あらすじ
広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔をだしながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる……。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描く奇跡の衝撃作!
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Posted by ブクログ
小学生の頃、本屋で見かけて表紙に惹かれ、ずっと気になってた作品。子どもの頃はなんだかまだ読んではいけないような気がして避けていたけれど、大人になり読んでみることに。もうすでに何回か読み直したし、映画も見た。表紙と同じように、なぜか惹かれるものがあって、時々読み返したくなる。(少し気分が落ち込むことは覚悟の上で…)
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ここまで感情が揺さぶられる作品に出会ったことは今までない。出会う人全員に勧められるような本では決して無いが、私は初めて徹夜して本を読んだ。人生で一番夢中になって読んだ本は『疾走』だ。この本以上に心を揺さぶられた経験はまだない。
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(4.6)
暗くて、重い。どんよりとしていて呑み込まれていくよう。深淵に迷い込んでいく感覚。会う人、環境、境遇全てが救われない、酷い、切ない、辛い、目を背けたくなる。でも不器用に、必死に生きていくしかない。それでまた全ての心の描写、シチュエーションがリアルで生々しい。共感できる部分が多々あった。中学の頃のいじめだったり、人間関係に重なる部分があった。思春期は思い出にするには輝かしいけど、実際は重くて深くて悲しいものでもある。そして果てしない性欲にも襲われる。全てが懐かしく共感できて、スイスイ読めるのもそうだが、重松さんに、また小説作家の表現力の凄さに舌を巻いた。言葉だけでは表しようのない思春期の難しい感情を物語を通して表現している奇跡のような一作だと思う。死刑囚と同じ穴の空いたような目になってしまったおまえがこれからどこまで落ちていくのか下巻が楽しみでしょうがない。
Posted by ブクログ
ラスト2ページがなかったら何も救いがないままだったのでは?
環境で人生って底なし沼の様に堕ちていくものなんだなと思った。シュウジの環境は厳しすぎた。
住んでいた場所が悪かったのか、生まれた親が家族が悪かったのか…悪い連鎖は止める事が出来なかった。誰も、神様だって止められなかった。
遠藤周作の「沈黙」を思い出す。
今だって救えない子どもたちはたくさんいる。少しでも救いがあるといいと思うなんて、言葉が軽すぎて嫌になる。
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〈誰か一緒に生きてください〉
黒く、粘着質な液体。
あぶくがひとつ
懸命に浮かび上がろうと、もがく。
理不尽な衝撃が
何度もあぶくを砕く。
痩せ散らばった体で水面を目指す。
空気を吸いたい。
誰かと、つながりたい。
その瞬間、
この体が破裂してもいい。
/////
師走本⑧
「人生の双六盤を全力疾走する「ひとり」の本」
「シュウジ=おまえ」という「にんげん」の運命と宿命の物語。魂を極限までこそぎ落とされながらも、つながりを求め命を燃やす姿は正視に堪えない。絶望の中に生の啓示を垣間見る傑作!
Posted by ブクログ
15歳の少年かがどった過酷な人生です。初めてこの本を読んだときには、あまりのショックで2,3日ほど何も出来なくなりました。
僕の中で、今の今まで消化できていない物語があって、本当はこうして書くだけでも気が重いのだけれども、がんばってキーを叩きます。それがこの重松清の「疾走」です。僕はこの物語を最初に読んだのは、就職が決まって荷物を新しい住所に送って何もなくなった部屋の中でした。
読み終えた直後、そのあまりのショックでしばらくの間、何もすることが出来ませんでした。主人公のシュウジが
「ねぇ、どうしてにんげんは死ぬの?」
という問いがすごく印象的で、
主人公のシュウジに対して「おまえ」という不思議な呼び掛けで全編に渡って救いようがない物語がつづられていく。そんなお話です。物語の中でシュウジのことを「おまえ」という人物も、重い重い「十字架」を背負っています。
舞台はある地方都市で『浜』で暮らす人間と『沖』で暮らすニンゲンがそれぞれいがみあって暮らしていて、主人公のシュウジが暮らす家は、優秀な兄と、腕のいい大工の父親、優しい母。そしてシュウジの四人で暮らしているのですが、「ゆめみらい」の開発などで街の様子が変わっていき、物語の中盤に、兄のシュウイチが赤犬(放火魔)になったことをきっかけとして、シュウジの家庭は一気に崩壊していきます。
その地域では放火が殺人よりも罪が重いからです。シュウジも『赤犬』の弟として、学校で凄まじいいじめに遭ってしまいます。そして、物語のヒロインであるエリも「ゆめみらい」の開発で事故に巻き込まれ、引き取られていた叔父夫婦が土地を売ったので、東京に引っ越していきます。
僕はこの話を思い出すたびにその日一日はものすごい鬱になりますが、僕にとってはマスターピースのひとつです。
Posted by ブクログ
まさにとてつもない速さで読み進んだ。
短く濃密な人生はまさに黙示録的であり、田舎で生まれた自分と少し重ねてしまいそうであった。
愛せる人、ふたりでいてくれる人がいることをありがたく思う。
Posted by ブクログ
上巻というか、単行本で読んでるんだけど、半分越えたからここで。
ヤクザとの絡みのへんから、急展開。
ページをめくる手が速くなり、というかムナクソ悪くて流し読み。
なんでこんな物語書けるんだろう?
