角田光代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【源氏物語 中】
上巻では、途中に須磨退去なんかありつつも、生まれてこのかた上り調子だった源氏の君。中巻でも勢いそのままに、位人身を極めて絶好調。
その一方で、忍び寄る老化の影。過去のように自由に遊び回ることもできないし、なんだか昔の思い出は駆け巡るし、女性との関係も上手に育てられなくなる。
次世代が成長する中で、周囲の人も少しずつ亡くなっていって、遂には長く寄り添った紫の上も..そして..。
源氏物語を全く知らないところから入って、ここまでで41/54帖。1000年前の物語を現代でも読めることにも、物語の分量にもその精巧な構成にも、何より楽しく読める(この点は角田光代の貢献が大きいのかもしれないけど)ことにも驚いてる。
源氏ほどの栄枯盛衰は当然ないけど、自分にもそれなりには人としての興隆と没落があるはずで。勝手に重ねてみることで、生きることの喜びだけではなく、悲しみやら悩みをしみじみ味わうのも良いなと思ったり。満員電車で風情感じてるのもそれはそれで素敵な読書時間だななんかと考えてる。 -
Posted by ブクログ
序盤を読み始めていた時点では、正直、あまり好きになれる小説ではないような印象を抱きました。
何より主人公=空也のキャラクタ造形に違和感を憶えてしまって。
如何にも女性作家が創造した男性キャラというか、いくらなんでもこんな男いないだろ、という感じ。
酔っぱらうと女言葉になるってのが全く持って意味不明。
ドラマ性も薄くて、淡々と展開していって、ワルキャラ作りと経歴詐称の件りも、何だか亀田兄弟を安易にモデルにしてるようで心踊らず…
ところが不思議なもんで、読み進めていくうちにジワジワーっとくるんですよね。
空也がボクシングの世界に馴染んでいく位相が読んでいるこちらがらにもシンクロしてくるというか。
そうなってくるとこの淡々とした時系列の展開が、なんだか現実感を生む。
しかもそれが出版社の人事異動の周期で切り取られたりするからなお一層。
才能ある奴ない奴、精神的にタフな奴弱い奴、その辺の人間模様もまた現実感をじんわり滲み出す。
なんなんだろう。
やっぱりボクシングって素材が独特の現実感を呼び込むんだろうか。
殴り殴られるというプリミティブな営みが。
子供の頃『がんばれ元気』を読んだときの、踏み込んではいけない領域に触れたような、ある意味隠微な感覚が呼び戻されたような気がしました。 -
Posted by ブクログ
読みやすいが、文庫本637頁もあり、読み応えがあった。
ひたすらボクシングに没入する前作に対し、その2年後を描いた本作では、登場人物それぞれがその立場で、悩み思い惑っている。
前作で活躍した立花は、得体のしれない恐怖を感じている。「拳の先に何がいるんだか、おれにはもうわかんないスよ」と。
また、坂本は試合に負け、引退すら危ぶまれている。
一方、立花のファンであるノンちゃんは、いじめの被害に遭っている。そんなノンちゃんに空也は言う。
「そんなものと向かい合う必要はない。逃げればいいんだ。逃げ方を考えるんだ」と。
主人公の空也は、狂言回し的?に、彼らに関わり合っている。
『空の拳』の続編は、巨大な恐怖に逃げながら闘っている彼らを描いて、読者に問いかけるエンターテイメントとなっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ三浦しをんさん等との対談も収録したエッセイ集。
厳しい母親に育てられた反動で、きれいに整理整頓された家の中は落ち着かないという著者。相当なトラウマと化してる様子。
買ってきた本を玄関の上がり口に座って読み始めることがあるという三浦しをんさんの言にクスリとさせられた。
また、本格ミステリーは殺人を描くにもややこしい殺し方をするが、ハードボイルド作家にしてみると、そんなの中国人の殺し屋に十万円渡せばすぐに殺してくれるとなる、という船戸与一氏の言も可笑しかった。
「書評を書くうえで私が禁じ手にしているのは、最後にひっくり返すやり方です。『こういうところがよかった』と褒めておきながら、最後で『だが、ここはいただけない』とやったり、逆にすごくけなした後に、『しかし、ま見るべきところもある』とする手法は、どっちにしても、私はしたくないと思っている」というしをんさんの言にどきりとする。ともすれば私もそんな書き方をすることがあるので。
後半の恋愛論はなかなかすんなり腹に落ちなかったが、「ときに自分自身を否定すらして、価値観をすりあわせようとする。そんあこと、恋愛でなきゃできっこない。」という部分にはそういう面もあるかなと感じた。