重松清のレビュー一覧
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みんなのうた
人間みんなが持っているものって多くないと思う。
けれど、その中で「ふるさと」はみんなが持っているのかもしれない。
生まれた場所かもしれないし、育った場所かもしれないし。ふるさとと思える場所はどこでもよくて、自分が思うふるさとがあるっていうこと自体が幸せなことなのかなと思わせてくれた。
どんな人生の選択をしても、それを肯定してくれて、応援してくれるのは自分自身と家族しかいない気がするし、どの選択をしてもそれを正解って言うと少し意味合いが違うけれど、納得する??人生にしていくのは自分しかいない。そのためには、満足できるほど、自分を受け入れられるほど、自分と真正面から向き合って努力しないといけないのかなぁ。
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2011年3月11日2時46分。忘れられないこの時刻にあの巨大地震が発生し、東日本各地、特に東北地方を津波が襲ったことはいつまでも心に刻まれている記憶です。
本書は、2011年秋から冬にかけてが舞台。中学受験の失敗が大きな枷となって不登校になった少年が、父親の同年代の友達であるライターの男性に誘われて被災地を取材するのに同行する物語。取材先は著者・重松清さんがほんとうに取材した方たちで、虚構ではありません。本書の帯には「ドキュメントノベル」との文言でわざわざどういったジャンルの作品なのかがカテゴライズされていますが、具体的には現実の被災地の様子を架空のキャラクターが訪問して現実を伝える、といった体裁でした。
久しぶりの重松清さんの作品でした。登場人物たちが庶民的といえば庶民的、ダサいといえばダサい。昭和から平成はじめくらいのノリといった感じがします。こういった感覚のレイヤー層の人を描くのが重松さんは得意なのかもしれません。しかしながらそれは親しい間柄というか内輪の間柄というかでしか見せないような、庶民のある種無防備な一面なのだと言ったほうが当を得ているかもしれません。
文章術について言えば、あえて技巧を凝らさず抑制を効かせて書くところが特徴。誰でもわかる言葉で書くのは読者の間口を広げますが、そのぶん表現の幅としてはどうなんだろうと思ってしまうところ。でも、しっかり、こころの奥に届いてきます。重松さんはひとつのやり方を編み出している。
本書を読むとすぐに、2011年の空気感のなかに没入していきました。僕としてもまだ、東日本大震災については、ついこのあいだの出来事のように感じられます。あのときの意識が失せていません。本作品の文庫化が2014年で、そのあとがきでもまだ震災は終わっていないと著者は述べていますが、そこからさらに10年以上経った現在(2026年)でも、終わった気がしません。もう15年も経っているのに、ある部分の時計は止まったままなのかもしれない。
文庫版あとがきでもこうあります。
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そうではなかったのだ。町の時計が前へ前へと進んでいく一方で、「ひと」の時計は行きつ戻りつを繰り返す。それを忘れるな、と自戒した。書き手として自分が言葉を尽くして伝えるべきものは、「町」と「ひと」のどちらなのか――わかってるよな、と肝に銘じた。(p279 「文庫版あとがきにかえて」より)
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ひとによって、時計の進み具合は違いますし、被災地の人たちのなかには、僕なんかよりずっと時計の針が進んでいるひとがもしかすると多かったりするかもしれません、そういう可能性は十分にある(僕はぐずぐずするタイプなので)。
ネタバレになるんですが、鮭の遡上がエピローグに使われているところ、もやもやした気持ちがひとつの「点」に結実して頭がクリアになって終わります。たとえその時点での仮の答えだとしても、ひとつの目標地点となります。暗中模索だった道が照らされます。言葉の力だなあとも思えましたし、人間の類推力(この場合は重松さんの類推力)の力強さだよなあとも感心しました。鮭は傷だらけになりながら川を遡上し、産卵と放精を終えると息絶えます。命をつなぐために、自分の命はほんとうに捨て身で行動します。「どうしてそこまでするんだよ」とたまらず言葉が口をついてしまうような行為です。そこを類推の力で、人々が未曾有の大災害から立ちあがることへ、もっというと大災害を自分自身のなかでどう位置付けるか、という難しい心理面での問題へひとつの道筋をつけていました。
