阿刀田高のレビュー一覧
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数日前、テレビで阿刀田高さんの生活を放送していた。奥さんが施設に入られたのを機に90歳近くになってひとり暮らしになったのだが、ゆっくりとだが自分で食事の用意をされていた。
編集部から高齢者になにかアドバイスを、と言われても、「無理だなあ、人それぞれだし」というほど、淡々としている。
「死は無である」というのもモットーで、墓などにも何の思い入れもない。
しかし、さすが、教養ある著者の日常は違う。
眠れない夜、源氏物語全五十四帖を順に思い浮かべる。後日、漢字で全部書いてみる。
別の日には百人一首を天智天皇から全部思い出す。
そのあとはいろはカルタを全部。
言葉遣いや知識もさすが。
そんな著者が、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を途中でほっぽり出したそう。
「読書は面白いのが一番」。ほとんど勉強みたいに読む必要はない、とのこと。
安心した。 -
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作品紹介・あらすじ
1話5分でわくわくできる、本にまつわる18のストーリー。
森を飛びかう絵本をつかまえる狩人、ほしい本をすぐにそろえてくれる不思議な本屋、祖父がゆっくり本を読む理由、書店のバックヤードに隠された秘密……。
青春、恋愛、時代小説から、ミステリにファンタジーまで、「本」と「本屋」をテーマに豪華執筆陣18名が集結! 本の世界の奥深さが短いお話の中にたっぷり詰まっています。1話5分でわくわくできてどこから読んでも面白い、本にまつわるショートショート・アンソロジー。
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本にまつわるショートショート18編を集めた短編集。
僕は梨木果歩さんの作品目当てで購入。
ホロリとさせるものから、ミステリーっぽいもの、恋愛ものまでジャンルは様々で、似たようなアイディアの作品もある。
どれも短い作品なので、ちょっと食い足りなさを感じるのだけれど、逆に短いからこそ重くならずにすっと入ってくる心地良さがあって、全体的に好感が持てた。
肝心の梨木果歩さんの作品だけれど、これがホラー。ラストが明記されていないだけに、余計に怖さが残る。 -
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ネタバレ「影酒場」「触媒人間」「貧乏ゆすり」「天和の代償」
「社長室のゴルフ」「マイ・バレンタイン・デー」
「凧」「破られた約束」「地震恐怖症」「遠い夜」
「真夜中のインベーダ」「不運なシャツ」
「ネズミ酒」「一年生のために」「あやしい鏡」
「未完成交情曲」「眼美人」「新築祝い」
「幽霊をつかまえろ」「夏の夜ばなし」
「美しいお妃様の冒険」「風邪とサラリーマン」
「善意」「とてもいい気持ち」「海の眼」
「目黒のサンマ」「形見」「家族の風景」
「レンズの中の男」「無料コーヒー」「ころし文句」「蜜柑」「こわい話」「鬼はうち」「蚕食」
「猫の事件」 -
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ネタバレ度々繰り返して申し訳ないのですが、旧約聖書を読破したので、まつわる解説書等を読み理解を深めようと考えています。
手元の本の再読が基本路線ですが、どこぞで本作の評判を聞き、購入に至りました。
・・・
で、読んでみました。
率直な感想は、確かに、よい。
本作は、つい先日再読した『イラストで読む旧約聖書の物語と絵画』でも参考図書として挙げられておりましたが、ユーモラスなテイストや我々「異教徒」からみた不可思議さなどが自然体で語られているところに好感が持てます。
きっと上記の作者杉全さんもかなり参考にされたのではと察します。
阿刀田氏の筆致は、エッセイの軽さを失わないのに、その理解の深さ・語りの深さは上記作品と比較すると数ノッチ上に感じました。
なんというか、自分なりに消化吸収を行った方の言葉の重み、というのがにじみ出ていると感じた次第です。あるいは、これが読書家・古典を渉猟した方の含蓄といえるかもしれません。
