逃走を続ける -
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全作「陽炎」につづく短編集。安積班シリーズのこれまでの短編は、事件そのものは小粒で、それぞれの登場人物にスポットをあてた構成のものが多かったのですが、本作は短編でありながら、事件そのものに軸足をおいた内容といえるでしょう。
特に冒頭の「暗殺予告」は長編に仕立ててもおかしくない内容です。濃密な一冊、お買い得(お読み得?)な一冊かと。
そして、かつて安積班に在籍していた大橋が再登場。いつのまにかいなくなってしまったな、と思っていましたが、他の所轄に異動になっていたのですね(たしかそのくだりは描かれていなかったように記憶していますが)。
最後の「夕映え」も非常に味わいのある作品です。安積の師匠 -
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舞台は神南署から再び東京湾臨海署へ!
その新シリーズ1作目の見どころはズバリ、安積と速水のコンビの躍動でしょう。お台場で起きた殺人事件の被疑者として黒い亡霊こと風間を追う二人。
事件そのもののよりは、安積と速水の関係や、風間に対する速水の想いと二人にカーチェイス、物語最終盤で明らかになる風間自身の境遇、そして相変わらず捜査本部における相楽との対立、といったあたりが読みどころといえます。
最終的には犯人ではなかった風間ですが、妙に魅力的な描かれ方をしていて、本作以前における速水と風間の関わりを短編として物語に仕立てても十分おもしろいのでは、と思います。 -
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「蓬莱」、「イコン」につづく神南署編第三弾。前の2作品と比べるとちょっと小粒な印象。やはり扱う事件の内容とそこに通底する物語性の違いでしょうか、いや、それでも十分面白いです。
ただ、5人組へのリンチシーンは読んでてちょっとこわくなりました。「蓬莱」でバーからヤクザに連れ出された渡瀬がやられっぱなしながらも相手に向かっていくシーンもすごかったですが、今回のほうは一方的に打ちのめされるやられ方だけにこわさが先に立ちます。
こうして読んでみると、神南署シリーズは作品ごとに変化がありますね。「蓬莱」では神南署の面々はどちらかというと脇役的存在で渡瀬が主役。「イコン」は架空アイドルを軸にした大作。で -
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今回も須田の推理が冴えわたっていました。本作で描かれている姿との対比でその冴えがより一層魅力的に感じます。また須田以外の面々も非常に味がある、”安積係長とその素晴らしき仲間たち”、というサブタイトルをつけたいくらいのシリーズですね。
事件のほうはというと、難解なトリックはなく、根底には人間関係が横たわっており、そのもつれた糸を解きほぐしながら真相に迫る姿がよみどころでしょう。警察組織内部の対立という障害もありつつ、でも最後は「正しいこと」を貫きとうそうとする安積に軍配があがるという展開もちょっぴり勧善懲悪的で読み手としては留飲がさがる思いです。物語の終盤、捜査本部を去る際に相楽警部補に対して -
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安積シリーズとしては初めて(?)の短編集。安積班の面々や交通課の速水が主役となるスピンオフ版ともいえます。
普段は安積目線で描かれていた人物たち自身の目線による描写もあり、非常に新鮮です。扱われる事件そのものも長編とは違い、小粒なものが多く、より一層、登場事物たちの人となりが引きたつというものです。
これを読んでいると、やっぱ安積班の面々はいいわ~、と改めて思ってしまいますね。特に村雨は、安積の一方的な思い込みにより、少々損な見方をされていますが、本作を読むとガラッと違う一面も垣間見えます。
そんな安積班ですが、本作終盤では臨海署再建の噂が立ち始め、安積をはじめとする強行犯係のメンバーた -
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シリーズ三作目、うっかり二作目よりも先に読んでしまいました…(が、特に支障なく読み進めることができました)。
で、本作ではTV業界に渦巻く麻薬犯罪がその対象。そこに警視庁から捜査本部に着任した安積の警察学校時代の同期である鳥飼の娘がコカインをやっている、ということも明らかになり…(このあたりの展開は隠蔽捜査で竜崎の息子の件と似ています)。
さらには捜査本部における相楽警部補との確執も相変わらず、というかんじで、事件を中心にいくつかのテーマが絡まり合って物語が進みます。
このシリーズを読むのは2冊目となり、その特徴がわかってきました。安積の目を通して、捜査に取り組む臨海署の面々の姿が克明に