今野敏のレビュー一覧
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今野敏「警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ」第3作目(2000年11月単行本、2005年3月文庫本)。
このシリーズは事件の犯人を逮捕するのがメインテーマではなく、主人公の樋口が関わる人間関係がテーマのような気がする。警視庁捜査一課の仲間だったり、所轄の捜査員だったり、家族だったり、事件の容疑者だったりと。
今回は事件に大きく関わってくる捜査二課の警部補で樋口より5歳年上の島崎洋平47歳との関係がテーマだろう。読んでいくうちに前作の年代背景より2年が経っているようで、樋口も警部になっていた。そして変わらず樋口の信頼する相談相手として登場する2才歳下の荻窪署の生活安全課の氏家も40歳になっていた。同じ捜査一課強行犯係の天童は49歳ということになる。捜査一課長の田端も変わってなく、この3人が変わらず脇を固めているので何となく落ち着く。
今回は企業犯罪を担当する捜査二課の案件で島崎が捜査対象の銀行へ捜査情報の供与をしたことから発生する人間模様と殺人事件へと進んでしまったことに対する島崎の苦悩と樋口の人間性がよくわかる物語だ。また天童と島崎が交番勤務時代の先輩後輩の間柄で樋口も三人で飲むことにもなる。
島崎には二人の息子がいる。長男が島崎と同じ大学の同じ柔道部の島崎丈太郎、次男が父親に反抗し高校中退して家族とも疎遠になっている島崎英治、ダンスにはまっているが家族は知らない。
そしてその大学の柔道部出身で銀行に勤める富岡和夫36歳が、この家族に大きな苦難をもたらす。富岡は島崎警部補の大学柔道部の後輩でもあるが、丈太郎の先輩OBで子供の頃の柔道教室の先生でもあった。英治も子供の頃は同じ柔道教室に通っていたが、挫折して柔道とは縁を切っている。
島崎の捜査チームは富岡の勤務する銀行を不正会計の疑いで近々強制捜査に入る予定になっていた。その情報を富岡は丈太郎から脅しに近い形で得て、島崎警部補に接触し巧みに脅しを加えながら、強制捜査の日程の情報を得る。罠にはまった島崎は丈太郎を叱責しながらも何の解決策も出すことも出来ず、警視庁警務部の監察に怯え、丈太郎の将来に悩み、荒んでいく。
そんな時に富岡が自宅マンションの部屋で強打の上、絞殺された。島崎は一旦は安堵して日常を取り戻すのだが、捜査線上に英治らしい人物の目撃情報が出て、再び苦悩する。
結果的に樋口が島崎警部補とこの家族を救い、殺人事件も解決するのだが、樋口はギリギリのところでの悲惨な新たな事件を防ぎ、更に不幸な捜査情報漏洩を余計な誰も望まない事件として処理するところに感銘を受ける。樋口警部へのシンパがこうして増えていくんだろう。
今回も樋口の家族、妻の恵子、一人娘の照美が登場する。照美はまだ高校生で、夜から朝に掛けてのライブディスコに友達と三人で行くことに恵子は反対し、樋口は氏家に相談する。樋口がついていけばいいという助言を恵子と照美に条件として進言すると簡単に受け入れられるのだ。そのディスコに氏家も来ていて実にほのぼのとした感じがいい。前作「朱夏」では恵子の誘拐事件で夫婦の深い信頼関係を見られたように、これからのこの家族の幸福な行く末を見届けられたらいいなと思う。
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著者のライフワークというこのシリーズは、やはり安定した面白さがある。
安積警部補を班長とした安積班の各メンバーがそれぞれ個性を生かし、チームとして事件に当たるのが特徴。
湾岸署に救急搬送の知らせが入り、そこに事件を予感する異常事態を感じた安積班が行動を開始する。
毒物で3人が死亡し、湾岸署が過去に扱った事件が浮上する。その事件の犯人に冤罪の疑いも持ちあがるが、安積たちは臆せず、事件の真相を明らかにすべく邁進する。
捜査一課も乗り出し、安積班との確執も。本庁と所轄との関係、警察という男社会での女性の立場、99%の有罪率を誇る検察のあり方、さらに刑事と番記者との関係、情報漏洩問題、逮捕した時点で犯罪者扱いするマスコミ等々。
著者は様々な課題を提示し、読者にも問題意識を持つよう促すかのよう。
本作が、シリーズ№1との評があるが、シリーズ未読作品も読みたくさせる読後感。 -
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ネタバレ今野敏作品としは珍しい単発ものですが、とても楽しめました。刑事ものをあらかた読み終わってしまったため、本作では久々に捜査本部のヒリヒリする空気感にも触れることができました(田端課長にも久々にお目りかかりました)。
