あらすじ
私は、なにをしているんだろう。どうしたら「私」でいられるんだろう? カトリック系女子高校に通う、三人の少女、那由多、淑子、翠。性格の異なる三人の「私」は、家族、学校、男たちの中にあって、それぞれが遠いはるかを、しずかに深くみつめている。「秘めごと」をかかえる彼女たちの微笑の裏側の自由。甘やかな痛みの底に眠る潔くも強靭な魂。自分を生き抜いていくために「私」が求めていたことは――。記念碑的青春小説。(解説・穂村弘)
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Posted by ブクログ
23年前の作品。しをんさんの明るく元気でユーモラスな作品を多く読んでいたので作風に驚いた。舞台は丘の上にあるミッション系の女子校。息が止まりそうな位繊細な日々を3人の視点で描いてる。女子校あるある、宗教の時間あるある、時が止まった様なセピア色の学生時代が懐かしい。
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スイの気持ちがなんとなく一番わかる気がした。
男女じゃないからこその愛はあると思う。何も生み出せない関係だからこそ、感覚とか勘で繋がったり、安心できる。もし那由多がいたら、憧れるだろうな。互いに適度な距離感、必要なときに求めて、踏み込んで良いものかしっかり図っているところがとても好き。
那由多の話で、言葉はときに無力だと痛感したし、家族を探せない父というのもわかるなと思った。希望は災厄の一つというのも印象的。最後に那由多がスイに話したのは良かったなと思う。スイならなんとなくわかってあげられたんだろうなって。
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ミッションスクールに通う3人の女子高生それぞれの視点で描かれる中編3作のお話し
3人はそれぞれ秘密を抱えている
うちの娘が将にカトリックの女子校に通ってるからかもしれないけど、こんな話し好きなんだよなぁ
ま、前から笑うミカエルとかマリア様がみているとか好きだしね
あと、ミッションスクールじゃないけど女子校ものならblueとかね
何というか、僕が想像する女の子同士の付き合いのリアルさがある
淑子のことはどーでもいいとして
那由多と翠の関係は憧れるなぁ
だからこそ淑子の気持ちもよくわかる
何より笹塚さんがいい味出してる
こんな先生がいたら高校はもっと楽しかったかもね
偏った知識だけど、こんな本が芥川賞とればいいのにとおもってしまう
結局、3人とも抱えている秘密や問題や悩みは解決していないし
終わり方もとらえようによってはぶん投げてるようにも思えるけど
個人的には、それは余韻ととらえた
ここで終わりの物語ではなくて、人生のここだけ切り取ったようなお話しという意味で
だからといって続編が必要なわけでもない
その辺も含めて妙な現実感を感じる
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女子校に通う3人の物語。タイトルから勝手に甘く危険なお話的な感じかと読み進めたら全然違った。特に那由多の痴漢のシーンは衝撃。読むのを戸惑ってしまった。
3人それぞれの思い、抱えたもの、交わりそうで交わらなくて。物語のラストがどうなるのか、気になりつつもふんわり余韻を残して終わる感じも好みです。あとがきになんだか救われました。
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年頃の青年の世界と視野とはどうして、こんなに狭窄していんだろうか。カトリック系私学、しかも小学部から附属する女子校を舞台に描かれた本作を読む者は、性別問わず思春期の甘苦さを反芻せずにはいられない。
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女子校に通う3人の主人公。男性を巡る女同士のぶっちゃけトークが強烈で、「うわっ、女子校トーク来たか」と序盤から面食らってしまった。
