あらすじ
「ここも一応、東京なんだがな」と言われてしまう“まほろ市”は、東京のはずれの大きな町だ。まほろ駅前で、ひとり便利屋を営む多田啓介のもとに、高校の同級生・行天春彦が転がりこんだ。高校時代、教室でただ1回しか口を開かなかった、ひょろ長い変人だ。ペットあずかりに子どもの塾の送迎、納屋の整理…ありふれた依頼なのに、行天が来てからは、やたらきな臭い状況に追い込まれるハメに。さて、本日のご依頼は? 多田・行天の魅力が全開の、第135回直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
2025.11.4
多田便利軒、東京郊外で、便利屋を営む中年男多田と、そこへころがりこんできた元同級生の行天の二人を主役にした物語。便利屋の元に舞い込んでくる仕事は、犬の飼い主探しだったり、小学生の通塾の迎えだったり、恋人のふりだったり。ところが、決まってヤクザがらみなどの厄介事に巻き込まれて、綱渡りをする羽目になる。便利屋というより、巷の事件をなんでも引き受ける私立探偵のノリに近いものがある。
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トラブルを呼び寄せる男、行天が狂言回し的な役割を担います。行天本人も、また、主人公の多田にも深く心に傷を持つのが読み進めるほどにわかり、共感しました。東京郊外の架空の街を舞台に(町田市がモデルとも言われますが)こんな隣人が便利屋として私の側に、もしかしていたなら、私も惹かれる人でありたいと思います。
作者の三浦しおんは、今やっているドラマ「舟を編む」の原作を書いた人だと知りました。テレビは主演の池田エライザさんの好演もあり見続けていますが、あの言葉に拘りまくる人達の物語を、いつか私も本で読んでみたいと思います。
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三浦しをんが好きなので、あらすじなど読まずに本編読んだ。
登場人物達はそれぞれ孤独とか、諦めとか、はたまた希望を抱いていて、とても胸にくるものがあった。
多田と行天は真逆といっていいくらいの経歴だけど、欠けた二人だからこそ一緒にいられるんだろうなと思う。
多田が由良に言った台詞が好き。
子供が親から欲しがった愛情について
与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、新しく誰かに与えることができる。
由来公、、多田と行天に出会えて本当に良かった、、
幼い頃から失望に慣れて諦めることを早々に学んでしまったけど、まだ大丈夫。大丈夫だと思える。足りなければ補えば良い。
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多田と行天のやりとりは割とハードボイルドテイストなんだけど、行天の行動や考え方が相当にすっとぼけてたり、多田が見せる真面目さや優しさが温度と熱量を上げ、結果としてそれらがよい塩梅にスパイスを効かせ2人を魅力的で味わいのある人物に押し上げている。多田、行天の仲間に加わり多田便利軒で働きたいとは思わないけどルル&ハイシー主催のクリスマスパーティーには呼ばれたいし、星と行天が食べてる3つ隣の席くらいに陣取ってやきとり食べたいなと思わせる魅力的な2人。俺ならこの2人に何の仕事を頼むだろうか。
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駅前で便利屋を営む多田と同級生の行天が、依頼者からの様々な依頼の中から進んでいく日々のストーリー。
由良公やルル&ハイシー、岡さんや星、清海など個性のある登場人物もとても好き♪
行天は子供が欲しい元妻のために人工受精をした経験あり。多田は浮気相手との間との子かもしれない子供を生んだ妻との関係性が微妙であったが、生後1ヶ月で子供が亡くなってしまったことを機に離婚してしまった。お互い色々なことを抱えているも、行天のことが鬱陶しいと感じつつ、いなくなってしまうと探してしまう多田。絶妙なバランスなのに噛み合っていない2人を取り巻くストーリー。まほろ市が東京の町田市を思い描けるリアリティーのある内容がとても良かった。
多田が好きだなぁー♪
Posted by ブクログ
面白かった!2人とも不器用だなと思いながらも多田と行天の絶妙なバランスがよかった。優しいがゆえに過去のことを背負いこみ過ぎだしもう少し気楽にとも思うけど内容が内容だから難しいかな。
実写化してるみたいで、キャストもまさにって感じで機会があれば見たいと思う。
Posted by ブクログ
便利屋多田、居候行天やヤクザの星などキャラが立つ登場人物多数。外見を想像しながら面白く読める。基本短編だが、全て繋がりもあり、シンプルにわかりやすくおろしろかった。
