あらすじ
もう若くないのはわかっているが、疲れる──。三十代後半、家庭では大黒柱を演じ、仕事は上から下からの難題を突きつけられつつ、かすかなモラトリアムをしのばせる世代。ダムに沈んだ故郷をでて二十年がたち、旧友の死をきっかけに集まった同級生それぞれの胸にある思いは「帰りたい、故郷に」。人生の重みにあえぐものたちを、励ましに満ちた視線で描く表題作はじめ三篇を収録。現代の家族、教育をテーマにつぎつぎと話題作を発信しつづける著者の記念碑的作品集。
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前回、読んだ重松作品が『疾走』で内容が重過ぎて、しばらく読む気になれなかった重松清サン。でも久しぶりに読むとやっぱり、好きだ。特に小学生の男の子が登場すると、私はヤられてしまいます。
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重松氏お得意の学校もの3編。学級崩壊、不登校、いじめなどにくわえ、個人的な問題であったり家庭的な問題をそれぞれ全く重ならずに使っているところが、この作家の実に器用なところである。そして全ての作で共通して、自分の力だけではどうにもならない、不可抗力の中で主人公も読者も押し流されていく辛さは見事としか言いようが無い。人生は辛い。辛いなりに楽しく生きていけるという、そういう割り切り方の出来る人には向いているが、そこまでの理解が及ばない場合、単純に理不尽なストーリーにしかならないであろう。そういった意味で大人向けである。
なお、本作を紹介するにあたり、苦し紛れに「一般小説」というジャンルを作成したが、「職業文学」「テーマ文学」というのが正しいのかもしれない。
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「カカシの夏休み」は過去に帰りたい気持ちと今を生きる気持ちを描いている。主人公の37歳という年齢は、ある程度場数を踏んできて、なお色んなことがありすぎる今を生きて葛藤している時だ。でも未来に予想はつかない。だから過去を、ずっとずっと遠い過去に思いを馳せる。終盤の「幸せってなんですか?」という問いの答えが、余韻を伴って、少しだけ分かる小説です。
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何と言えばいいのだろう。
私の大好きな重松作品ナンバー2か3に入るかな。
月並みですが良かった。考えさせられた。
長めの短編が3作品。短編と思わずに読み始めたのでびっくりした。
カカシとライオンでは生徒から見ても先生ってそう思うんだろうな…って。
生徒だったのはかなり昔ですが。
カカシはカシオペアの丘と設定が若干似ていたかな。カカシの方が好き。
ライオン先生は「カツラーの秘密」をちょっと思い出してしまった。
「先生」って大変だよね。でも「先生」が「好き」な人に先生になってほしいな。「仕事」としてではなく。
衝撃は最後の「未来」
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表題作『カカシの夏休み』、『ライオン先生』、『未来』の中篇3作。前の2作の主人公は、私とほぼ同世代の中年の教師。過去から引き摺ってきた心の棘と現実に直面している活路の見出せない現在~未来が交錯する世界をどの作品も描いています。そして、最後はいつもの重松作品の通りに希望に満ち溢れたエンディング。正しい答えを出すことに行き詰ったお父さん世代に読んで欲しいですね。
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あとがきに書いてあるとおり。
「帰りたい場所」「歳をとること」「死」
三遍とも死が関わる話だから、すべて軽い気持ちでは読めない。全ての話でわたしは涙が溢れた。
カカシの夏休み・帰りたい場所は、故郷から実家がなくなった自分にはとても共感できるノスタルジーがあった。
ライオン先生・歳をとることは、この三遍の中で特にグッとくるものがあった。良い人や熱い人であることを通してきた自分が、長年貫いてきた中で、それが本来の自分であったのか、無理をしてきた節があったのだと気づく時。それでも私はライオン先生がとても好きです。
カカシの夏休みとライオン先生、共に感じたのは子供の頃見てたカッコいい大人、正しい大人とは何だったのか。実際はもっとしんどく、我慢ばかりの日々を過ごしていることもあるのだと。大人はかっこいいんじゃなくて頑張っているんだと思った、子供から見たらカッコ悪いかもしれないその姿も、頑張っているんだと思った。
頑張らない大人にはなりたくない。
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努力は必ずしも報われない。この歳(アラフィフ)でよく実感できる言葉。人生半分以上終わっていても、この先も未来がある。若者の思う未来とは意味が違うかも知れないけど、そんなやるせなさを感じる短編集でした。
重松さんの作品はそんな言い訳ができない、中年世代を代弁してくれているように思え胸に染みます。
