阿刀田高のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
漱石は、高校以来主な代表作は読んでいるが、ただ読んだというだけで、作家の意図をどれほど理解していたかは疑問の残るところである。
そんな半可通の読者にとっては、貴重な本書といえるか。
これから漱石を読もうとしている読者にとっても、格好の入門書といえるだろう。
阿刀田氏は、漱石の代表的な13作品を、平易に解説してくれる。
それぞれの作品について、A)ストーリーのよしあし B)思想の深さ C)知識の豊かさ D)文章のよしあし E)現実性の有無 F)読む人の好み という共通の六角評価図で、感想をしるしている。
評価の高いのはやはり、『こころ』と『それから』で30点満点の28点をつけている。
これを機会に、再読をしてみるか。 -
Posted by ブクログ
阿刀田高傑作ホラー短編集。
不倫してる男女、デジャヴ、の話が多くて、そういうコンセプトでまとめられた短編集なのかな?ホラーの中にも皮肉なオチがついてたりブラックだったりするところが面白い。
プラスチックを食べる虫を発見して、ごみ処理で一儲けしようとたくらむ男の「妖虫」がお気に入りです。オチに笑ってしまった。なるほどそういうこと…。
「恐怖の研究」怪異がその姿を現した途端に怖さは半減する、というのに同意。海外のホラー映画とかで化け物がバーンと出てくると一瞬ヒッと驚くけど、後を引く怖さではない。直接的には書かれていない影の部分、そういう恐怖に惹かれます。 -
Posted by ブクログ
1982年から1983年に、様々な出版社の雑誌に発表された短編を10編と、1974年に発表された作品1編、全11編を収録した、寄せ集め的な作品集。単行本は1983年に刊行。
1974年の作品「裸で殺そう」が強烈にブラック・ユーモア感がありますが、それ以外の作品にはブラック・ユーモア感はあまり感じさせません。
成熟期の阿刀田高作品集という感じですが、「裸で殺そう」のせいで、全体的なブラック・ユーモアの物足りなさを強調してしまっています。
ブラック・ユーモア感は物足りなくとも、女性心理を描いた「女ごころ」「女の戦争」は、なかなか素晴らしいオチでしたし、最後にサイコ・スリラーになる「走る男」もなかなか印象的な作品でした。
以下は簡単に各作品の感想を↓
子宝温泉
子宝に恵まれるという噂のある、鄙びた温泉街の物語。子供が欲しい夫婦達に焦点を当てた物語だと思っていると、いつの間にかこの温泉街に逃げ込んだ殺人者が主役になり、予想もつかない結末を迎えます。非現実的な物語ですが、SFではなく、神話や民話に近いような世界観です。
雨上がり
未亡人と、彼女を結婚前から好きだった男とのロマンス。単なる恋愛小説か、と、ラストぎりぎりまで思わせておいて、わずか数行で、種明かしがありました。完全に騙されましたね。
鳩の血
花嫁が処女であると偽る、という意味では、犯罪ミステリー的ではありますが、まあ、男女の機微を描いた小説ですね。
女ごころ
夫に黙って作った借金の返済のため、男に金で体を買ってもらおうとする主婦の物語。
特に事件も起こらず、これも男女の機微を描いただけの物語かと思いきや、見事なオチが待っていました。
幼い脅迫者
誘拐サスペンス、ですかね。ブラックなオチではなく、ユーモラスなオチになっています。
糸の女
毎年、4月23日になると、三鷹の褐色のマンションを訪れないといけない、という衝動に駆られる男が、ある年の4月23日に三鷹の褐色のマンションで一人の女に出会う、という不思議な物語。
オチも謎めいたまま終わります。
赤鰊
英語ではごまかしのことを赤鰊というらしいです。
路地裏の酒場で、謎の手品師に出会って、という物語。
理屈は明かされないまま、謎めいたどんでん返しがあります。
裸で殺そう
この作品集の中で、この作品だけが初出が1974年と、古い作品。
そのため、作品の持っている雰囲気のブラックさが際立ちますが、オチの切れ味がどうも悪いです。
モヤモヤした読後感でした。
奇妙な儀式
性に淡白な女と付き合い始めたが、その彼女が月に一度ほど淫らに荒れ狂う、という、ちょっと色っぽい話。彼女が淫らになる理由には、奇妙な儀式があるらしい、というところから物語が謎めいてきます。オチはなかなかいいですが、ブラックさは、まあまあ、といったところ。
女の戦争
出世争いをするサラリーマンの、奥様同士の戦いを描く物語。
オチが自分には意外過ぎて、痛快とも思えるものでした。
走る男
「奇妙な儀式」と対をなすような作品。先に「奇妙な儀式」を読んでいる分、余計に騙されたのかもしれないです。
そんな予想のつかなかったオチは、ブラック・ユーモアといえばブラック・ユーモアですが、狂気を感じさせる、ちょっと恐ろしいものでした。
危険信号
何か良くないことが起こる前には必ず腹痛を起こす女性の物語。
表題作にもなっている作品ですが、この作品集を代表するほどの出来だとは思えませんでした。
オチがブラックではなく、因果応報的なものなのも、阿刀田高作品では珍しいのではないでしょうか。