あらすじ
満1歳の息子を喪った「私」は、休職届を出し、旅に出た。前妻のもとに残してきた娘とともに。かつて「私」が愛した妻もまた、命の尽きる日を迎えようとしていたのだ。恐山、奥尻、オホーツク、ハワイ、与那国島、島原……“この世の彼岸”の圧倒的な風景に向き合い、包まれて、父と娘の巡礼の旅はつづく。決して消えることのない傷を抱えた時、いかにして人は人生を再開させるのか。鎮魂と再生への祈りを込めた、熱い傑作の誕生。
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大事な人と永遠に別れることになってしまった人々を、色々な視点から描写する物語。主人公のセキネさんは最愛の子供を亡くし、その罪に妻と共に苛まれていた中で、前妻の子供と色々旅をすることで、最愛の人を忘れるのではなく、よい距離感で想いを感じることが大事なのだと思わせられていく。こころにすっーと入る、よいはなし。
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死んでしまった者を思う気持ち。
死にゆく者を思う気持ち。
どちらが悲しいのだろうか。
大人も子供も関係ない。
それぞれが死と必死に向き合っている。
それを乗り越えなくても、忘れなくてもいい。
それぞれが、折り合いをつけていけばいい。
人は、絶対に死と向き合わなければいけないのだから上手く死と付き合っていかなければならない。
こんな考えは、青二才と笑われるだろうか。
でも、今の自分の正直な気持ちである。
死について真剣に向き合わなければならない時が来たらまた変わるかもしれない。
その時にまた、本書を読んでみたいと思う。
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「旅をしている。」で始まる8章と「旅をしてきた。」で始まる最終章の9章からなる長編小説。
重松さんの真骨頂とも言える作品です。
幼子を亡くした夫婦の後悔と、二人の間に生じた隙間。久しぶりに会った娘とのぎこちない関係。憎み合って別れた訳では無い前妻との繋がり。そして、旅先で出会う様々な風景と人々。一言でいえば美しい再生の物語です。
ところで、今さらながら気づいたことですが。。。
特にこの作品では、登場人物が様々な場面で軽く意表を突く発言や行動をします。それはルポルタージュ作家でもある重松さんが、インタビューの中で相手がとる様々なアクションを記憶し、小説の中に取り入れている気がします。インタビューと言うやや非日常の中で起きる事なので、普通では無いけど、不自然でも無く、軽く批評を突く。それが重松作品の特長になっているように思います。
ただこの作品、やはりマンネリ感は否めません。一時は性愛小説など様々な方向に手を出した重松さんが、何かを得て帰って来た訳ではなく、元々の位置に戻った感じです。
私は好きなのですが。。。
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泣かされますね。
表面張力で一杯のバケツに、あと一滴のしずくが落ちたら
いっぺんにあふれ出てしまうような気分です。
人間は、いつか別れなければなりません。
その悲しみを受け入れなければならないのですが
いつになったら、受け入れられるのか。
還暦になるを、ふと別れを考えるようになりました
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失ったモノ、、、命は、決して戻ってこない。
その温かさを感じること、声を聞くことができない。
わかってはいる。わかっているけれど、どうしょうもなく求めてしまう。
その思いにどう向かうのか。
誰もが必ず出遇うコトをわかっているのに、
その時が来るまでその大切さを真にわからない。
だから、であって欲しい一冊。
そして、思うことがある。
最期の時を選ぶことができたら
それは人生の最高の幸せなんだろうと思う。
最後に、この一冊を読む機会をそっとくれた君の優しさに出逢えたことを嬉しく思う。
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子供を突然の病気で失った親の心情がとても丁寧に描写されていました。主人公以外は皆達観しており、主人公だけが苦しみもがいている感じですが、主人公の気持ちが余計にリアルに思えます。ハッピーエンドになりようがない話ですが、最後はもうちょっとほっこりさせてもらいたかったなあと思いました。
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人は絶対死ぬ。大切な人、憎んでる人、無関心な人必ず死ぬ。他人の心の奥は誰も知らない。前を向いて自分の意思で歩いていくことが一番他人の心のそばに近くなることだと感じた。ありがとうございました。
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「ああ、でも、そうかもね。乗り越えるのは一瞬でもできることだけど、慣れるっていうのは、地道に毎日生きていかなきゃ、どうしてもできないことだから」
あなたの10年間も、長い長い旅だったんじゃないのかー。
大切なことは、ずいぶん後になってから気づくもの。
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1回目の誕生日を迎えたばかりの息子を亡くした父親と、母親を亡くそうとしている娘の旅。
