重松清のレビュー一覧
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あんまり読まないタイプの小説だったけど、読後感は嫌いじゃない。わくわくしたり、ストーリー構成に感銘を受けたりするようなものではないけれど、今の日々を見つめ直したり、昔を思い出させたり、少し立ち止まらせてくれるような小説。
小学生ならではの不器用さ、日々穏やかだけどちょっとだけモヤモヤを抱えて送る生活は少し懐かしさを感じた。起承転結があるわけではないけれど、短編集のような形がこれからも続いていく日常を表しているようでよかった。本当の親はどっちなんだということは、2人ともはっきり答えを出すわけではなく、むしろあえて決めるものでもないと折り合いをつけて生きていくんだろうな。 -
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ネタバレ不器用な昭和の頑固親父が主人公だからこその心に沁みる父子の物語。涙腺崩壊必至の人情ドラマです。
作者のあとがきでも「不器用な父親の物語を描きたい。ただし不器用さをシブさにしてはいけない、と自分でルールを決めた。寡黙であるよりは間の抜けた饒舌を、堪え忍んで動かないことよりも暴走して空回りしてしまう父親に。正しさではなく愚かしさで愛される人であってほしいし、強さではなく熱さで我が子を愛し抜く人であってほしい」と、物語の構想を語っている。
その試みは、見事に名作として誕生した。平成23年10月文庫本初版が令和4年4月で38刷という売れ行きが実証済み。
本書には、感動的な山場が何カ所もあるが、個人的には「秘すれば、花」が美しく切なかった。
また、片親家庭の寂しさや難しさを端的に表現した名文も印象的。
「2人きりの家族はつらいな、とあらためて思う。ヤス(父親)さんに叱られたアキラ(息子)を慰めてくれる人がいないし、アキラにそっぽを向かれたヤスさんをなだめてくれる人もいない。2人きりの家族が仲違いをしてしまうと、そこには【一人ぼっち】が2人しか残らない」
蛇足1:満点評価にしなかったのは、マジ肝心な場面でも父親の不器用さを前面に押し出した作者のあざとさ(初志貫徹でもある)を感じてしまったから。
蛇足2:同作者の「その日のまえに」も短編連作の傑作なので、是非一読を。 -
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■サマリー
・少しだけいろんなことが分かるようになってきた年頃
・17個のショートストーリー
・懐かしい子どものころを思い出す
■所感
息子が今年、小学五年生になる。
そういえば最近、少しだけ考え方が大人びたところがあるように感じることがある。
とはいえ、全体的にはまだまだ後先考えない子どもである。
11歳という微妙な年頃を生きる子どもでも、大人でもないような小学五年生が出てくる本小説は、少し時代が昔の設定ではあるものの、あの懐かしい自分の子どものころを思い出させてくれる物語集である。
私が好きなのは「おとうと」と「プラネタリウム」である。
前者は、視力の弱い弟を持つお兄ちゃんが主人公である。どこかそっけないのだが、本当はとても弟思いの心の優しいお兄ちゃんである。後者は、主人公の少年が、夏休みの理科のイベントに参加するところから始まる。友達と一緒に参加するはずが、友達がバックレたので一人で参加することに。そこで同じ誕生日の女の子と知り合うことで、なんだか気になる存在に…。
思春期を思い起こさせるような内容は懐かしい気持ちにさせてくれる。
遠い遠い小学五年生だった自分を思い出しつつ、これから小学五年生になる私の息子を思いながら読んでみた。 -
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目次
・きよしこ
・乗り換え案内
・どんぐりのココロ
・北風のピュウ太
・ゲルマ
・交差点
・東京
吃音の白石きよし少年の、小1から大学受験までの話。
成長譚と言ってもいいのかもしれないが、吃音のせいで内省的な少年は、小1の時点ですでにクラスの子どもたちより大人ではあった。
「当たり前」をできない人を、子どもたちは嗤う。
子どもって大人に比べてできないことが多いから、そんな自分よりできない人を見ると安心するのか、集団ヒステリーのように大勢で嗤う。
怒ると余計に吃音がひどくなり、そうすると余計に相手を喜ばせるだけだということを悟っている少年は、言いたいことも言わず、できるだけどもりにくい言葉に置き換えて話すことが習慣となった。
重松清の作品なので、まあ、切なさてんこ盛りです、
その中で特に切なかったのは『乗り換え案内』かな。
小学3年生の夏休み、「おしゃべりサマーセミナー」という、吃音を改善するための講座に通わされた少年は、そこで加藤くんと出会う。
加藤くんは何も言わずにちょっかいをかけてくる。
最初は腹が立ったけど、徐々に気心がしれて仲良くなった時、セミナーが終わる。
「らい、ねん」と言った加藤くんに「引っ越すんだ、もうすぐ」と言わざるを得なかった少年。
小学生にとって転校って、永遠の別れのようなものだからね。
私自身、小学校は四校に通ったので、余計に少年の辛さが身に沁みたのだ。
あと、中学校時代の野球部でのことを書いた『交差点』。
これは野球部の顧問に物申したい。
ずっと小学生の時は転校ばかりしていた少年が、三年間同じ中学校に通い、野球部で仲間もできた。
そこに野球の上手い転校生が来て、あっという間にレギュラーをさらう。
仲間の気持ちも転校生の気持ちもわかる少年は、「野球は実力だ」と言って転校生をかばうのだが。
これは顧問が一言いうべきだろう。
努力に報いるために勝たせてやりたいとか、成功体験は必要だとか、理由はあるだろう。
顧問にしたって、自分が始動したチームが負けるよりは勝つ方がいいに決まっている。
でも、学校の部活なんだから、まず野球は団体スポーツで、チームの不和は一番の敵であることを顧問の口から言えよ、って思う。
指導してて気づかんのか?