というところですが、最後にふたつほど引用をして終わります。
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一人の被災者が「前を向いてがんばります」と言ったら、ふつうの番組ならその言葉を紹介するだけで終わる。しかし、さらに膝を突き合わせて話を聞いてみると、じつはまだ状況はまったく好転していないことがわかる。前向きになれる根拠などはなにもない。それでも、自分自身を奮い立たせるために、あえて元気にふるまっていたのだ。(p55)
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→人間ってこうだったりしますよね。我慢強い東北の人だからこそなおなのかもしれません。震災に限らず、人生で苦しみの途上にいる人もこういったふるまいをしている人は少なくないのでは。
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阿部館長は朝日新聞の取材に応えて、こう言った。
<支援は助かるが、被災の現実を見てもらうだけでいい。ここの人がこれからどんな思いで生きていくのかを考えてくれたら十分です。それで将来、南三陸町のためとはいいません、日本のために行動する若者が出たらうれしい><五月九日付>(p221)
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→仏教系の大学である大正大学がボランティア派遣をした際、現地の人が取材に応えて言った言葉です。大変な想いをしていながら、前を向いて腹の底から踏ん張っているような(でもその気持ちは表には見せないような)言葉ではないだろうかと、読みながら敬意の気持ちが生まれてきて、頭を垂れた言葉です。 -
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ネタバレ◼️短編概要
01.フジミ荘奇譚
02.ハードラック・ウーマン
03.かげせん
04.漂流記
05.よーそろ
06.シド・ヴィシャスから遠く離れて★
(概要)⇒パンク時代の全盛期にライターをしていた主人公佐藤とパンクバンドのボーカルだった乱丸。20年ぶりに子供の保育園のお迎えで再会する。20年経ち2人とも過去の過激な思想の角は取れて、丸くなった大人として平凡に暮らしいていた。そこにもう1人、佐藤がかつて書いたコラムの大ファンだという男 堀田が現れる。堀田はパンク全盛期より下の世代で直接パンクを体験してないが、佐藤の書いたコラムをバイブルとして崇拝しており、パンクな生き方をしてきたらしい。結構いい大学を出てるらしいが、定職につくのはパンクじゃないとの理由で本当にフリーターとして生きてきた。そんな堀田が今のありふれた佐藤の姿を見て失望し激怒。果ては佐藤の家族を巻き込んだ復讐まで匂わせる。。だが、そんな身勝手な堀田の逆恨みに対して佐藤は怒り毅然と叱りつけた。佐藤の怒気を感じ取った堀田は怯えてどうすればいいか分からなくなってしまった。
(所感1)⇒現実を知らず文書だけを見ていると、過度に理想化され美化され過ぎてしまう。乱丸の「あいつはリアルタイムで見ていない。本で知った時にはもう誰もいなくなっていた。だから全部夢というか伝説というか憧れになっている。」「自分はぎりぎり現実を見ているから、わりとまぁしょぼいところも知っている。実際にはガキが騒いでいただけ」という台詞がリアル。文章なんてその時点のその1人視点の切り抜きに過ぎない。
(所感2)⇒養老本によく書かれている「全てのものは諸行無常で変わり続けるが、情報だけは唯一変わらない。」が分かりやすく物語に現れている。自分はもうとっくに変わっているのに若い頃に自分が書いた文書はいつまで経っても変わらない。情報とはその程度の信用度にすべき。あと安易に情報で残しすぎるのも良くないのかも。
(所感3)⇒自分も若い頃と今ではかなり思想が違うのでよく分かる。若い頃は「目標達成こそが全てだ!あらゆるものを犠牲にしてでも結果を出さなければならない!」と本気で思い込んでいた(笑)。人は変わるというのを前提に考えておくべき。この考え方は内田樹の本でも度々述べられてる。
(所感4)⇒安岡章太郎の「悪い仲間」にもあるように何かに感化せれておかしな道に進み始めたとしても、程よい所で我に帰るバランス感覚が人には必要なのだろう。この堀田はまだ帰れるがやや行きすぎてしまった。
07.送り火★
08.家路
09.もういくつ寝ると★ -
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炎の積読消化シリーズ!
