【感想・ネタバレ】まほろ駅前多田便利軒のレビュー

あらすじ

「ここも一応、東京なんだがな」と言われてしまう“まほろ市”は、東京のはずれの大きな町だ。まほろ駅前で、ひとり便利屋を営む多田啓介のもとに、高校の同級生・行天春彦が転がりこんだ。高校時代、教室でただ1回しか口を開かなかった、ひょろ長い変人だ。ペットあずかりに子どもの塾の送迎、納屋の整理…ありふれた依頼なのに、行天が来てからは、やたらきな臭い状況に追い込まれるハメに。さて、本日のご依頼は? 多田・行天の魅力が全開の、第135回直木賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

多田と行天のやりとりは割とハードボイルドテイストなんだけど、行天の行動や考え方が相当にすっとぼけてたり、多田が見せる真面目さや優しさが温度と熱量を上げ、結果としてそれらがよい塩梅にスパイスを効かせ2人を魅力的で味わいのある人物に押し上げている。多田、行天の仲間に加わり多田便利軒で働きたいとは思わないけどルル&ハイシー主催のクリスマスパーティーには呼ばれたいし、星と行天が食べてる3つ隣の席くらいに陣取ってやきとり食べたいなと思わせる魅力的な2人。俺ならこの2人に何の仕事を頼むだろうか。

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2025年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

駅前で便利屋を営む多田と同級生の行天が、依頼者からの様々な依頼の中から進んでいく日々のストーリー。
由良公やルル&ハイシー、岡さんや星、清海など個性のある登場人物もとても好き♪
行天は子供が欲しい元妻のために人工受精をした経験あり。多田は浮気相手との間との子かもしれない子供を生んだ妻との関係性が微妙であったが、生後1ヶ月で子供が亡くなってしまったことを機に離婚してしまった。お互い色々なことを抱えているも、行天のことが鬱陶しいと感じつつ、いなくなってしまうと探してしまう多田。絶妙なバランスなのに噛み合っていない2人を取り巻くストーリー。まほろ市が東京の町田市を思い描けるリアリティーのある内容がとても良かった。
多田が好きだなぁー♪

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他の作品と同様、キャラが個性的。なんとなくほんわか系かと予想していましたが、意外にもかなり危険な橋を渡る便利屋の2人にはらはらしました。主人公の、淡々と冷静に生きているようでありながら、情を捨てきれずに事件に巻き込まれてしまう感じが好きです。
行天の一度切り離された小指の繋ぎ目は、冒頭では冷たさと痛々しさが強調されていましたが、最後は「なにかを約束する印のように結ばれている」と表現されていたのが印象的でした。過去に受けた傷跡は残るし、人生にはもう戻ってこないものもある。けれど、そっと傷跡に触れながら、新たなかたちの幸せで温めることはできる。そんなメッセージが込められているように感じました。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

裏表紙のあらすじを読んで、面白そうだったので手に取りました。

便利屋さんのお話という事で、『銀魂』という漫画の「万事屋銀ちゃん」みたいな明るいノリを想像していたのですが、読んでみるとユーモアはそこそこに結構重いお話が続きました。

その中の一つで、小学生たちがクスリ(見た目は砂糖そっくり)の受け渡しのバイトに加担させられていましたが、結局助け出したのは別件で関わっていた男の子一人だけでした。
少年ジャンプの主人公だとここは全員助け出す流れですが、「そこまで面倒見られるかよ」という多田さんのセリフから、世の中は漫画みたいに上手くはいかないのだと悟りました。

ちなみに、ここは東京都町田市が舞台だそうですが、クスリ50個の受け渡しで5000円、多田便利軒の週給が(歩合制だとは思いますが)3000円というのに驚き、かなり賃金が安い町なのではないかと思いました。
しかし、多田さんの相方である行天さんは、どのシーンでも常にタバコを吸っているような気がするのですが、買うお金があるのか少し疑問になりました。
食費や光熱費に加えてタバコ代も多田さんが支払っているとなると、先ほどの「そこまで面倒見られるかよ」というセリフにも納得しました。
彼は一風変わった依頼人を助けたり、行天さんにタバコを買ってあげたりするので精一杯なのだと思います。

少年ジャンプの主人公になれなくても、賃金の安い町で毎日頑張って生活している多田さんが、なんだかカッコよく見える物語でした。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

柄が悪い言葉を発しておきながら愛に包まれてる2人。最強バディ…?
涙する部分はあるのだけど、涙ひっこんだよ!あっという間に!
なんなんだよ!?笑
ハードボイルド小説なのか…?しをんさんすごすぎる。同僚に勧められた一作でした。

以下はお気に入りの文の引用です。
「腐敗を遅らせながら、葬式のはじまりを待つ死体みたいだ。」
「子どもたちは、親の愛情と保護を待っている。この世にそれしか食べ物がないかのように、いつも腹をすかして貪欲に求めている。」
「割に合わないことをしでかしているらしいところからして、もしかしたらこいつは、がきのころの俺よりばかかもしれないぞ、と多田は思いはじめていた。」
「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだ」
「ご近所のどいつだ。チクりやがって、ただじゃおかねえぞ。と思いながら、多田は曖昧に微笑んだ。」
「一人でいたい。だれかがいるとさびしいから。多田はそう思い、しかしそんなことを思う時点で、俺はもうとっくにさびしいのかもしれないなとも考えた。」
「「あんた、まだ気にしてるんだってね」(略)「ばかだなあ」」
「「悪意がなかったからといって、罪ではないということにはならない」(略)自分があらゆる意味で怠慢だったと気づいたときには、取り返しがつかないほど全部が壊れてしまっていた。」
「血をよりどころにせず、つながった家族。たとえ自分の子ではなかったとしても、多田は愛したかったし、愛されたかった。妻と子どもと幸せにやっていけるのだと、一生をかけて証明したいと願っていた。心から。」

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2025年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前半はなかなか読み進められませんでしたが、後半からだんだん面白く感じられました。

「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」
「不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはない」

解説にもありましたが、この2つのセリフが印象的でした。

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2025年07月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不器用だけど確かな友情に心温まるお仕事小説

幸福は形を変え、さまざまな姿で、それを求める人たちのところへ何度でも、そっと訪れるもの。
過去と向き合いながらいまを生きる2人の日常が愛おしく思える。もっともっと見ていたい、そんな物語でした。

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2025年05月21日

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