著者はどんな人生を歩んできたのか?
ただの創作?そうとは思えん。
盛者必衰の理をあらわす?
今の俺って最低の人生だな、って思ってたけど、そんなに悪くは無いのかも?と思えてきた。
それほど俺の絶望?の人生に深く突き刺さるものがある。
結末が楽しみだ。
Posted by ブクログ
シュウジは普通の、極めて普通な優しい中学生で、それでも中学生に背負わせるにはあまりに酷な重荷を背負わされる。
ヨブと同様、心は極限まで追い詰められる。謂れもなく。
けれども、ヨブの前に現れた神は、シュウジの前には現れない。
現代の作家重松清が、デウス・エクス・マキナを出すわけがない。
でも、神はいないのではなく、存在している。シュウジの前に現れないだけだ。
神はずっと視点として存在し、シュウジを「お前」と呼びながらじっと見ている。
助け舟を出すことなく、ただただ見ている。
シュウジが追い詰められていく過程は、巧みだけれど現実味はない。ヤクザもエリの義父もある種テンプレといえる。
けれども、神が善人に対して助け舟など出さず、ただ見ている、という点には恐ろしいほどのリアリティがある。
リアリティ、なんてものではなく、リアルそのものかもしれない。
この小説の肝はここにあるのだと思う。
つまり、善人を助ける神を書かないことで、現代版のヨブ記を書いたのである。
そして、デウス・エクス・マキナと違う、ノットバッドエンドを重松清は最後の最後に提示する。
最後の最後にはこのノットバッドエンドと同時に、
一見神視点と思われた、「おまえ」と呼ぶ主体が神父であると明らかにされる。神はいなかった
Posted by ブクログ
重松清の心情表現、やっぱりすごい。人情味のある作品が多い印象だったから、こう言う人の暗い面もえぐって書けるんだなぁ、すごいなぁ。
乾燥していて寒くて冷たい感じのする町で、少しずつ心が掠れて枯れてくシュウジがこの後どうなるのだろう。
心に溜まってるであろう抑えきれない衝動が、たまに性欲にむき出しになって現れてるのも良い。もっとやれ。
Posted by ブクログ
シュウジの家族の転落っぷりが悲し過ぎる。エリとシュウジには幸せになって欲しい、下巻が楽しみ。
一つ共感できるのは、シュウジの疾走。私も走るの好き、走りながら、あーだこーだ考えるけど、走り終わりの爽快感は堪らない。
Posted by ブクログ
走るのが好きな主人公の周りを取り囲む生々しく重い関係性が読んでて辛い。しかし、背景描写や「ことば」の描写が細かくどんどん引き込まれていく。この先がどうなるのかは微妙に読めないが、確実に悪い方に進むことだけは判る。下巻を早く読んでまとめて評価したいと思える。
Posted by ブクログ
「ひとり」で過ごすおまえは、意外とおしゃべりな少年だった。
仲間が欲しいのに誰もいない「ひとり」が、「孤立」。
「ひとり」でいるのが寂しい「ひとり」が、「孤独」。
誇りのある「ひとり」が、「孤高」。
「死ぬぞ」と脅すのは、「殺すぞ」と脅すのより、ずっとリアルだ。
Posted by ブクログ
まだ前半。主人公のまわりで、少しずつ壊れていく人たちを見るのは、とても苦しい思いになります。しかし、物語に鷲掴みにされながら、上巻が終わりました。主人公に救いはあるのでしょうか?後半を読みます。
Posted by ブクログ
正直あらすじを見た感想は「よくありそうだなー」でした。家族の中の誰かが不祥事を起こしてそこからトントン拍子で物語が暗い方向に、的な
読み終えた後、ため息が出ました。いい意味で。重くてじっとりするような余韻が残る、この読後感が好きなんだよなー。これだから胸糞は辞められない。
表現の一つ一つが生々しくて読んでてどんよりぐったりしてきます、こっちまで穴ぼこ空いてるみたいな目になりそう。それぐらい、思ったよりもずっとずっと暗いお話でした。
学校でも家庭でもトップでい続けた兄が挫折してどんどん堕ちてぶっ壊れていく様は読んでてキツい、、、自分の弱さを隠すようにひょうきんに振る舞うてつおも見ててとても痛々しい
そんな終始どんよりした雰囲気の中でも、えりの孤高さがより際立って輝かしく感じます。「あんた達、皆大嫌い。赤犬、ひとりじゃなくてもいいんだよ。」のシーンはスカッとしました。
下巻もほんと救いのない展開です
Posted by ブクログ
著者の作品は、好きでよく読みます。ほのぼのとした作品。涙を誘う作品。大人の御伽噺のような作品。おじさんである著者が、どうして少年少女の気持ちがわかるのか不思議にさせる作品。共通する部分は決して居心地の悪い、不安感を誘うような作品は読んだことがありません。私が知らないだけかもしれませんが。この作品は、ズバリそんな作品だなあと感じます。上巻を読み終わった段階では全く救いがありません。でも、著者の筆力は読ませます。違和感から逃げることができずに読み進めます。下巻でも展開が楽しみです。
Posted by 読むコレ
「とんび」は読みましたが、とはいえ重松清なる作家をよく知らずに取り組んだ本作。
まずはずっしりと重い立ち上がり。
これはこの人の作風か? バッドエンドはあるのか?