「私はなにをしているんだろう?」「どうしたら私でいられるんだろう」と、掴みどころが無く不安定な心境でありながら、思い詰めると180度逆の行動に出る。ここまでやるか!?というくらい、直球で衝動的で刺激的な展開が描かれている。本人や周囲の大人も気づかない、秘めた爆発力は恐ろしくもある。読者にとってはある意味暴力的とも受け取れる。
ただ、敏感で傷つきやすい生き物であることも確実。「美しさ、儚さ、脆さ」を描いた表紙カバーの絵も刺激的で、不気味ささえも感じられる。
感性が人一倍豊かであるため、彼女達は、大人(の男性)たち、同級生たちに傷つけられながら、拠り所を求めて彷徨う。淑子の気持ちは男性である私に取っても分かりやすかった。那由多と翠の二人が持つ感性は独特。お互いが惹きつけられ、不思議な絆が作り上げられていて、緊張感があった。
彼女たちは常に緊張した日々を過ごしていたのだろうか。作品全体を覆う鬱々とした空気が、余計に緊張感と美しさを読者に煽ってくる。そして、物語は暗い空気のまま突然終わる。
ここまで少女達の心の闇に入り込み、躊躇せずに描ききった三浦しをんさんには脱帽である。
Posted by ブクログ
淑子の話がとても刺さりました。
先生を好きになったことはないけれど、その人のために死んでもいいという気持ちは分かってしまうなと思いました。学生なら尚更そうだろうな、とも。
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面白かったです。
女学園ものでしたが、どこか影があってヒリヒリする空気が好きです。
みんな秘密を抱えてて…那由多も淑子も翠も好き。司書教諭の笹塚も好き。
那由多と翠のふたりの間にある感情がとても好きです…翠の方がちょっと片想いが多いですが。恋慕でもないし、友情では足りないし…ただただ尊い。
那由多が抱えた秘密、これ気色悪いオヤジの自業自得なのであって、彼女が病む必要ないのに…那由多の取った行動、すごくスカッとしたので。高校生でこれが出来るって、強いな。。
Posted by ブクログ
大人になる前の未完成な、カトリックの女子校に通う3人の少女のお話。
大人によって傷つけられ、そしてそれが性に関することであることが3人の共通点であると思った。
自身の葛藤を他人に打ち明けることができず、1人で悩む少女たちはそれを乗り越えて大人に成長していくのだろう。
私は淑子の気持ちが痛いほど分かってしまう。
自分は誰かの1番、特別にはなれなくて、でも好きな人の特別になりたくてすべてを投げ出してもいいと思う。
だがそう思っているのは私だけで、先生は違う。
自分とか立場とかの方が大切でどれほど願ってもあの人の1番に今の私はなれない。
私じゃなくてもいいのではないかと思うから、いつか来るであろう終わりが怖い。
20歳になった私は少し遅れた思春期を迎えているようだ。
いつかあの人よりも好きな人ができるのだろうか。
Posted by ブクログ
バーネットの小説とも松田聖子の歌とも内容的に全く関係のない三浦しをんさんの初期青春小説ですが「舟を編む」とは完全に異質な世界の物語でしたね。遊び心を感じたのは、那由多と丈の姉弟の名が数量の単位である事、色を冠した名前、紺(幻)・翠・碧の兄姉弟でしたね。本書は相当に難解で特に哀しいのは、那由多・淑子・翠のヒロイン3人が自らの抱えた秘密と悩みを素直に打ち明ける勇気を最後まで持てない事、そして単純なハッピーエンドで安心させてはくれない事ですが、私は那由多が復帰した様に淑子も何時か必ず帰って来ると信じたいですね。
Posted by ブクログ
想像以上に湿っぽかったというか重かった。キャラ設定や人間関係は小説ならではって感じでそこまでリアルじゃなかったけど、トラウマとか被害妄想とか現実逃避とか、主人公の3人それぞれに感情移入できる部分があった。とりあえず最後どうなったのかが気になる…
