阿刀田高のレビュー一覧
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解説の名人、阿刀田高によってホメロスの叙事詩の世界が見事に案内される。12の章に分かれていて前半6話がイリアス、後半がオデュッセイアの構成。ちなみに元の叙事詩はイリアスもオデュッセイアもそれぞれ24の詩歌で構成されている。
何千年も前のギリシアの、それも文字で書かれる以前に詩歌として歌われたものを、文化も言葉も違う現代の日本人が文字面を追って、そう楽しめるものではないだろう。そこを十分に押さえて端折るべきところはバッサリ端折り、必要なところは背景事情を丁寧に解説する。実際に現地を訪れた旅行記も織り込まれ、彼の地の風土や食べ物、空気感も伝えてくれる親切設計である。映画を見る前にサワリだけでも、という方も、この機会にぜひ阿刀田解説の魅力に触れてみてほしい。 -
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ネタバレ以前から、江戸川乱歩やシャーロックホームズのミステリー小説に興味があった。そのため、まずは、ミステリーの本質を知りたいと思い、手に取った。
ミステリーでは、今までにないトリックを考えるのは難しいのかなと漠然と考えていた。しかし、この本を読んでから、ミステリー小説を描くにあたり、十条の戒めや、構造など、102条のおきてというものが存在することを知り、驚いた。ミステリー作家は、全ての条件を平均以上の巧みさでクリアして、しかもひとつかふたつ傑出したアイデアを示していることに感銘を受けた。
私はミステリーの中でも、イヤミスが好きだ。湊かなえさんの『告白』を読んだことをきっかけに、それぞれの視点で物語の真相が解明されていくイヤミスが好きになった。 -
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阿刀田高、黒川博行、佐藤正午、西村京太郎、馳星周、星新一、夢枕獏『一か八か ギャンブル傑作コレクション』角川文庫。
ギャンブル小説のアンソロジー。7編の短編を収録。西村京太郎、星新一のギャンブル小説はかなり珍しいのではないか。
自分はギャンブルは余りやらない。遥か昔、20代から40代の頃はパチンコをやっていたが、主に羽物という極めてギャンブル性の低い機種であった。羽物だと打止め台の開放を狙えば、少額ながらほぼ勝てた。
7編の短編のいずれも、麻雀、競輪、競馬、カジノ、賭け将棋とバレエティに富んだギャンブルをテーマにしており、いずれの作家も勝つか負けるかの真剣勝負のジリジリした感じを見事に表現しているのが面白い。
阿刀田高『ギャンブル狂夫人』。阿刀田高は久し振りに読んだ。最後に阿刀田高らしいオチが待ち構える短編であった。結婚1年目の夫婦が記念に奈良と京都に旅行する。旅先で見掛けた中年の夫婦は2人が行く先々に現れ、少しずつ挨拶を交わすようになる。結婚1年目の夫がホテルのバーで1人飲んでいるとそこに件の中年夫婦の夫人が現れる。夫人はタバコを吸っただけで銘柄を当てられると言い、30万円を賭けて勝負することになる。
黒川博行『東風吹かば』。昔、黒川博行はかなり読んでいたように思う。最後に読んだのは『後妻業』だったろうか。実を言えば、自分は関西弁の台詞が苦手で、次第に読まなくなったのだ。さて本作。バリバリの麻雀小説である。負けが混み、手持ちの資金も底を尽き、次第に焦る博打打ちの心情を上手く描いている。作家の黒田ヒロユキが編集者からの依頼で若手女性作家の花沢唯と麻雀を打つことになった。
佐藤正午『きみは誤解している』。佐藤正午の作品は余り読んだことがない。知らず知らずにギャンブルにのめり込んでいく浅はかな男の姿が残酷に描かれる。結婚を間近に控えたJR職員の男と車内販売員の女。男は父親の形見とも言うべき500円の当たり車券を元手に競輪で一点買いを続け、元手を200万円までに増やしていた。女はギャンブルにのめり込む男を諌めるが、男は言う事を聞かない。男は結婚とその後の幸せな人生を選ぶのかギャンブラーへの道を選ぶのか。
