角田光代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ重松清さんの解説を読んで、この作品への解像度が上がった。口に出した言葉と口に出さなかった/出せなかった言葉が交互に挟まっていることで私たちが行っている普段のコミュニケーションを再現している様だった。小学5年生の女の子である主人公視点のみで物語が進むので、まだ子どもだから人との会話が拙い様を表現して、口に出さなかった言葉についての描写が多いのかと思っていた。しかし、大人のコミュニケーションも何を口に出すのか吟味して、あれを言えば良かったな、言わなければ良かったななどと後悔することが多いだろう。
物語の最後もわざと劇的な終わり方にさせず、ただ父と子のひと夏の思い出としているのが魅力だと思う。物語的 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第59回吉川英治文学賞受賞作品。
1950年代生まれの女性と1960年代後半生まれの男性が、噂や信仰に翻弄されて昭和、平成、令和という怒涛の時代を生きていく話。
というと大河ドラマみたいですが、等身大の私小説で年代や感性が自分と近くて共感しました。
ノストラダムスの大予言、口裂け女に始まって最後はフェイク映像と、世間を騒がせた似非情報に右往左往しつつも、本当の災厄といえる自然災害や人災などは対岸の火事っぽい距離感があるのがリアルでした。
別々の世代の二人が、人を助ける「こども食堂」で出会い、それぞれ正しい事とは、人助けとは何かを考えていくのも普通の人っぽいです。
地に足がついている小説だと思 -
Posted by ブクログ
なんで父親がいないんだろうとか、母親と父親の出会いとか、大抵は気にしない子がほとんどじゃないだろうか。ましてや、産まれたときから父親がいないんだったら、父親という存在そのものが想像できないし、不在の意味を問う以前の問題だから。
...と思っていたら、やっぱり気になっちゃうものなんだね。
父親と思われる人の曲を聴きまくっていても、母親には気を遣ってそのことは秘密にしていて...と、思春期の少年の感情は揺れまくっている。
母親へのぶっきら棒な受け答えの中にも、親に対してちゃんと良い感情を持っていることが感じられて微笑ましい。
一方、母親の若き日の話を読むと、両親からあまり気にかけてもらっておらず -
Posted by ブクログ
銀行員の梨花が、ある出来事をきっかけに少しずつ道を踏み外していく物語。最初はほんの小さな綻びだったはずなのに、気づけば取り返しのつかないところまで転がり落ちていく。その過程があまりにも生々しくて、読んでいて怖くなる瞬間が何度もあった。痛々しくて、正直かなり重い読書だったと思う。
ただ、読み進めるほどに「梨花は何を求めていたんだろう」と考えずにはいられなかった。本当の自分を探していたのか、それともただ今の自分から逃げたかったのか。彼女は結局どこへ行きたかったのだろう、と読み終えてからもずっと考えてしまう。
決して楽しい話ではないし、むしろ苦しくなる場面のほうが多い。それでも、読み終えたあとに