今野敏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
待望の隠蔽捜査シリーズ。と言いながら、刊行は約半年前であり手にするのは少し遅かったか。.
この前まで、シリーズを第1作から再読しており、その流れで本書を。「再読記録」欄のレビューに改めて感想を記した。(この欄のレビューは一般には公開されてないようだ)
今回は、政治家絡みの事件。
明治時代から政治家を輩出している鎌倉の名士で国会議員の安達邸が放火される事件が発生。
竜崎の政治家への対応は、と読み進めたが、やはり竜崎はいつもの竜崎だった。
鎌倉署の幹部や神奈川県警の八島警務部長それに警視庁の伊丹刑事部長まで、安達家に対し特別扱いし、恰も安達家が最重要事項のような言い方をする。
しかし、竜崎は己の信条を些かも揺るがせず、対応に当たる。そんな竜崎を気に入ったのか、安達家当主でかつての与党幹事長だった安達喜代助は、たびたび竜崎を自宅に招く。
今後のシリーズで、このユニークな喜代助の再登場はあるのだろうか。
警察小説であるとともに家族小説でもあるこのシリーズ、事件後竜崎家での家庭団らんが描かれ、妻の冴子が「父子で酒盛りなんて、感慨深いわね」と。
一方、竜崎は不思議な感覚を味わっているという、そんな家族の間で竜崎に転勤が話題になっている。
次回作あたりで、竜崎の異動が現実化するのだろうか。それもまた、楽しみである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ都内で発生した刺殺事件の捜査本部に、なぜか東京地検特捜部の人間がやってきた。どうやら彼らは政治家が絡んでいると睨んだらしい。その政治家はつい最近当選したばかりの野党議員なので、樋口は彼を失墜させるための特捜部による策なのではないかと疑念を抱く。
挙げ句の果てに地検の二人は捜査を妨害し、勝手に議員の秘書を逮捕してしまう。強引な幕引きにも負けず、樋口たち刑事はホシを追い続ける。その結果新たな被疑者が現れ、無事に事件は解決したのであった。
キャリアや検察、政治家との対立の中にあってもブレることのない刑事・樋口。周囲には思慮深いと思われているが、実は内心困惑することばかり。優しさと弱さ、信念を併せ持つ等身大の主人公の存在が何よりこのシリーズの魅力だろう。
警察小説ならではの熱量も素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ隠蔽捜査シリーズの短編集第二弾。
今回は、いろいろなサブキャラの視点で語られる7つの物語。
竜崎署長は電話にでる、署長室にいるの2つで現場には今回出てきません。
ある意味、日常を切り取った短編ともいえます。
戸高の検挙率、検挙数を挙げる方法がなかなかに皮肉が効いていて良かったです。
野間崎管理官がなんやかんやで竜崎をフォローする方向になっていたのが、冷静に考えれば、原理原則で動く竜崎は間違っていないと自分自身に言い聞かせているようで、ちょいとニヤッとしてしまいます。
大なり小なり、皆、竜崎の影響を受けているわけで。
次に続く長編を読むのがまた楽しみになりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『隠蔽捜査』シリーズ長編第10作。竜崎が神奈川県警刑事部長に着任してから3作目だが、日米地位協定が絡んだ前作とは違う意味で、厄介そうな案件か?
小田原市在住の人気作家・北上輝記が、自宅付近で誘拐された。実在の作家なら村上春樹のようなポジションだろうか? 捜査陣は色めき立つが、読書などまったく嗜まない竜崎は、北上輝記を知らないようである…。
現場が混迷する中、北上輝記の同業者である梅林賢が小田原署を訪ねてきて、捜査協力を申し出る。彼は北上輝記の家族を通じて誘拐を把握していた。確固たる信念と柔軟性を兼ね備えた竜崎だけに、追い返さずに話を聞くことにする。
現実に誘拐事件となると、警察は報道機関と協定を結ぶ。本作でも、協定を結ぶはずだったが…犯人からの前代未聞の要求により、協定は中止された。一応、どんな要求かは伏せておくが、鋭い読者なら真相に感づくかもしれない。
同時に、警視庁管内では殺人事件が発生していた。竜崎の異動後も、毎回警視庁の伊丹刑事部長が登場するのがお約束だが、警視庁の案件が誘拐事件と何らかの関連があるのだろうと容易に予想される。「何らか」の内容は予想外だったが…。
正直、事件そのものより、梅林賢が語る作家論の方が興味深い。北上輝記は純文学領域の作家で、梅林賢は娯楽領域の作家だそうだが、彼曰く、娯楽小説の地位向上のために戦ってきたし、領域が異なる北上輝記と交流はないという。
今野敏さんご自身、娯楽領域の作家であり、最前線で戦ってきた。梅林賢の言葉は、作家・今野敏の自負でもある。少々ご都合主義だろうと、面白い作品を。今野敏さんのライフワークたるこのシリーズには、サービス精神が溢れている。
警察官と作家が、それぞれの力量を認め合って化学反応を起こし、不可解な誘拐事件の裏を炙り出した。梅林賢ファンだという伊丹のミーハーぶりに苦笑するが、この結末、神奈川県警佐藤本部長の心中やいかに…。