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といことで、旧約にまつわるエッセイ・旧約入門書でした。
氏はできれば原典を、と勧めていらっしゃいます。が、そんなのは普通は読まないから、せめてと犬養道子氏『旧約聖書物語』を次善の策としてお勧めされていました。
その本は未読ですが、それでもなかなか大儀らしい。
こうして本作読んで、確かに気軽に、でも内容は損なわずに短時間で読めるという観点ではこの本は旧約入門にはなかなか良いと思います。とりわけ活字好きの人にはおすすめ出来るかと思います。所々ショーワな記述が散見されるのはご愛敬です。
氏は他にも『〇〇を知っていますか』の古典入門的なシリーズをお持ちです(ギリシア神話、新約聖書など)。これらも原典を読破した後に読んでみたく思います。 -
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ダンテの『神曲』は文庫本で地獄篇、煉獄篇、天国篇の3冊にわたる大著。容易くは読めないので、手っ取り早く読もうと本書を手に取る。
さすが文章の達人、阿刀田先生のかみ砕いたストーリーで『神曲』をイメージする。
地獄篇でダンテは自分を貶めた人間を地獄に堕とした。おそらく原文を読んでも、誰のことかわからないであろうが、恐らく当時の人は、ピーンときたと思う。だから多くの人に読んでもらいたくてわざわざイタリア語で書いたのだろう。人間の精神は昔も今もそれほど変わっていない。
「『神曲』は日本においても優れた古典として愛読されている。どれほど愛読されているか疑わしいところも少しあるけど、高く評価され、敬われていることは確かである。
だが、あらためて熟読玩味してみると、これはキリスト教について相当な知識がないと、ほとんど理解を絶する古典である。」
ということらしい。
日本人で『神曲』を全部読んだ人は一体どのくらいいるのだろう。少なくとも僕はまだ読んでいない。今から700年以上も前に書かれた本が、お手軽な値段で手に入れることができる幸せをかみしめたい。冒頭のダンテが暗く荒涼とした森の中に迷い込んだとこから始まる記述、ダンテがどんな思いでこの本を書いたのかを感じてみたい。もしかしたら、僕も今、暗く荒涼とした森の中に迷い込んでいるかもしれない、そんな気持ちになりながら読み進めるのも良いかもしれない。
ということで、河出文庫でもいいし、講談社学術文庫でもいいので、『神曲』3巻を手元において時々眺めることにしよう。これで『神曲』にお近づきになろう。
もしこれが、イタリア語の原文で読むことができたのなら、さぞ素晴らしいことだろう。 -
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阿刀田高氏の短編集。単行本は1979年に刊行。
後の阿刀田高作品に比べると、ブラックユーモアより奇想が目立ちます。車が人間に話しかける「甲虫の遁走曲」のような作品を始め、人間が烏になったり、魚が人間になったりという、現実か幻想かわからない話が多いですね。
奇想が過ぎる作品「裏側」のオチはは、最早ギャグマンガ的でもあります。
以下は簡単に各作品の感想を↓
ナポレオン狂
ナポレオンに関するものを熱狂的に収集する老人と、自分がナポレオンの生まれ変わりだと信じている初老の男と、2人のナポレオン狂の思い出を、フランス文学者が語る、という一編。
奇妙な物語は、ラストの数行で恐ろしい物語へと変わります。
来訪者
裕福な家庭で、まだ赤ちゃんの娘を育てている母親が、出産後に母子の面倒を見てくれた病院の雑役婦の訪問を受ける、という物語。
なんとなく、序盤からオチが読めてしまう捻りの無い展開ではありましたが、ある意味期待を裏切らない結末ではあります。
サン・ジェルマン伯爵考
亡き父が死ぬ直前に言った、不老不死の男サン・ジェルマン伯爵と会う予定だった日に息子が会いに行くという物語。
不老不死とは何か、ということを、阿刀田高先生が考えた結果がこの物語の肝になっていますが、ショートショートとしてはオチの切れ味が中途半端です。
恋は思案の外
愛した男のために会社の金を使いこんだ娘のために、誘拐を計画する父親の姿を描いた犯罪サスペンス。
