阿刀田高のレビュー一覧
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ネタバレコーランの内容とマホメットの生涯をかいつまんで全体を紹介した本。旧約聖書と重なるエピソードやその違いも検討されていて、とてもわかりやすかった。
コーランの内容を知りたいとかねて思っていたのだけど、なかなか退屈な読み物で通読は難しい。その点、阿刀田氏の概要把握力は的確と思われ、ありがたかった。
ちなみに、氏には親しいイスラム教徒の友人がいるというわけでもなく、あくまでもコーランとその他資料を読んで書かれたやさしいエッセイである。
小説家として氏は、コーランはもう少しエピソードを面白く語ることもできるのに、なんでそうしないかな……と訝しんでおられる。
ですよね。 -
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阿刀田高氏の第一作品集。1978年刊行。
ショートショート、というにはちょっとページ数が多いけど、ちゃんとオチがある構成はショートショートらしい短編集。
最初の作品集から、既に完成形、という感じです。
後の作品集との違いを敢えてあげれば、直接的なグロテスク描写がある、というところと、雰囲気がある作品がいくつかある、というところ、ですかね。
直接的なグロテスク描写がある、名編は、美食家が夢の中で食べるものがエスカレートしていく「わたし食べる人」。
雰囲気がある作品での名編は、鸚鵡の鳴き声で昔の悲しい恋を思い出す「歌を忘れない鸚鵡」。
阿刀田高作品らしい名編は、他にいくつも。
見知らぬ人の葬 -
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「源氏物語」は、平安時代の貴族社会における複雑な人間関係と恋愛を描いた傑作だ。光源氏は、経済力や男らしさだけでなく、相手への思いやりと誠実さが重要であることを示している。 当時の貴族社会では、娘を嫁がせることで家族の地位を高めることができたため、女性の役割が重要視されていた。一方で、光源氏自身も「一線を超えた不祥事」で皇室出自から平民に落とされ、再び貴族の地位を得るという曲折を経験している。
登場人物が多く、複雑な人間関係が描かれているのは、紫式部の卓越した筆致によるものだが、最後に登場する浮舟は、紫式部自身の姿を重ねて描かれているのかもしれない。
本文にある「女性にモテるための条件は経済力や -
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阿刀田さんの知ってますかシリーズ。何作か読んでいますが、どの作品もよく研究されていて大変参考になります。
源氏物語
平安中期 全54帖
主人公級 30人
和歌 795首
この和歌が凄いですね。男女別年齢別能力別全て考慮して、紫式部が創作しているのですから。
おおよそ3部構成とされています。
第一部 1から33
光源氏栄華への道
第二部 34から41
光源氏苦悩に満ちた晩年
第三部 42から54
宇治十帖
光源氏亡き後の世界
阿刀田さんは、主体となるストーリーを満遍なくおっています。そしてわかりにくい人間関係や血縁関係を繰り返しながら展開するので、源氏物語の -
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旧約聖書を大雑把に楽しくある程度理解できるお得な1冊。
「アイヤー、ヨッ」と叫んでほしいというのが冒頭の1文。これはアブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフの主要人物の頭文字。この4人をおさえれば、アブラハムの事蹟は理解しやすくなるといいます。
本書はアブラハムから書き起こし、有名な出エジプト記を経て、ソロモン王までをそこそこ詳しく描き、その後で神話的部分について触れています。要は比較的馴染みのあるアブラハムから入ることで旧約聖書に入りやすくする構成になっています。
韻文の多い預言書、すなわちイザヤ書、ダニエル書は駆け足で通り、ヨナの物語については少しだけ紹介するに留めているのも、旧約聖書の複雑さ -
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大ファンの阿刀田高先生の宗教教養エッセイ。
イスラム教、コーランについて。
キリスト教のエッセイと比べると、内容の薄さが気になる。日本人に理解し難いイスラム教であると同時に阿刀田先生の興味の方向もやはりヨーロッパが強いのだろう。
しかし、イスラム教の大枠を知る最初のエッセイとしては十分だ。阿刀田先生が実際に赴いたサウジアラビアの閉鎖感など、御本人の所感も読むことができるのも大きい。
現在2023年、17年も前の本なので状況も変わっているとは思うが、やはり男女区別の明確なイスラム社会と21世紀はどう共存すべきか。また見習うべき部分はどこなのか。我々にとってもものすごく勉強になる社会がそこに