物語は高校生・キュウと彼のクラスメートの父親である相沢、そして相沢の高校時代の同級生である刑事の丸谷の3人が軸となって進んでいくのですが、この3人の出会いに至る経緯やこれが事件と結びついていく”妙”はさすが今野作品といったところでしょうか、実にうまく演出されているなと思いました。読みながら、おおっ!こうつながるのか、と心の中でちょっぴり叫んでしまいました。
そして、まさに三者三様、この3人が物語を通して成長していく様も見どころの一つといえるでしょう。特に相沢とその妻との関係は必見です。それまでは明らかに冷え切った関係であったものがちょっとした会話から夫婦の絆を取り戻していくシーンは素直にいいな、と思えるものです。
またキュウのクラスメートである祥子と相沢の娘でもある麻里、この2人それぞれが持つ家族観の変化や、少しづつ自分を客観視できるようになっていくところもまた見どころです。
こんなふうに一つの殺人事件を主題に、これを取り巻く人々を丁寧に描写し、事件の解決ばかりか彼らの成長物語にもなっているという”巧みさ”は見事なものです。そしてなによりも、本作ではインターネットを駆使した事件とパソコンに向き合う2人の男、キュウと相沢を描きつつも、彼らの成長のきっかけは、実はそれらとは真逆にある生身の人間同士の会話にあった、というこの対比が絶妙な点に、著者の構想力を思わずにはいられない一冊といえるでしょう。 -
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ネタバレついにシリーズ完結! 本作の見どころはなんといっても新人類委員会とどのようなかたちで決着がつくのか、二代目夢明斎との戦いは? といったところでしょう。
前作で登場した戦闘機ハリアーも再登場、今度はその後継機でしょうか、バージョンアップされたと思しき機種が登場。パイロットは前作で撃墜される瞬間に脱出し一命をとりとめたウルブリヒト。
芳賀一族はといえば、舎念が家族を三瓶山に呼び寄せる展開、恵理は高校を退学し息子夫婦も松江市内の自宅と職を捨て、まさに最終決戦の雰囲気が盛り上がります。
そして真田自身も一時は特命調査員としての職を失いかけ、ハリアーとどう対峙するのか、お約束の自衛隊を指揮下に置くいつものパターンを繰り出すことができなくなり、圧倒的に不利な状況に陥ります。まさに最終巻といったところでしょうか。
そして、物語終結に向けて二人の人物の華麗なる裏切り、これを抜きには語れません。一人はシリーズ初期から登場する武器商人のラリー。これまで冷徹に求められた武器を売ることに徹してきた男が最後の最後で新人類委員会に手を貸すかたちになったことを悔やみ、ついには真田やザミルへ武器を売る際の大盤振る舞い、ちょっと素敵です。
もうひとりはハリアーのパイロットであるウルブリヒト。こちらも新人類委員会の思想や理念に疑問を抱き、三瓶山を襲撃する計画をすんでのところで回避、夢明斎をはじめとする仲間をせん滅するための攻撃を加えます。彼はあくまでも傭兵である一方で、心のどこかに内なる正義を抱えていたのでしょう。前作で撃墜されるシーンで恵理が感じた「感動」はやはりここにつながっていたんだなと思わせてくれるシーンでした。
真田と夢明斎との決着はというと、最後はちょっとあっけなかったですね。ハリアーの攻撃で手傷を負った状態の夢明斎が相手では結果は見えているというもの。はたして真田の打ちで二人の戦いも終結を迎えます。
物語のラストでは真田と恵理の将来をなんとなく感じさせる描写もあり、この二人の未来を見てみたいですね。
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今野敏のシリーズものは多くありますが、本シリーズのように同じ相手と戦い続けるものは初めて読みましたが(刑事ものではそういうわけにはいきませんしね)、こんなタイプのシリーズもよいなと思いました。恵理のキャラクターがなかなか良かったですし、自衛隊を指揮下に置くときのお約束のセリフも。ということでシリーズ全体を通して楽しめたということで星4つ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ第四弾。新人類委員会の黒幕であるルドルフヘスが登場、前作の解説であっとおどろく敵が登場というようなことが書いてありましたが、彼のことだったのですね。前作でシュトルムが死んでシリーズにおけるステージ2へ突入といったところですね。
