阿刀田高のレビュー一覧

  • 魚の小骨

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    奥付1995年第1刷。初出は殆どが90年代初めで、様々な媒体で発表されたものだ。我が家の本棚の中で、ようやく初読みゾーンに入った。入手困難な著作も増えてきた。そして著者はもう90歳なのだなあ。髙田万由子氏の解説は、ものすっごく丁寧で冗長だったが、著者の小説制作の惜しみない種明かしという感想には首肯できた。「目の読書と口の読書」は、オーディブルで本を楽しめる作品とそうではない作品があることを想像させるエッセイで印象に残った。

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    2025年09月23日
  • まじめ半分

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    阿刀田高のエッセイ。
    昭和のお話なので、今の感覚で読むとちょっと引いてしまいそうな事もあったけど、僕の小さい頃ってこんな感じもあったな〜って懐かしい気分になった。

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    2025年09月06日
  • エロスに古文はよく似合う

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    ネタバレ

    「妻を贈った男」「エロスは古文によく似合う」
    「蒸気機関車の恋」「誘われた男」
    「だれがたれかを待っている」「作家は結果OKが好き」
    「君はマミムメモを見たか」「羅生門ひとめぐり」
    「兎のステーキ召しあがれ」「眼の恋鼻の恋」
    「首たちは戦う」「皆殺しの門」

    『今昔物語』を題材にしたエッセイ。昔読んだときは『少将滋幹の母』とか読んでいなかったけど、読んでから再読するとまた色々感じが違う。こういうエッセイはとても好き。

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    2025年09月01日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    ネタバレ

    度々繰り返して申し訳ないのですが、旧約聖書を読破したので、まつわる解説書等を読み理解を深めようと考えています。

    手元の本の再読が基本路線ですが、どこぞで本作の評判を聞き、購入に至りました。

    ・・・
    で、読んでみました。

    率直な感想は、確かに、よい。

    本作は、つい先日再読した『イラストで読む旧約聖書の物語と絵画』でも参考図書として挙げられておりましたが、ユーモラスなテイストや我々「異教徒」からみた不可思議さなどが自然体で語られているところに好感が持てます。

    きっと上記の作者杉全さんもかなり参考にされたのではと察します。

    阿刀田氏の筆致は、エッセイの軽さを失わないのに、その理解の深さ・

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    2025年08月01日
  • やさしいダンテ<神曲>

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    ダンテの『神曲』は文庫本で地獄篇、煉獄篇、天国篇の3冊にわたる大著。容易くは読めないので、手っ取り早く読もうと本書を手に取る。
    さすが文章の達人、阿刀田先生のかみ砕いたストーリーで『神曲』をイメージする。

    地獄篇でダンテは自分を貶めた人間を地獄に堕とした。おそらく原文を読んでも、誰のことかわからないであろうが、恐らく当時の人は、ピーンときたと思う。だから多くの人に読んでもらいたくてわざわざイタリア語で書いたのだろう。人間の精神は昔も今もそれほど変わっていない。

    「『神曲』は日本においても優れた古典として愛読されている。どれほど愛読されているか疑わしいところも少しあるけど、高く評価され、敬わ

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    2025年07月29日
  • ナポレオン狂

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    阿刀田高氏の短編集。単行本は1979年に刊行。

    後の阿刀田高作品に比べると、ブラックユーモアより奇想が目立ちます。車が人間に話しかける「甲虫の遁走曲」のような作品を始め、人間が烏になったり、魚が人間になったりという、現実か幻想かわからない話が多いですね。
    奇想が過ぎる作品「裏側」のオチはは、最早ギャグマンガ的でもあります。



    以下は簡単に各作品の感想を↓



    ナポレオン狂
    ナポレオンに関するものを熱狂的に収集する老人と、自分がナポレオンの生まれ変わりだと信じている初老の男と、2人のナポレオン狂の思い出を、フランス文学者が語る、という一編。
    奇妙な物語は、ラストの数行で恐ろしい物語へと変

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    2025年07月28日
  • アーサー王物語

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    「キーワードは知ってるけど内容はよく分かってないストーリー」
    「実話なのか神話なのかお伽話なのか結局よく分かってないストーリー」
    シリーズのうちの一つ。