Posted by ブクログ
同じ女子校に通う少女たちの物語。少女だけどまだ何も知らないわけじゃない、けど自分の女性性に対しての嫌悪感や疑問を拭いきれるほど成熟しきっているわけでもない、この曖昧な時間は十代の一瞬であり、少女時代の儚さを感じた。どんな小さなことだって大事件になってしまう女の子の狭い世界は、年を重ねると自然に趣が変わってしまうのだろうなぁ。また、女子校ならではの閉鎖的で濃密な雰囲気、少女たちの関係性が綺麗な文章からじわりと染みてくるようで、うっとりとむせ返るような気分になった。
Posted by ブクログ
どんなに一緒にいても自分が相手にどう思われているかなんて相手の言葉だけではわからない。
それが一番知りたくても相手がたやすく隠してしまえば知る由もない。那由多と翠は実はお互いのことをいつも気にして考えているのにそれは相手に伝えられることはない。淑子はそんな二人の一番になりたいのになれないと感じている。それは第三者から見たら入りたくてもどこかアウェイな感じを那由多と翠には見えないけれど彼女は気づいてしまってるから。
なんて連鎖しないものなんだろう。交わるようでいつも肝心なことは届けられない。片思いより苦しくてひんやりとした日常を俯瞰した。
Posted by ブクログ
穂村弘さんの解説1行目の『「女子校もの」が好きだ。』私がこの本を手に取った理由はこれに尽きる。その中でも結構読みごたえがあって、好きだった。
パンドラの箱に入っていたのだから、希望も災厄のひとつなのではないかと主人公は語る。そうかもしれない。でも彼女たちの未来が幸せであってほしいなぁ。そんな単純なことではないかもしれないけれど、願わずにはいられない。
Posted by ブクログ
箱庭で暮らす少女たちの狂いを描いた小説。らしい。らしいと言ったわけは、後書きにそう書いてあったから。那由多が遭遇した痴漢や淑子の母親の狂いが強くてよくわからなかった。
おそらく、リアルを表現するため、あえて淑子の失踪のオチや脅迫文の真相を曖昧にしたのだろう。でも曖昧にしてるわりに狂いの表現も曖昧だから全体的にふんわりしてた。
読みやすさを重視するか、独特の世界観で読者を置いてけぼりにするか、どっちかに偏った方が良かったかもなぁ。
痴漢のアグレッシブさが1番面白かった。
少女たちの感覚の鋭さ(那由多の洪水が迫る感覚、淑子の誰にでも仲良くなれるため誰の1番にもなれないと思うところ、翠のまわりの変化を気にせず思考を巡らせたまに存在しない兄と対話するところ)が参考になった。
Posted by ブクログ
那由多、淑子、翠、みんなどこか狂っている。
でも心からおかしいわけじゃなくて、少女ならではの妄想に取り憑かれている感じ。
それが文から感じ取れて、読んでて面白かった。
解説もしっくりきてよかった。
私も「女子校もの」結構好きかも。
匿名
10代は凄く繊細で自分の事や友達の事を考え過ぎるぐらい考えてしまう。その時は自分だけが苦しんでると思っていたけど、他の子だって悩み苦しみいっぱいあったんだろうな、と、思いました。
淑子はどうなったのかそれだけが心配です。
Posted by ブクログ
『ののはな通信』を読んで、しをんさんの女子校ものが読みたくて積読の中から手に取りました。
女子高生の那由多→淑子→翠の視点で話が進んでいく。
それぞれ胸のうちに秘密を抱えながら多感な
時期を過ごしている。
難しかった…。
Posted by ブクログ
知り合いの女子校出身者曰く、
学校の中はガサツで下品で動物園だと言う。
本書は随所でたおやかで神秘的な品が感じられ、なんとなく「外から見た女子校」いう印象を受けてしまった。
女子同士なら、もっと陰湿でもっともっと意地悪なことをするのでは、と思ってしまった自分は、相当心が荒れているかもしれない。
Posted by ブクログ
えっ、ちょっと待って、、、終わるの、ここで?
