あらすじ
少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと──。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。
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Posted by ブクログ
気持ちを声に出して伝えるのが難しい主人公ですが、素直で気持ちを伝えることを諦めない姿に感動しました。彼の周りにいる人も彼の気持ちを汲み取ってくれます。不器用でも気持ちは伝わるのだと思える、勇気を貰えるお話でした。
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一瞬で読めるほど読みやすい。重松さんの作品は涙無しには読めないですね。吃音を通して見える世界に触れることができたし、学生時代を思い出すなんとも言えない感情。大人のダメさ、子供の心強さ、本当に素晴らしい作品です。
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こんなに心にしみるお話に出会えたのは久しぶりだ。
何度でも読みたいと思える、数少ない大切な本。
きよしと出会った人たち。
一つ一つのお話が心に残る。
切なくて暖かい。
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誰しもが、誰かに伝えたいことを抱えている。色々な理由で話せなかったりすることもある。「一人」のときもあるけど「独り」じゃない、「ひとりぼっち」じゃない。誰かがきっと、わかってくれる。そう思えた。
少年が少年であった頃のお話たちは、どれも別れや悲しさを帯びている。しかし、それこそが少年を強くさせているのではないのだろうか。
生きづらさや恥ずかしい思いなんていう簡単な意味付けを、僕はこの小説にはしない。自分の悩みや苦悩は、他の誰でもない自分のものであることを作者は絶対に知っているから。
だから、作者は「そばにいる」ことだけを望む。一人で乗り越えようとする人たちを包み込み、温めるように。
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この本を開いてよかった...
吃音の「少年」はいつも一人ぼっちだった。
心の中ではみんなと同じように話しているのに、声に出すと吃ってしまう。
本当に伝えたいことは、はっきりと少年にはある。
全ての物語において、その終わり方が本当に良かった。やるせ無さ、切なさで押し潰されるときもあるけれど、少年からおとなになるまでの大切な経験だとも思う。
余韻が残る作品でした!
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高校生の時に読んで以来、約10年ぶりに読み直した。吃音と生きていく少年の成長の物語。少年は成長するにつれて、言葉のピンチヒッターを繰り出すのが上手くなっている。「だいじょうぶ」のピンチヒッター、Vサインは大野には伝えられたのに電話越しのマサには伝えられず、見ている私がもどかしい気持ちになった。
読み進めていくうちに少年の成長を見守る母性的な感情が自分の中にいることに気づいた。一度読んだはずなのに、全く記憶になかったのは、高校生の時には母性が備わっていなかったからだろうか。この本を通して自分の成長も実感した。
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初の重松さんの作品。
吃音の『少年』が辿ってきた7つの物語+最後の手紙の構成
特にゲルマ・交差点は人の優しさとある意味思いやりがたくさん感じられて特に好きだった。
今回は吃音が1つの題になっていたが、人それぞれいろんなコンプレックスがある。
本人じゃないと本当の意味での苦悩はわからない。
少年は言いたいことはたくさんあるけど、30%しか相手に伝えることができない。
でも、伝える手段はいくらでもあるし成長とともに相手の苦悩も自分なりに解釈できる。
重松さんの描写は難しくないが非常に奥ゆかしく、一気に読めてしまうから驚き。
苦しい時に寄り添ってくれる本だと強く思いました。
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この本は、ある人から薦めてもらった。その人は言っていた。