気づいていて、無視してるのか?
どちらにしても指導者としていかがなものか。
「教師になりたいから東京の大学に行きたい」と言った少年に「自分の思うとることをちゃんと言えんうちは、先生には絶対になれん思うけどの、お父ちゃんは」という父ちゃんはかっこいい。
一番必要な時に、一番必要な言葉をくれたのではないだろうか。
結局教師ではなく作家になったのは、少年は言葉で「伝える人」になったということなんだろう。 -
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ネタバレ人の過去を読み取ることができる人が人の死に際に見る走馬灯を作る仕事をすることを通して、人生の本質を知っていく。主人公はピュアさと大人が入り混じる高校生。大人にもピュアさを求め、苛立ち、幸せを求め絶望する年頃。人生経験豊富な大人たちとの会話を通して、人生を学んでいく。悔いが残るのも当たり前。後悔がない人生が本当に幸せなのか。辛いことも経験して、乗り越えたからこそある幸せの意味を教えてくれる。最初は、現実と過去を行き来するのと、過去が色々な回想シーンがあるので、イメージが難しかったけど読み終えた後はスッキリ、ホッコリが残ってる作品。
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2008年刊行ということで少し前の表現に引っ掛かりはするけれど
章によって「きみ」が変わる。
【あいあい傘】
雨の日の事故によって松葉杖なしでは歩けなくなった「きみ」、恵美。どこにもぶつけられない悔しさや怒りを家族や友達へと当ててしまい、復学したときには周りにはもう誰も居なかった。学校行事の縄跳び大会をきっかけに回し手としてペアを組むこととなった由香も病気がちで思うように通学できずクラスに馴染めずにいた。
クラスでひとりぼっち同士の2人の出会いがくすぐったい。
【ねじれの位置】
恵美の弟、ブン。クラスのヒーローだったブンにとって転校してきたデキる中西くんの存在が面白くない。
小さな意地が子どもらしくて良い。
【ふらふら】
第一章で恵美と由香のクラスメイトだった、堀田ちゃん。独りにならないように必死だった。必死に頑張っていたのに、それが理由で裏目に出た。堀田ちゃんは孤独を経験した。
人間関係の脆さが小さな世界で分かる。
【かげふみ】
前章で少しいやな感じがした。予感は当たっていた。
恵美の経験は、周りよりも恵美自身を大人にさせるのが早かったように思う。それが良かったのかと言われれば答えられない。もっと2人で子供でいてほしかったと願うには、私は成長しすぎたかな。
うつむいたあとの笑顔をきっと多くの読者が試しただろう。大切にしたい教え。
【花いちもんめ】
小さな由香の覚悟が悲しい、寂しい。
もこもこ雲になった由香はきっと恵美のことを想っているだろう。恵美に空を見る選択を与えてくれたことに感謝したい。
【きみの友だち】
ずっと私たちに語りかけていてくれた「僕」と一緒に今までの答え合わせをしているような。
私も小さい頃から友だちは少ないほうで人付き合いが苦手で下手で。友だちと呼べる人はいまは1人だけ。でもだから深い付き合いや思い出が大切なんだということも知っている。
離れていてもその子はずった友だちだし大切。
今作を読んでさらに大切にしたいと思ったし、会えるときに惜しみなく会うこと、思い出をつくることを教わった。
私は大人になった今に読んで良かったと思う。
行ったり来たりな時系列。また最初から読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ◯登場人物
・恵美
・ブン
・モト
・由香 など…
◯あらすじ
恵美は小学生のころ、自分の傘にたくさんの人
が入ってきて、結局肩は濡れてしまい、前にい
る病気でよく学校をやすむ由香(当時は恵美
と友達ではない)になぜか入れてもらおうと思
い、少し道路に出ると、車が来て、足を骨折。
恵美はそれからは松葉杖生活になり、その時傘
に入ってきた人たちを責め、”みんな“を信じな
くなる。たまたま話す機会があったが、由香は
何もできないし、泣き虫だし。恵美は由香にあ
きれたが、時間がたち、自分の過ちを振り返
る。それからは由香とだんだん仲良くなってい
った。
でも、由香が急に体調を崩し、入院する事に。
結局由香は病気のせいで亡くなり、恵美は松葉
杖で長い階段を登り、由香のお墓を掃除したり
手を合わせたり。
最後は写真撮影好きの恵美の写真展と恵美の結
婚式を同時に行う。 -
Posted by ブクログ
アラフォーで家庭のある男性たちの短編集。
男の人の思考ってこうなんだろうなぁってちょっとイラつく。現状に不満はないけど満足ではなくて、「ワンチャン」みたいなことを考えがち。家庭に何かあると仕事に打ち込んで現実から目を逸らす。
自分の通ってきた道だからなのか、『セッちゃん』が印象深い。親からこう思われている、こう思ってほしいという気持ちがあると、自分の辛さや苦しいことを言えない。言うと親が傷つくのがわかるから。
でも、きっと親は色んなことを知っていて、知らないフリをしてくれていたのかもしれないと思った。
理想の親子像は人それぞれ違うと思うけど、正解なんてないし、失敗をたくさんして「家族」になるんだと感じた。
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