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ほかの2編も読み応えがありましたが、「未来」はちょっと変わった視点で書かれた話です。
自殺者のために一種の冤罪を受けた人間の目から描かれてます。弟の事件後のみゆきの行動も、まともな精神状態に基づくものなのか、後遺症を引きずっているのか判断がつかないような感じがします。
なんだか不思議な雰囲気をもつ、印象に残る物語でした。ちなみに「ライオン先生」は金八先生を思い起こさせるキャラクターですが、挫折と開き直りをうまく織り込み、味わい深いですね。娘さんの突っ込みも気に入りました。
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三作。
カカシと呼ばれ生徒から舐められている先生と、問題児。問題児は実は家で虐待を受けていた。父親も悪気はなくどうしていいかわからない状態だった。ダムに沈んだ故郷を、友人の死をきっかけに再会した四人でみにいく話。
元教え子である妻を亡くし、カツラをかぶっている教師の話。
殺人者扱いされた姉と弟の話。
面白かった。
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この中では未来が好きだ
TVでいじめのニュースが流れると、ほとんどの親が自分の子は苛められていないかしら?と心配していたことを思い出した
その反対かもしれないのに………
そして、自分の子にイタズラした子を他の保護者を巻き込んで悪者にしてとっちめていた
どっちがいじめだと思ったことを思い出した
けど、だからといって何もしなかった
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重松作品を読むたびに思うのは、いつも作者が読み手と一緒に物事を考えていこうとしているって事。作家が読者に「こうだよ」「こうじゃない?」っていうよりは「こう思うけど君はどう?」っていう具合に読みながらいつも重松さんと一緒に考えている気がします。僕の勝手な感じ方なのでしょうが、いつもそれを感じるって事はそれが重松作品って事なんだろうな。怒り、喜び、悲しみ、、、何か心が欲した時には重松作品を読む事にしています。
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過去を振り返りながら現在抱えてる問題と向き合う。
重松清、お得意のお話が3本も入っている本。
場所、月日、死。
それぞれのテーマをらしい観点で捉えた秀作ぞろいです。
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カカシの夏休み。ダムに沈んだ徳山村の素人写真家のおばあさんを思い出しました。
ライオン先生。教師と生徒の禁断の恋とハゲを隠すかつら。主人公に嫌悪を感じました。
未来。死が周りの人の未来にも影響を与える。考えさせられました。
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人生半ばを過ぎて、努力しても必ずしも報われないこともあることはわかっている私ですが。
いろいろなものを抱えた登場人物達のやりとりに、悲しいような辛いようなものを感じました。
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劇的なドラマチックな展開はないけれど、じっくり考えさせられる3本の短編集だった。
人生いろいろ苦しいこともあるけど、
皆、それぞれの人生を一生懸命生きているんだなと。
結構重め&大きな展開なしなので
好き嫌いが分かれそう
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教師が主人公の短編集。
時代背景を感じるが、家族についてフォーカスを当ててます。
人生って思い通りにいかないし、さまざまなな家庭があるけど家族を大事にしよう。ともう一度思った作品です。
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中編3作。どの話もあまり私の好みではなかった。重松さんの著作は20冊以上は読んでるけど私に取っては当たりの時と外れの時の差が大きい感じ。まあ、600冊以上出されてるそうなので、ほとんど読んでないに等しいかな・・・
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本書は3つの作品から構成さており、最初の二つは30代の教師が主人公で、最後の一つは、自殺した同級生の遺書に名前を書かれてしまった弟を持つ、女子高生の姉が主人公。
その中の「ライオン先生」は、竹中直人主演でテレビドラマになっていたそうですね。(2003年)
個人的にもその話が一番印象に残りました。
中年になり、今までの生き方では通用しなくなってきた主人公。自慢のライオンのような長髪も今では時代遅れ。亡き妻の言葉を守り抜きながらも葛藤し、変化を受け入れようとしたり抗ったりする姿勢がとても人間味があり好きでした。
薄くなった長髪を、カツラを被り自分を偽ってライオン先生であろうとした主人公。結局それを脱ぎ捨てた時も、これは退化ではなく進化だと感じました。
全ての問題が解決したわけではないけれど、生きることへの希望が最後に示される優しい世界だと感じました。
