今野敏のレビュー一覧
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ネタバレシリーズ第四弾。樋口シリーズも安定したおもしろさを誇るものの、本作は若干樋口らしくないシーンがありましたね。捜査の初動段階で氏家からもたらされた被害者が痴漢被害を届け出ていたことに対する反応、また第一の被疑者である樫田への態度など、いつもの樋口なら持前の洞察力で正しい答えにたどり着くところが、ちょっと遠回りしていたように思います。その分を小泉刑事指導官がフォローするという構図で、最終的には事なきを得ますが、なんだか、樋口が”並み”の刑事になってしまったかのような印象でちょっと戸惑いますね。
事件のほうはといえば女性殺害事件とその周囲に浮かぶ複数の容疑者がいずれも被害者から痴漢やストーカーで訴 -
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萩尾秀一シリーズ第二弾。前作は短編でしたが、本作は本格的な長編で読み応えも十分でした。萩尾の相棒の秋穂も前作より成長したのか、彼女の視点が萩尾を助けるシーンもあり、よきコンビになりつつあつことを感じさせてくれます。
本シリーズでは捜査三課の視点から他のシリーズで捜査の中心となっていた捜査一課を描写しているところも興味深いところです。主人公である萩尾との対比という観点もあるからでしょうか、一課がちょっぴり悪者的な描写になっているあたりはおもしろい点だなと感じながら読み進めました。
萩尾の言葉通り、犯人は盗みの”プロ”で、萩尾もまた窃盗捜査のプロ、そのなかにあって相棒の秋穂の存在は単なる紅一点 -
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伝説シリーズ第3弾。沖ノ島といっても日本最南端のほうではなく、福岡県の玄界灘に浮かぶほう。これ、誰かがテレビでこの島の話しをしていて初めてその存在を知ったのですが、令和のこの時代でもそのような”領域”が存在していることが驚きです。
で、本作はその沖ノ島でおきた事件を巡ってSTの面々が福岡へ出張し捜査にあたる、というストーリー。島の因習もあり、現場である島の上陸ができない、関係者も島でおこったこと=事件に関することをしゃべらない、というちょっぴり四面楚歌的な状況でどのように捜査を進めるのか、ここが本作の読みどころかと思います。
また伝説シリーズを通じて、やはり青山の活躍が目立ちますね。飄々と -
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ST色シリーズでは「赤の調査ファイル」に次ぎ出来栄えだと思います。黒崎を中心に据えた作品としては「黒いモスクワ」につづく2作目ということになりますね。
STが追う謎の失火事件と並行して、茂太や一平たちが振り込め詐欺師に一泡吹かせようとする企みが進行しますが、なにせ彼らが素人だけに「ほんとうにうまく行くのだろうか、殺されたりしないだろうか」と、読んでるほうがハラハラドキドキさせられます。また彼らの素人っぷりが物語にある種のコミカルさをもたらしており、読みやすさに一役買っていると思います。
失火事件のほうはといえば、極めてST向きの事案であり、希少な科学的事象によるものであることが判明します。 -
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ネタバレ任侠シリーズ第3弾。
昔ながらの義理と人情、地域住民との融和を大事にするヤクザの阿岐本組。お人好しの組長が今回引き受けたのは病院。
出版社も学校も異例の組合せだったけど、病院というのはまたさらに面白い組合せ!
しかも今回は周辺で起きるトラブルが、一部の地域住民による暴力団追放運動、他のヤクザ・耶麻島組からの妨害行為と、前作よりもリアルなヤクザっぽさ。
ナンバー2の日村さんが好きだけど、阿岐本組長の器の大きさと、常に本質と未来を見抜く鋭さにますます感心して、こんな上司がいたら付いていきたくなるなと思った。
妨害行為でホームレスたちが病院に送り込まれ、病院がてんやわんやしたときには医者や看護師 -
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色シリーズ第四弾。本作は翠が主役。とはいえ、色シリーズ全般にいえることですが、やはり青山の推理なしでは事件の真相にはいきつかないですね。ST5人の中では唯一、青山だけが心理学の専門=生身の人間を相手にする分野を手掛けていることが影響しているのでしょう。
本作でもバイオリンや密室に隠されたトリックを見抜くのに青山の推理は欠かせませんでしたね。一方の翠はというと、持ち前の聴力をいかして事件の真相に迫ろうとします。事件の関係者として登場する指揮者・辛島は翠と同じ能力の持ち主であり、特殊な能力をもった二人の対峙は見どころの一つかなと思います。
また菊川警部補と青山がクラシックを通じて意気投合するシ -
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STシリーズ4作目。この作品以降「色」シリーズとなりSTメンバーの一人ひとりにスポットをあてた作品がつづくようです。1作目はタイトルの通り”青”山をメインにすえた物語。
とはいえSTのほかの4人の活躍も十分描かれており、思いのほか青山が前面に出ている感はなかったかなと感じました。やはりSTは5人の力が発揮・結集されてこそなのだなと思います。この点は前作「黒いモスクワ」で黒崎がSTを抜けるかもしれない、という話しが交わされた場面で百合根がいった「この5人だからこそのST」というセリフそのままかもしれません。
それにしても作品から感じる青山の風貌はどことなくスクープシリーズの布施を彷彿とさせま -
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STシリーズ3作目。なんとなく今までのものよりまとまりがあるというか、テンポもよいなと感じました。ちょうど300ページ程度ですし、舞台が海外へ移ったり、途中でSTの面々が合流してきたり、美作竹上流の話しが織り込まれていたりと、小気味よい場面転換があったおかげで前の2作にくらべ読みやすかった印象です。
そして今回は珍しく百合根が事件の真相を解明する役を担うという、これも前作からの流れとはちょっと毛色が違う展開で楽しめました。
3作目になり著者としてもだんだんとシリーズとしてのテンポや作風がより確立してきたのかしら、そんな風にも見えました。4作目からは色シリーズでST一人ひとりにスポットをあて