重松清のレビュー一覧
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『ビタミンF』は、家族をテーマにした七つの短編から成る作品集である。重松清は、家族の絆を取り戻そうと葛藤し、模索する中年男性たちを中心に据えながら、それぞれの家族の物語を丁寧に紡いでいく。
作品に登場する家族は、一見すると互いの心が離れ、ばらばらになってしまったように見える。しかしその根底には、互いを思いやる愛情が確かに存在し、それゆえに素直になれず、気持ちがすれ違ってしまうもどかしさが、静かな筆致で描かれている。その描写には、多くの読者が自らの家族を重ね合わせることができる普遍性を感じた。
家族の在り方が多様化し、父親や家長としての役割を一義的に定義することが難しくなった現代において、主人公たちは迷いながらも現実から目を背けず、自ら家族と向き合おうとする。その主体性、すなわち困難な状況であっても他者との関係をあきらめず、一歩踏み出そうとする姿勢こそが、読者に勇気と希望を与える「ビタミンF」なのではないかと思う。本書は、家族とは決して完成された関係ではなく、互いに理解しようと努力し続ける営みそのものであることを、あらためて考えさせてくれる一冊であった。 -
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この本が書かれた背景は少年事件が多くなったからだと後書きに記されていた。作中に出てくる主人公、村内先生は子どもに寄り添うというより、等身大の自分で話をしようとする。吃音のひどい先生がどうして、教員になったのか。
大切なとこしか通じない、話さない。そんなことを多感な時期の子どもたちに伝わる温度と必要な場面で伝えてくれる。
私が心に残ったのはこの言葉だ。
たいせつなことは、たいせつな声で言わなきゃいけない
いじめは、その人のそばにいる誰かが『寂しい』と思っていることに気付かないこと
先生は、君たちのためにここにいる
作中は短編集だが、それぞれの生徒に合う言葉で村内先生が背中をさすったり、押したりする様子がある。
ハンカチやおまもり、ヒムリール独唱、
どれも印象的だった。
個人的感想だが、
私が教員を目指した理由もこの村内先生の信念に近いものがありとても共感した。
教員として大切な資質は…必要なのは、
子どもが不安定なときに、そっとそばにいてあげること。
だと思う。
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自分がまだ20代前半だからこそ、将来父親になった時に改めて読み直したい一冊だった。その時、きっと今とは全く違う景色が見えるのではないかと思う。
人は亡くなると星になると言われるが、流れ星が願いを叶えてくれるように、橋本親子もまた、死の淵にある人々の想いや後悔に寄り添い、過去へ戻る手助けをしてくれていたのではないか。その奇跡のような道のりを「流星ワゴン」と表現したタイトルの秀逸さに、深く感銘を受けた(主人公が過去を旅している間、現実の時間はほとんど進んでいなかった点も、一瞬の輝きを放つ流星のようだった)。
読み進める中、「過去をやり直せば、現実の家族関係も好転するのではないか」という安直な期待を抱いていた。しかし、現実はそう甘くなく、最悪な状況のまま物語は終盤を迎える。それでも、過去の旅を経て主人公の心が変わり、その変化が実際の行動へと結びつくことで、家族の未来が少しずつ希望ある方向へ向かいそうなラストシーンに、強く胸を打たれた。
この物語を通して、自分が将来父親になった時、子供が苦しみを一人で抱え込まずに済むような温かい環境を作りたいと心から願うようになった。
人生において大切な場所や時間は数多くあるが、その価値には後になってから気づくことが多い。だからこそ、少しでも後悔を減らせるよう、何気ない毎日をしっかりと噛み締めて生きていきたい。
追伸:
今日から友達や親のことを「朋輩」と呼んでみようかな! -
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自分の父を思いながら読んだ。
どれも父親目線で描かれていて、どうしようもない出来事がそれぞれに降り注ぐ。
この世に答えがあることは極端に少ない。
難しい問題の方が多い。
どれも複雑で、多様で、絡み合っている。
父親という立場に立ったことはないが、想像してみると難しいポジションだなと改めて思った。
息子である僕からはあまり話しかけようとはしてこなかったし、向こうもそれなりの距離を感じていたのかもしれない。
