阿刀田高のレビュー一覧

  • 小説作法の奥義(新潮文庫)

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    氏の創作の裏側を紹介したエッセイは、この本に限らず過去にもあって自分も読んできた。
    自分が読んだ作品の答え合わせや突合になっていて興味深かったし、なにより氏が紹介する古今東西の小説は
    自分が知らない、自分では手を出さなかったであろうジャンルや時代の作品ばかりで、自分の読書体験に拡がりを与えてくれた。
    この本も、小説を著す作法というより小説を楽しむ通り道の紹介という捉え方の方が良いと思う。

    折につけ登場する著者の友人氏は(モデルになる人物はいるだろうけれど)著者の知人や家族、著者本人の意見を投影した人物ではないか。
    その友人氏との会話を通じて、著者が思う自著の代表短編が挙げられていて、それも個人的に興味深かったり。
    自分は楽しめました。

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    2026年10月08日
  • 箱の中

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    マリー・ローランサンの絵が部屋に飾ってあって、不気味な大きな箱が出てくる話……なんだっけ? 結末はどうなるんだっけ?

    ブロンテ姉妹に関する本の感想を読んでいて、ふと昔読んだ小説を思い出した。多分、阿刀田 高の『箱の中 』だなと思い出して、Audibleで見つけて聴いてみた。

    女優である元妻のもとを訪ねる元夫。二人の息子が、ある問題を起こしたのだ。

    瀟洒なマンションのリビングには、マリー・ローランサンの版画「ブロンテ姉妹の栄光」。テーブルには睡眠薬、浴室からは水が流れ続ける音。そして、その家には不似合いな電動ノコギリ。さらに部屋の奥には、大きな箱が置かれている。

    箱の中には、いったい何が入っているのか?
    元夫の想像は、どんどん悪い方向へと膨らんでいく。途中まではホラー作品のような不穏さが漂いますが、最後に行き着くのは、人間の心理そのものの怖さ。

    みなさんの感想を読んでいると、そこから昔読んだ本をふと思い出して、思いがけない方向へ読書が進んでいくことがあります。

    読みたい本を探すだけではなく、忘れていた一冊と再会できる。そんな読書の寄り道もまた楽しいですね。

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    2026年10月07日
  • 一か八か ギャンブル傑作コレクション

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    苦悶の表情を浮かべる男の表紙に惹かれて手に取った短編集。内容もまさにその表情のように、ギャンブルにのめり込み崩れていく主人公や、ミステリー、ユーモラスな物語まで多彩。何気なく手に取った一冊でしたが、思いのほか手に汗握る作品でした。

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    2026年09月30日
  • 本からはじまる物語

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    短編で不思議な話や心温まる作品などたくさん入っていて楽しいアンソロジーでした。
    作品の色が出ていて読んでいて楽しかったです

    飛び出す、絵本 恩田陸
    十一月の約束 本多 孝好
    招き猫異譚 今江祥智
    白ヒゲの紳土 二階堂黎人
    本屋の魔法使い 阿刀田高
    サラマンダー いしいしんじ
    本棚の片隅から 柴崎友香
    読書家ロップ 朱川 湊人
    バックヤード 篠田 節子
    閣魔堂の虹 山本 一カ
    気が向いたらおいでね 大道珠貴
    さよならのかわりに 市川 拓司
    メッセージ 山崎 洋子
    迷宮書房 有栖川有栖
    本棚にならぶ 梨木香歩
    23時のブックストア 石田衣良
    生きてきた証に 内海隆一郎
    The Book Day 三崎亜記

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    2026年09月29日
  • ホメロスを楽しむために

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    オデュッセイアの映画を観る前の予習として手にした。

    平易な文章と解説、ちょっとした突っ込みがあり、一気に読めた。
    ギリシア神話のちょっとした知識も身につくし、入門編としてはおすすめ。

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    2026年09月20日
  • 90歳、男のひとり暮らし(新潮選書)

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    老人にはキョウヨウが大切。生活リズムが生じる。張り合いが出る。今日、用はあるか?…奥歯が痛む。診断を受ける。狭心症。手術をする。無事でいられる。痛みよ、ありがとう。…人生を振り返る。チャンスを活かした。決心した。運に恵まれた。もし、作家にならなければどうしてだろう。…亡き人を恋う。あの日、あの時、交わしたあの会話。もっと親しく接していればよかった。会いたいなぁ、あの人に。…希望として、謀みとして、叡知として、後は無となれ、墓はなし。…一人暮らし。90歳。文筆を続ける。重いものを軽やかに。なんとかやってる。

