あらすじ
結婚三年目、突然の妻の死。娘と二人、僕は一歩ずつ、前に進む――娘・美紀の初登園から小学校卒業まで。「のこされた人たち」の日々のくらしと成長の物語。
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Posted by ブクログ
重松清の『ステップ』を読み、前に進み続けることの大切さを改めて感じた。主人公の健一は、突然妻を失い、幼い娘のみきを抱えてシングルファザーとして生きていく。彼が娘を抱っこしながらも、どうしても「仕事の延長」のように業務的になってしまう姿は、とてもリアルだった。生活のために働き続けなければならない一方で、みきが求めているのは、抱っこのぬくもりや、母親のような柔らかさだ。そのギャップを埋められないと理解しつつ、それでも必死に寄り添おうとする健一の姿には胸を打たれた。
物語の中で、義理の父が健一に説教をする場面がある。「自分の娘が悲しんだことを他人事だと思うな。自分のことだと思え」という言葉は、読んでいる私自身にも深く刺さった。私も二人の男の子を持つ父親として、家族の涙や痛みを、決して他人事にせず受け止める覚悟を持たなければならないと気づかされた。
『ステップ』は、悲しみの中にある温かさや、家族の絆、そして人が前へ進む力を静かに描いた作品だ。読み終えたあと、自然と心が優しくなり、自分の家族をもっと大切にしようと思えた。小さな一歩でも踏み出せば、幸せは少しずつ近づいてくる――そんなメッセージを強く感じさせてくれる一冊だった。
Posted by ブクログ
ホントにもう、重松清さんの本は電車で読んではいけないと思う。またしても涙と鼻水が止まらず…
氏の講演会で隣に座った男子学生が、人気投票1位と予想していた作品だったので手に取った(その講演会での一位は本作ではなかったけど)。
で、これを読みながら思った。
人の内面、感情を描いた作品はたくさんある。
その中でも、例えば三島由紀夫の金閣寺は、吃りの寺の跡取りというある意味特殊な主人公の屈折した感情の動きを、ここまで掘り下げるかというくらい深読みして、格調高い言葉を駆使して表現している、ある意味極北とも言える作品だと思う。ただ、「うん、こういう思い、わかるよ」と万人が感情移入できるモチーフ、表現ではない気がする。
一方、重松清の作品は、大多数の人が感じたことのある、あるいは想像できる場面におけるある意味普遍的な感情を、小学生にもわかる表現で丁寧に描いているから、老若男女問わず多くの人の心に響いているんだろうな。
この本でいえば、娘を亡くした義父が「朋子の思い出はもう増えないんだ。あとは歳をとって忘れていくだけだろ。それが怖くてたまらないんだ。(中略)後から後悔しても思い出は増やせないんだ。仕事なんてどうだっていい。美紀ちゃんと少しでもたくさんの思い出をつくって、子供のことを覚えててやるのは、親の義務だ…」
と酔って泣きながら語った言葉。
話の細部は日本人ならではの背景があったり時代背景に依る話題もあるが、多くの重松作品においては、芯のテーマや表現はおそらく時代に依らず、また国を問わず共感を呼ぶ「永遠の表現」になり得るのではないだろうか?