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ズンとくる、重い3篇だった。
『カカシの夏休み』って何?と思っていたら、そういうことなのか。大人になってそう言われると辛い。だけど物語は動いていき、ラストは納得の結末だった。「ノスタルジー禁止」は、中高年にとって心にグサリと突き刺さるかも。『ライオン先生』は、主人公の思い切った行動、自分らしく乗り越えた感がいい。『未来』では、人生の落とし穴はすぐそばにあることを感じさせられた。ラストが気になってしょうがなかった。
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30代40代の中年に入る悲哀の物語、三編。
バブル期のダム建設で底に沈んだ故郷を懐かしみ同級生が再会。
長髪のカツラを外し、ハゲを曝け出すこうこうきょうし。
自殺され遺書に名前を残されるが冤罪だった高校生。
重松作品は劇的な展開はないけど、そこはかとないというか淡彩で、何でもない誰にでも起こり得るであろう人生を書くのが非常に巧いですね。
生と死。
誰かが死にたいと思った今日は、誰かが必死に生きたいと願った明日だな。
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3編の話のうち2編は先生が主人公のお話。問題児をクラスに抱えていたりと、先生ならではの苦悩が読み取れた。最後は同級生が自殺してしまい、最後に電話で話した主人公は精神的におかしくなり、病院に通う。そんな中、弟の同級生がイジメで自殺してしまい…この話は最近読んだ十字架という小説に設定が似ていた。
どの話も読んでいて胸が苦しくなってしまった。生きるってこんなに苦しいことが沢山あったっけ?と思わせるものがおおく、ハッピーな気持ちになる本が次は読みたい。
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「帰りたい場所」と「年をとること」と「死」(あとがきより引用)が組み合わさったお話三篇。
私も中年で、昔を振り返るのは嫌いじゃない。仕事がつまらない、今が充実していない、それらも理由かもしれない。でも一番は、損得考えずに行動できる仲間がそこにいるからだろうと思う。
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「カカシの夏休み」
「ライオン先生」
「未来」
の三編を収録。
「カカシの夏休み」の主人公は小学校の先生。厳し過ぎず、だからといって子どもたちになめられるほどには甘くもない。
だけど、結局何もしてくれない。子どもたちのことをわかるふりして、見ているだけ。
だからあだ名は「カカシ」というらしい。
「ライオン先生」は高校の先生。ライオンのたてがみのように長い髪をなびかせて、手を焼かせる子どもたちのことも決してあきらめて投げ出したりはしない。それがライオン流。
しかしその髪は、実はかつらだったのだ。
「未来」は、高校生の時、自殺したクラスメートの電話を最後に受けてしまったため、自殺を止めるどころか「お前が殺した」と言われ、心が、顔の表情が動かなくなってしまった少女が主人公。
弟のクラスメートが、弟にいじめられていたことを書いた遺書を持って自殺した。学校が、警察が、マスコミが、世の中が、弟が殺したと責める中、少女の心が動き出す。
なんだか読んでいて、苦しくなってしまうのだ。酸素が足りない感じ。
私が子どものころ、学校の先生はすでに怖い存在ではなかったけれど、でも特別な存在だった。
えこひいきする先生もいなくはなかったけど、基本的に先生は善で正義で公正で、絶対だった。
こんなに揺れていたのか、先生の心。と、私の中の子どもががっかりする。
こんなに変わってしまったのか、今の子どもたちの心。と、私の中の大人は愕然とする。
“生徒たちは、教えることはすべて理解できる。だから、それだけ。なんのひっかかりもなく、一コマずつ進む。あまりにもスムーズすぎて、なにかすごくたいせつなことを教え忘れているんじゃないかと心配になるほどだった。”
生徒たちについて考えるのをあきらめてしまうのは簡単だけど、それも気持ちがもやもやする。
しかし全力で熱く指導しようとすると、子どもたちの心がすーっと離れてしまう。
ぎゅうぎゅうに抑え込まれた気持ちの出口は、一体どこにあるのか。
かつらを外して生きることに決めたライオン先生は、娘からのクリスマスプレゼントにニットキャップをもらおうと思う。
“あまり派手なのは駄目だが、年寄りじみたのも嫌で、いまどきの流行りなど追わなくてもいいが、暖かければそれでいいというものでもなく、そういう中高年の複雑な好みがわかるようになれば、恵理もオトナだ。”
学校だけが世界ではないし、家庭だけでは生きていけない。
居場所は一つだけに決めなくていいのではないかな。
疲れたときは、ちょっとヘタレたっていい。
だけど少し余裕があるなら、空元気を出してみるのも結構いい手なんだよ。
いつまでも背中を丸めてはいられない。
そう思うのだ。
風通しを良くしよう。
学校(職場)でも、家庭でも。
そして新鮮な酸素をたっぷりと取り込もうよ。
じゃないと、読んでいて苦し過ぎるのだ。