あらすじ
空き家の数だけ家族があり、家族の数だけ事情がある――。
不動産会社で空き家のメンテナンス業に携わる孝夫。両親の介護を終えた妻・美沙は、瀟洒な洋館で謎の婦人が執り行う「お茶会」に参加し、介護ロスを乗り越えつつあった。しかし、空き家になっている美沙の実家が、気鋭の空間リノベーターによって遺体安置所に改装されようとしていることを知り……。元戦隊ヒーローの息子・ケンゾー、ケンゾーを推す70代の3人娘「追っかけセブン」など、個性豊かな面々が空き家を舞台に繰り広げる涙と笑いのドラマ、ここに開幕!
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Posted by ブクログ
年々深刻化している「空き家問題」
新しい造成地に、どんどん新築物件が増えるにつれ、
かつての団地や住宅地では高齢化と共に、空き家が増えている。
賃貸アパートにしても、Wi-Fiなど、新しいプラスαがなければ、老朽化と共に空き室になってしまう。
人が生活をするには、まずは住む場所が必須。
それが、マイホームであろうと賃貸であろうと。
そして、マイホームでの、生活が長ければ長いほど思い入れは強い。
両親が建てたマイホームをどう処分するか、
売却か、リノベをして利用するのか、
健太郎と美沙とのやりとりは、リアルだった。
実家ときちんとお別れができて、ホントに理想的だ。
「勝ち組」としての健太郎、石神井の考え方、
「負け組」だけど、懸命に生きる孝夫とケンゾーの考え方。
そして、なんといっても、「セブン」が最高!
マッチもなかなかのキャラクターで、いい仕事をした!
心に響いた言葉が、
「夫婦なんだから一つにならなきゃ、何でも同じにしなくちゃ・・・なんてことを考え出すと、同情になるから。同情は共倒れの第一歩、絶対にだめっ」
夫婦といえども、一人一人、家族といえども、一人一人。
孝夫と美沙が、白石氏と同じ道を歩まずに済んでホッとした。
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空き家や介護問題そしてアンチエイジング。社会的な問題を織り込みつついつものペーソスに富んだ仕上がりの作品。アラ還からの生き方にも希望が持てそう。
Posted by ブクログ
空家のメンテナンスの仕事に携わっている主人公の妻の実家が空家再生プロジェクトの標的となった。近年あった実際の問題も取り上げられていて面白かった。
Posted by ブクログ
題名通り家を絡めての家族の物語。
今まであまり考えたことのなかった空き家問題、日本にこんなに空き家があったんだ。
頭の回る石神井さんもそりゃ利用するわ。でもこの人正論ばかりでズルいイメージがあったけど、最終的には憎めないんだ。
やはり同じ境遇の正之さんにはかなり感情移入してしまった。
タラレバの話になればやり直せるのに、いい父親、いい夫になるのに。後戻りはできないのはわかってるが最後の思い出作りはあっけなくも迫るものがあった。
自分が子供のころ住んでいた家はまだあるが、いずれは老朽化して壊す日が来るのだろうけど、その時は美沙と同じ気持ちになり泣いてしまう気がする。見たくないなあ。
物語の締めは以外と皆いい人エンド的で、悪くないけど纏まり過ぎかな。
でも最後の台詞は好き。
Posted by ブクログ
勝手に子ども向けの本を書かれる方だと思い込んでいたのでこの作品を読んで驚きました。
小説を書くということは相当な知識が必要なんだと改めて思うとともに50代の自分と主人公の年代が同じ。両親が亡くなり空き家。実兄とトラブル中。似ている部分があり様々な事を考えさせられる内容でした。
小説ではトラブルが変化しながらなくなんとなく進んでいきます。しかし自分が問題としている事の解決のヒントにはなりません。
