今野敏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
秋は多くのオーケストラがシーズン開幕を迎える時期だ。私の職場の近くにもオーケストラがやってくるホールがあって、色とりどりのフラッグが飾られていて演奏シーズンの幕開けを教えてくれている。クラシック音楽の世界はどこか敷居が高い印象があるが、実際には多くの人間が集まるひとつの組織であり、そこには会社や学校と同じような悩みが存在するのだろう。そんなオーケストラの世界を舞台にした、人気シリーズの最新作を読んでみた。
今野敏さんが書かれた「任侠楽団 (中公文庫)」は、昔気質のヤクザたちが問題を抱えた組織の再建に挑む「任侠シリーズ」の第6作だ。今回の舞台はオーケストラ。公演を目前に控えながら楽団員同士の対立が深まり、さらに指揮者が襲撃される事件まで発生する。また、ヤクザという正体を隠しながら楽団の立て直しに奔走する日村たちの姿が描かれている。
物語は、阿岐本組がイースト・トウキョウ管弦楽団のトラブル解決を依頼されるところから始まる。新任指揮者の改革路線に反発するベテラン団員と、それを支持する若手団員の対立によって楽団は混乱状態にあった。そんな中で指揮者襲撃事件が起こり、警視庁捜査一課の刑事まで登場する騒ぎとなり、若頭の日村たちは楽団の再建と事件の真相解明という二つの難題に向き合うことになる。
これまでのシリーズ同様にテンポよく読み進められる作品だが、今回はオーケストラという馴染みの薄い世界の内幕が次々と描かれているのが印象的だった。ただし、クラシック音楽に詳しくなくても、人間関係や組織運営の難しさは誰にでも理解できる内容になっているうえに、事件の謎を追うミステリー要素も加わり、シリーズの持つユーモアと緊張感がうまく両立していた。
そして何よりも、このシリーズの魅力である「義理人情」が今回も存分に発揮されている。立場や肩書きが違っても、人を思いやり、組織を良くしようとする気持ちが大切なのだと改めて感じさせられる一冊だった。クラシック音楽が好きな人はもちろん、普段あまり縁のない人でも十分に楽しめる作品だと思う。 -
Posted by ブクログ
待望の隠蔽捜査シリーズ。と言いながら、刊行は約半年前であり手にするのは少し遅かったか。.
この前まで、シリーズを第1作から再読しており、その流れで本書を。「再読記録」欄のレビューに改めて感想を記した。(この欄のレビューは一般には公開されてないようだ)
今回は、政治家絡みの事件。
明治時代から政治家を輩出している鎌倉の名士で国会議員の安達邸が放火される事件が発生。
竜崎の政治家への対応は、と読み進めたが、やはり竜崎はいつもの竜崎だった。
鎌倉署の幹部や神奈川県警の八島警務部長それに警視庁の伊丹刑事部長まで、安達家に対し特別扱いし、恰も安達家が最重要事項のような言い方をする。
しかし、竜崎は己の信条を些かも揺るがせず、対応に当たる。そんな竜崎を気に入ったのか、安達家当主でかつての与党幹事長だった安達喜代助は、たびたび竜崎を自宅に招く。
今後のシリーズで、このユニークな喜代助の再登場はあるのだろうか。
警察小説であるとともに家族小説でもあるこのシリーズ、事件後竜崎家での家庭団らんが描かれ、妻の冴子が「父子で酒盛りなんて、感慨深いわね」と。
一方、竜崎は不思議な感覚を味わっているという、そんな家族の間で竜崎に転勤が話題になっている。
次回作あたりで、竜崎の異動が現実化するのだろうか。それもまた、楽しみである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ都内で発生した刺殺事件の捜査本部に、なぜか東京地検特捜部の人間がやってきた。どうやら彼らは政治家が絡んでいると睨んだらしい。その政治家はつい最近当選したばかりの野党議員なので、樋口は彼を失墜させるための特捜部による策なのではないかと疑念を抱く。
挙げ句の果てに地検の二人は捜査を妨害し、勝手に議員の秘書を逮捕してしまう。強引な幕引きにも負けず、樋口たち刑事はホシを追い続ける。その結果新たな被疑者が現れ、無事に事件は解決したのであった。
キャリアや検察、政治家との対立の中にあってもブレることのない刑事・樋口。周囲には思慮深いと思われているが、実は内心困惑することばかり。優しさと弱さ、信念を併せ持つ等身大の主人公の存在が何よりこのシリーズの魅力だろう。
警察小説ならではの熱量も素晴らしい。