重松清のレビュー一覧
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季節風シリーズの「春」
別れの春、旅立ちの春。不安や希望に胸を膨らませながらそれぞれの春を迎える人を描いた短編集。
都会に旅立つ息子へのメッセージをポンカンに記してそっとカバンへ忍ばせる両親、
その両親の最期の旅立ちへ向けて同じようにポンカンへメッセージを残す息子を描いた「拝復、ポンカンにて」と、
変わってしまった故郷の風景に切なくなりながらも、公衆電話のダイヤルの音を蘇らせる「ジーコロ」に心を揺さぶられた。
私にとっても懐かしい昭和の情景は、二度とは帰って来ないけど、思いはいつでも心に残しておくことができるんだ。
そして、時々それに浸るのも良いなと感じた作品でした。 -
Posted by ブクログ
生徒と先生を題材にした短編集。
どの作品も読みやすくて、理解しやすい内容で安定感抜群でした。
個人的には、【白髪のニール】がすごく刺さりました。
「ロールする」という耳慣れない言葉が、カッコよくてすごく気に入りました。生きていると、大変なことや挫けそうになることがあり、ロールしたくないこともあると思いますが、それでもロールしていかないといけない。世の中の大人たちもきっとみんなロールしていると思って、それを想像して勇気づけられて、私は今日もロールし続けます。
(めちゃくちゃロール連呼してしまったw)
以下、気に入ったフレーズと、短編の感想。
【白髪のニール】
p39(赤ちゃんが産まれるというのはどんな気分か?という問いに対する先生の言葉)
先生「これからはロールじゃ、ロールすることが肝心なんじゃ。キープ・オン・ローリング、なんよ。」
僕「転がり続ける、いうことですか」
先生は首をゆっくりと横に振った「止まらん、いうことよ。終わらん、いうことよ。要するに、生き抜く、いうことよ。」
p42「長谷川の弾きよるんら、たしかにロックじゃ。福本の歌もロックじゃ。ほいでも、大事なんは、ロールでけるかどうかなんじゃ」
二つ合わせてロックンロールーーーー。
「ロックは始めることで、ロールは続けることよ。ロックは文句を垂れることで、ロールは自分の垂れた文句に責任とることよ。ロックは目の前の壁を壊すことで、ロールは向かい風に立ち向かうことなんよ。」
p54僕はロールしてるか?僕の人生は、まだ止まってないか?動き続けてるか?いまは止まっていても、もう一度動き出せるか?まだ間に合うか?間に合え。間に合うと言ってくれ。ロール。ロール。ロール。ロール!
→何とも言えず沁みます。始めることも大切だが、続けていくこと(ロールすること)って簡単じゃない。でも大人は、紡いでいくこと、ロールしていくしかない。かっこいい。私もロールしていきたい。
【ドロップスは神さまの涙】
p70もう、やーめたーーーみんながいっせいにそう思ってくれたら、意地悪は終わる。なんかばからしくなっちゃって、と笑ってくれたら、わたしだって笑ってあげる。でしょ、でしょ、やっとわかった?同じクラスなんだからさあ、わたしキツかったんだからずーっと、ほんと、マジ、ジサツ考えたし、と許してあげる。怒りや恨みや悔しさや悲しさは、とりあえず隠してあげる。いままでのこと、なかったことにしてあげる。忘れたふりをしてあげる。優しくておとな。泣きそうなほど。わたし、いいやつだと思う。
→読んでて涙が溢れます。悲しい。傷ついていないわけがない。こういう感情を子どもたちに抱いて欲しくないし、自分の周りで思わせたくない。いじめと認めたくない主人公が、「いじわる」っていう言葉をあえて使う。それを先生が「いじめ」って本人に言ってしまうのはすごく残酷。悪気がなくても、こういう言葉遣いや気持ちの配慮は大切に思う。
【にんじん】
→なるほど、これはたしかに国語や現代文のテーマになる作品。若い先生が、心の中でにんじんとあだ名して一人の生徒を嫌い続ける話。
まったく共感できないという人はきっといないと思います。
でも仕事(ましてや教師)なら、こうした弱さに打ち勝たないといけないと思います。
わかるけど、わかるからと言って、してはいけない、人間の醜悪な部分が痛いほど伝わります。
自分本位になってしまった時に、読み返したくなる作品です。