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    2026年09月15日
  • 闇彦

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    直感で選んで貸りてみました。結果大成功!!面白かった!!
    「闇彦」って何?じわじわと謎が解けるような解けないような。絶妙に掴みどころのない感覚。最後の着地が綺麗でとても好きでした。

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    2026年09月08日
  • 旧約聖書を知っていますか

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     中坊でも読めるぐらい平易に、エログロナンセンス抜きで書かれている。著者自身も述べているようにほんの入門書のようなものなのだろう、おかげでスラスラと読めた。内容としても少なくとも旧約聖書の全体像はほんのり掴めたように思える。
     しかしバチ当たりなことを言えば、読めば読むほど信ずる甲斐のない神である。こういった物言いに対する予防線も張られていたが、あくまで予防線ということが見え透いていて、これが世界最大宗教の源泉?という疑問符が頭に尽きなかった。先述の通り一端に触れた程度なので断言は出来ないが、現代的な価値観に照らし合わせれば寧ろ悪魔と言われた方がよっぽど納得がいくかもしれない。
     ともあれこのような娯楽と情報インフラに溢れた時代に生まれたことは神に感謝すべきであろう。

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    2026年09月01日
  • コーランを知っていますか

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    イスラム教がよくわかる優れた教養書。コーランに書かれた教義、聖典として語り継がれてきた歴史、そして世界第2位の信者数に驚嘆するばかり。

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    2026年08月18日
  • 新約聖書を知っていますか

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    信仰を持つ遠藤周作と信仰を持たない阿刀田高の両氏のキリスト教観を見てきた。これで聖書について理解できた、というつもりは全くないが、阿刀田氏の飽きのこない語り口でわかった気になるのも有意義かもしれない。

    聖書自体を学びたいというよりも、世の中の作品の中の聖書のオマージュに気づくために一般教養として押さえておきたいというのがある。〈マタイの黙示録〉は意味不明だった。

    とにかく解釈次第。

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    2026年08月17日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    幼稚園時代「アブラハムには7人の子 1人はのっぽであとはチビ 皆仲良く暮らしてる さあ踊りましょう」という曲でよく踊っていた記憶があるので、アブラハムは聴き馴染みがあった。伝承通りだったんだな。

    神を一心に崇め奉る行為に馴染みが無いわけであるが、よくもまあそんなに崇められるよな。創造主を想定して縋りたい程あちらの環境が過酷だったのはあったんだろう。生きる事自体奇跡だったんだろう。

    そういえば、日本にも神はいたな。お客様とか、上司とか、会社とか。邪神だったけど。

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    2026年08月09日
  • 90歳、男のひとり暮らし(新潮選書)

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    奥様が施設に入られ、90歳でひとり暮らしを続ける阿刀田高氏の日常を綴ったエッセイ。老いや身体の衰えを嘆くのではなく、読書や落語、料理など日々の暮らしを楽しみながら、知恵とユーモアを忘れずに過ごす姿が印象的だった。90歳になっても教養を大切にし、自分らしく凛と生きる姿勢に憧れを感じる。「死は無であり、墓がなくても気にならない」という達観した死生観にも共感した。老いを悲観するのではなく、ありのままを受け入れながら穏やかに生きることの大切さを教えてくれる一冊だった。

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    2026年07月29日
  • 掌より愛をこめて―阿刀田高さいごの小説集―

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    短編の名手、阿刀田高が送る最後のショートショート。往年のキレは潜めているがブラックユーモア、言葉遊び、ビターなラストからは阿刀田高らしさが感じられる。いつも途中で覚める夢、その先へ進めた日を描く「窓」が特に良かった。

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    2026年07月23日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    学生街の古本屋ではこんな面白い本が100円で手に入る。
    聖書って神話的に捉えていたけど歴史書的でもある事に気づかされた。
    旧約聖書ならではの理不尽で気まぐれ(に我々愚かな人間からは感じてしまう)な神様のエピソードも満載。
    阿刀田さんのユーモアに時代を感じる部分は多々あれど、旧約聖書の入門書としてはとても面白く読めた。

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    2026年06月24日
  • 90歳、男のひとり暮らし(新潮選書)

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    阿刀田高の著書。
    昔から彼の著作に接することがあったが、その彼が
    90歳になり、今なお創作活動をしていることに驚きを感じる。ユーモアのある文体で淡々と進めて
    いくところは全く変わらず、まさに老境のエッセイである。

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    2026年06月20日
  • 恋する「小倉百人一首」