ついに十冊目でゲス。
ゲス?(笑)
泣ける話と聞いてー。
ほら、最近空気乾いてるから。
潤い大事だから。
気合入れて涙腺刺激してみます。
人の死にまつわる短編集。
んー、最後の「その日のあとで」が好きじゃない。
そこまでは★3の中〜上だったけど、少し減点して★3の下にします。
・ひこうき雲
小学生のお見舞い。
・朝日のあたる家
先生。
・潮騒
小学生の頃に住んでた町に。
・ヒア・カムズ・ザ・サン
母子家庭。
・その日のまえに
思い出の町に。
・その日
その日。
・その日のあとで
後日談。まとめ。
正直もっとガツンと来るかなーと、身構えてました。
「その日のまえに」と「その日」は危なかったけど落涙まではいきません。
まあ、ひとの心が不足してるんでしょうね。
最後に全部まとめて各短編をくっつけるようなことしてますが、正直余分だと思った。
連携させなくとも、それぞれ別個の話で良くね?
せっかくね、それぞれが良い「余韻」を出してる話なのにさ。
そこは上手いなーって思ってた。
「余韻」って書かないことで生まれる味じゃん。
えっ、そこで終わっちゃうのってある意味ぶつ切りにして。
そして読者に考えさせ、想像させる技術じゃん。
下手したら意味がわかんなくなったり、ウザかったりされてしまう中で、上手く「余韻」を決めてるなーって感心してたのよ。
なのに。
あーそれなのに、それなのに。
回収しちまうんだもんなー。
書かぬが華の「余韻」なんだから答えを書いちゃダメじゃんよ。
そうそう。
「余韻」は無音のような音だから良いのに、そこを書くなよーって思ったのさ。
台無しじゃん。
だから最後の「その日のあとで」が嫌い。
その日のあとを書くのは良い。だけどそこで各話のその後を書いちゃ、せっかくの余韻がさー。
そこを書かずに「その日のあとで」を書く方法だってあったろうに。
あ。もちろん個人の感想なんで異論は認めまーす。
あそこはその後を想像に任せるのじゃなく、はっきり書いてくれて良かったっていう感想もアリでしょう。
俺はそっち派じゃなかっただけってことなんだけど。
うん。残念。
ホクホクのできたて唐揚げに握力自慢の5本の指の爪全部に黒い何かが詰まってる汚いオッサンがブシューってレモンを握りつぶして大量に汁をかけまくるぐらいに残念。
それと「朝日のあたる家」だけ仲間外れ感。
なんでこの話入れたんだろ。
なんか意味を読み落としたかなー? -
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■サマリー
・タイトルそのまま哀愁がバンバン漂う
・全体的に暗めの構成
・暗めで悲しい映像が脳裏に浮かんでくる物語
■所感
楽しい気分には決してならない作品である。
主人公の進藤宏は40歳。元絵本作家である。
奇しくも私と同い年であり、作品を読んでいると、
自分と重なってくる影の部分があり、
斜に構えた主人公の生き方に共感できる。
読後には、私のような凡人にはとうてい言語化できそうもないが、どうも心の中にモヤモヤした気持ちと、この主人公に清々しさを覚える気持ちとが入り混じった非常に不思議な気持ちになった。
主人公は、光を求めている。
妻とも別れ、娘とも離れ離れになって、さらには
知り合ったホームレスが殺された。
暗くて暗くて仕方がないのに、どこか光が見える
不思議な作品だった。
■心に残った箇所
マジックミラーの国のアリス より
一人で飲むつもりだった、今夜は。
ひさしぶりに酔いつぶれてみたい、とも思う。
四十歳の孤独を肴に。ヒーローの座から転げ落ちた男と、女優ではなくなった女のことを思いながら。
寂しくて哀しい酒に一晩中ひたったあと、宿酔いの朝に力なく笑えればーそんな絵本が書ければ、とても、嬉しい。 -
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ネタバレ◼️短編概要
01.背景ノストラダムス様
02.正義感モバイル
03.砲丸ママ★