愛犬を犯罪に使う、というのが話の肝ですが、その犬を使ったオチにちょっと強引さがありましたね。
裏側
格安で購入した、地震で崩落した崖下の土地に新居を構えて暮らす若い夫婦を描いた一編。
日に日に淫蕩さを増していく妻が、浮気しているのではないかと疑う夫の視点で描かれています。
愛する妻の「裏側」に何があるのかという予想を遥かに越えるオチが待っています。
甲虫の遁走曲
白タクのドライバーが事故で入院中、共に事故に遭った車から話しかけられる、というファンタジックな物語。
車が、稼げないドライバーのために白タクを再開して、日銭を稼いであげるという可愛らしい展開から、物語は徐々に恐ろしくなります。
オチの意外さよりも奇想を楽しむべき一編。
ゴルフ事始め
スコットランドにおけるゴルフの起源を元に描いたユーモア小説。
起源がスコットランドかイングランドかで言い争いになった両国王がゴルフの試合で決着をつける、という展開から、とんでもない結末にたどり着きます。
捩れた夜
結婚間近の男が、夜になると謎の女から訪問される、というちょっとエロティックな幻想小説。
新婚初夜に新妻が殺され、男が容疑者になるところから、現実と幻想が入り乱れる展開となります。
明確なオチのないラストは、阿刀田高作品では珍しい。
透明魚
サラリーマンの男が、ふとしたきっかけで入った喫茶店では、透明な身体をした熱帯魚を飼っていて、男が珍しがって見ていると、不思議な女に話しかけられる、という物語。
おそらく、女も透明魚のような身体なのだろう、という話ですが、これも現実と幻想がはっきりとしないラストを迎えます。
蒼空
不気味なほど蒼い空に誘われたのか、会社とは反対に郊外行きの電車に乗ったサラリーマンが、丘陵地の小さな駅まで来てしまう物語。
空を飛ぶカラスを見て、サラリーマンが空を飛ぶところから現実なのか幻想なのかわからなくなります。
白い歯
歯がいいと頭がよくなる、という持論を持つちょっと変わった奥さんの話を、歯がわるい夫が聞く、という話。
歯が良くて、頭が良くなったという奥さんの昔語りから、ラスト数行で恐ろしくなる展開が見事な一編。
狂暴なライオン
30代の挿絵画家のシングルマザーと、40歳代の翻訳家の妻子持ち男との恋を描いた一編。
全26ページの内ラスト3ページまでずっとロマンス描写が続き、これはロマンス作品なのかと疑いさえしていたら、急展開のラストを迎えます。恐ろしいラストではありますが、ちょっと強引な展開です。
縄─編集者への手紙─
新人作家が、作品を書けない言い訳を書き綴ったという体裁の一編。
アイデアが浮かばず、ずっと眠っていないという話から、以前に出張先のホテルで隣の部屋になった自殺志願の若い女が怖がっていた、死を望む者に迫り来る「縄」の話になると手紙が物語へと変わります。
現実か幻想かわからないまま手紙は終わります。 -
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「知っていますか」シリーズの一冊目。
私にとっては、神曲、旧約聖書、新約聖書、をへて四冊目。
最初に書いたものなので後に出たもののほうがキレとコシがあるけど十分面白いです。
ギリシア神話をザッと知ることができましたが、これで分かった気になるには足らないかも。他にもう少し広く、でも読みやすいものがあれば手に取りたいなあ。
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ギリシア神話そのものよりも、ちょっと気になったのは「パンドラの壺」の章で著者が抱いた連想。
パンドラの壺の中には開け放ってはいけない、ありとあらゆる“悪”が。病気、悪意、戦争、嫉妬、災害、暴力など思いつく忌まわしいものが詰まっている。かろうじて壺の底に残ったのは“希望”だった。
『私は、このパンドラの壺のエピソードを読むたびに、いつも二つの連想を抱く。
(中略)
もう一つ、パンドラの壺とともに私の心に昇って来るのはーーまことに突飛な連想にはちがいないのだがーー衆議院解散の風景だ。
議事堂の大会議場で解散が宣言され、金バッジの先生たちは、いっせいに全国の選挙区に飛び散る。
皮肉な見かたをすれば、あれこそ現代の“パンドラの壺”ではないのか。
選挙運動の最中に、幾多の密約が交わされ、利権のからんだ取引きが闇から聞へと飛ぶ。
