阿刀田高のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
阿刀田高はやはりストーリーテリングが上手いと思わせてくれる一冊。自作解説&角田光代の鑑賞がついた短編小説作品集。人間のダークな部分を垣間見てしまった気になるなんとも言えない読後感は、湊かなえ作品のそれと似通っている。作品を読み終えて改めてタイトルをみると「あぁ、そういうことか!」という感嘆とともに、最初にタイトルをみた時のイメージとのギャップに唸らされる。作品それぞれに人間のえぐみと昭和を感じさせる雰囲気、美しい情景描写と鋭い人物描写のハーモニーが味わえる。一切の無駄な部分を見事に削ぎ落としながらも豊かに物語を語る阿刀田氏の筆の上手さに研ぎ澄まされた刃物の鋭さを感じた。
菊の香り
冷たい関係
無邪気な女
夜のアスパラガス
ちらし鮨
真夜中の料理人
赤い首
屋上風景
心の旅路
妖虫
西瓜流し
恐怖の研究
自作解説
鑑賞 角田光代 -
Posted by ブクログ
ネタバレコーランの内容とマホメットの生涯をかいつまんで全体を紹介した本。旧約聖書と重なるエピソードやその違いも検討されていて、とてもわかりやすかった。
コーランの内容を知りたいとかねて思っていたのだけど、なかなか退屈な読み物で通読は難しい。その点、阿刀田氏の概要把握力は的確と思われ、ありがたかった。
ちなみに、氏には親しいイスラム教徒の友人がいるというわけでもなく、あくまでもコーランとその他資料を読んで書かれたやさしいエッセイである。
小説家として氏は、コーランはもう少しエピソードを面白く語ることもできるのに、なんでそうしないかな……と訝しんでおられる。
ですよね。 -
Posted by ブクログ
阿刀田高氏の第一作品集。1978年刊行。
ショートショート、というにはちょっとページ数が多いけど、ちゃんとオチがある構成はショートショートらしい短編集。
最初の作品集から、既に完成形、という感じです。
後の作品集との違いを敢えてあげれば、直接的なグロテスク描写がある、というところと、雰囲気がある作品がいくつかある、というところ、ですかね。
直接的なグロテスク描写がある、名編は、美食家が夢の中で食べるものがエスカレートしていく「わたし食べる人」。
雰囲気がある作品での名編は、鸚鵡の鳴き声で昔の悲しい恋を思い出す「歌を忘れない鸚鵡」。
阿刀田高作品らしい名編は、他にいくつも。
見知らぬ人の葬式に出席するのが趣味という女を描いた「趣味を持つ女」と、未来を予知する電話がかかってきたサラリーマンの運命を描いた「幸福通信」は、特に素晴らしいオチでした。
↓以下は各作品の感想
冷蔵庫より愛をこめて
役所勤めを中途退職してまで始めた事業が失敗し、精神まで病んだ男が、休職中に不思議な男と出会うという物語。
事業失敗から精神病院に入院という過去が回想的に描かれるのがメインなので暗い気分にさせられます。
オチは、あるヒッチコック映画からヒントを得たと思われますが、自分には予測不可能だったこのオチで、作品がサイコスリラーに一変しました。
趣味を持つ女
趣味を持たなかった女に出来た新しい趣味は、見ず知らずの他人の葬式に出席することだったが、という物語。
趣味ではなくて香典泥棒なのでは?と読者に思わせてからの大きなオチへの展開が見事な一編。。
仮装パーティ
妻を昨年亡くしたサラリーマンの男が、死んだ妻に瓜二つの水商売の女と偶然知り合い、妻との思い出のある社内の年末仮装パーティにその女と出かけるという物語。
オチはそれほどの驚きは無かったですが、サラリーマンの悲哀を感じさせるものでした。
海藻
二日酔いで船に乗った男が、乗った船が第二次大戦時の浮遊魚雷にふれて大破し、投げ出された海で海藻に足をとられるという物語。
ブラックユーモア、というより、ひどく厭な結末を迎えます。
あやかしの樹
人間の死体と一緒に種を植えると、埋めた人間そっくりになるというオムの樹。そのオムの樹の種を高価で手にできた男が、死んだ妻の葬式で見かけた死んだ妻に似ていない美しい姪を元にオムの樹を育てようとする物語。
男が、姪を拉致するために尾行したり、姪を殺したりと、暗くインモラルな内容ですが、最後は阿刀田高作品らしいブラックユーモアで終わります。
幸福通信
所属する課の、人員削減への噂をうれいていた主人公のサラリーマンの家に、競馬や株相場の未来予言しているかのような電話がかかってくる、という物語。
意外性のあるオチは、ブラックユーモアというより、タイトル通りの深みがあり、尚かつトリッキーなものでした。
知らない旅
バイロケーション(分身)をテーマにした一編。
タイトルの意味が明確にされるのはラスト三行。キレ味があるオチではなく、雰囲気があるオチで、妻と昔愛した女との間で揺れ動く男の心を描いた内容にふさわしいものでした。
わたし食べる人
夢の中で食事をして満腹感を得て、現実には少食にして痩せる、という減量方法を、肥満体型を見かねて声をかけてきた心療内科医に勧められる男を描いた一編。
夢の中での美食を描いたシーンは、読むこちらも食欲を感じるほど。
男の美食への想像力が、やがては食べたことのない料理へと向かい、そこから話がグロテスクな展開になります。
オチは、かなりブラックですが、かなり上手いオチです。
夜の真珠貝
5年目の結婚記念日でデート中の夫婦。夫は妻に真珠の指輪を贈り、馴染みのバーに立ち寄ると、不思議な男性客から、人間も女性器で真珠が作られることもある、という話をされる物語。
物語は意外な展開になりますが、オチはちょっと腑に落ちない感じ。