「きよしこの夜を『きよしこ』『の夜』と勘違いした少年の話だ」と。てっきり明るい話しだと思っていたが、内容はとてもセンシティブだった。
吃音(きつおん)の少年が、少年から大人になるまでの物語。出会いと別れを繰り返し、野暮ったい気持ちと真剣に向き合った、ちょっと孤独で、とても優しい少年の物語。
私も吃音を抱えている。主人公の少年ほどではないが、予め口腔内で音を作っておかないと、言葉がスムーズに出てこない。そのため、言い換えたり、余計なことは言わなかったりして過ごしている。日頃の会話では言いたいことの半分も言えていない。そこは少年と同じだと思った。
私は、世の中の人たちのほとんども、言いたいことの半分も言えてないのではないかと思っている。吃音があるからとは関係なく、人はどうでもいいことはスラスラ言えるのに、大事なことは全然言えない生き物だと勝手に考えている。だからこそ、分かり合えないことがもどかしく、分かり合えたときは嬉しくなる、そういう些細な一喜一憂を、日々繰り返していると思う。
「きよしこ」の少年は、初めは笑われた。成長していくうちに、大人の優しさに触れ、どんどん自分が孤独になっていく気がした。言いにくいことは言わなくていいという甘えも、自分をさらに孤独にした。少年の周りの人は、みんな優しかった。それがもっと少年を孤独にした。少年は常に心の中で『きよしこ』を探していた。何でも話せて、自分を一番に理解してくれて、誰よりも寄り添ってくれる存在。
そんなものは、いないって分かっていたのに。
大人になったとき、少年は分かった。
『きよしこ』は、僕なんだ。
自分を嫌いな自分が、本当は自分のことを一番分かっている。恥ずかしくて触れたくないから、大切にしたい気持ちをずっと「嫌い」って気持ちで抑えて生きてきた。それがどんどん自分を孤独にして、『きよしこ』のことも見れなくしていた。
けど、少年は一人で歩き出す。正真正銘の一人。
優しい大人はいない。家族もいない。『きよしこ』もいない。みんなの笑顔に見送られ、自分の人生の大事な一歩を踏み締める。
ちょっとの孤独と、大きな優しさを、内に秘めて。
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重松清さんの実体験を基にした少年の物語。エッセイではなく物語。自分のコンプレックスや、人には言いたくない思いも全部、この物語には詰まっていました。そして重松さんの伝えたいこともたくさん詰まっていました。
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きよしこが自分の思いを言葉にしようと成長していく姿に心を打たれた。吃音症ではなくても、自分の気持ちを表現する難しさは共感する部分が多く、学びが多かった。最後のあさのあつこさんの解説も小説家ならではの視点でとても良かった。定期的に読み直したいお気に入りの小説。
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今日、大隈講堂で開催された特別教室「それでも僕らは、ことばてつながっている」を聴講したが、その中で「棺桶に入れる本を一つ選ぶとしたらこれ」と仰っていた。
ご本人にとってもそれくらい特別な想いのある作品を最終講義の後で読んでみた。
講義ノートより①
「言葉は思いよりも絶対に小さいはずだ。思っていることを全て言い切れる事なんてほとんどない。だから言いたい事が言えなくても気にしなくて良いんだ。」
この言葉は、この作品で言いたかった事に繋がっていると感じた。
講義ノートより②
「「優しさ」を別の言葉に言い換えると「親切」「寛大」などが挙がるだろう。けど、そこには含まれない「優しさ」があるはずで、僕はそれを表現しようとしてきた。」
親切でも寛大でもない、絶妙な距離感を保った見守り感のようなものかも、ときよしこを通じて感じた。
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感動した
という言葉さえ煩く感じる。
静かに読後感を噛み締めたい一冊。
無神経な先生、親切だって人を傷つけることを想像もしない人たち、分かりやすく悪いヤンキー高校生、私は障害とか気にならないよ系女子、みんな身近にいたなぁ…もしきよしがクラスにいたら、私はどの立場で彼と接しただろう。
この本を 読んだ と言うには、一度読んだだけでは足りないと思う。