Posted by ブクログ
書名から、悲喜こもごものラーメン屋の話……ではなかった。いきなりハードボイルド風の話の展開。途中で転調があるかと思いきや、便利屋の軽トラでぐいぐいと最後まで。
緻密に構成されているのに、それを感じさせないところが凄い。登場する人間たちの会話のノリのよさもいい。そのストーリーテリングの巧さにただただ感服。この作品で三浦しをんは直木賞受賞。これがとらずに、なにがとる。
主人公ふたりのタバコの吸い過ぎだけ、少し気になるけどね。
Posted by ブクログ
面白かった。
いわゆるコメディではなく、
人が失った大事なものを、折り合いをつけたり関係性を変えたりしながら繋いでいく物語を、
便利屋の仕事にからめてほろりとさせながら展開していきます。
そう、行天の切れてまたつながった小指のように。
幸せは、求めていればかたちを変えて訪れる…
疲れた私には優しい物語でした。
続編も読みます。
まほろ駅前多田便利軒
過去に悲しみを抱える二人のおじさんが一緒に住んだり働いたりする話です。
ちぐはぐなバディものでもあり、寄せ集めの家族のような雰囲気もあり、とにかく二人が穏やかに生きられると良いなと思いました。
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三浦しをんは何冊か読んでいますがバラエティに富んだ本を書く作家さんだと感じています。便利屋を営むちゅうねんだんしのところに舞い込んできたかつての同級生との波瀾万丈の1年が描かれ、文章のリズムの良さであっという間に読み終えました。過去に辛い想いをした2人がそれぞれの想いで仕事と向き合う姿は時にはそこまですることないのではと思うところもありました。続編も出ています。次はどんな依頼にどんな様に向き合うのか読んでみたいです。
Posted by ブクログ
多田と行天、いい年の男2人がなんだかんだいい感じに便利屋の仕事をこなしていく男の友情話、だと思って読んでいたけど、
行天の指の傷を象徴に、失った幸せと再生する幸せのお話でした。
うーん、上手いなあ。
難しく考えなくてもスッと入ってきて、軽く読みたい人に押し付ける感じでもない。
読みやすく楽しかったです。
2人のキャラ作りが完璧でずっと読んでいられるキャラクターでした!
Posted by ブクログ
他の作品と同様、キャラが個性的。なんとなくほんわか系かと予想していましたが、意外にもかなり危険な橋を渡る便利屋の2人にはらはらしました。主人公の、淡々と冷静に生きているようでありながら、情を捨てきれずに事件に巻き込まれてしまう感じが好きです。
行天の一度切り離された小指の繋ぎ目は、冒頭では冷たさと痛々しさが強調されていましたが、最後は「なにかを約束する印のように結ばれている」と表現されていたのが印象的でした。過去に受けた傷跡は残るし、人生にはもう戻ってこないものもある。けれど、そっと傷跡に触れながら、新たなかたちの幸せで温めることはできる。そんなメッセージが込められているように感じました。
Posted by ブクログ
裏表紙のあらすじを読んで、面白そうだったので手に取りました。
便利屋さんのお話という事で、『銀魂』という漫画の「万事屋銀ちゃん」みたいな明るいノリを想像していたのですが、読んでみるとユーモアはそこそこに結構重いお話が続きました。
その中の一つで、小学生たちがクスリ(見た目は砂糖そっくり)の受け渡しのバイトに加担させられていましたが、結局助け出したのは別件で関わっていた男の子一人だけでした。
少年ジャンプの主人公だとここは全員助け出す流れですが、「そこまで面倒見られるかよ」という多田さんのセリフから、世の中は漫画みたいに上手くはいかないのだと悟りました。
ちなみに、ここは東京都町田市が舞台だそうですが、クスリ50個の受け渡しで5000円、多田便利軒の週給が(歩合制だとは思いますが)3000円というのに驚き、かなり賃金が安い町なのではないかと思いました。
しかし、多田さんの相方である行天さんは、どのシーンでも常にタバコを吸っているような気がするのですが、買うお金があるのか少し疑問になりました。
食費や光熱費に加えてタバコ代も多田さんが支払っているとなると、先ほどの「そこまで面倒見られるかよ」というセリフにも納得しました。
彼は一風変わった依頼人を助けたり、行天さんにタバコを買ってあげたりするので精一杯なのだと思います。
少年ジャンプの主人公になれなくても、賃金の安い町で毎日頑張って生活している多田さんが、なんだかカッコよく見える物語でした。
Posted by ブクログ
便利屋稼業が繋いでいく、強かったりそこはかとなくだったりとバリエーション豊かに繋がっていきそうないくつかの腐れ縁。次第に明らかになっていく因縁や秘密の描かれ方も良かった。