話はシリアスで重いものだった。
でも最後に希望の光を見いだすことができた。
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幼い子を亡くした親と、これから親を亡くす子が交叉する物語でした。
雲が空を流れるように、旅をし、流離い、日本各地の景色を目にします。さまざまな人と出会い、別れます。
あとがきで重松さんは、「「忘れる」のでも「乗り越える」のでもない、喪失感との折り合いのつけ方を探ってみたかった」と述べています。
本当に大きな喪失を前に、人は忘れることも乗り越えることもできず、ただ立ち尽くす・・・けど、生きなくてはいけない。その闇の深さに慄きます。
喪失が大きい程、その人の時間というのは止まってしまうんですよね。だからこそ、旅が題材に選ばれてるのがすごく自然に感じました。
なぜなら、人も水と同じで、止まっていたら澱んでしまうと私は思っていて、喪失体験で時間が止まってしまうなら、自分からあえて働きかけて、時間を動かさないといけないと思っているから。そして、旅はそのきっかけになると思っているから。
圧倒的な景色と人との出会いは、人を癒すんですよね。
この本は、天気でいうと曇り空です。そう、曇天。
それが、すごくほっとします。明日香たちの曇天の掛け合いのシーンが好き。
水滴が大地に染み込むような、心の奥に届く言葉がいくつもありました。それに、振り返ってみると頭に浮かぶ美しい映像も。
どんなことがあっても時間はちゃんと流れている、ということにふと救われる気がします。誰のせいにもできないことは辛いけど、人は、ちゃんと前に進めるんだと思わせてくれる1冊でした。
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再婚相手の洋子とのあいだにうまれた息子を1歳の誕生日から数日後に突然死で失ってしまった父親が主人公。
とあるきっかけから、前妻が引き取り育てている高校生の娘、明日香と、巡業の旅をすることになる。父親の関根は、息子の死と向き合っていくために。明日香は、母親の美恵子の病気といずれ訪れる死を受け入れる覚悟をするために。旅は北海道から沖縄まで、その土地土地で、出会う人々と触れ合う中で、乗り越えることができない、死と折り合いをつけていくとはどういうことかを感じていく。
前半では明日香と一緒に旅をしていることを洋子に話していなかったが、美恵子の病気の進行もあり、事情を説明すると、理解し旅に同行してくれる洋子が後半で良い存在になっていた。ふたりは離婚というかたちをとるのかな、、と不安になりながら読み進めたが、お話の中ではその点についての結論は出されていない。旅の中で、二人とも息子の死との折り合いをつけて、未来に向かって歩き出すきっかけを得ることができていると良いなと思いながら読んだ。
Posted by ブクログ
全然明るい話ではないんだけど、読み終わったあとに、すっと心に染み入ってくる優しさというか、未来への希望というか、そういうものを感じられる作品。
重松さんワールドというのだろうか、派手さは全くないのにグイグイ引き込まれて、気がついたらすっかり主人公目線にさせられているのは、さすがだな、と。
Posted by ブクログ
相変わらずの重松節。
こないだ読んだ、カシオペアの丘に続く人間の死を取り巻く周囲の人の心描写がすごい。
物語の最後の舞台、与那国島でみる最後の夕日や、
天使の階段のエピソードなど。
旅をしている設定なのだが、ビジネスホテルを泊まり歩く感覚は、学生の頃はわからなかっただろう。
今の自分ならわかる。30歳以上に向けられた本かもしれない。また後書きにもあるが震災後の新作にも期待できる。
Posted by ブクログ
幼い息子を喪った「私」は旅に出た。前妻のもとに残してきた娘とともに。かつて「私」が愛した妻もまた、命の尽きる日を迎えようとしていたのだ。恐山、奥尻、オホーツク、ハワイ、与那国島、島原…“この世の彼岸”の圧倒的な風景に向き合い、包まれて、父と娘の巡礼の旅はつづく。鎮魂と再生への祈りを込めた長編小説。
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大切な人を亡くした喪失感をなんとか受け止めるために旅をしている主人公と、数年ぶりに会う娘のお話。全体的にせつないです。自分にはまだそこまでの経験ないのでピンとこないけど、苦しいんだろうなあ。。。(><)
旅に出たくなる。自然と触れ合うことはやっぱり癒しなんじゃないかと。
Posted by ブクログ
思ったことは言葉にし、感じたままを態度に表し、聞きたくない時にはシャットアウトする明日香。現実にはここまで洞察が出来て大人びた物言いをする16歳は稀だと想像するも、私達大人(親)が無意識に発する何気ない言葉や態度の裏にある真理を鋭く突いていてドキッとする。
理不尽な死、大切な人の命を奪われた後、残された人々がどうやって自らを再生していくのか。明日香のストレートな感性を通して悲しみと絶望で鉛のように固く重かった心が少しずつ柔らかくなっていくような読後感だった。
「悲しい思いをした人は優しくなれる」
そして…
小説的フィクションの中で、前妻のもとにいる娘と共に旅に出る主人公。ありえないけどこういう設定でも読者を圧巻させてしまうシゲマツの筆力に、脱帽です。
Posted by ブクログ
