あらすじ
全身黒ずくめの男に、手相を譲ってほしいと言われた学生が、先生に相談を……「掌の哲学」。一人息子が結婚して家を出た。独りで迎えたお正月、母の身に……「母は愛す」。兄と似ていないことを気に病む弟。家族で温泉に行き……「兄弟姉妹」。正義感の強い伯母が、列に割り込む男に注意した。薄く笑った男は……「年の瀬」。短編の名手が放つ、洗練されたブラックな仕掛けと艶かしい男女の謎でさまざまな人間模様を描写する。日常に潜む不可思議な世界を描く11編。
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Posted by ブクログ
じわっとした嫌な気持ちも、なんとなくの爽快感もあった。良く書けた本だ、と思う。
文体も少し古いというか、丁寧な感じが、この本の面白さをまた、創り出している気がしました。
Posted by ブクログ
この読後感はなんとも形容しがたく、なんだかそわそわして落ち着かない。
物語に置いていかれるような感覚と謎めいた雰囲気がクセになる。
これがブラックユーモアか。
決して愉快な内容ではない。
だけど笑えてしまう不思議。
特に「選抜テスト」と「母は愛す」なんてもう、笑うしかない。
Posted by ブクログ
初めての阿刀田高さんの短篇集。
本書は完全に大人向けの作品集だと思いました。
どれだけこの人の作品を楽しめるのか、試されているような。
「赤道奇談」ではサマセット・モームの名前が幾度となく、それでいて非常にさりげなく出てくるのですが、その「雨」を知っているのといないのとでは解釈がかなり違ってくると感じたし、他の作品ではラストにはっとするものや、なんとなくもやもやするもの、あとからじわじわくるものなど、どれも非常に読みやすく入り込みやすいのに、果てしない奥深さがありました。
原田マハさんのあとがきによると、読者に気づかれないほどさりげなく、研ぎ澄まされた文学的見識とセンスが散りばめられているらしいのです。
自分でも読み込めているのか怪しいけれど、それでもこの、日常に潜むちょっと不可思議な世界を楽しめました。