綺麗事と言えば、そうなのかもしれないけど、負い目や癒えない傷を抱える日々を、付かず離れずで並走する他人がいても良いのかもと思わせるラストでした。
Posted by ブクログ
ドラマ「舟を編む」を見て、関心を持ったので読んだ初読み作家。本作品は直木賞受賞作。ただ個人的には少し期待はずれ。便利屋を営む主人公と、その高校時代の同級生で、偶然に主人公と再会し、一緒に便利屋を営むことにした行天。この行天のある意味図々しい性格に、正直馴染めませんでした。一つひとつのストーリーは、それなりに良かったとは思いますが、中年男2人にあまり魅力がかんじられないところが、残念に感じたところです。
Posted by ブクログ
まほろ駅前で便利屋を営む多田啓介と、高校時代の同級生で便利屋に居候することになった行天春彦。
昔、親に虐待された過去を持つ行天は、何かを諦めたようなところがあり、共鳴したお客様の頼みには命の危険も顧みず見境のない行動をする。
それに振り回される多田は、人に聞かれると、『あいつは友達ではない』と思うのだが、いつも心のどこかで行天を気にかけている。
多田も、生まれた子どもを亡くし、浮気をしていた妻とも修復できなかった過去を持つ。
この作品は第135回直木賞を受賞しているが、つきつめると親子の血の繋がりや、人との繋がりということがテーマになっているのではないか。
親子の関係はもう変えられなくても、やり直せなくても、自分が与えられなかったものを、新しくだれかに与えることができる、そのチャンスは残されている……行天の自分の命を削るような心の叫びが聞こえるようだ。
この作品には素晴らしいセリフがたくさん出てくる。
『愛情というのはあたえるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだ』
『…すべてが元通りとはいかなくても、修復することはできる』
多田と行天コンビの一見お気楽な物語の中に、ヒリヒリした心の痛みや、深い悲しみ、絶望、そして再生に向かう兆しを見ることができ、三浦しをんさん、やっぱりすごいと思う。
シリーズ2作目で、また2人に会えるのが楽しみ。
Posted by ブクログ
柄が悪い言葉を発しておきながら愛に包まれてる2人。最強バディ…?
涙する部分はあるのだけど、涙ひっこんだよ!あっという間に!
なんなんだよ!?笑
ハードボイルド小説なのか…?しをんさんすごすぎる。同僚に勧められた一作でした。
以下はお気に入りの文の引用です。
「腐敗を遅らせながら、葬式のはじまりを待つ死体みたいだ。」
「子どもたちは、親の愛情と保護を待っている。この世にそれしか食べ物がないかのように、いつも腹をすかして貪欲に求めている。」
「割に合わないことをしでかしているらしいところからして、もしかしたらこいつは、がきのころの俺よりばかかもしれないぞ、と多田は思いはじめていた。」
「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだ」
「ご近所のどいつだ。チクりやがって、ただじゃおかねえぞ。と思いながら、多田は曖昧に微笑んだ。」
「一人でいたい。だれかがいるとさびしいから。多田はそう思い、しかしそんなことを思う時点で、俺はもうとっくにさびしいのかもしれないなとも考えた。」
「「あんた、まだ気にしてるんだってね」(略)「ばかだなあ」」
「「悪意がなかったからといって、罪ではないということにはならない」(略)自分があらゆる意味で怠慢だったと気づいたときには、取り返しがつかないほど全部が壊れてしまっていた。」
「血をよりどころにせず、つながった家族。たとえ自分の子ではなかったとしても、多田は愛したかったし、愛されたかった。妻と子どもと幸せにやっていけるのだと、一生をかけて証明したいと願っていた。心から。」
Posted by ブクログ
どことなく自分がいる街でも起きそうな事件や物語に感じてしまうぐらい日常が垣間見れる。おやおやのつながりをさりげなく、作中に含んでいるのは途中まで気がつかなかったんだ。なかなか重いテーマをあっさりとしてないように入れ込んでいるのはすごいと思った。
Posted by ブクログ
久しぶりに再読。
すっかり内容を忘れてた。
痛快愉快。著者らしい一冊。
むさい男2人組を描くのが本当にうまい。
番外編などの続編も読んでみたい。
でこぼこコンビで似たもの同士
多田と行天のコンビネーションが良い!
多田が出来ないことを行天がやってのける。
行天が行き過ぎないように多田が手綱を握る。
互いを補う存在のようで
同じような虚空を共有する同士でもある。
決して言葉で語り合うことはないのに、
不思議なことにふたりでいることが自然体のような
不確かな絆が、良い!