私、世界史をまったく勉強していないもので、この人物の存在は存じ上げませんでしたが、Wikiなどを拝見すると替え玉説といったものもあったようで、本作の内容とオーバーラップする部分もありそうで、どこまでが史実でどこから先がフィクションなのか区別がつかなくなりそうです。
本作ではザミルが新人類委員会にとらわれヘスと対面するところからはじまります。ザミル危うしと思いながら読み進めていましたが、恵理・真田・モサドの連携でなんとか事なきを得ます。
後半はいつものドンパチの展開。今回は出雲大社の背後にそびえる山林が舞台。いつものヘリ出動(とお決まりの名ゼリフ)はありませんでしたが、前半でザミルが囚われの身になった喪失感から一転、奪還~落ち着くべきところに落ち着いたという安定感を感じさせてくれる内容に満足。真田と恵理のやりとりもなんだか親密感が増していて、ますます興味深くなってきました。 -
購入済み
簡単に上手くいくなぁ
任侠シリーズのラストは、もうお決まりのハッピーエンドって分かってるんだけど、今回は割とアッサリ片が付いて、何だか簡単だったな、という印象です。
そして、主人公で代貸の日村さんは、毎回苦労性だなと思うけど、今回は特に「ちょっと力抜け!」って笑いたくなるくらい苦労性でした(о´∀`о)オヤジの反動かね(笑) -
ネタバレ 購入済み
色シリーズ4作目は、「緑の調査ファイル」。
STの紅一点、結城緑がメインの物語です。
人並外れた聴覚を持つ翠が、クラシックと言う音の世界で起きた事件の解決に挑みます。
いつもはヒステリックで、わがままな印象の翠でしたが、今作では大人感を漂わせた素敵な女性に描かれていてある意味新鮮でした。
他にも、菊川がクラシック鑑賞が趣味で、同じ趣味を持つ青山と意気投合するとか、菊川と翠がちょっと良い感じとか、赤城、山吹、黒崎が今回全く蚊帳の外だった事など、物語意外にも面白い場面が多くて楽しめました。
色シリーズは、次作で終了の様ですが、その先の展開にも期待が膨らんで、今後ST達がどう活躍するのかとても楽しみです。
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Posted by ブクログ
前作から時間が経過している設定なのか、竜門も辰巳も年齢を重ねた設定になっています。シリーズ4作目(最終?)。竜門の師匠が上京し、渋谷の宮下公園でおきた事件の犯人を追う展開。
怨恨から武道の腕に覚えがある人物が公園にたむろする若者を襲撃する、それを竜門が止めるという展開はデジャブのようでもあり、もはや様式美といえるようでもあり…。
ただ、本作においては竜門の師匠である大城の登場でマンネリ感を多少は打破しているといえるでしょう。また本シリーズを通じて著者の武道に対する知識が惜しげもなく披瀝されており、興味のある読者には好印象なのでしょう。私の場合は残念ながらそういった方面への興味がなく、今野敏作品ではどちらかというと純粋な警察もののほうが好きだな、と実感。 -
Posted by ブクログ
今野敏お得意の刑事ものとはちょっと趣向をかえた一冊、女子大のゼミで未解決事件を”研究対象”にしつつも、研究の過程で事件を解決に導くというストーリー。
三宿の女子大ということですので、舞台のモデルは昭和女子大あたりですかね。元警察官である大学教授が自身が担当するゼミのなかで、捜査においては素人である女子大生に物事の見かた、考え方を丁寧に解きながら、関係者への聞き取りを進めるという構成だけに、読み手にとっても懇切丁寧なつくりになっているといえるでしょう。扱う事件も複雑な人間関係が背後にあるものではないので、余計なアタマをつかうことなく、ストーリーを追うことに集中できます。登場するゼミ生5人はいずれもそれぞれに得意分野があり、この点はSTシリーズを彷彿とさせます。
主人公である小早川の冷静で地に足の着いた思考パターンはまさに刑事のそれであり、女子大という華やかな舞台との対比もあり、作品に落ち着きを与える軸になっていると思います。
少しづつ打ち解けた竹芝教授に対する評価や彼との関係性も、好ましく感じました。特に自己評価の低い竹芝教授が、小早川との付き合いを重ねるうち、また何人かの学生が持つ自身に対する想いを知ることで、ちょっとだけ自信を取り戻したようで、読み手も明るい気持ちになりました。次作も期待。 -
購入済み
今回は、僧侶でもある山吹がメイン。
中盤から後半は、ほぼ百合根と山吹だけで話を回していた感じでしたが、それでも十分楽しめました。
お寺での生活(座禅や作務のシーン)は、結構興味深く、山吹の話にも納得したり感心したりで、百合根じゃありませんが、1日体験してみたくなりました。
もちろん、事件が起きてそれを解決したわけですが、いつものSTとは一味違う展開で、これはこれで面白かったです。
今作は、読みながら癒されました。