やはり現実は解決したいと願っていますが、相手側の考えを説明してくれる人もいませんので分からない事だらけなのです。
でもただ一つ言えるのは、無理して解決しなくてもいいんじゃないかと思えるようになった事。時間が解決してくれると信じて、今楽しいと思える事をしながら残りの人生を過ごして行きたい。
読書は少しずつですが、自分の考えを広げてくれる気がしています。
Posted by ブクログ
現代社会での少子高齢化の影響で日本では現在7軒に1軒が空き家だという話。役職定年となり、子会社で空き家のメンテナンス業に携わる還暦間際の主人公。当初は希望にあふれて建てられたマイホームが厄介者扱いとなる…空き家を巡る泣き笑いの家族の物語。
Posted by ブクログ
家という媒体を通じて区切りについて思いを寄せる作品でした。物や場所に対しても思い入れや感情の動きを覚えるということは当たり前のようで、人間の不思議な習性であるなと思いました。この感覚こそが幸せに生きたということの証なのかと思います。
Posted by ブクログ
挿絵が良い。
重松さんらしい家族の話、
私自身もこの数年で3件の解体取り壊しを見てきたので、思い入れながら読み進めた。
追っかけセブンがいい仕事をしているなー。
33周年をすごした夫婦に送る言葉が良い。
「愛情の花は花と同じでいずれ枯れちゃうかもしれないけど情の根っこが残っていれば別の花が咲く、友情にも、人情にもなる」
深い!!
Posted by ブクログ
日本が抱える空き家問題。それに加えて、子どもの独立や介護など、熟年夫婦が抱える様々な問題が降りかかる中、主人公たちが見つける幸せとは。
いま、自分を取り巻く状況は、この小説にかなり近いところにある。
深い問題もあるが、この小説のラストのように前向きに行きたい。これからも楽しく過ごすために。
追っかけセブンみたいな人達がいるといいかも。
Posted by ブクログ
空き家の数だけそれぞれの家族の歴史が沢山詰まっている。昨今、空き家の増える中
この空き家問題は今後大きな社会問題にもなる事だと思う。
物語に登場する個性的な女性陣からも学びがあり年齢を重ねれば重ねる程、人生をいかにシンプルに楽しむ事の大事さに気づいた作品でした。
『出会った人は皆んな何かを教えてくれる先生』年齢に関係なく出会いも大事にしたいものです。
Posted by ブクログ
久しぶりの重松清さんの小説。空き家問題、介護、夢に向かって励む30過ぎの息子など現代社会を反映している。みちるさんのことを盛り立てるセブンの教養の深さに驚いた。
私も実家の空き家問題に直面しているので、切実。子供が大変な思いをしないように私の代でスッキリさせようと思っている!
Posted by ブクログ
話の節々に、煮え切らないいつもの重松節が絡みついて、うーん、ちょっとね。
という感じだけど…
最後の一節はよかった。
ビストロからの帰り道は、その酔いかげんを保ったまま、散歩気分で歩いた。
手をつなぐでも肩を寄せ合うでもなく、けれど誰も割り込めない微妙な距離を、とりとめのな
いおしゃべりが埋めていく。
若い頃の思い出話ではない。それはさすがに出来すぎになってしまう。老後の話は興醒めだし、話題をテレビや新聞から無理に探すぐらいなら、満たされた沈黙を味わったほうがずっといい。
結局、話すのは、どうということのない確認や連絡ばかりだった。
「明日の朝は、ご飯だからね。納豆、今日までだったの忘れてた」
「わかった。あと、明日のゴミって不燃だっけ、ペットボトルだっけ」
「第三月曜だから、ペットボトル。よろしくね」
「りょーかーい」
そんなありふれたやり取りを、いつか、ずっと遠い先のある日、片割れは涙が出るほど懐かし
く思いだすだろう。そして、先に逝った片割れを思い、がらんとした我が家で、静かなため息をつくだろう。
しかし、それもまた、別の話にしておこう。
