朝宮運河のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
日本のホラー小説が歩んできた歴史の流れを掴むのに最適な一冊。戦後から現代へと連綿と続く系譜には、「なるほど確かに」と頷かされることばかりだった。ホラー小説はたまに読む程度だけど、実感を伴って深く理解できるのは、やはり『リング』以降の時代。あの作品が日本のホラーの「パンドラの箱」を開けてしまったのだと改めて痛感する。また、ホラーがミステリやSFと案外近い位置にあるという再認識も面白かった。ホラーとは異なる立ち位置でありながら、京極夏彦さんの作品が重要なポジションとして語られているのも、ファンとして誇らしく嬉しいポイント。未読の魅力的な本がたくさん紹介されていて、読書欲が大いに刺激された。どこかのタイミングで少しずつ手に取ってみたい。
-
Posted by ブクログ
こーれは素晴らしいブックガイドでした!惜しむらくは、紹介されている本がどれも怖そうすぎて、うかつに手が出せないところでしょうか。。
先日同著者の『日本ホラー小説史』を読みましたが、通史という立ち位置のそちらに比べ、本書は1926年から100年間の”怖い話”をピックアップ。著者は『現代ホラー小説を知るための100冊』という本も書かれていますが、レビューによると被っているのはなんと『リング』1冊だけなんだとか。物凄い読書量ですね……!
ホラー小説がミステリやSFと近接しながら成り立ってきたというのは『日本ホラー小説史』で学んだ点であり、本書でも綾辻行人さんや宮部みゆきさんなど、ミステリ界の大御所も多数含まれています。
「はじめに」に「紹介している88冊はどれも怖いものばかりですが、この本自体はたぶん怖くありません」とある通り、付記されている「ASAMIYA MEMO」の力の抜けた感じが全然怖くなくて、安心して読み進められました。1冊あたり見開き2ページであらすじ・読みどころ・作者紹介・一言メモまで収める構成も美しい。
私はミステリ・ガイドもよく読むので、そこには興味を惹かれる”謎”がたくさんありますが、「怖い話」となると「え?どういうこと??」レベルが半端じゃありません。そこに輪をかけて、朝宮氏の決してネタバレしない愛ある語り口がなんとも絶妙。付箋がたくさんついてしまいました。
また、収録されている澤村伊智さん、背筋さんとの対談も興味深かったです。
偶然かもしれませんが、お二人とも「偶然の出会い」によって怖い話を開拓してきた、と述べられているのが印象的でした(それにしてもご両親の読書家っぷりもすごい!)。
年代ごと、ジャンルごと、和洋取り混ぜてバランスのいい88冊。少しずつ、「怖い話」の世界も覗き見していきたいと思います。
【以下、読みたい本メモ】
リチャード・マシスン『アイ・アム・レジェンド』
小松左京「くだんのはは」(『霧が晴れた時』)
夢枕獏『悪夢喰らい』
ジョーン・リンジー『ピクニック・アット・ハンギングロック』
スーザン・ヒル『黒衣の女』
恩田陸『月の裏側』 -
Posted by ブクログ
今、ホラーが熱い!
普段ミステリ畑にいる私でもそう感じています。
雨穴、梨、背筋という3名によって牽引されるモキュメンタリーブーム、リミナルスペース、「恐怖」を体験できる展示などなど。書店でも実に多くの”怖い話”を見かけます。
これらのブームを俯瞰的に捉えたいと思い、ウェブサイト「好書好日」などで連載を持っておられる朝宮運河氏の著作を手に取りました。怒涛の参考文献の量もさることながら、リアルタイムでホラーブームの渦中にいたからこそ書ける熱量の高い文章は、およそ新書とは思えないほど満足感のある内容でした。
とはいえ、私は”怖い話”が苦手です。
が、私が抱いていた苦手意識は『リング』や『呪怨』のようなJホラーに対するもので、そもそも「ホラー」がどれだけ多くの「恐怖」を対象としてきたか……その間口の広さに思わず唸ってしまいました。
また、今では一大ジャンルとして君臨している「ホラー」が、どれほどの先人たちの苦労で確立してきたものなのか。
雑誌や賞を立ち上げても短命に終わってしまう。けれど諦めずにチャレンジしてきた歴史があってこそなのですね。
そこには、「怖いものへの好奇心」というおそらく人間が持つ原始的な欲求と、「こんなに面白いものを世に広めたい」という使命感があったのではと推察します。
それにしても、『トリビアの泉』のパネラーの一人だった荒俣宏さんがこんなにすごい人だったなんて……!