この少年の物語は、まだ私の中では他人の話であり、単に読んだ本の記憶でしかない。
でも、繰り返し読むことで言葉がこころの芯まで染みてきて、いつか、腹の底にしっくり収まる時がくる。そんな予感がする。
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吃音の「少年」の、飲み込んだ言葉、諦めた言葉、飲み込んだ気持ち、諦めた「伝えたいというコミュニケーション衝動そのもの」、そういった切ない場面が丁寧に温かく描かれて泣けた。
6歳から18歳までの年月を通して、出会い別れたできごとや地域や個性的な人々とのエピソードを通じて、「伝えることを諦めない」少年の成長を感じて、目頭がジーンと熱くなる箇所が何ヶ所もあった。
とくに、「どんぐりのココロ」の酔っ払いのおっちゃん、卒業お別れ会のお芝居の話、鈍感すぎて優しいツッパリのゲルマの話などがどうにも切なく涙がこぼれそうになった。
ちなみに、地の文は少年を「きよしは」と書かずに「少年は」と表現しているのが独特で、プロローグとエピローグにある通り、「君」に当てた「個人的なお話」として読むことができるように工夫されていると感じた。「君」は、手紙をくれた「君」であり、読者一人一人でもあると思う。少年は、と書いてくれていることで、読者はより自分のものとして読むことができるように思う。
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吃音の男の子が主人公のお話しです。
以前に重松清さんの青い鳥 を読んだことがあり、ものすごく繋がりを感じました。
言いたいことは言わなければ伝わらない。
そんなことはわかっている。
けれど、、、もどかしく愛のあるお話しでした。
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重松先生の個人的なお話だからこそものすごくリアルでものすごく伝わりました。
転校はただでさえ苦労が絶えない環境なのに、さらに吃音を背負った自分と生きていかなければいけない。
自分なら耐えられるのだろうか。どうやって対処するだろうか。
心を強くしないとうまくやっていけないだろうな。
自分らしいやり方で生き抜いてきたきよしに拍手を送りたい。
この経験値があるからこそ数々の素晴らしい作品が書けるのだろうな。
一人でも多くの何かを抱えている若者の心に届きますように。
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「青い鳥」を先に読んでから、こちらを読みましたが、その順番で正解だったのかもしれない。
冒頭の少年へ宛てた手紙の部分からも伝わるように、「ただ、そばにいる」ということは、重松清という人にとって、とても大切なことなんだと思う。
そして最後の「それがほんとうに伝えたいことだったら…伝わるよ、きっと」という、「青い鳥」の村内先生が大切にしていた言葉。
あたたかく、そっと背中を押してくれるような、大好きな言葉です。
このメッセージを世界のどこかにいる誰かが受け取って、大事にそばに置いているといいな。
この本は、その誰かにとって、村内先生のような存在になっているんだろうな。
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吃音の少年が成長していく、ちょっぴり切ない物語。
少年はしゃべることが苦手で、心の中でならしゃべることができるのに、言いたいことがいつも言えずに悔しかった。
大切なことを言えなかったすべての人に捧げる、永遠の少年小説。
Posted by ブクログ
友達に教えてもらって読んでみた
よかった
あったかいはなし
私はとくに「乗り換え案内」「北風ぴゅう太」「ゲルマ」「交差点」が好きです
「北風ぴゅう太」は号泣した
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重松清の作品は、「流星ワゴン」以来、2作目。
「流星ワゴン」はとてととても面白かったし、多くの作品が高く評価されているのも知っている。
けれど、なぜか次の作品を手に取ることがなかった。
それはたぶん、彼の平明で抑えの効いた文体が、なんとなく児童文学的に響くことと、その影響か、(完全に僕の穿ったモノの見方と歪んだ性格による偏見ですが、)物語自体が嘘っぽく感じたからだと思う。