救いなのは、にんじんがまっすぐに成長していたこと。にんじんが真っ当で本当に良かった。 -
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重松先生の作品は高校生の頃によく読んでいたのですが、やはり面白いです。学生時代の言葉遣いというか、思考回路というか、とにかく子どもの頃特有の言動の表現方法がすごくうまいな……と思っていましたが、大人になった今さらにその生々しさを感じました。
お話も面白いです。私の学生時代ではいじめをする、される、傍観するといった経験はありませんでした。ですが、きっとどこかであるんだろうなというようなあくまでも他人事になってしまう私達にまるで訴えかけるような……。実際に重松先生自身が息子さんをいじめで亡くしてしまった方にインタビューをしたときに生まれたストーリーであったようで、最後のあとがきが1番染みました。
物語は、『いじめを傍観していた』ことが罪なのか、というところが軸になっていますが難しい問題ですね。答えはないし、人によって変わるし、話の中でもそれを決めつけるわけでもないし。結局課題なんですね。 -
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あとがきに書いてあるとおり。
「帰りたい場所」「歳をとること」「死」
三遍とも死が関わる話だから、すべて軽い気持ちでは読めない。全ての話でわたしは涙が溢れた。
カカシの夏休み・帰りたい場所は、故郷から実家がなくなった自分にはとても共感できるノスタルジーがあった。
ライオン先生・歳をとることは、この三遍の中で特にグッとくるものがあった。良い人や熱い人であることを通してきた自分が、長年貫いてきた中で、それが本来の自分であったのか、無理をしてきた節があったのだと気づく時。それでも私はライオン先生がとても好きです。
カカシの夏休みとライオン先生、共に感じたのは子供の頃見てたカッコいい大人、正しい大人とは何だったのか。実際はもっとしんどく、我慢ばかりの日々を過ごしていることもあるのだと。大人はかっこいいんじゃなくて頑張っているんだと思った、子供から見たらカッコ悪いかもしれないその姿も、頑張っているんだと思った。
頑張らない大人にはなりたくない。 -
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夫の影響でカープファンになり、元々重松清さんの作品が大好きで、カープに関する小説を書いてることを知ったので。重松清さんってもしかして広島出身…?と出身地を調べてしまうほど、細かく描かれていてすごかった(広島出身じゃなかった)。
勝征さんはぶっ飛んでるけど、悪い人ではない。あまりにもマナブが可哀想。でも私もあの選択肢を与えられたら勝征さんを選ぶかもしれないな。
ヤスとユキオのキャラもとてもよかった。最後の赤ヘル3ショットのシーンはうるうるした。
野球はにわかファンなので、野球のシーンは流し読み。もっと選手に詳しかったらもっともっと楽しめただろうな。
カープファンになって3年目、今年もカープはBクラス。私も早くカープの優勝をみたい! -
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マコトの純粋で真っ直ぐな心に何度も胸を打たれました。どんなに辛いことや大変なことがあっても決して弱音を吐かず、泣きたくなった時には口笛を吹いて自分を励ます姿は、同じクラスの友達よりもずっと大人びて見えます。口笛は単なる強がりではなく、彼女なりの「心を整える合図」として機能しているのが印象的でした。
子どもながらに理想を持ち、それに向かって一生懸命努力する姿勢は読んでいて本当に応援したくなります。重松清さんならではの子どもの心の動きを繊細に捉えた描写が秀逸で、大人が読んでも童心を思い出させてくれる素晴らしい作品です。
特に小学4年生くらいのお子さんには、マコトと同じ目線で物語を楽しんでもらえると思います。親子で一緒に読んで、勇気や優しさについて話し合うのもおすすめです。読後感は爽やかな風が吹き抜けるようで、心がすっと軽やかになりました。 -
Posted by ブクログ