    平たく教えてくれる(私の中で) 信頼と実績の阿刀田高氏による作品。
    児童書ではあるけど大人でも十分に読み応えがあります。
    ミニ百科が付いていたりして親切。

    でも、
    読後に解説を踏まえたうえで、アーサー王物語がなんたるかを捉えないと、うっかり誤解してしまう。まあ何の伝説でも同じかな。

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    2025年07月07日
  • ギリシア神話を知っていますか

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    「知っていますか」シリーズの一冊目。
    私にとっては、神曲、旧約聖書、新約聖書、をへて四冊目。
    最初に書いたものなので後に出たもののほうがキレとコシがあるけど十分面白いです。
    ギリシア神話をザッと知ることができましたが、これで分かった気になるには足らないかも。他にもう少し広く、でも読みやすいものがあれば手に取りたいなあ。
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    ギリシア神話そのものよりも、ちょっと気になったのは「パンドラの壺」の章で著者が抱いた連想。

    パンドラの壺の中には開け放ってはいけない、ありとあらゆる“悪”が。病気、悪意、戦争、嫉妬、災害、暴力など思いつく忌まわしいものが詰まっている。かろうじて壺の底に残ったのは

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    2025年07月05日
  • 夢判断

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    初阿刀田高。ちょっとブラックに寄ったショートショートが飽きない。最後がどう終わるんだろうというワクワク。

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    2025年04月22日
  • ホメロスを楽しむために

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    ホメロスが遺した叙事詩『イリアス』、『オデュッセイア』の概要、また古代ギリシア時代の背景知識を著者が解説する。本書によると、ホメロスの生涯に関してほとんどわかっておらず、歴史家のヘロドトスによると、彼は私生児で、父親ははっきりしないのに対して、母親はクレテイスという。二つの叙事詩は当時の人々にとって、単に娯楽であるのみならず、道徳教育、生き方を知るための規範とみなされた。ホメロスが題材としたトロイア戦争は、シュリーマンの発掘によって実際にあった戦争だと判明した。

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    2025年03月29日
  • 待っている男

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    阿刀田高氏の短編集。単行本は1984年に刊行。

    阿刀田作品らしいブラックユーモアは、それほど強烈ではありません。初出誌、初出時期は不明ですが、エロティックなシーンを描いた作品が多く、幻想味がある作品も目立ちます。
    阿刀田高作品集・エロスと幻想篇、という感じです。


    以下は簡単に各作品の感想を↓

    待っている男
    携帯電話も無い時代、待ち合わせ客が多くいる喫茶店で、読者を待ち合わせ客と設定して、同じく待ち合わせ客として相席になった中年男性から一人語りを聞かされるという叙述スタイルをとった一編。
    男性の過去が語られるこの叙述スタイルに、何かトリックがあるのか、と期待しましたが、そんなことはなく、

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    2025年03月19日
  • 影絵の町

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    奥付は平成元年初版。40年近く前の作品だ。「影絵の町」の12の連作のようなそうでないような短編集。全編を通して男女の機微を、著者お得意の幻影風景とともに描いた作品になっている。”父の顔”で、意中の女性から「へんてこな口実を作って、頑固に拒否」される場面があったが、自分も味わわされた過去を思い出して胸中ほろ苦い思いが広がった。「銀座スクランブル」は人々が交差するスクランブル交差点に擬して男女、親子などの人間模様を描く。しかし、12の短編の後半にいくに従い、著者らしさを感じさせない結末になっていて残念。

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    2025年02月12日
  • 新約聖書を知っていますか

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    キリスト教の信者ではないので
    有名どころのエピソードを
    知識的に考察するスタンスは
    とっつき易く読み易かった

    西洋美術を鑑賞するには
    キリスト教の知識があると無いとでは
    楽しめる深みも全然違うので
    こういうエッセイはありがたい

    和田誠 さんの表紙&挿絵も良い
    配色(黒朱紫)が絶妙〜!

