2011年に出版された、阿刀田高さんの本です。
阿刀田さん、1935年生まれですから、出版当時76歳。
軽く淡々と、でも面白く、小倉百人一首の解説、紹介、というエッセイ本です。
他の、「古典解説エッセイシリーズ」(と言って良いのか判りませんが)もそうなんですが。
肩の力の抜け具合が素晴らしいですね。
「学術的な野心や興味で読んでもらう本ではありません。
フツーに暮らしている人が、興味、知的好奇心で読む本です。
それから、もともと詳しい人が読む本でもありません。
良く知らないんだよなあ、という人が読んで、読み易い本です。
卑下する訳でもないけれど、それ以上でもそれ以下でもないですよ。
ただ、お子様が読む本でもないですよ。いい歳をした大人が読む本です。
そのつもりで、大人が楽しめるように書いてますからね」
という確信があるんですよね。
だから、とにかく、これを読んで、「良く判らなかった」ということは、ありえない!…というくらい判りやすく書いてらっしゃいます。
でも、子供向けじゃありません。
大人向けの雑学とか、どうでもいいような脱線話を、落語で言えば、まくらのように振りながら、一首一首、解説してのおしゃべりです。
愉しく軽く、読めました。
電子書籍で読んだんですが、表紙が可愛くて素敵ですね。
(電子書籍だと、何かのときに、スマホで簡単に部分読み返しが出来る、というのも、この手の本の場合はちょっと良い感じがします)
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備忘録、というのも空しいような本なんです。つまりは100の短歌の説明してる本ですから。
なんですけど、軽く書いておきますと。
●「古今和歌集」みたいな、「天皇家、朝廷が、その時々で選んだ、その時代のベスト和歌集」というのが、10個くらいあります。
その10個の中から、「ベスト・オブ・ベスト」みたいな感じで、藤原定家さんが、鎌倉時代に入ったくらいの頃に選んだのが、百人一首。
●だから、百人一首は万葉集からのものもあれば、鎌倉に入ってからの時代のモノもある。
作者や和歌の内容、そこから推定される物事を味わっていくと、天智天武の頃から、奈良時代平安時代から源平時代まで俯瞰出来て面白い。
●阿刀田さんが、正岡子規などの和歌論なども引きながら、「これはつまらない和歌だよね」などと、結構手厳しい(笑)。
無論、「これは良い歌だよねー」というのもあって、そのあたり、教科書的ではなくて面白い。
●大人向け、なので。政治闘争が匂う歌、恋の歌なども多数ありますが、若干下ネタになるところも含めて、
キレイゴトではない解釈や味わいもあるよね、という視点。なんだけど、阿刀田さんなので、ほんとにお下劣にはならないところが、好ましかった。
恋の歌に関していうと、平安時代などの貴族の恋愛風俗みたいなものは、ちょうど、マンガ「あさきゆめみし」も含めて、源氏物語を愉しんだところだったので、
なんとなく推察がついて読み易く楽しかった。
●阿刀田さんが数度言及しているのは。
下手をすると1400年くらいまえに作られた文学が、モノによっては、今すっと読んでも愉しめる。
こういう言語って、世界史的に物凄く稀だ、ということ。
それは確かに、考えようによっては、日本語っていうのが長年の経年の熟成を経た、興味深いコトバだよねえ、
それは素晴らしいのじゃなかろうか、という視点。
●それは確かに、日本語で暮らす僕たちが、「歴史の連続性」みたいなことを意識しやすいことにはなりますね。
それは、素敵なことだと思います。今後の指針は必ず過去に転がっていますからね。