最近になってようやく本音を言い合えるようになったが、それが良かったのかどうか。
うちの家族はどうなのだろうか。
今はまだ問題はないが。 -
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ネタバレ・ハンカチ
内気な女子中学生である千葉知子が主人公となり、語れていく小説。卒業式には出たくはなかったが、村内先生の後押しもあり、卒業式に参加することを決意する卒業式の時、細野先生が産休から帰ってきていたが、村内先生に名前を呼んでもらいたく、千葉は、1人村内先生に名前を呼んでもらうのだった。村内先生の「俺みたいな先生が必要な生徒もいるから。先生には、いろんな先生がいたほうがいいんだ。生徒にも、いろんな生徒がいるんだから」という言葉は、響きました。
・ひむりーる合唱
義男は、真田先生の背中をアーミーナイフで刺してしまい、保護観察処分となる。真田先生は、庇ってくれていたが、義男には戻る場所がなかった。ヒキガエルも殺してしまい、破壊衝動がどこかにあるのかもしれない。村内先生と話していたほんの僅かなひとときは、印象的でした。最後に、真田先生に挨拶するところで、終わるのがなんとも言えない気持ちになりました。
・おまもり
この話も村内先生の良さが出ていたようなお話であったと振り返ります。吃音でうまく喋られなくとも、生徒に寄り添う先生が素敵でした。主人公が、ひき逃げにあった清水ちゃんのために、張り紙を貼るなど、犯人への裁きを求めていくところが良かったです。
・青い鳥
いじめに苦しんでいた野口を巡る物語。いじめを機に転校することになった野口への反省文をクラス全員が書かせることになるが、いじめの辛さが伺えるお話でありました。村内先生の伝えたいことがよく表れていたような気がします。青い鳥のように、村内先生がいなくなるところは、印象的でした。
・静かな楽隊
あやちゃん帝国として、あやと呼ばれている女の子が、クラスを支配して統治している感じがスクールカーストそのものを描いているような気がしました。あやちゃんからは、除け者にされたが、村内先生から大切なことを教えてもらった主人公は良かったのではと考えた。
・拝啓ねずみ大王さま
お父さんを失った子供を主人公としたお話。親を失うと、どのようなことになるのかは、あまり考えたことはなかったが、この話を呼んでいると少し考えさせられた。ムカデリレーには、入りたくなくても、大切なことを教えてくれる村内先生は、大事。
・進路は北へ
一人ぼっちの人を主人公とした物語。古川さんとのエピソードはなんだか、切なくなりました。前向きに終わっていく、ラストは良い感じでした。
・カッコウの卵
主人公と智恵子は、どちらも親に捨てられたという境遇を持つ、切ない人物でしたが、村内先生に主人公が、救われていた過去は良かったです。最後のシーンで、新たな命が2人のもとに、授かるシーンは、良かったです。 -
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死をテーマにした短編集だけれど、読み終えたあとは不思議と爽やかで、「じんわりよかったな」と思える一冊だった。
前半は少し好みが分かれた。「潮騒」は人生を振り返る静けさや海の描写は美しかったものの、主人公の行動や心の動きに少し距離を感じてしまい、最後まで腑に落ち切らなかった。
一方、「ヒア・カムズ・ザ・サン」はとても好きだった。15歳らしい不器用さで母親と向き合う姿がいじらしく、親子がお互いを思いやる気持ちが自然に伝わってくる。晩秋の夜空の下で交わされる会話と、聖歌を思わせる音楽が重なる場面はとても美しかった。母の死が確定しない終わり方にも救いがあり、読後感が温かい。(後で確定するけど)
表題作『その日のまえに』は、派手に泣かせるというより、読み進める間ずっとうるうるしてしまう作品だった。子どもたちへ病気を打ち明ける場面は涙不可避。夫婦や家族が当たり前の日常を大切に過ごす姿が胸に沁みた。
短編集全体を通して少しだけ不思議な出来事が描かれるが、個人的には「本当に起きた」のではなく、「主人公にはそう見えたのかもしれない」と解釈できるくらいの余白があるほうが好みだった。
最後はそれぞれの物語がゆるやかにつながり、花火大会で締めくくられる構成も美しい。季節の移ろいを感じながら、一人ひとりの人生が続いていくことを思わせるラストで、静かな余韻が残った。
「泣ける本」というより、「大切な人と過ごす何気ない時間を愛おしく思える本」だった。 -
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綺麗なお話というか、、、