江戸川乱歩に始まる系譜が現代まで脈々と受け継がれているさまに、門外漢の私ですら感慨深いものがありました。
本書は主に戦後からの「ホラー小説史」に重点を置いていますが、隣接するジャンルであるミステリ、SFへの言及も多く、その点でも非常に興味深く読みました。
私は”白装束に黒髪の女”や”顔色の悪い男の子”はダメですが、本書でも何度も名前が出てくる宮部みゆきさんや京極先生、綾辻先生の大ファン。
ということは、これまで「ホラー」というだけで敬遠していた作品群にも惹かれるものがあるのでは……と、おっかなびっくりで手を出してみたくなりましたね。
朝宮氏はブックガイドに特化した著書も出しておられるので、怖がりでも大丈夫そうな一冊からチャレンジしてみたいと思います!(でもきっと『残穢』は読めない……) -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本のホラー小説、その起点を終戦後の1945年、及び江戸川乱歩の評論『怪談入門』と定め、現在のいわゆる"令和のホラーブーム"にまで繋がる歴史を、近縁のジャンル―ミステリ、SF、怪談、さらには昭和中期のUFOや超能力、オカルト等のブームや映画など周辺との関わりも交えて詳説した1冊。
幻想文学、あるいは海外の怪奇幻想、ホラー小説史に併記する形で本邦に於けるそれらの歴史が語られた著書は過去にも少なからずあるが、こと"日本のホラー小説の歴史"として書かれた本は確かに初だと思われる。
平安朝の頃から長く幽霊や狐狸妖怪、魑魅魍魎が登場する豊穣な"怪談"文芸が存在した日本に、明治期以降海外の怪奇幻想文学が数多く紹介されながらも、その後はミステリやSFの辺縁あるいは亜種として扱われがちであったものが、どのような紆余曲折を経て"ホラー小説"という一つのジャンルとして独立するに至り、さらには他ジャンルや書籍以外のメディアと交差しながら現在の何度目かのブームを迎えているのか―が詳細に綴られている。
新書という紙数が限られた体裁では言及し切れず、著者が泣く泣くカットした事項も少なくないだろうと察するが、戦後の一文学史、サブカル史の一面を語った一冊としても貴重だと思う。
ホラー小説に少しでも興味のある読者は必読の書といっても大げさではない―気がする。
著者の朝宮氏が昨年出版した『現代ホラー小説を知るための100冊』と『怖い話名著88』の2冊と本書、さらに3年前に刊行された風間賢二氏の『ホラー小説大全〈完全版〉』(青土社)があれば、現在の日本における国産/海外のホラー文芸に必要な情報はほぼ得られるのじゃないだろうか。
これからそこに新たに触れられる読者の方々が羨ましいが、旧い作品がどんどん読み辛くなっている状況を考えると、一概にそうとも言えない……かもしれない。 -
Posted by ブクログ
終戦後から現代に至る日本のホラー小説の通史。
約240ページの本文に詰めに詰め込んだという感じの情報量。その密度の高さに驚くがもうちょっとページ数多くても良かったのではないだろうか。全体的に駆け足感があり、もうちょっと詳しくと思う箇所が(特に時代が下り現代に近づくほど)いくつもあった。 新書のため紙幅が限られるというのであれば前半の1945年〜70年代に関する記述は既存の類書に任せて、80年代以降の現代ホラーに絞るという手もあったのではないだろうか。
とわいえそれは自分が古いものに馴染みがあるからそう思うだけで、若い読者にはむしろ80年代以前の情報の方が新鮮なのかもしれないので一概にはいえないか・・・ -
Posted by ブクログ
「家が呼ぶ」に大興奮して以来、すこしずつ朝宮運河さん編纂のアンソロジーを買い集めている。今作も大興奮!
✂-----以下ネタバレです-----✂
はじめに収録されたタイトルドンピシャの「恐怖」は、短くもラストにドキッとする極上の作品。最初からこの作品…もう期待しかないが、続くは小松左京「骨」。じっくり掘り進められた恐ろしく壮大な情景が、蘇る記憶とともに一気に駆け抜ける大迫力に感動…。
「夏休みのケイカク」「正月女」は現代の割と身近な景色を思い浮かべつつ読み進めていたけど、オチに違ったカラーのダークさがあり面白い。
今回すごく好きだった「ニョラ穴」は、SFチックな作風。日本のこういう作品って初めて読んだんじゃないかな。世界が広がって面白い。アンソロジーの良さ。
「或るはぐれ者の死」、「雛」は現代のどこかで広がっている異様な光景に思いを馳せるような話。「雛」の、チラッと見たら鬼の形相になっているっていう映画的な描写良かったなあ。
そして一番怖かったのは最後の「人獣細工」!
冷たく鋭く人間の尊厳に切り込んだ作品で、一番本能的な恐怖をおぼえたかもしれない…。何度も「冒涜だ…おそろしい…」とつぶやきながら、ページを捲る手が止まらなかった。
面白かったのでシリーズ前作の「再生」も買おうっと♪