Posted by ブクログ
いっぱい泣いた。
残された人たちの日々。
重松清さんの言葉が染み渡る。
優しい言葉たち。
久しぶりにこんなに泣いた。
やっぱり重松清さんの言葉はいいんだよなあ。
優しくて。でも現実的で。
人を大切にしたいと、改めて思った。
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2人に関わって2人をつくっていく外の人たちがみんな女性で、自然と亡き妻、母の存在を感じさせられた
涙ぐんでしまうような優しいお話だった
25.8.26-27
Posted by ブクログ
30歳という若さで妻が亡くなってしまう。1歳半の娘との生活が始まるシングルファザーの物語。
重松清さんの初作品だったが、実に優しいお父さんの様な語り口で物語が紡がれていく。
行きの電車でも、食堂の隅でも、帰りの電車でも、カフェでも、
我慢できずに涙を流してしまった。
残された家族がどう悲しみを受け入れていくのか。
自分の中の死に対する考え方が変わった一冊。
2人の子を持つ親として、この本を読みながら、子供たちへの愛しさが溢れていった。
Posted by ブクログ
面白かった。
途中までは、言い方は悪いが淡々と読んでいたが、終盤に心を打たれた。
「悲しみを胸に抱いたまま生きていくのは、決して悲しいことではない。そのひとがいないという寂しさを感じる瞬間は、そのひとのいない寂しさすら忘れてしまった瞬間よりも、ほんとうは幸せなのかもしれない」
人生を考えさせられる一冊です。
Posted by ブクログ
大切な人との死別によってなかなか気持ちの整理ができず前に進めない主人公。
残された者として簡単に整理ができずに前に進みきれないところは、なかなか自分自身に置き換えるともどかしいし、辛い気持ちになる。
この悲しみの深さはその人への愛や思い出の大きさでもあるのだと思った。
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重松清さんの本、どれを読んでもぐっときてます。永遠の不在について書かれてるということで、ずっと切なさが根底にあるけど、出会う人達がみんな素敵で救われます。
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もっとゆっくり話が進むのかと読み始めたので、展開というか月日の速さについていけないなーと読み進めました。先に逝った母親の気持ちも、残された父娘の気持ちもわかりやすくすーっと入って想像しやすかったです。義理父の入院あたりから、涙なくして読めず(父と重なったのもあり)すごく共感でき、そう思ってたのかな?と自分と重ねたりで作者の文章が大好きです。
読み終わって、こちらこそありがとうございました。と言ってしまう素敵な本です。
Posted by ブクログ
シングルファーザーの子育て奮戦記と書くと安っぽくなっちゃうけど、読み応えバッチリ。
一人で育てる訳でなく、周りの人を一緒に巻き込みながら親も成長していく。
幼児から小学卒業まで1年1年丁寧に描かれる。よくあるあれから五年後、十年後と雑に成長が飛躍せずに少女の思いと共に、義理の家族の気持ちの変化も緻密に表現されるのが秀逸。ホントにリアル。
この二人だけの物語だけでなく、残された人皆の物語として前向きな気持ちにされる。
これからも前途多難なんだろうけど、不安無く希望が持てた。
こういった作品に出会えるから、読書はやめられない、と久々に実感した。
Posted by ブクログ
父と娘が中心ではありますが、夫と亡婦、父と義家族、祖父母と孫、父と新しいパートナー等、様々な人間関係を通じて人の成長を垣間見ることができる一冊でした。
映画の方は山田孝之さんが個性的過ぎて真面目な話に合わないのでは?と敬遠していたのですが、大好きな國村隼さんが義父役で出演しているということで見てみたところただの食わず嫌いでした。
原作も映画もどっちも泣ける良いお話でした。
Posted by ブクログ
すごく良かった。なんかもう、ずっと泣いてた。
なあ朋子、パパの抱っこはホネホネしてて痛いんだってさ
あんちたたちのママは、しんだらいなくなっちゃうの?
朋子が僕に残してくれた中で最も大切なものは悲しみだったのかもしれない
心揺さぶられる言葉やセリフがあちこちにあって、泣きすぎてひいひい言ってる私を、子供たちが不思議そうな顔で見ていた。
原先生の言葉の端々に引っかかってしまうところや、お母さんは家にいますと言った美紀の言葉を嘘と言われた時の感情の動き方がすごくリアルで、同じ立場ならきっと私もこう思うだろう、そしてそれを口には出せないだろう、と思った。
こういう話でありがちな、性描写や生理が来たときのエピソードなどがなく、作者が登場人物を尊重し、大切に思っているような気がして、そこも好きだった。
義父の「最初で最後の親父の説教」にも泣かされた。
みんなに愛されて優しい子に育った美紀は、おじいちゃんとの別れの悲しみを胸に、それを優しさに変えて一生懸命に生きてゆくのだろう。
この作品に出逢えて良かった。