二人は我が家に帰り着く。
たとえ待っている人は誰もいなくても、黙って我が家に入るのはやはり寂しい。
玄関のドアを開け、声をそろえて――
「ただいま!」
p419
Posted by ブクログ
人が住んでこその「家」。
長く住んできた家、住み慣れた家には住人の想いが詰まっている。
両親の死後、実家の処分を巡って兄と対立する女性を中心に、「家」に対する人々の想いを描くヒューマンドラマ。
◇
水原孝夫は、自社が管理する空き家の定期的なメンテナンスに出向いていた。間もなく還暦を迎える孝夫だが、心配事が2つある。
1つは息子のケンゾーのこと。
若い頃は戦隊ヒーローの1人として俳優活動をスタートさせたケンゾーだが、番組終了後パッとしない。同じ戦隊仲間がアイドルや俳優として華々しい転身を遂げたのに比べ、遊園地や商業施設のアトラクションで細々と役者活動を続けるケンゾーを見ると、心配でならない。
もう1つは妻の美沙のことだ。
近くに住む両親の介護を終えた美沙は、介護ロスもあって精神状態が不安定になっている。そこに実家の処分問題が持ち上がってきた。
実家を相続した兄はすぐにでも処分する気でいるのだが、家族の想い出に浸りたい美沙は猛反発し兄と対立し始めた。
空き家管理の手間や実態をよく知る孝夫だが、妻の心情も痛いほど理解できる。妙案が浮かばずひとり気を揉む孝夫。
そんなある日のこと、ケンゾーが右足を骨折してしまい……。
* * * * *
現在の日本で社会問題にもなっている事象が具体的に描かれていました。
その1つは空き家問題です。
古家となった空き家は、都会の1等地でもない限り優良な資産とは言えないため、管理コストが嵩むだけというのが実情です。
特に、地元を離れ遠方で一家を構えて久しい子ども世帯にとって、空き家となった実家は頭痛の種でしょう。
もう1つは火葬場の順番待ち問題です。人口密度が高く、高齢化が進む都市部で火葬場の順番待ちが起きているそうです。1週間待ちはざらだとか。
でも需要があるからといって、おいそれと建造するわけにもいかない施設です。遺体を葬儀社で保管することも難しい。遺族にとっては頭の痛い問題です。 ( 実際に「遺体ホテル」が既に都市部で開業しているのを知り驚きました。)
他にも、独居老人問題や若者の非正規雇用問題など、リアルな話題が作品中で取り上げられていました。
それらをきっちりとストーリーに盛り込みつつ、ときにユーモラスな描写を加えながら展開させていく重松清さんはさすが優れたストーリーテラーだと思いました。
さて、本作で問題となっているのは、空き家となった実家の扱いというより、実家に対する美沙とその兄の思い入れの違いによる対立でした。
実家は都市部の住宅地にあり、水原家から通えるところにあります。美沙はそこで両親を介護し看取ったのです。しかも多忙なエリート銀行員である兄の手はほとんど借りずにです。
大学入学とともに家を出た兄よりも、美沙の方に実家への思い入れが強いのは当然と言えます。
一方、実家を相続した兄の側の主張もよくわかります。合理性を重視し効率的に動くことを信条とする彼にとっては、不良債権のような古家は早々に処分するべきと考えるのは無理もないことでしょう。
情の妹と理の兄の激突。論点が違うのですから話し合いは平行線をたどるしかありません。どちらの気持ちもわかります。 ( 介護に力を注いだ美沙に軍配を上げたくはなりますが ) 読んでいて心苦しく感じました。
孝夫やケンゾーが間に立ち、他の人の助けも借りながら問題の収拾を図っていく終盤。
少しうまく運びすぎた気もしますが、自分の主張はいったん置いておき相手の気持ちになって考えてみることこそが問題解決の近道であるということがよくわかりました。
Posted by ブクログ
