ぱっと見、これはアパートの住人を巡る短篇連作、であります。
ただ、本作、それにとどまりません。
誤解を恐れずに言えば、性を巡るそれぞれのストーリーといっても良いと思います。
70を過ぎて、どうしても(お金で買うのではない)セックスをしたい大家、イマ彼と元彼と両方に挟まれて心も揺れる20代OL。子どもが産めない体に生れつき、セックスをしまくる女子高生、それを恨めしそうに上から除くサラリーマン等々。
どれもかなり際立った個性のキャラクターが、この小暮荘に縁あって集い、物語を紡いでいきます。
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これが単なるキワモノだらけの捧腹絶倒物語ならば、新味のないどぎついだけの物語であると思います。
が、本作がきらりと光ると思わせるのは、それぞれのキャラクターがそれぞれ思いを抱え、実は真摯な悩みを持つからです。そして、そうした思いは、多くの人にも見られるものであるからだと思います。
嫉妬であったり、執着であったり、名残惜しさであったり、はたまた苦しさであったり。
そのような「想い」を人物にまとわせることに成功しているところに本作の秀逸さがあると思います。だから、ぱっと見は大分変な人たち、否、ぶっ飛んでいるといってもよいのに、読んでいくといつの間にか共感してしまう、そういう造形が多くあるのでした。
エンタメっぽいけど、それにとどまらない。純文学というには面白過ぎる。私はそういう思いを読中に抱いておりました。
同じような感想を巻末で金原瑞人さんが書いていたのも印象深かったです。もっとも彼は芥川賞と直木賞でたとえ、両者の特徴を一緒に仕上げる作家として三浦しをん氏を評されていました(相当意訳しました)。
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ということで一か月ぶりの三浦作品でした。
ただただ面白い、そういうのもいいのですが、その裏に人間らしい悩みや苦しみが見えるところ、そのブレンド具合に筆者の妙が光ると感じる一作でした。