Posted by ブクログ
「ケロ先生」を読み始めて
あぁ、この保育士さんと恋に落ちて紆余曲折あって再婚するのか。と白けた気分になってしまったけれど全く違う展開でした。
少しずつ成長していく美紀。義実家との関係。そして、新たに出会う人々。どれも温かく、心に染みるエピソードでした。
季節のイベントが軸になっているので、1人で静かにアルバムをめくりながら過去に思いを馳せている。そんな気持ちになりました。
長いようであっという間でもある10年という月日。
それでも、やっぱり何かは変わっていて、失われたものもあって。
見えなくなっても、忘れてしまったように見えても、無かったことにはならない大切な時間なんだと思います。
Posted by ブクログ
寂しさや悲しさに目を背けないで向き合うからこそ優しく強くなれる。
みきちゃんが素敵な子に育っていく過程にほっこりした。
義父の懐の深さが心地いい。家族っていいなあと思えた一冊。
Posted by ブクログ
本音と建前の入り混じった、心温まる話。
↓以下ネタバレです
美紀は、とうとう中学生へ。心と体が大きく変化する年齢。正直、健一だけではカバーできない部分も出てくると思う。そんなとき、一つ屋根の下に「同性の先輩」がいたほうがいい。
物語が、健一目線で進む。美紀は、健一から見た美紀が描かれている。
美紀の本音は書かれていない。スピンオフで「ステップ・美紀の章」があったらいい。美紀の本音が知りたくなった。
自分に大きな悲しみがふりかかったとき、その悲しみを消し去ろうとしたり、心に空いた穴を違う何かで埋めようとする気持ちはわからなくもないが、悲しみや寂しさを消すのではなく、心に持ったまま共に生きていく。それも一つのイイ生き方だと思ったし自分は賛成。そもそも、消し去ることができたり、何かで埋め合わせできた悲しみなどは、所詮大したことはなかったのだ。
私の知人が、交通事故で息子を亡くした。その時から、子供が生きて家に帰ってくることは日常ではなく、奇跡なんだと思うようになった。しかし、この小説を読んで
親が無事に生きていることも、当たり前の日常ではなく、奇跡なのだと思った。
Posted by ブクログ
30歳で旅立った妻への想いを胸に、夫と娘が歩む日々の物語。
最近同じようなテイストの本ばかり読んでるからか少し食傷気味ですが、大切にしたいと思う言葉が散りばめられていて良かったです。
この本は亡くなった妻の両親や家族がお話に密接に絡んできて、主人公である二人に影響を与えるのがリアルなところと思いました。
以下、いいなと思った文章。
p239美紀がおとなになったらーーと、ふと思う。みんなとうまくやっていくことが一番大切なんだと考えるひとより、一所懸命がんばることのほうを大事にするひとになってほしい。
→自分が周り見るタイプだからか、刺さりました。周りと足並みが合っていなくたって、一生懸命取り組む人であることのほうが自分にとっても悔いのない生き方につながると思う。
p246それでも、ゆっくりでいいんだ、と思う。おとなになることも、仲直りをすることも、そして、いなくなってしまった誰かを忘れていくことも。
→優しい言葉。人には人の事情があって、ペースがある。
p289空港からバスを乗り継いでお寺に向かうのはナナさんのこだわりだった。
時間もかかるし、乗り合わせたお客さん次第では針のむしろになっちゃいますけど、
でもレンタカーやタクシーですうーっとお寺に着いちゃうのって、ちょっと違うと思うんです。
→ちょっとわかるなーって思います。道中いろんなことを考えながら目的地に向かうことって気持ちを整理したり、その人のことを考えたり、無駄じゃないと思う。
p343悲しみや寂しさを早く消し去りたいと思っていたのは、いつ頃までだっただろう、今は違う。悲しみや寂しさは、消し去ったり乗り越えたりするものではなく、付き合っていくものなのだとーー誰かが、というのではなく、僕たちが生きてきた日々が、教えてくれた。
→たぶん本書で一番伝えたいこと。悲しみと冷静に向き合って付き合うことって時間を要すると思います。すぐには難しい。それが世に言う「時間が解決してくれる」ってやつなのかなと思いました。
Posted by ブクログ
「数え切れないほどの今日を昨日に変えていって、いま、僕たちはここにいる。」
妻がいて、子供たちが元気に育っている姿を見ていられる今の生活がなんて幸せなんだろうと思う。
子供たちがどんな風に成長していくのか、一緒に楽しみながら日々を過ごしていきたい。
Posted by ブクログ
最後はいつも泣かせてくる重松さん。今回は泣かないかな、と思ったのに。
4歳の娘がいる身としては、これまでの子の成長を振り返ったり、これから先の成長に思いを馳せたりしてしまう作品だった。
美紀ちゃん、素敵な子に育っていて嬉しい。登場人物たちが今もどこかで歳を重ねている気がするような、温もりのある物語。
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寂しさや悲しさ、様々な生きづらさは、避けたりするものではなく、抱えて付き合うもの。