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    ネタバレ

    著者の日本語に対する造形の深さ、ひいては作家へと導いた小倉百人一首。実家にも化粧箱に入ったカルタがあったが、カルタ遊びを一度もやったことがない。さて本書である。12のテーマ別に、するっと百首を解説されているのは流石! 私の好きな古典落語「千早振る」から書き起こされているのも嬉しい。千年前の言葉が、現代の人にも通じることに、改めて感心、感動した。もっとも著者の解説がなければ、逆の意味に解釈してしまう歌があったりして……古典の世界は奥深い。

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    2026年06月09日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    阿刀田高の古典解説エッセイシリーズ。入門としてやはり相当に入りやすいですよね。旧約聖書に登場する主要な人物やエピソードについてざっとおさえることができます。なんとなく知っていたことがかなり整理されましたし、何より重要なところが印象に残るような書き方が工夫されているんですよね。
    「まずはアイヤー、ヨッと叫んでほしい」で始まったときはまた随分適当なこと言いはじめたなと思ったけど読み終わった今はアブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフの4代について(先の掛け声はこの四者の頭文字)はもう忘れないだろうなというぐらいに印象に残っててすごいなと。

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    2026年05月22日
  • 旧約聖書を知っていますか

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    星3.75
    ずっと気になっていた本。

    教養として旧約聖書の内容を知っておきたいが、原著やそれに近いようなものは中々手が出ない。
    この本は、作者自身も「旧約聖書に基づくエッセイ」と言っている通り、非常にざっくばらんで読みやすい。
    社会の先生が、難しい歴史のことを身近な言葉で面白おかしく話してくれているような感じを受けた。

    よく名前を聞くような「アブラハム」「モーセ」「ダビデ」などの元ネタを知るくらいだったらこれで良いと思う。

    この流れで「新約聖書を知っていますか」「コーランを知っていますか」まで読み進めたい

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    2026年05月07日
  • 90歳、男のひとり暮らし(新潮選書)

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    ネタバレ

    メディアでかなり取り上げられていた、高橋源一郎のラジオ番組にもゲストとして呼ばれていた。「老い」の本を読むのはきらいじゃない、だれでも感覚として理解できるのは今の自分だけなので先にいってしまうであろう方たちの心情を知りたいと思う。やはり勢いはないが滋味が感じられる、枯れた味わいというものだろう。
    感銘を受けたところはたくさんあるが、特に「私の好きなもの」の章で終わるのが好きと言っていること。結果はどうあれ終わったことが安らかでうれしいと。❝終わること❞を好きと言ってよいのですね。もうひとつ読書に関して、阿刀田さんでも『百年の孤独』を放り投げてしまったとある。もちろん私もわっからんと思ってやめる本は多々あるがおもしろいだけの本でも読むと楽しいと当たり前のことをシンプルに肯定しているのがうれしい。知力を高める読書とおもしろい読書を分けて考えよということだ、心強い限りだ。最後にユーモアについて、名言だと思うので引用させていただく。
    (p111)日常において、普通とは違う知的なアイデアが浮かぶということ、これが尊い。社会生活において、ほとんどの場合、予測されることがその通りに流れていくのに対し、この奇妙な、ささやかな抵抗が快い清涼剤になったりして、私はここにユーモアが注目され褒められる淵源がある、と考えるのだ。ささやかな、べつの見方、これが大切なのだ。そしてユーモアを持つ人が好まれ、褒め言葉になるのはこれが思いのほか役立つときがあるからだ。(引用終わり)

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    2026年05月05日
  • ローマとギリシャの英雄たち 〈栄華篇〉―プルタークの物語―

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    ★★★★ 何度も読みたい

    アレクサンドロスやカエサルなど、アテネが没落しローマが台頭し始めたあたりの年代の人々の紹介。前篇とは異なり、神話の要素がほとんどなくなったので読みやすかった。

    アレクサンドロスの人心掌握術や強引さをカリスマで覆い隠す巧みさが新鮮だった。もっと武骨な人かと思っていた。また、カエサルと敵対していたカトーの、規律を重んじる真面目さは塩野七生氏の『ローマ人の物語』だとなかなか印象に残りづらい部分だったので、友人キケロを規律のために糾弾し、対立してしまうエピロードなど、意外な一面を見たような気がした。(もっとも、彼女はカエサルを描く過程でカトーに触れており、カトーを中心としたエピソードを書く必要性は全く無かったのだが)
    しかしカエサルやオクタウィアヌスの描写はもっと多くても良かったと思う。公平性は欠くかもしれないが…

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    2026年04月25日