■サマリー
・冬をテーマにした12個の短編小説
・切なかったり、ホッコリしたりを感じられる
・フィクションなのにリアルな人間像がある
■所感
作者・重松さんの好きな季節は、「冬」だという。
天気も「曇り」が好きらしい。
これが、「晴天」、「真夏」が大好きな作家であれば、
ここまで切なかったり、ホッコリした内容の小説を
書けないのではないかと思われる。
どこか暗くて、ひねくれていて、一筋縄では
いかないような人だからこそ(勝手な予想であるが)、人の気持ちを理解した小説が書けるのだろうと思う。
冬がテーマであるため、やはりどこか切ない
気持ちになる内容が多かったように感じられる。
これで、春、夏、秋、冬の四冊の小説を読破した
ことになる。
どの季節の小説にも、味わい深いものがあり、心に
染みる短編がいくつもあった。
重松清さんは、この春夏秋冬の小説が等身大の
自分であるという。
作家の縮図である季節シリーズは、永久保存版である。
■心に残る箇所
【ごまめ】から引用
昔ーまだ香奈が小学生で、敏記は両親を「パパ、ママ」と呼んでいた頃、正月を家族で過ごすのはあたりまえのことだった。
あたりまえすぎて、それがいつかは終わってしまうのだとは考えもしなかった。
初もうでから帰ったあと、サッカーの天皇杯決勝戦をテレビで観ながら、ばたばたと走り回る敏記を「うるさいよ、テレビの音が聞こえないだろ」と叱ったり、「バドミントンしようよ」と香奈に誘われても「また今度な」と面倒くさそうに断ったり、元旦はまだしも、二日や三日になると「朝から晩まで子どもたちと一緒ってのも疲れるよなあ」と奥さんにぼやいたり…・・…・・。
ぜいたくなこと言うなよ。あの頃の自分に会えたら、たしなめてやりたい。
香奈と敏記も、いつか気づいてくれるだろうか。親にとって子どもと過ごす時間が貴重なように、子どもにとっても、親と一緒におしゃべりしたり出かけたりする時間は、やり直しがきかないからこそ貴重で、かけがえがなくて…・・・・・。
◾️学び
親も人間である。
1人でゆっくりしたい、1人趣味を楽しみたいと
思う時はある。
でも、子どもの「おとうさん、見て見て」、
「おとうさん、遊ぼうよ」などのように、
父親の自分に喋りかけてくれるのは今だけである。
だから、呼ばれた時は「何、何?」、「よし、遊ぼう、何する?」と極力応じるようにしている(トイレ中などは別だが…)。
それでも週末に子どもたちが寝た後、もっと遊んだら良かったかなとか、叱りすぎたかなと独り後悔したり落ち込むことがある。
12篇の中で【ごまめ】は、私が感じる部分に刺さった短編である。
やり直しがきかないから、そのときのベストを尽くす。
それでも、あとあと振り返ってみたら、やっぱりあの時、〇〇しとけば良かったかなとか思うかもしれないが、それはそれとして、である。
未来の自分が振り返ってみたとき、あの時はやれるだけのことはした、と思えるようにしなければと改めて感じた。 -
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季節風シリーズ「秋」
秋という季節に似合うしっとりとした話に心が温かくなった。
「ヨコヅナ大ちゃん」で
大ちゃんの「人間って、なんでお腹が空いちゃうの?」の問に
「明日、がんばるためだ」と答えるおじいちゃんと
「明日の自分を、今日より元気で幸せにするためよ」と答えるおばあちゃんが素敵だった。
また、おじいちゃんの「カッコいいとか悪いとか、他人が勝手に決めることにびくびくするな」
「カッコいいっていうのは、自分で自分が好きになる瞬間のことだ」の言葉には私自身も力をもらった。
難しい年頃の娘を持つ父親の不器用な心情を描いた「田中さんの休日」は、ラストのほっこり感が印象的だった。
刊行順では、この「秋」が締めくくりのようだが、読む順番にはあまりこだわらずに楽しめそう。
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久しぶりに重松さんの作品を読みました。やっぱり好きです。
曰く「ゆるす/ゆるされる」をテーマとされたそうですが、裏表紙の内容紹介にあるとおり「精いっぱい『母ちゃん』を生きる女性と、言葉にできない母への思いを抱える子どもたち」のお話でもありました。