介護、熟年離婚、空き家問題、突然熱中するものがなくなったときに起こるロスの状態など、どれも他人事ではなく現代の社会問題を突きつけられるようでした。
時代とともに社会問題も変化しているのだな、とあらためてこの本を読んで気づかされました。
Posted by ブクログ
還暦まじかの夫婦の泣き笑いの物語。
空き家となった妻の実家とか介護ロスとか老年の問題が優しくユーモラスに描かれていて、重松さんらしい作品でした。
空きや問題や生きがいレス症候群に対する解決策が提示されるわけでもないが、著者も思っているであろう対処案が納得できてうれしかった。
ただ、以前の作品ほど涙腺が崩壊しないのは、自分の感性が変わったからなのか、作品のインパクトが柔らかくなったのかわからないが、それでも面白いんので問題なしです。
Posted by ブクログ
空き家、今後日本全国で問題となっていくであろうテーマ。
作者らしい家族の切なさと相まって、考えさせられる一冊。
フリーライターのマッチこと西条真知子さんにはあまり共感出来なかった。
Posted by ブクログ
夫婦、愛情の愛は花と同じで、いずれ枯れてしまう、でも、情の根っこが残っているうちは大丈夫。根っこに別の花を咲かせば、友情にも人情にもなる。愛情、友情、人情、根性。
Posted by ブクログ
世代的に近く、自分も母を看取ったあとの実家の今後と二人の息子が出て行った後の生活など共感するところが多く感慨深く読んだ。
ちょっとイラッと来る離れた世代のライターとの関わりや追っかけ婆さんトリオなども実家近所の婆さん連中や息子の取り巻きとこれまたあるある話でニヤリともするが全体的には締まりもなくだらだらとした展開で間延びのする内容は面白いともつまらないともいえないどっちつかずの印象だ。
空き家をどのように活用するらまたは踏ん切りつけて更地にするのか、家をローンで買い、支払いを終えるタイミングで実家の相続が訪れる。不動産というと魅力にも聞こえるが、諸問題も抱えて悩ましいのは持った人間でないとわからない。この本はローンを抱え、戸建実家を持つ人に読んでもらいたいなぁ。もちろん、面白いかは別な。
Posted by ブクログ
空き家をめぐる悲喜交々。
不動産プロからの目線や、空き家所有の人々の思いなど身につまされる内容だったけど、とても勉強させてもらった。
実家を取り壊す時、様子を見に行くか行かないか‥私自身、近い将来必ずやってくる。
私は絶対見に行く!いや、見に行かなくては後悔すると思う。
あと、「うつせみの庵」、私は絶対利用しない(笑)
Posted by ブクログ
実家終いをかかえているなかで読んだので、思い出がつまっている家がなくなることにひきこまれました。
小説のような住宅地ではなく、北海道の過疎地に住んでいるので受け継がれることのない家も多くじわじわきました。
小説はハッピーエンドでよかったです。
Posted by ブクログ
重松清さんは大好きな作家さんのひとりで
この本が58冊目!
なのですが…
長い間、重松さんの本を読んでいなくて…
なんと4年半ぶり!
家族の形。
それは年齢を重ねることで変化していく…
さらには女性の肩にのしかかる親やパートナーの介護、死別。
家と家族、老後の問題等々。
家族の変化は「家」の変化でもあって。
深刻な問題を重松節で優しく届けてくれる一冊だった。
Posted by ブクログ
妻の美沙は両親の介護終えて
鬱っぽい
息子のケンゾーは昔は戦隊ものに出演
今はひっそりと地方公演をする
将来に心配あり
アラ還の主人公の孝夫は
多摩エステートサービス(不動産会社)
空き家ビジネスをしている
家族ができて
家を建てて
仕事や子育てに励んで
その先は子供が巣立ち
ローンが終わり
自分達の親の介護、看取る
てばなすことが増える熟年世代
「ロス」な心の整えかた
ほろ苦く温かくくすりと笑える
誰にもくること
笑って悔いなく過ごせたら幸せ