諸悪の根源がばら撒かれ、私たち選挙民に残されるのは、かろうじて"少しはよくなるのじゃあるまいか”という希望だけ。違うだろうか。』(p.148〜150)
奇しくも、いま、令和7年7月には参議院選が行われる(衆参の違いはあれど)。
国民として、なるほどパンドラの壺ね。分かる分かると肯首しながら読んでいたのだけど。
んっ?これ、いつ書かれた作品なの?と見てみたら昭和56年9月とのこと。
なんと44年前でも、今と変わらず同じ思いを国民として選挙に託しているではないですか。
何とも彼とも。。
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阿刀田高氏の短編集。単行本は1984年に刊行。
阿刀田作品らしいブラックユーモアは、それほど強烈ではありません。初出誌、初出時期は不明ですが、エロティックなシーンを描いた作品が多く、幻想味がある作品も目立ちます。
阿刀田高作品集・エロスと幻想篇、という感じです。
以下は簡単に各作品の感想を↓
待っている男
携帯電話も無い時代、待ち合わせ客が多くいる喫茶店で、読者を待ち合わせ客と設定して、同じく待ち合わせ客として相席になった中年男性から一人語りを聞かされるという叙述スタイルをとった一編。
男性の過去が語られるこの叙述スタイルに、何かトリックがあるのか、と期待しましたが、そんなことはなく、オチの落差も、阿刀田高作品にしては弱いですかね。
朱いドレス
妻のいる男と不倫関係のホステスが、何かに導かれるように訪れた不思議な雰囲気の洋品店で、朱いドレスを購入する物語。
不倫関係相手の妻が自殺したと聞かされ、その妻と洋品店の女が瓜二つだったことから、朱いドレスに死んだ妻の恨みがこめられているのではないかと不安になる心理を描いたスリラー。
阿刀田高作品にしては、結末が明確
でない、不思議な雰囲気のまま終わります。
紙の女
精密機器会社の設計課の社員が主人公。ある晩、酔っぱらって自宅の団地に帰ると、自室に妻ではない見知らぬ美女がいて、という話。
『ウルトラセブン』の「あなたはだぁれ?」と導入部はほぼ同じ。
翌日、男が帰宅すると、昨日は実家に帰っていた妻が友だちからもらったという、絵を飾っていて、絵に描かれた女が昨夜の女にそっくりで、という展開。
平面図から物を立体的に見ることに優れた男と、平面に描かれた女との、平面を超えて立体、更には時間も超えた不思議な展開が待っています。
俺と同じ男
自分と瓜二つの男がいると知った男が、その男を巡る殺人計画に巻き込まれるサスペンス。
最後に生き残ったのが誰なのか、わからないままなのが、物語に余韻を残します。
西瓜流し
会津若松から新潟への山間の道を、クーラーのない自動車で通り過ぎる男が、喉の渇きに耐えかねて立ち寄った民家で、若く美しい女性に、供養のためにと川に西瓜を流してくれと頼まれるという物語。
5年前の出来事を、同じ道で回想するというちょっと変化球的な構成です。
のどかな田舎だと思っていたのに、厭な人間関係が浮き出てくる、ブラックでありながら抒情的な一編。
鈍色の眼
妻の浮気現場を見て欲情する夫と、浮気現場を見せて燃える妻。
一度、浮気相手を務めた男が、三年後、未亡人となった女と再会、再び体の関係を持つと、夫は死んだ筈なのになぜか視線を感じて、というエロティックなスリラー。
一筋縄ではいかない意外な結末を迎えます。
鳥
妻子ある男性と肉体関係を持っている女性が、ふとしたきっかけである若い青年と体の関係を持つ。その青年は、以前、鳥になって空を飛んだという記憶がある、という幻想的な一編。終わり方も幻想的ですが、ややグロテスクさもあります。
藁の人形
新婚旅行に出かける夫婦が乗る新幹線の窓に、発車間際に何者かに藁人形の写真が貼られる。
東京から名古屋までの間、二人共に恨みを抱いていそうな男女関係を思い出す、という内容。
それだけで特に何も起こらない話ですが、最後にちょっとした奇跡のようなことは起こります。
ありふれた誘拐
誘拐にご用心、と占われた男を描いた一編。
男には妻との間に子供は無いため、誘拐サスペンスとはならず、むしろ半年前に出来た愛人から借金を迫られる、という愛人が出来た喜びと金を無心される苦しみが主に描かれます。
急な終わりを迎えるラストで、やっとタイトルの意味がわかります。