エネルギーの法則
休日にふと思い立って山登りをした男が、帰り道に不思議な男に車に乗せてもらって、男が発明した「牧場」に寄り道する物語。
ホラー映画の、田舎に行ったら怖かったパターンによく似た一編。
エネルギーの循環についての会話が、ちょっと小難しいですね。
オチは期待通りではありますが、言い換えれば意外性がありません。
歌を忘れない鸚鵡
二年前に愛した女が飼っていた鸚鵡をたまたま手にした男が、その女の言葉で鳴く鸚鵡の鳴き声で、二年前を回想する、というロマンティックな一編。
ブラックになりきれない切ないオチが素敵です。
真実は強し
殺人容疑をかけられた娘のアリバイを証言しようと苦心する母親を描いた一編。
アリバイトリックをメインにした作品は、阿刀田作品では珍しいのではないでしょうか。
ブラックな要素も少なめなミステリー作品。
ギャンブル狂夫人
結婚一年を記念して妻と旅行中の男が、結婚30年の夫婦と出会い、ギャンブル狂の夫人と、夫人が8種類のタバコの銘柄を全部当てたら夫人が30万円の勝ち、1本でも外れたら男が30万円の勝ち、という賭けをする、という物語。
クライマックスのヒリヒリするような銘柄当てシーンに続くラストは、以外にもブラックな要素が少ないユーモアがありました。
心の旅路
横浜の港町を歩いていた男が、ふと過去に同じ横浜の港町で起きた出来事を思い出す、という物語。
ブラックな結末ですが、全体的にはハードボイルドな雰囲気がある一編。
幽霊面会術
舞台は、紀元前15世紀の地中海クレタ王国。
妃が死んで哀しんでいる王子を心配した王女から、死んだ妃を王子の眼前に現わす手だてを見出せ、と命を受けた老博士の苦悩をコミカルに描いた一編。
ブラックではあるものの、そこも含めて全体的に昔話のような出来。
ホーム・スイート・ホーム
主人公はサラリーマン。ある日会社に、昔付き合っていた女が病死したと、女の幼なじみと称する女から連絡があり、死んだ女から大切な伝言があったと、招待されたマンションの一室を訪ねる、という物語。
感傷的なプロローグから、訪ねたマンションにいた老女の賑やかさへの落差、そこからブラックな落ちへの落差、と見事な展開を見せてくれます。
最後の配達人
タイトルは、人生の最後を迎える人に、あなたは死にますよ、という合図を配達する人の意味。
同じ店からタクシーに乗り合った2人の男の、どちらが配達人なのか、最後の最後までわからないままラストまで興味を持たされます。
恐怖の研究―あるいはエピローグ風の小品―
恐怖小説の傑作集を出版する企画を命じられた編集者が、恐怖小説に詳しい先輩の語学講師に話を伺うという体裁で、阿刀田高氏推薦の恐怖小説を紹介するエピローグ風な一編。
作中で紹介される作品は、W・W・ジェイコブズ「猿の手」、岡本綺堂「木曽の旅人」、エドガー・アラン・ポオ「長方形の箱」。
一応、意外な結末は用意されていますが、オマケ的な感じ。 -
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「源氏物語」は、平安時代の貴族社会における複雑な人間関係と恋愛を描いた傑作だ。光源氏は、経済力や男らしさだけでなく、相手への思いやりと誠実さが重要であることを示している。 当時の貴族社会では、娘を嫁がせることで家族の地位を高めることができたため、女性の役割が重要視されていた。一方で、光源氏自身も「一線を超えた不祥事」で皇室出自から平民に落とされ、再び貴族の地位を得るという曲折を経験している。
登場人物が多く、複雑な人間関係が描かれているのは、紫式部の卓越した筆致によるものだが、最後に登場する浮舟は、紫式部自身の姿を重ねて描かれているのかもしれない。
本文にある「女性にモテるための条件は経済力や男っぷりも大切だが、何よりも推しが強いこと、まめであること」とある。 -
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阿刀田さんの知ってますかシリーズ。何作か読んでいますが、どの作品もよく研究されていて大変参考になります。
源氏物語
平安中期 全54帖
主人公級 30人
和歌 795首
この和歌が凄いですね。男女別年齢別能力別全て考慮して、紫式部が創作しているのですから。
おおよそ3部構成とされています。
第一部 1から33
光源氏栄華への道
第二部 34から41
光源氏苦悩に満ちた晩年
第三部 42から54
宇治十帖
光源氏亡き後の世界
阿刀田さんは、主体となるストーリーを満遍なくおっています。そしてわかりにくい人間関係や血縁関係を繰り返しながら展開するので、源氏物語の解説書としてとてもわかりやすいと思います。
ストーリーを主としているので、小説を彩る部分、各祭事とか絵合わせの情景などは、思い切って省略されています。ですから、小説として楽しむには物足りないかもしれません。
ユニークでアイロニックな感じで、時に男性陣を語ります。夕霧(光源氏の息子)とか薫(光源氏の子とされている柏木の子)は、真面目ちゃんとして厳し目かなと思います。
〈オンデマンド講座覚書〉
源氏物語「生と死」
平安時代 もののけが憑依して病気になると思われていた。調伏するためには、験者が加持祈祷を行い、病人からもののけを取り出して、よりましと呼ばれる人間に憑依させる。そこで、名前を名乗らせて(名告り)調伏となる。
源氏物語ではよりましを使わない。
死への順路
招魂
もがり 遺体の安置
入棺
出棺 清水寺南方 冥土の入り口 葬送地
野辺送り 鳥辺野
普通は母親はついていかない