金子浩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
S寄りのSFかと思いきや意外とF寄り、それもクローズドサークル・ミステリーとかサスペンスとかそっち系。裏のあらすじで「次々と命を落とすクルーたち、果たして…」とか言われて、そのくせ半分読むまで一向に誰も死なないのでどういうネタバレだよと思ったけど、今思うと需供を一致させるためのニクい配慮だったのかもしれない。原題はSF感だいぶ弱めな『One way』。
設定的にどうしてもチラついてしまうアンディ・ウィアーの『火星の人』と比べると、ミッションの全貌が把握できず決定権もない無期懲役の囚人クルーという独特の閉塞感・絶望感は新鮮な一方で、エンジニア的問題解決の面白さはだいぶ弱め。結局は素人集団だからあまり優秀にもできないんでしょう。目玉?のミステリ要素はなんとも言えず。身寄りのない囚人たちだけで構成されてるという設定でだいぶ察せるので、もうちょっとクルーの心理をじっくり描写してほしかった気もする。
面白いんだけどなんかどの要素も惜しい、そんな作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現代スペースオペラのアンソロジー。スペースオペラとは言うじょう、波乱万丈ではまったくない。
〇イアス・S・バッケル「禅と宇宙船修理技術」ーロボット宇宙船が宇宙戦に生き残った戦争を起こした冷酷な独裁者の救助命令に逆らえないが。
・ユーン・ハ・リー「課外活動」ー七連合王国もの
〇アーカディ・マーティーン「あなたが王だと思っていたすべての色」ー女王のクローンが女王との決闘に臨み反逆を企てる。
〇アレステア・レナルズ「ベラドンナの夜」20万年周期で銀河を周回し記念イベントを行うが、実は種族は滅びている。哀愁漂う
・T・キングフィッシャー「金属は暗闇の血のごとく」
・チャーリー・ジェーン・アンダーズ「時空の一時的困惑」ーカルト惑星に侵入し盗みを企てる。ハチャメチャ喜劇
〇アリエット・ド・ボダール「包囊」ー母惑星から独立した宇宙ステーション人は母惑星の文化を装うため包囊を身に着ける。ベトナム系フランス女性作家の作品
・セス・ディキンソン「モリガン、光へと落ちる」)
〇ラヴィ・ティドハー「背教者たち」ーユダヤ教の背教者を探るため派遣された裁定者が背教し。
〇ベッキー・チェンバーズ「善き異端者」ーウィルスが寄生し超空間ナビゲート能力を得るが、共生がうまくいかずに。
〇アーニャ・ジョアンナ・デニーロ「クイーンズスロートへの旅路」ーMTFらによる女権帝国に対し男権主義者が反乱を起こし一時は帝国は滅亡しMTF狩が始まるが。
・アン・レッキー「審判」
〇サム・J・ミラー「惑星執着者」ー故郷の惑星へのゲートが閉じてしまい宇宙を放浪する男娼が武器商人と会い故郷の通貨を見つける
・カリン・ティドベック「スキーズブラズニルの最後の旅」 -
Posted by ブクログ
先人のおかげで序文という盛大なネタバレを回避できました。感謝。
適度に魅力的なキャラ、絶妙な場面転換、ゴア味の強いグロ描写。そして「そのまま訳されてるなあ」と感じる素朴な文章。「もう少し意訳してくれても…」と思う部分もあるが、原文が丁寧だからだろう、読んでいて間取りや情景が思い浮かぶ。
キャラのメンタリティを語るのと同じテンションで怖気を振るうような光景の説明を始めるが、その淡々とした語り口のおかげであまりショックを受けずに読み進められる。
フィクションを楽しむ時はいつも感じる「これから一体どうなるんだ?」はなかった。代わりに「こいつらにどんな未来があるというんだ?」という思いで一気に読んでしまう。病院の待ち時間という苦痛を忘れさせてくれた。
ラストに唖然とする。何度もページを繰って、続きを探した。呆然としたまま作者あとがきを読んで、彼の、どうやら出版社と散々闘い不本意な修正を強いられたらしき過去を知って、それから「本当に描きたかったもの」を何となくだが理解して、納得した。ああ、これでいいんだ…
不条理だが、現実も同じだろう。
ジャック・ケッチャムは現実を忘れたくてフィクションに浸る読者には向かない、厳しい作者らしい。あと、多分田舎嫌いだ。
「粗野な、近親婚をくりかえした一族の顔」「何世紀も閉ざされていた地域社会」「全員が、不気味なほど一様に見え、孤立と、鈍感で無分別な残酷さを物語っている」
ここまで言う?とも思うが、日本の田舎にも似たようなところを感じる時があるな…とちょっと共感した。
個人的に一番怖かったのは、洞窟に積み上げられた服の山の件。鳥肌が立った。自分は骨の髄まで現代日本人だとしみじみ思う。 -
Posted by ブクログ
遥かなる未来。人類は時空を歪曲する“シャドウスペース技術”を開発し、銀河系へと進出した。そして異星種族連合“マジョダ”と出会う。マジョダの創設者マジョ•ジ人により地球は140億人の住民とともに滅亡させられた。
最後の生き残り“ガイア•ステーション”の女戦士•ヴァルキアは、仲間とともにマジョダへの復讐のため、厳しい訓練を続けてきた。チームリーダーとして最強の戦士に成長したヴァルキアだったが、彼女は思いもよらない部署に配属されることになって…。
久しぶりに“SFらしいSF”を読み、一気読みでした【ヒューゴー賞受賞作】
主人公ヴァルキアが、過去の自分の独白ではヴァル、今の自分キアと(書き分けられて)対話したり、マジョダの時空転移装置•ウィズダムの絶対存在性(A Iの究極形を通り越してもはや“神”の領域)とか、SF初心者にはちょっとハードルが高そうです。
著者はイギリス出身の女性で、これが初の長編。ケンブリッジ大学で古代ギリシャ•ローマについて学んだということで、登場人物の名前はこのあたりの時代と北欧神話からとっているようです。
なお、タイトルは原題『Some desperate glory』(絶望的な栄光)の直訳の方が内容に合っていてよかったように感じます。
イギリスの詩人ウィルフレッド•オーエンの反戦詩『絶望的な栄光とやらを夢見る子らに、祖国のために死ぬのは甘美で名誉なことだなどという古い嘘をつくな』という一節からとっているみたいですから。 -
Posted by ブクログ
表題作の「冬の子」は、食人族の恐怖を描いたケッチャムの代表作「オフシーズン」とその続編「襲撃者の夜」の間に起こったエピソード。
電車に乗り合わせた男の抱える箱の中身に興味を持ってしまった少年とその家族に起こる不条理を描いた「箱」は大傑作。
「歳月」は、歳を取らなくなった女性と年下男性のラブストーリー。切ないハッピーエンド。こんなのも書けるんですね。収録されている「永遠に」と対になっているように感じられました。
ケッチャムを連想させるエログロ作家の主人公が、ファンミーティングで詰められる「三十人の集い」は、これぞケッチャムという内容と結末。ゾクゾクしました。
中にはハズレもあります。全19編収録。