それとも何か読みこぼしたのかな、、、
ラストの動揺はさて置き、
女子校に通う3人の女子高生をそれぞれの視点からみたお話。
あの頃特有の友情、恋と性、有り余る情熱、葛藤、家族、終わる=死、、、
稔子どうなったぁー
Posted by ブクログ
彼女たちの思いや考えに共感できるところもあれば理解できないところもある、といったところでしょうか。それは同質で閉鎖的なカトリック系女子校で青春時代を過ごした経験がないから、もう「少女」ではないからなのか。彼女たちの求めるものは人間の根源的な欲求のような気がしました。私たちが日常生活の中でそれとなく満たせるものの本質を、彼女たちはストレートに求める。だからこそ、理解が追いつかないのかもしれません。
Posted by ブクログ
女性作家ならではの視点で様々な葛藤を描いた作品という所なんだろうか。
前半は靄がかかっている感覚でしたが、徐々に晴れていく感じが面白かったです。
ですが、なかなか難しい作品でした。
Posted by ブクログ
女子高の悪い部分が凝縮されているような小説
”大人”でも”子供”でもなく”少女”と言う生々しい
感情を持っている年齢特有の不穏さ
那由多、淑子、翠3人の少女が見せる
脆い心、意地とプライド。
したたかさが無く、悪い意味で純粋過ぎる彼女たちの
危うさが本書の魅力だと思う。
那由多、淑子、翠と主に3人の少女たちの秘密が
各章で描かれているので
視点が変わっていくので、「こいつがそんな秘密を!?」
と言う、驚きもあった
Posted by ブクログ
積読から。
三浦さんは高校生の頃に出会ってからずっと好きなんだけど…
高校という狭い世界での危うい女子高生たちの内面をすごいきれいに描いている。
世界観がしっかりしてて、引き込まれる感じもある。
純文学ぽいというのか、、
わりと空気が重いので、
カラッと明るいのが読みたいときには合わないけど、
こういうのが読みたい気分のときもあるよね。
Posted by ブクログ
女子高生3人がそれぞれの目線からオムニバス形式で同時進行していく三つの小説。
それぞれの女子高生が独特の視線を持っており、女子高生ってこんな考えを持っていたりするのかと私のような年寄りには新鮮でした。
それぞれの目線でそれぞれを見つめるその展開も含めて読んでいて楽しめる一冊だと思います。
実際に読んだのはこちらの文庫本ではなく単行本でした。
Posted by ブクログ
オムニバス形式で主人公たちの本当の心理がわかっていく。キリスト教の女子校ってこんな感じなのかな?って思った。自分は共学しか行ったことないから新鮮に感じた。
この作品で卒論を書いた子に話を聞きたい!
Posted by ブクログ
カトリックの女子校へ通う少女たちの其々の秘密と葛藤が描かれている作品。
那由多、淑子、翠と主に3人の少女たちの秘密が各章で描かれているのですが、広い意味で其々が「性」に対してのコンプレックスを持ち、皮肉にも処女信仰であるカトリックの学校が舞台という設定は面白かったです。
作中で其々の少女をお姫様に例える描写に凄く納得してしまいました。
どんなに打ち解けた友人でも知らない秘密は誰だってあると思います。罪悪感や羞恥心から言葉に出来ないままに心の底に鬱々と育った秘密を、間接的な言葉でありながらも発することの出来た那由多に、この作品の救いを感じました。
Posted by ブクログ
女子高生3人の特別なような、普通なような日々。それぞれ性格も考え方も違うが、大人と子どもの端境期に見られる自己肥大と自己卑下、突発的衝動、残酷さなんかは共通している。淑子が一番子どもに見えて大人かもしれない。
どちらかといえば鬱々とした雰囲気が漂うが、なんとなくノスタルジー。
Posted by ブクログ
那由多、翠、淑子を中心に描かれる
カトリック系女子校を舞台にした物語。
少女性というくらいで
なぜかこの年頃の女の子にはなにかしらの神秘性がある。
実際は、恋と勉強と食欲と未来への希望と不安、てなとこだろうけど
小説の世界では、その日常の中のほんの少しの聖なる輝きを取り上げることが多く
そんな感覚は男目線独特なのかと思っていたけど
三浦しをんは同じ女性。
なんだろうこの人、不思議…
とはいえ、
社会を知る前の、大人になる前の、
女子特有の潔癖な感じとか孤高な感じとか凛とした思考回路とか
とうに過ぎ去った身にしてみれば
まぶしいかもしれない。
だってもう、私は自分の身を案じる男性教師側の思考になっちゃってるから。
自分だけが歳を取っていき、目の前に現れる生徒たちは永遠に若いままだと感じる老教師の側になっているから。