あらすじ
行方不明の兄を追うようにしてアジアの国へ来た私。闇両替で所持金のほとんどを失い、一日パン一個で食いつなぎ、安宿をシェアして、とうとう日本企業の前で物乞いを……。帰る気もなく、行くあてもなく、いったい今ここで何をしているのか。それでも、私はまだ帰らない、帰りたくない――。若いバックパッカーの癒しえない孤独を描く表題作他一篇を収録。『地上八階の海』改題。
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Posted by ブクログ
この本の表題作の「真昼の花」はすごく好きな作品。
アジアを旅行しているときの描写が、単なる観光旅行ではなく、さまざまな矛盾をそのままさらけ出していて、深い。
貧困の描写、自分の居場所、何のために生きているのか、など、大きなテーマだけど、
それらをさらっと本の中に登場させている。
若者の放浪旅行というありがちなパターンではなく、終始漂う空虚な感じがおもしろいと思う。
ラストも「え!?」って感じ。
「自由になりたいから、旅に出たい」と考える人は多いかもしれないけど、
現実的に考えると、旅に出たから自由になれるわけではない。
Posted by ブクログ
真昼の花…評価はこの作品。印象的なのはバックパッカーたちが何かを求めて漂流する姿。ゆっくりと流れる時の中で南国の鮮やかな花に囲まれるうちに日本人としてのアイデンティティが濃くなっていくように読めた。
地上八階の海…赤ちゃんの力なのか母や兄との距離感が近くなっていくようだ。
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【本の内容】
行方不明の兄を追うようにしてアジアの国へ来た私。
闇両替で所持金のほとんどを失い、一日パン一個で食いつなぎ、安宿をシェアして、とうとう日本企業の前で物乞いを…。
帰る気もなく、行くあてもなく、いったい今ここで何をしているのか。
それでも、私はまだ帰らない、帰りたくない―。
若いバックパッカーの癒しえない孤独を描く表題作他一篇を収録。
[ 目次 ]
[ POP ]
生きていること、そして生きていくことの途方のなさを、上手に人に話すことができない。
だから、角田光代の小説を読むと少し安心する。
僕が語ることのできなかった「あの感じ」がいつもそこにはあるからだ。
無意味に焦ってみたり、急に不安にかられてみたり、意図に反してドギマギしたり、日常生活というやつはなんだかひどく落ち着かない。
それなのに、いかにも手慣れたものとして「毎日」を扱ってしまう。
そんな自分にふと気がついた時、本書を手にとってみてほしい。
「あんた、何やってんの?」。
そんなオオバくんの問いが怖い。
怖いからこそ、必死に何かをやっているふりをしてしまう。
何かを目指しているふりをしてしまう。
しかし実のところ、何やっているんだろう……という呟きから何かが始まっていくのではないか。
生きていくことに途方に暮れてしまっている誰かの背中をそっと押してくれる、そんな力を持った小説である。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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兄を探しているのか放浪しているのか、目的の定まらないバックパッカー。真昼の花
母と兄夫婦の住むマンションに行く主人公。身内との微妙なバランス関係。8階の海
短編2本
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川本三郎氏の解説に共感したので引用。
「角田さんの文章は、最近の若い作家にありがちな、奇をてらったところ、はしゃいだところがないのが素晴らしい。地味な主人公にふさわしく、文章も地味な良さ、落着きがある。」
Posted by ブクログ
女性を主人公にした短編が2編。事件が起こるでもなく、オチがあるわけでもなく、定職に就かず、自分の立ち位置が揺れているような、でも流されているわけではない女性の人生の一時期を切り取ったような物語。
目的もなく…いや、兄を捜す…という切実ではないボヤンとした目的を保険にして、ただ日常から逃げているのかもしれない女性バックパッカーの、ちょっとどんよりとした海外での生活を描いた「真昼の花」。自分のアイデンティティを見つけられずにアルバイトをし、結婚した兄と、兄嫁と、その子供と、母親の少し疲れた日常を、他人のように見つめる女性が主人公の「地上八階の海」。
あるある、と共感できる部分と、こんな風にどんよりとは生きたくないなと反発する部分と、なんで私はこれを読んでるのかしら…?と不思議に思う部分と、なんか、読み終わった後の後味が不思議な本でした。
ふむ。
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「真昼の花」
行方不明の兄を追うようにしてアジアの国へ来た私。闇両替で所持金のほとんどを失い、一日パン一個で食いつなぎ、安宿をシェアして、とうとう日本企業の前で物乞いを……。
帰る気もなく、いくあてもなく、いったい今ここで何をしているのか。それでも、私はまだ帰らない、帰りたくないーー。
若いバックパッカーの癒しえない孤独を描く。
「地上八階の海」
電話を繋ぐアルバイトをしている私。何かに怯える母と、人見知りの激しい姪。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
うーん……これといって特出したことのない話……
なんだろうなぁ……
面白くなくはなかったが、楽しかったかと言われると別に……っていう……
何か事件を書く、というより、内面とか気持ちとかそういうのを書いてたから私はあんまり入り込めなかた。
Posted by ブクログ
少し時間をかけて読みすぎた。何の理由も無いけど帰りたくないとか、立ち止まったらいけない気がする瞬間は確かにある。それと同じように動きたくても泥に足を取られたように動けないときもある。今回の作品はそんな感じを上手く書いてると思う、あぁやっぱり角田さんは上手いな。
Posted by ブクログ
何かを得るには何かを手放さなければならないとは
よく言われることで、
実際そのとおりなのかもしれないが、
自分が何を得て、
何を手放してきたのか、
私にはまるでわからない。
ただひとつ、
ものごとがかわり続けていくその真ん中に、
かわったり、
かわらなかったりしつつも
自分がいて、
日々おちこんだり
笑ったりし
来週にはかわってしまうかもしれない何かを
切実だと思い、
何かに深刻に向き合っている、
そんなことを思うと、
時間の流れの中に
ぽつんといる
自分というものが、
唯一、
私に測量可能のささやかな永遠であるような気がして、
どことなく安心してしまうのだ。
Posted by ブクログ
好き、とはいえない。
この二つの物語の主人公はいずれも「一人」の方向に向かおうとしているように見える。
ここが自分の居場所だと言い張れる場所もなく、何かが足りないわけではないのになぜかものがなしい。
現代を生きる人間ならばこの孤独と焦燥に共感を覚えるだろうが、それはなんだかさみしい。
Posted by ブクログ
ピンと来た。うん。
定着と漂流の間がたんたんと
書かれてたなあ。
旅行してるとこのまま
何処までも行ける気になる。
まだ帰りたくない、帰れないと思う。
長い旅に出たら、私も戻らない気がするな。
帰りたくて淋しくてでも帰れないと思う。
しかし、角田光代は対比が巧い。
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07年9月読 真昼の花は、バックパッカーだった角田さんだからこそ書ける深い話で怖かった。地上8階の海は息子夫婦が住む新興住宅地に越したお婆さんが物悲しい。
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2007.01.29 これまた角田さん☆そしてアジアの格差の激しい日常や日本人から見た現地の人々やそこでの生活が鮮明に書かれている。何をしたくてきたとかでもなく、彼を日本においてきて長期にわたって兄がしていると思われる旅に出かける。だけど兄を探すわけでもなく自分探しの旅でもなく現地で働くでもなく・・・。なんだか凧の糸がきれてしまっている、そんなかんじ。バックパッカーなんてTVで見たりするくらいしか知らないからなんともいえないけど日本人てやっぱり贅沢を追求してる生き物なんだねぇ−X(