そうやって、人は人に優しくなれる。
自分自身も沢山の人に優しくされて育ってきたのだと思い出させてくれて、色々な人の顔が浮かんだ。
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「とんび」も好きだったがこちらも素晴らしい内容だった。
やはり家族を描かせたら重松清。
とんびと同じく、妻を亡くしたシングルファザーの話だけど、こちらは子供が女の子。
女の子を男で一つで育て上げるというのは想像を絶するものがあると思う。
主人公の亡き妻への愛、残された子供への主人公以外の親戚たちからの愛。
子供だけではなく、主人公もまた亡き妻の家族から愛されている。
そして、義父も自らの姿で孫への命の尊さを教えていく。
こうして自分も様々な人に育ててもらったのかなとしみじみと感じた。
亡き妻の小学生時代の話を同窓会の時に同級生から聞かせてもらうエピソードには泣いた。
確かに、自分の親も妻も知らない自分を知っている人って、たくさんいるんだけど生涯の中でその人と会うことって絶対に無いよな、、、と。
田舎の家族に会いたくなる、心温まる話でした。
Posted by ブクログ
辛い思い出に触れるたびに優しくなって、生きることに一生懸命になっていける。
人生の悲しみとか辛さとかを受け入れて、再出発するお話、温かいぬくもりがお話全体を包み込んでいました。
Posted by ブクログ
父と娘の成長物語。
あとがきにより雑誌連載時は「恋まで、あと3歩。」というタイトルだと知って、ケロ先生と成瀬さんの章には大いに納得した。
確かに恋に至るまでもう少しだったなという内容で、こういうことがこれから続いていくのか?と思っていたら、後半からは少し趣が違ってきて、このタイトルには合わない内容になった。
ナナさんと美紀が仲良くなる過程こそ興味があるところなのだが、そこはわりとあっさりと解決していて少し物足りない。
とまぁ「?」と思うところもなくはないのだが、重松節ともいえる登場人物それぞれの細かい心理描写に泣けた。
ジャンプの章で小学校卒業。
晴れ晴れとしていてまた泣ける。
よくここまで一人(一人じゃないけど)でがんばってきました。あなたはとてもいいお父さんです。
Posted by ブクログ
どこかの紹介サイトでおすすめされてたから買った一冊。
シングルファーザーの子育ての話だった。
お父さんが完璧すぎる
欠点がない。
シングルファーザーの家庭のお手本みたい。
だから話の序盤はあまり面白くなかった。
話が進むにつれて感動する場面がでてきたのでだんだん話に集中できた。
後半は泣ける場面が多く久しぶりに本を読んで涙出た。
自分の友達にもシングルファーザーで娘を育てた友達がいるが、子育ては一人じゃ大変で周りの助けがないと、うまくいかないと改めて感じた小説でした。
Posted by ブクログ
重松さんらしい優しい感じのお話だと思いました。
妻に若くして先立たれたシングルファーザーと娘を中心とした家族の物語が父親視点で描かれます。
義父、義母、義兄など結婚は2人だけの話ではなく、相手家族との繋がりももたらすものであることを改めて考えさせられました。また再婚によって親が複数いるということも当然あることで、家族の形はいろいろであるという当たり前のことに気付かされました。
Posted by ブクログ
幼子を残してあっという間に病死した妻。
男手一つで娘を育てようと決めた
父親の視点で綴る「ふたりの」成長記。
男手ひとつと言っても
急に義父母との縁が切れるわけもなく
仕事を続けるから会社の人間関係もある。
9つの短編で本当にステップを上るように
娘・美紀ちゃんは保育園児から小学校卒業まで
健やかに育っていくのです。
そして、その年月はまた、彼女以外の大人にも
必要な時ぐすりだったのでしょう。
Posted by ブクログ
美紀と健一親子の周りの人が皆優しくて、読んでいて優しい気持ちになりました。一部の人は入れ替わっていくのが、自分の過去で一瞬でもお世話になった人を思い出せて、懐かしいような寂しいような。
健一の会社の人も良い人ばかりで和みました。世の中がもう少しでもこういう感じだといいなぁ…
Posted by ブクログ
早いうちに奥さんを亡くして、男で1人で一人娘を育てるシングルファーザーの話。
でも決して1人ではなく、素敵な家族に囲まれて、娘(美紀)も主人公のお父さんも日々成長していく。
まだ小さかったときに美紀は、母を亡くしたので、母の記憶がほとんどないまま成長。
なかなか現状を受け止められなかったり、お母さんと聞くだけで涙が止まらなかった時期もあった。
しかしお父さん、周りの家族に支えられ、愛され、日々成長していく物語。
とてもほっこり、家族って良いなと思えた小説。
個人的には主人公よりも鬼の村松が名称のおじいちゃんが好きだった!
文章で印象に残ったのは、
主人公が、なくなった奥さんが残した中でもっととたいせつなものは悲しみだ。悲しみに触れて力をもらってきたのかもという部分。
普通は楽しい思い出とかだがこういう発想もあるんだなと気づけた。