西村京太郎『三十億円の期待』。西村京太郎と言えば鉄道トラベルミステリーのイメージが強いが、ギャンブル小説も書いていたとは全く知らなかった。しかも、本作はディック・フランシスの競馬ミステリーのような味わいの短編だったことに驚いた。鉄道トラベルミステリーの傍らで、手慰みに書いた短編ではなく、レベルが高く、非常に面白かった。中央競馬会の職員である望月という男が本命馬に騎乗した佐々木騎手が落馬し、次のレースでも落馬、さらに次のレースでは手綱を引き、棒立ちになるというあり得ない失態を犯した原因を探るのだ。
馳星周『笑窪』。既読であった。『古惑仔』の中に収録されていた1編。まさに馳星周と言っても良いほどの馳星周らしいピカレスク小説。あらためてこういう類いの小説を読むと、最近は大人しい小説ばかり書いているような気がする。酒と博打と女に目が無い腕利きの板前が地下カジノでマレーシア人ディーラーの女にのめり込む。
星新一『四で割って』。星新一も物凄く久し振りに読んだ。ショートショートではなく賭け事をテーマにしたユーモラスな短編である。賭け事が好きな四人組が公営ギャンブル以外の様々な賭け事をする。やがて四人は賭博容疑で警察に捕まり、裁判に掛けられるが、ありとあらゆることを賭け事の対象にする。
夢枕獏『銀狐』。こちらも既読であった。真剣師の加倉文吉を主人公にした短編。『夢果つる街』に収録されていた1編。祭りで賑わう街の一角で金を賭けての詰将棋を商売をする木崎という男と加倉文吉が出会う。木崎の作った詰将棋を次々と詰んでみせる加倉に木崎は賭け金を釣り上げていく。
本体価格960円
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学生時代、たまに興味を持った人の歴史小説を読む程度だった私に本の面白さを教えてくれた阿刀田さんの本を本棚から引っ張り出して数十年ぶりに読み返している。
本当に面白いし、子供のころは科学少年だったという阿刀田さん特有の考証が作品の魅力を高めているのだと思う。ホメロスのイリアス、オデュッセイア、ヴェルギリウスのアエネイスの三つの叙事詩を、現実的な規模に合わせて書き換えたと仰っているが、規模を小さくしたと言ってもそれを感じさせないハラハラ感がすごい。
アイネイアスの子ユールスから何百年後のローマ帝国だって、最初の建国されたばかりのとき、塩野七生さんの本を読んで図を見たとき、そのあまりの狭さに驚いた。そんなものなのだと思う。
ところどころ阿刀田さんが実際に現地へ行って見たときのことなどを挟んでくれるので、すごく身近に感じることができる。
こんな昔の小さい国が肩寄せ合って存在していた頃から、国王の子孫や姻戚関係しだいで平和になったりバランスを崩して戦争したりして来た。内部で兄弟喧嘩が起きたり、王の複数いる奥さんの誰かが自分の血を受け継ぐ子を後継者にしたいと画策したりして内紛が起きてきた。
現代のように国家の規模が大きくなって、政治体制や社会システムが発達してきても、国家間の紛争を仲裁する国際的な組織ができても、戦争が繰り返されることに変わりがないのが残念。ギリシア、ローマの歴史の中に多くの失敗事例があるのに、人はなかなか学ばない。イスラエル、アメリカ、ロシアなどを見ているとそう思う。人間に知恵と火を与えてしまったことをゼウスは後悔しているだろう。
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壮大。紀元前4世紀。小国マケドニアの王子アレクサンドロス。アリストテレスに教育を受ける。王になり学友たちと出兵しペルシア帝国を打ち破り、さらにインダス川まで東征。私利私欲や怨みつらみでなく、世界平和のためというわけででもなく、「その先はどうなっているのだろう?」という好奇心だけで進んだ感じ。戦争には負けたことがない。自分を神だと考える。死なない。人格が並外れている。でも妙に人間臭いお母さんから生まれている。最終的には部下の抵抗にあって(神託という形にして)引き返すが、惹きつける魅力がすごい。32歳で病死。スピードが凄すぎる。自分の命をあまり大事に思ってないし、後継者を決めておかなければ争いが起きることにも無関心だったように思える。「偉大な冒険家」という感じか。人格をともなった実力者が為政者として実権を握り、方針を決め、優秀な部下が運営する体制が続けば平和で成長の早い国ができるのだろう。