第1章に1番泣かされました。500ページを超える長編なのでこのままこのお母ちゃんのお話が続いたら目が腫れてしまうと不安になりましたが、2章以降の主人公は主に中学生たちになったので泣き通しという事態は避けられました。
一言で母子と言っても多種多様。
個人的にはあまり好きになれない母親もいたけれど、どの母親も子どもを大事に思っていることは同じでした。子どもも然り。
いじめを赦すというのは非常に難しいことで、現実では本作のようにうまくいくはずはないと思いますが、赦さないことにはテーマが成り立たないので致し方なし。その点を差し引いても胸打たれる素晴らしい作品でした。
尚、「赦し」の答えが最終章にあったように思います。
その部分を以下に抜粋。
「背負ってきた重荷は、捨て去って消えるのではない。背中の荷物を前に回して、いとおしそうに抱きしめることで、静かに溶けて、消えて、胸に染み込んでいくのだと思う」
うまくまとめられませんでしたが、赦すにしても赦さないにしても、赦されても赦されなくても、忘れてはいけないよねというのが、本作を読み終えた私の感想です。 -
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感動した
という言葉さえ煩く感じる。
静かに読後感を噛み締めたい一冊。
無神経な先生、親切だって人を傷つけることを想像もしない人たち、分かりやすく悪いヤンキー高校生、私は障害とか気にならないよ系女子、みんな身近にいたなぁ…もしきよしがクラスにいたら、私はどの立場で彼と接しただろう。
この本を 読んだ と言うには、一度読んだだけでは足りないと思う。
この少年の物語は、まだ私の中では他人の話であり、単に読んだ本の記憶でしかない。
でも、繰り返し読むことで言葉がこころの芯まで染みてきて、いつか、腹の底にしっくり収まる時がくる。そんな予感がする。 -
Posted by ブクログ
東日本大震災で傷ついた人たち、それを慮る人たちを主人公とする7編。この中で「おまじない」は「NHK国際放送が選んだ日本の名作」に紹介されていた本を読んでいたことが分かり、2年ぶりの喜びの再会!だった。40年前に津波被害の街に小学校4年で住んでいた女性がボランティアで訪問し、子どもたちのブランコでおまじないをする姿に過去の自分とケイコちゃんを思い出すシーン。心締め付けられる感動を覚える。その他、(トン汁)幼い日に母を亡くした3人兄姉弟と父親のトン汁作りをめぐる思い出も忘れられない。(しおり)は津波で行方不明になり、高校に入学できずじまいになった同級の学友の思い出。(カレンダー)は被災者のためにカレンダーを送った後の被災者からのお返しプレゼントの事後談。「また次の春へ」は両親が行方不明のまま、葬式を出さずに月日を経ていく人の虚しい心のうち。など震災による心の傷痕を悼む短編集だった。
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Posted by ブクログ
吃音の「少年」の、飲み込んだ言葉、諦めた言葉、飲み込んだ気持ち、諦めた「伝えたいというコミュニケーション衝動そのもの」、そういった切ない場面が丁寧に温かく描かれて泣けた。
6歳から18歳までの年月を通して、出会い別れたできごとや地域や個性的な人々とのエピソードを通じて、「伝えることを諦めない」少年の成長を感じて、目頭がジーンと熱くなる箇所が何ヶ所もあった。
とくに、「どんぐりのココロ」の酔っ払いのおっちゃん、卒業お別れ会のお芝居の話、鈍感すぎて優しいツッパリのゲルマの話などがどうにも切なく涙がこぼれそうになった。
ちなみに、地の文は少年を「きよしは」と書かずに「少年は」と表現しているのが独特で、プロローグとエピローグにある通り、「君」に当てた「個人的なお話」として読むことができるように工夫されていると感じた。「君」は、手紙をくれた「君」であり、読者一人一人でもあると思う。少年は、と書いてくれていることで、読者はより自分のものとして読むことができるように思う。
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