人の嫌なところとか、欲望のところとか、
悲しくて、苦しい小説を読むことが多いから
こういう綺麗な話はいつもと違う感覚になる。
まぁ総括すると
「時間ってめちゃくちゃ大事」ってこと。
何するにしても
時間が大切で。
死んでしまったら割と何も出来なくて
人はみな、生きてる間に何かを残そうとする。
それが物なのか、事象なのか、子孫なのか、なんでも良くって。
人は生きた証をなんらかで残そうとして、
そのためにはどれも共通して「時間」が必要で、
大事なんだなって。
作中、亡くなった朋子が出てくるシーンは思い出や
空想シーン以外無いが、残された者である
娘の美紀や、親である義父の性格などから
朋子はこんな感じの性格だったんだろうなぁと、
自分も残された者であるかのように、想像することができた。 -
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重松清さん著作で、今まで私が読んだ本はみな、人間の良心が温かく切なく描かれた作品ばかりだった。こんな身も蓋も無い暗い話もあるのだと。。。。
でも闇の部分も語られるからこそ、温かい小説の方は、説得力のある作品になるのかもしれない。
文章が特徴的。
シュウジを「おまえ」と呼ぶ人物は誰だろう。
生まれた家が違っていたら、子どもらしい子ども時代を経て思い切り青春を味わってたであろうシュウジ。子ども時代の環境って本当に大切。
田舎の狭い世界での噂話。ウザい。
シュウジに「走る」というライフワークがあってよかった。走ることで人生好転するわけではないが気晴らしには、なる。
上巻の最後で、東京行きを決意したシュウジ。
下巻が楽しみである。 -
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ひとりぼっちが二人いれば、それはもう、ひとりぼっちじゃないんじゃないか、って、先生は思うんだよなあ。
村内先生は国語の非常勤講師で、吃音持ちだ。うまく喋れないのに、公立私立関係なくさまざまな学校で孤独を抱えている子どもたちのそばにいてくれる。
私は小中高時代ひとりぼっちでいることが多い子どもではなかったけど、周りからの見え方を気にしていた方だ。いつも中心的な女の子の机に休み時間は集まったり、他のクラスの仲良しな子のところに行っていた。一人で行動していると、自他共に「一人でいるな」と認識した・されていた気がしたし、友達がいて当たり前だと思っていた。
これを読んで思ったのが、学生時代って学校に向いていない人でも学校に行かないといけなくて、そこでは先生を含めた学校でうまくやれる人たちからひどい扱いを受ける子も少なからずいる。私も実際にいじめを受けたことがあるし、学校に行かなかった時期があったから。でも、その時代にひとりぼっちでいても、寂しさや辛さを経験しても、大人になってから過去にひとりぼっちの学生生活を送っている人がたくさんいることを知るだけでも、昔の自分が救われると思った。 -
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短編集だけど全ての物語が繋がってて、まだちゃんと自分の中で腑に落ちきれてない部分はあるかもしれないけどそれぞれの人生の真の言葉というか、心がちゃんと動いた言葉や行動を見れてよかった。
中学生のころ、自分は部活動のこととか恋とかそうゆうことでよく悩んでいたけど、それはまだ幸せな悩みで、家族のことや誰かを傷つけてしまったこと、色んな悩みを抱えてる人も多いと思う。
悩みの深さが深いほど、考え悩む時間は増えるし一筋縄ではいかないと思うけど、それは向き合った分だけ自分も成長するし、言い方は悪いかもしれないけど人生の糧になると思う。
それを感じれてよかったなと思う。 -
Posted by ブクログ
全部で6章あるそれぞれ別のせんせいのお話です。
大人になったら学生の頃の先生と会う事は殆どないと思いますがこの本を読んだら学生の頃の記憶が蘇って懐かしい気持ちになりました。
小学生の時にクラスの担任で優しかった先生、中学生の時に部活の顧問で自分の事を特に気にかけてくれていた先生、高校生の時に授業が面白かった先生を読んでいたら思い出してしまいました。
6章の話で特に印象に残ったのは「ドロップスは神さまの涙」です。
虐められている子の気持ちが痛いほど分かりやすく繊細に書かれているので大人よりも今の小学生、中学生に読んでもらいたい内容でした。
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