ルルとハイシーとマリの関係性も好き。
てゆうかルルとハイシーが好き。
みんな訳ありだけど、ほっこりする感じが凄く好き。
初めてこの作者の本を読んだけど、
好き。他のも絶対読む!
不思議な作品
この物語を読んでいて、初めの設定がつまらない。読む気が起きない。考えてみれば、物語の場所が東京郊外の架空の町「まほろ市」だからなのからかもしれない。さらに、便利屋を営む主人公の多田と店に転がり込んできた級友の行天という人物に、物語の中で通常の生活実態が窺われないのだ。だから共感を持って読み進むことが出来ない。非常に読みづらい物語だ。
しかし、無理にでも読んでいくと、いつの間にか物語が面白くなり引き込まれて、読むスピードも上がってしまう。あっという間に読み終えてしまう。そこに不思議さと魅力を感じる作品だ。
Posted by ブクログ
「便利屋」に舞い込む様々な依頼に多田と居候を始めた同級生行天、双方ともバツイチコンビが作り出す平凡な会話が笑いと依頼者との信頼・人間関係を描く小説だ。子犬の世話、娼婦・チンピラのお節介、小学生・高校生の世話と擁護など、巻末では老夫婦の納屋の解体依頼からその老夫婦が自分の真の親だと名乗る青年に対して赤の他人が「真実を話すべきか否か」での葛藤から社会関係を上手く描いている。現実、生みの親と育ての親など病院での手違いからDNAで発見されることも多々あるらしいが、その後双方の家族への配慮無しに他人の土俵に土足で入り、新たな問題が起こるのは予想だにできない。
Posted by ブクログ
作者は名前の付かない関係性の描写に卓越しているなあ、と思った。
活字を読んでいるだけなのに、町の様子や、便利軒の事務所の様子、多田と行天の人となりが匂いとそれぞれの温度を持って感じられ、目の前でドラマが展開されているかのような気持ちになった。
個性豊かな客も含め、登場人物全員が小説を飛び越えて生きているかのように感じられた。
登場人物が多くて、名前だけではどこで出てきたどんな人物だったか思い出せないことがあった。
Posted by ブクログ
三浦しおんさんてこんな作風も書くんだ!と言うのが第一印象。
多田と行天のコンビがイメージしやすく絶対シリーズ化するじゃんと思う内容。
行天の過去は次回作なのかな?
過去に傷がありそうだから読むのが楽しみです。
Posted by ブクログ
前半はなかなか読み進められませんでしたが、後半からだんだん面白く感じられました。
「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」
「不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはない」
解説にもありましたが、この2つのセリフが印象的でした。
Posted by ブクログ
2025.6.11(水)
離れたものは戻るのか
そこに幸福はあるのか
日常的な話は基本的に好きじゃないため、半分ぐらいはなんとなく読み進めていたが、後半いつのまにか登場人物が好きになっていたことに驚いた。抱えているものは様々なのにどこか一体感のある作品。
久しぶりに三浦しをん読んだ。また色々読もう。
Posted by ブクログ
思ったよりも大きな事件が起きるわけでもなく終わった。
結構な悪事を普通に見逃してるのに驚いた。三浦しおん好きなので期待したけど思っていたのとはちょっと違った。
メイン二人のキャラクターは好き。
Posted by ブクログ
飄々として、自由奔放な行天
それに振り回される多田
この2人のキャラクターがそれぞれ抱えてる過去、
それに向き合いお互い思いやっていく姿が
とても良かった✨
曽根田のばあちゃん、ハイシー、ルル。
バスの間引き運航が気になる山城町の岡。
脇役も個性的で魅力的✨
ストーリー展開も面白くてサクサク読めた。
「舟を編む」でも感じたけれど、
三浦しおんさんの文章は美しい
Posted by ブクログ
不器用だけど確かな友情に心温まるお仕事小説
幸福は形を変え、さまざまな姿で、それを求める人たちのところへ何度でも、そっと訪れるもの。
過去と向き合いながらいまを生きる2人の日常が愛おしく思える。もっともっと見ていたい、そんな物語でした。
おもしろいけどディープ
2人の関係性や会話がおもしろいのですが、ストーリーは暗かったり陰鬱とした内容もあり、楽しい!と言う感じではないです。
そういうのも得意な方には良いと思います!
舟を編むなどの作品と同じ作者さんなのが不思議に思えるくらい全然違う印象の作品で、幅広い作家さんだな〜とおどろきました。