(概要)⇒家族の得意技という作文の宿題を出された息子。母はガタイがよくパワフルで砲丸投げという特技もありどんどん筆が進むが父については書くことがない。母も父の特技出しに協力するも息子にとっては母の特技の方が面白い。母曰く父の特技は砲丸投げ用の白線引き。当時2人は陸上部で父はマネージャーとして母のためにラインを引いていた。父は怪我で選手からマネージャーに転向して母に出会ったのだった。これを聞いた息子は父の特技を母と出会えた運の良さと一行書いた。
(感想)⇒とても他人事とは思えない内容笑。確かに自分の得意技も嫁と出会えた運の良さしかないかもしれない笑。父親の得意技なんてこれぐらいでいいのかも。
04.電光セッカチ
05.遅霜おりた朝
06.石の女
07.メグちゃん危機一髪
08.へなちょこ立志篇
09.望郷波止場★
(概要)⇒テレビ制作下請けの主人公トモとレコード会社勤めの大学の後輩の林。過去の一発屋を面白おかしくイジるバラエティ音楽番組を作る仕事で再会する。2人が担当したのは20年前に一発当てた演歌歌手の羽衣天女。トモと林は出演交渉のために羽衣天女のスナックに向かう。スナックで彼女のファンで幼馴染の3人組と出会い、彼女の過去の苦労話を聞く。皆にとって羽衣天女のデビューは希望だったと。林も感銘を受けて出来る限り真面目な方向に持っていこうと努めるが、上司の意向で結局真面目な方向にはできず。また天女側にも生放送前日にまともな音楽番組ではなく下衆なバラエティ番組だということがバレる。これを知った羽衣天女の仲間たちはこんな番組で笑いものにされるなら出るべきじゃないと怒ったが、トモはそれでもプロとしてやるべきだと一喝。笑われるのが嫌なら、あんた達が天女を笑わせろと。それを受けて当日仲間3人組は全力でお笑いをやって、天女も笑って笑わせて終幕。
(所感)⇒人生の山場は表面的な不条理にも喰らいついて飲み込んで、自ら作っていくしかないなぁと感じた。別な話にあった押忍の精神と同じ。苦境を受け入れて乗り越える。途中で辞めていたら全員惨めな結果しか残らなかった。
10.ひとしずく
11.みぞれ -
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表紙からして明るい内容ではないと思っていたけど、ずっと暗いし、主人公(父親)や大人たちが子どもに振り回されてばかりでモヤモヤした。
再婚相手の連れ子(晴彦14歳)と父親が気を遣いすぎてギクシャクしている。本当は母親がしっかりしなきゃダメだろうけど、ポンコツで役に立たない。
なんで主人公ばっかりが気を遣っているのかが気になった。そんなに気を遣う相手なら再婚しなきゃいいのに…。他人を辛そうだったから助けたかったなんて偽善者。
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●内容は暗いけど、
印象的な表現はたくさんあった。
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「知る」というのは残酷なものだ。
知ってしまうと、もう「信じる」ことができなくなってしまう。
死ぬつもりだった、訳ではなく、
終わりたかっただけ。
命を捨てたいわけじゃない。
わからないままの不安な状態に耐えきれないから、なんとかして、わかりたいと思う。
一つのことがわかるのと引き替えに、
また別のことがわからなくなる。
自分が安心したい『わかりたい』と、
相手と共感を持ちたい『わかりたい』は違う。
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自殺したい人の心理って、そういう感じなのかなと思った。死にたい訳じゃなく、世界を終わりにしたいから死ぬしかない…重いなぁ。
そもそも人間が生まれる前から世界がある訳だから、そう都合よく終わらないだろう。
主犯の上田は"神"ではなく典型的な"中二病"。
■余談
『木曜日の子ども』⇒旭ヶ丘中学校
『黒い糸』⇒旭ヶ丘小学校
…旭ヶ丘って使いやすい地名なんだろうか?
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