一歳の息子を喪った男と、前妻のもとに残した娘との巡礼の旅。その前妻であり母である女性も、命の尽きる日を迎えようとしていた。鎮魂と再生への祈りを込めた長編小説。
著者のあとがきに「忘れるでも乗り越えるのでもない、喪失感との折り合いのつけかたを探ってみた」とある。本来、宗教が負うべき役割を、重松さんが書き上げた渾身の一冊。テーマの重さを、新人演歌歌手とそのマネージャーのくだりが救ってくれる。
Posted by ブクログ
まだ1歳の誕生日を迎えたばかりの息子を失くした父親の旅の物語。
出だしがうまいなあ、
と最初は技術的なところに目を向けて読んでいたのですが、
読み終わる頃にはそういうことよりも
物語に入り込んで味わうというふつうの読書になっていました。
物語の中へと引き込む力に負けたのです。
それに、だんだん、登場人物の動きやセリフが
こなれていったのだと思います。
それで、読んでいて自然に感じられる土台が前半部分に作られて、
その貯金分みたいなもので、
後半の大事なところをスパートをかけているような感じでしょうかね。
こういうのは、長編だからこそ効く「溜め」と「解放」なんじゃないか、と、
長編を書いたことのないぼくは考えるのでした。
第五章では熊本が舞台になります。
なに言ってるんだとおもうひともいるでしょうが、
熊本地震とシンクロしてしまった感があります。
はじめて小説を書いたひと月後に東日本大震災が起きました。
今回、4作目を書きあげてひと月後に熊本地震。
小説を書くと1/2の割合で地震が起こっています。
まあ、ナンセンスな話だけれど、
縁起を担ぐひとならやだなあって思いますよね。
物語のほうはというと、
主人公は、最初は北へ北へと進み、それから西へ西へと進んでいきます。
東京を中心に、です。
幼い息子の死をうまく受け入れることができず苦しむ主人公と、
同様に苦しむ、妻の洋子。
そして、前妻との子である明日香と父親の微妙な距離感での再会。
そしてその前妻の向かっていく死というもの。
全9章のうち、それぞれの章に、
それぞれ個別の、人生の問題や壁のようなものが描かれています。
そうしながら、全体として、主人公たちの問題が、
解決へなのか、消滅へなのか、進んでいく。
人生を省察したその知見からの描写や語りにこそ、
重松清が読ませる力が宿っているように思います。
いろいろと取材にもとづく描写や知識が語られていて、
勉強しているなあと感じさせられても、
そこはやはり二番手の感慨なような気がするのです。
物語の構築上、リアリティだとかをだすための
素材なんだよなあという感じ。
重松さんは、オトナであるだけでなく、
子どもの心理にもよく通じていると思いながら読みました。
ぼくの子ども時代に感じたことを掘り起こされるような
気さえしました。
そういうところが、
重松さんの一番のストロングポイントなのかもしれないです。
おもしろかった。
Posted by ブクログ
ロードムービーのような作品を書きたかったと後書きにはあるのだが、さすらい感はイマひとつ。ロードムービーというよりは、観光地とのタイアップ映画な雰囲気が漂ってしまう。
取巻きの編集者連中が取材旅行に同行して経費でバンバン落としているような気がしてきちゃうんだよなぁ。我ながら穿り過ぎだとは思う、のだが。でも。
偶然にも去年の暮れ頃から真心ブラザースにハマっていて、特に気にしたことはなかったのだけれど、人それぞれ辛い体験もしているのだということに改めて思い至った。
Posted by ブクログ
“死”をテーマにしたお話。重松さんのお話は“死”に関するお話が多いけど、今回は生後一歳という若さで子供を亡くした両親と、離婚して離れ離れになった娘明日香とのお話で死ぬまでのお話でなく、残された人達のお話。
全ての章が「旅をしている」で始まるように、全国各地に旅をしている。旅は父親の関根さんだけで、待っている母親の洋子さんはすごく強いなと思った。
明日香に、ひとりぼっち出いたおかげで強くなったという母親の美奈子はずるいなと思った。でも、母親を責めない明日香は本当に大人で、本当に幸せになって欲しいと思ったし死ぬまでに満足に美奈子に「お母さん」も呼べただろうかという関根さんの想いがなんとも切なくて苦しかった。
これからも明日香は関根さんをあまり頼らないだろうけど、ずーっと親子だと言うことは忘れないで欲しい。
Posted by ブクログ
生まれたばかりの子どもを自分の不注意で失ってしまう悲しみや後悔は、その立場にならないとわからない。どうやって、それらを和らげていくか、いろんな境遇の人たちそれぞれの生き方・考え方で救われていく。
Posted by ブクログ
幼くして息子を亡くした父親の長い巡礼の旅です。『十字架』ほどヘヴィーではなかったけど、それでも悲しい。特に今幼い息子がおる俺にとっては人ごとではない話。
Posted by ブクログ
テーマは死。主人公である夫婦のほかに、様々な理由で大切な人を失った人物が出てくる。残された彼らは何を思い、どう乗り切っていくか。
重松さんの作品には多く、家族の死が取り上げられていて、生きることの大事さを教えてくれる。ただ本作では、どことなく悲しくて、やりきれない思いだけが残る。
Posted by ブクログ
小説全体が、常にそこはかとなく悲しい。
そして、様々な別れをめぐって、読み手の私は常に胸が苦しくなる。
死とは、愛とは、偶然、意志、…etc.
物語を俯瞰しながら、自分の人生や価値観についてグルグル考えてしまう。