その点、この「きよしこ」は、作者の自伝のように読めるので、嘘っぽさがなくなり、吃音の少年の辛かった思い出が、非常にリアリティをもって迫ってくる。
おかげで、ほとんど全てのエピソードで目に涙が滲んでしまった。
思えば、出だしの、手紙の部分でもう、術中にはまっていたんだな。
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「きよしこ」
吃音の少年が青年から大人の入口まで成長していく様子を描いた作品
物語は淡々と日常を等身大のままに、飾らずストレートに描写している。
タイトルにもなっている「きよしこ」
でも作中、きよしこは殆ど現れない…
それはきよしこがいなくても、少しずつ自分で考えて、自分の気持ちと向き合って、人とどう関わるかを模索出来るようになったから…
「抱きついたり手をつないだりしてれば、伝えることはできるんだ。それが、君のほんとうに伝えたいことだったら…伝わるよ、きっと」
「ひとりぼっちのひとなんて、世の中に誰もいない。抱きつきたい相手や手をつなぎたい相手はどこかに必ずいるし、抱きしめてくれるひとや手をつなぎ返してくれるひとも、この世界のどこかに、絶対にいるんだ」
きよしこの言葉を胸に少年が少しずつ大人になっていく。
吃音と度重なる転校を経験した分、人の傷みにも敏感に気付けるし、不器用でも真っ直ぐに伝えたいことを伝えられる。
ピュアで傷付きやすいのに思いやりがあって、少しずつ成長して生きて行く様が、なんだか切なくて嬉しくて…
飾り気もなくて、派手さもない。
でもただただ、温かい血の通った作品で感動した。
やっぱり重松清さんの作品は深い。
Posted by ブクログ
題名の「きよしこ」がキリストを連想させ、天からきよしの日々を見ている感じ、祈の気持ちで読み進めた。
転校の連続、吃音というハンディキャップから、ずっと1人で闘っている印象。他者との分かち合い、きよしの荷を軽くしてる存在、を彼は永続的に持てない。両親はそういう存在に足りえず、共に歩む友人、支えとなる大人とのつながりが薄い。
それでも何とか高校3年までたどりつき、自立、自由の入口にたつ。結局、それぞれ環境の変化や自分の生き方にもがきながら、答えを見つけていかなければならないのだろう。それが大人になるということなのか、成長と呼ばれるものなのか。
回りに左右されていた子供時代とは違う、自分で選ぶきよしのその先が良いものであることを祈りながら読み終えた。
Posted by ブクログ
小学生ぶりの再読
心がきゅっとなりながらも、沁みてくるお話でした
大人になってから読むと感じ方が変わったような気がします またこれからのライフステージによって変化するのかも
Posted by ブクログ
吃音を抱える少年が主人公。個人的なお話を書くとある通り、何かストーリーが大きく展開していくような小説ではない。暗い部屋の中で、ろうそくに「ぽっ」と炎が灯るような、そんなほんのり温まるお話。
Posted by ブクログ
吃音をもつことでどんな葛藤や困難があるのかがよくわかった。
なんでもない言葉でも、苦手な音が入るだけで言い換えることを常に考えていること、それでも意図しない受け取り方をされてしまうこと、切なくてやるせない気持ちになりました。
温かい物語ではあるのですが、吃音が治るわけでもなく、リアルで、読んでいる私にとっては正直救われないと思った。
でも少年本人はひたむきで、たくさんの経験をしてきたぶん逞しくなってラストは爽やかでした。
Posted by ブクログ
吃音の少年のお話。少し苦しくてとってもあったかい。重松さん、子どもの心情を描くの本当に上手。あの頃わからないなりに考えてた世の中の難しさとか、わだかまりとか、やりきれなさ悔しさ嬉しさ、全部思い出しちゃう。
きよしの周りは優しい人が多かったけど、現実は優しいばかりではなくて、それでもきよしの根が優しいから、苦しさをたくさん体験してる分優しいから、いろんなこと諦めてきたから優しいのか、わかんないけど、きよしの視点が優しいから全編通してあったかかった。
「乗り換え案内」が一番好き。
Posted by ブクログ
幼い頃に私にも「きよしこ」のような存在が居たことを思い出しました。
親にも言えない(というか、子どもの語彙力で発散できない)事を共有できる心の拠り所。
主人公きよしは成長するにつれ、きよしこを頼ることなく自分の力で生きていくことを身につけていきます。
「ゲルマ」に出てくるゲルマがどうしようもない奴で切なくなりました。