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    2025年01月29日
  • ギリシア神話を知っていますか

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     夜空に輝く星座にはギリシャ神話の英雄や神々の物語が宿る。オリオン座の狩人やペルセウス座の冒険譚は人間の欲望や喜びを映し出し時代を超えて共感を呼ぶ。
     一方日本神話の古事記にはアマテラスオオミカミやスサノオノミコトなど八百万の神々の物語が綴られ、また自然と人との調和が語られる。
     異なる文化の神話だがどちらも作り話とせず人間の本質を見つめ直したり歴史として捉えることも大切だと思う。
     古典を読み解き現代に新たな息吹を与える試みは私たちの生き方に問いを投げかける話しと捉えたい。

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    2025年01月17日
  • ギリシア神話を知っていますか

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    Audible
    大昔に読んだ本がオーディオブックに!
    殆ど忘れていたが、覚えていた箇所もあり懐かしい。ギリシャ神話といえば裸。絵画のアンドロメダとかとにかく沢山あるがほぼ全裸。ペルセウスに至っては鎧姿もあるが兜とサンダルしか身につけていない絵も多い。ルネッサンス期の皆さんに古代ギリシャはどう思われていたんだ…古代ギリシャすごいナー
    本書が昭和の親父のエロトークのノリなのも頷ける。
    演劇、芸術、映画と話しがどんどん横道にそれながらもちゃんとギリシャ神話の解説になってるのはさすが。
    そしてギリシャ神話の西洋に与えた影響に驚く。
    シュリーマンの話しも良かったし、モリエール、ラシーヌの演劇やジャン・ジ

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    2025年01月09日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    ★★★ 読めてよかった

    小説家である著者が、旧約聖書を分かりやすく解説してくれる入門書。構成は聖書とは異なり、とっつきやすい話から展開されている。著者の軽妙な語り口も相俟って、非常に読みやすかった。

    なんというか、理不尽極まりない胸糞話が多かった。神はかなり人を選り好みし、気に入った人なら多少の無礼をはたらいても不問だが、気に入らない者はどれだけ神に尽くしても決して報われることがない。私は神の態度にうんざりしてしまった。しかし神を言葉の通じるキャラクターではなく、自然災害の類だと考えると多少納得のできる部分はあった。いつか海軍の方が『シュガークッキー』という話をしていた。訓練生は制服を『完

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    2024年11月20日
  • 奇妙におかしい話 どきどき編

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    一般の方々からの応募による作品集。

    いろんな年代の、いろんな場所にお住まいの方々から語られるエピソードはどのお話も興味深く、人の暮らしのユニークさにふれ、最後まで楽しく読みました。

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    2024年09月30日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    以前から、聖書の概要について知りたいと思い、入門書なるものを数冊手に取ってみたが、長続きせずあきらめかけていた。「シャガール展」にてこの本が売られており、この本ならもしかしたら、と思い読んでみた。平成3年に書かれたもので、表現など古めかしさは感じるものの、比較的読みやすく、今までで一番ためになったのではないかと思う。それにしても聖書は難解である。

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    2024年09月24日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    タイトルで「いいえ」と答えた人に買って欲しい旧約聖書の紹介本

    旧約聖書って難しいし、日本人には全く馴染みないから理解できないって思うかもしれませんが全くその通りです。作者の阿刀田高さんもそれを認めて仰られています。しかし話を聞く限り実は世界史の授業で習っていたり、あれこれってディズニーだったりおとぎ話なんかになかったっけ、そういえばシェイクスピアとか劇にも似たような話あるよなって気づくところが多い気がします。
    それもそのはずまさに原点といえばこれ、旧約聖書なんじゃないかって呼んでいて気がつくと思います。だからこそまさに「旧約聖書を知っていますか」とはあなたの身近にあることに気づいていますか?

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    2024年09月24日
  • 知的創造の作法

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    40年以上前にナポレオン狂を読んでから、ブラックユーモアや「知っていますか」シリーズなど、いくつか読んできたので、著者が大切にしてきたことなどがすんなりと入ってきた。
    ■臨界というのは決定的な情況よりまだほんの少し手前のような気がしてしまうのだ。臨海、臨月、臨床...臨界も限界に近づいているが化学反応にまだ余裕があるような気がしてならない。でも臨界はもう事故そのものなのである。
    →同感。これに限らず、名前と中身が一致していないものが時々ある。最近いくつかの本を読んで、それを感じた。
    ■ユーモアは笑いを生むことも多いが、それは副産物であり、本当の価値は日常の中でべつな見方をすること、そういう脳味

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    2024年05月20日