角田光代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
角田光代の本は好きでよく読むけど、これが一番好き。旅をしていたことがあるっていうのもあって、すごく共感する部分があったし、旅なんてしていなくても、すごく分かる部分があるんじゃないかなって思う。
この本出てて来る「純度100%」と言う表現がとても心に深く刺さった。
自分にはいろいろな自分に変化できる自分が張り付いて、その場を取り繕ってすごしている。だけどそれって本当の自分じゃなくて、じゃあ本当の自分って何だろう、って思ったとき、しがらみの一切無い状況に居る自分なんだって思う。しがらみは消えはしないけど、旅をしているときは、すべて置き去りにして、「自分だけ」になる。何かに驚き、何かに感動し、何かに喜んだり、そういうのを純粋に感じられる自分になれる。うわべの言葉も要らなくて、気の利いた言葉も要らなくて。「スゲェ」って思ったらもうそれしかなくて。
ああ「純度100%」ってそうだよ。あのときの私は確かに「純度100%」の私だったんだ。って読みながら思った。
旅が終わって日常に帰る。だけど日常にあっても、大切な人の前では、そこで見つけた純度100%の私でありたいって思う。なかなか難しいことだけど。 -
Posted by ブクログ
「ピンクバス」
働いて、結婚して、子供を生んで、幸せに暮らしましたとさ。
というような言葉はたくさん目にするけど、
本当は、その単純なパターンの中に、たくさんの葛藤と矛盾がある。
複雑な心境を書き出すの、本当に上手だと思う。角田さん。
「昨日はたくさん夢を見た」
私の好きな、放浪旅行系♪
インドに旅行にいった彼氏と、日本で相変わらずだらだら過ごす自分。
変わりたいけど、変わらない。
世の中には、自分が変われば、世界は変わるって言う人がいるけど、
どうしようもない、もやもやから抜け出せない人もいる。
生きるって何?
みたいなことを一緒に悩んでくれるような作品。
答えはないし、希望もないけど。 -
Posted by ブクログ
主人公は一見正反対に見える2人の女性。2人の過去と現在を行き来しながら物語は進む。
20年前の作品のため、現代の感覚で読むと主人公たちの学生時代はノスタルジックな空気に包まれてしまった点が残念である。だが、危うい少女たちの行く末が気になり一気に読めた。
高校生の頃、あんなに毎日一緒にいた友人と疎遠になる。社会人になり結婚、出産を経てまたひとり友人が減った気がする。
人と出会い、親しくなればなるほど、その人のすべてを知ったふうに思い込んでしまう。そして自身の理想を気付かないうちに押し付け、勝手に失望してしまう。
自分とまったく同じ立場境遇の人なんて滅多にいないわけで、同い年同じ女性であっても人生において大切にしているものは千差万別だ。だから面白いのだ。
考え方やライフステージが異なったとしても、それでもまた会いたいと思う人には臆せずに連絡し、縁を大切にしていきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ夜は一人で自分自身と向き合わざるを得ない時間。そして、どんな人の元にも等しくやってくる、日常と隣り合わせの時間でもある。
3人の主人公たち(伊津子、ちづる、麻友美)が直面しているのは、劇的な悲劇ではなく、日々の生活の中で静かに積もっていく違和感や割り切れなさ、誰にも言えない孤独だった。
これは、その静寂な時間の中で、過去の記憶や現在の自分、親子との関係を反芻する、まるで夜の中にいるような物語。
3人が抱える孤独や迷いは、すっきりと解決するわけではない。それでも完全な暗闇(絶望)ではなく、どこか冷ややかで静かだけれど、たしかに光を含んでいる時間を生きている。
母が衰弱するにつれ娘という役割から解放される伊津子。それは、和解というよりかは諦念を含む愛の受容だった。
空っぽな自分自身を直視することを恐れ、なまぬるい日常を送っていたちづる。伊津子の母を海へ連れて行った、あの切烈な瞬間に立ち会うことで、傷つく覚悟を持って、自分の人生を自分の手で生き直すことになる。
過去に執着し、叶わなかった自分の果てぬ夢を娘に肩代わりさせ、嫉妬をもする、毒親予備軍の麻友美。かつて憧れていた伊津子の母を見送ることで、子どもを所有物にするのではなく、一緒に生きていく存在として受け入れる覚悟を決めることができた。
どれもひとことでは言い表されない、手に入れたと思ったらすり抜けていくような人生。だからこそ手に入れようともがく。その手応えこそが、自分だけにしか得られないものだったんだな と教えてくれるような本だった。