寄る辺ない気持ちは暗中を手探りで彷徨わねばならない状況を思わせ、後半に向けて緊張感の増す上巻読了となりました。
扱うテーマがテーマなだけに、心の何処かでは勧善懲悪とばかりに読者をスカッとさせても良かろう等と期待もしてはみるのですが、にしても主人公を「おまえ」と呼ぶ回顧録的な人称と繋がる展開は想像できず、謎は残り不安が募るばかり。
人の心を弄びおって(笑
Posted by ブクログ
読んでいてどこかACのCMの砂浜の空の青さをイメージさせる。昔土地を干拓したから浜と沖の派閥がある。周りから色んな人が離れていき、シュウジはどんどん取り残されていく。シュウイチが壊れた辺りから、空っぽに近づいていくシュウジ。神父だけが良心に感じる。街の開発と、シュウイチの存在は何をもたらしたのか?下巻はどうなるのだろう。
Posted by ブクログ
内容がしんどい。どうしようもないほどしんどい。
誰の視点で主人公の「おまえ」を描いているのか分からない序盤。「浜」と「沖」、教会に集う人、走ることなどの舞台設定が描かれた上で、やがて兄が壊れ、家族が壊れ、どこにも救いの無い話になっていく。
壊れてしまった人を「からっぽ」と呼ぶ描写がある。まったく救いの無い展開を読んでいるうちに、この本を読んでいる自分まで「からっぽ」になっていくような感覚がある。
上巻だけでは何とも評価できないので★3にしてみる。
Posted by ブクログ
ずっと不穏な本。純粋さを持っていた主人公シュウジが、成長するにつれて不機嫌さで人を動かす兄に似てきているなと思う。そんなひとつひとつの描写から嫌な感じを受け続けます。
シュウジ、頭の中ではあんなにおしゃべりなのに言葉にはできていないのが悲しい。
Posted by ブクログ
幼少期から15歳までのシュウジの人生は暗澹としている。
将来への希望は萎み、少しずついろんなものを諦めていく。
彼が「ひとり」になっていく過程を残酷なまでに描いた作品。
どんな結末を迎えるのか分からない。
ただ、アカネやエリや神父さんの存在が彼にとっての救いになれば良いのにとは思う。
Posted by ブクログ
「流星ワゴン」「ビタミンF」を読んだ後だからか作者に対するイメージががらりと変わる作品。
田舎に住む主人公の少年が家庭の崩壊や街の開発などのしがらみによって“ひとり”になってゆく上巻。
彼の置かれた“ひとり”という状況は孤独なのか、孤立なのか、孤高なのか-
暗く、重く、生々しい表現が多いのでずしりと響くものがあるけれど何故か一気に読めてしまいます。
オススメできるかどうかは、微妙。
好きな作品と言えるかどうかも下巻を読んでからでないと決められません。
Posted by ブクログ
星評価は実はゼロとも5とも
両方なのであえて真ん中の3つで
今まで自称イヤミス大好きだったですが
ホンモノのイヤミスを読んでしまった感
ちょっとトラウマ級
下巻を読む元気ない
しんど過ぎた
しばらくこういうのはもうダメだ
この感想が重松清さんが望む感想なら
してやられたって感じ
すっごい嫌いですっごい好きみたいな
そんな感じ
Posted by ブクログ
心の奥底の闇を吐き出すような表紙。感想を書くのも辛くなるような、重いテーマが次から次へと重なり読後感は深く重く残る。読んでる時は重く暗い気持ちになっていくのに、読む手は止まらない。堕ちる時はとことん落ちてしまうのか。全て背負って行って希望を残していったのかな